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第二十三章 アメリカ大陸編其のニ アメリカ横断旅行、延長戦にゃ~

662 失敗の連続にゃ~

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 ベティとエミリは再会に喜び、いつまでも泣き続け……

「なんでシラタマ君のほうが泣き止むの遅いのよ……」
「だって~。にゃ~~~」

 いや、わしももらい泣きで「にゃ~にゃ~」号泣していたら、ベティとエミリはすでに泣き止んでいたのでツッコミまれた。
 それでもわしの涙は止まらないので、二人は昔話をして楽しそうにしていたから「今日は仕事はいいから」と晩ごはんや飲み物を渡して、エミリの部屋に追いやった。たぶん今日は仕事にならないと思っての配慮だ。

 二人が見えなくなったらさすがにわしも涙が止まったので、キツネ少女お春を呼んで配膳の手伝い。エミリが作れないので、今日はわしの持つ出来合いの物で済まそうという腹だ。
 ちなみにケラハー博士達は、今日は旅館に泊まるから歓迎会を開かなくても満足してくれるだろう。たぶん皆と話が合わないと思うし……

 料理が並んだ頃にキャットタワー上階に住む住人が集まって来たので、帰還パーティの始まり。いつ帰って来るかわからないタヌキ少女つゆも、今日は引っ張って来てもらった。

「え~。まぁいろいろあったんにゃけど、今回も全員無事、帰って来れましたにゃ~。かんぱいにゃ~」
「「「「「かんぱいにゃ~」」」」」

 わしの音頭で始まる宴。ツマミは豪華な食事だけでなく、冒険談も大好評。特に国家を見付けたことは、双子王女が興味津々だ。

「「お土産はなくて??」」
「あ、美味しいタコスとフィッシュアンドチップスを出し忘れていたにゃ」

 お土産の料理を出したら双子王女も大満足……

「もっと面白そうな物はなかったのですの?」
「モフモフのことも聞いてませんわ」

 足りなかったようなので、詳しく説明する。

「まず、タコスはだにゃ。さっき紹介したベティ発案で作られているんにゃ。だから、うちでも開発してもらおうと思って連れて帰って来たんにゃ」
「なるほど……トウモロコシの売り上げに関わることですわね……」
「次にモフモフは、立って歩くオオカミが居たにゃ。アメリヤ王国で奴隷にされていたのに、また別の地に連れて来るのは気が引けてにゃ~」
「オオカミですか……肉食獣は少し怖いですわね。撫でても噛みませんの?」
「オオカミ族も人間にゃ~」

 肉食獣でもモフモフならば双子王女は撫でたいようだが、居ないものは仕方がない。連れて来てもモフられる未来しか待っていないだろうから、オオカミ族は猫の国に連れて来ないほうが本人の為になりそうだ。
 それからも冒険談と質疑応答が続き、双子王女が日記に出て来るある記述に気付いた。

「この金色の鳥、サンダーバードは見付けて来たのですの?」
「「「「「にゃ……」」」」」
「シャーマンに居場所を教えてもらったとありますのに、日記には出て来ないですわよ?」
「「「「「忘れてたにゃ~~~!!」」」」」

 猫ファミリー痛恨のミス。あのコリスでさえサンダーバードが見たかったのか、声を揃えて嘆くのであった。

 でも、たぶん強いから食べられないと思うよ?


 アメリヤ王国のいざこざと女王登場でサンダーバードの事はすっかり忘れていたので、長旅を終えたばかりなのに近々見に行くと決まったところで今日はお開き。
 翌日は時差を合わせる為に猫ファミリーは惰眠。ベティも時差が辛かったのか、目が覚めたらわしを抱いて寝ていた……

 いや、寝室に連れ込んだって言われても……あ、エミリがここで寝ていろと放り込んだらしいですよ? ね? わしは寝ていただけでしょ??

 リータとメイバイが浮気を疑って来たが、ベティのおかげで浮気疑惑が晴れたらめっちゃモフられた。たぶん謝っているのだろけど、気絶した。
 その翌日は、ベティはリータ達に預けて猫の街観光に連れ出してもらった。わしはケラハー博士達に用があるので、つゆ専用工房にお邪魔したが誰も居ない。
 ひょっとしたら工場に居るのかと思って出向いたら、つゆとケラハー達が楽しそうに話をしていた。

「お~。ちゃんと案内してくれていたんにゃ~」
「あ、シラタマさん!!」

 わしに気付いたつゆは走り寄る。つゆには一昨日、ケラハー達に猫の国の技術力を見せるように頼んでいたので、よく出来たと頭を撫でてあげた。

「それにしても、この人達すっごく頭がいいんですね。当主様と喋っているようでしたよ」
「アメリヤ王国の最高頭脳だからにゃ。源斉と議論させても面白そうだにゃ~」
「アメリヤの技術も教えて欲しいです~」
「そうだにゃ~……LED電球を見付けたから、今度、工場でも作れるように学んでくれにゃ」
「はい! ただちに!!」
「今度って言ってるにゃろ~」

 つゆは聞いた事のない単語なのに今すぐ取り掛かろうとするので、先に工場見学の引率をしないと教えてあげないと脅しておいた。これでなんとか工場見学を再開できたけど、ケラハー達の質問は技術関連ばかり。

 ウサギの質問はないのですか? あ、それはリチウムイオン電池です。タヌキも喋っているんじゃけど……それはシリコンでソーラーパネルの……モフモフにも興味持って!!

 モフモフしか働いていない現場を見てもケラハー達は何も聞いて来ないので、逆にわしから質問。詳しく聞いたら、もうお腹いっぱいで知りたくないようだ。
 いちおう最初は興味を持っていたけど生物学は畑違いだし、突然変異か人間との混合種と結論付けたから、もうそれでいいそうだ。そこにこんなにうじゃうじゃウサギが居る施設に来たから、考える事をやめたんだって。

 混合種は正解じゃけど、つゆは魔法でタヌキに変身してるぞ??

 ケラハー達に正解を教えてあげたら鼻で笑われた。どうも魔法を信じていないらしく、タヌキなんかに変身する馬鹿はいないと思っているようだ。
 そのせいでつゆがめっちゃ落ち込んだので、わしとつゆは変身を解除して魔法が存在すると教えてあげた。

「「「「「タヌキ!?」」」」」
「猫だにゃ~!!」

 一緒に変身を解除したのは大失敗。つゆが人間の姿に戻った事よりも、わしが四足歩行のタヌキになったと思われてしまった。
 ただし、テレパシーの正体も魔法だと教え、火でも水でも何も無い場所から出したら、ようやく魔法の存在を信じてブツブツ言い出した。

 まぁ魔法の研究も面白いかと思い、魔道具研究所にもご案内。生活魔道具を見せて科学的に研究してみないかと言ったら、やる気満々になった。
 しかし、こればかりに時間を費やされると困るので、班分けして、研究論文の発表や新しい技術の創作を仕事としてもらう事にする。あとは研究所だけだが、つゆの工房の隣に建ててあげた。
 こいつらはたぶんつゆと一緒で時間の概念が無いはずなので、助手と言う名の世話係のウサギを数人与え、健康に気を付けてもらおう。

 ケラハー達の処置が終わったら、キャットタワーに帰って双子王女にお願い。新しい部門を作ったから、猫の街からお金を出して欲しいとスリスリしてみたのだが、今年の予算はもう無いらしい……

 なんでスッカラカンなの!? また横領したじゃろ! えっ? あ、移民政策のせいですか。怒鳴ってすみません。国から追加予算を出させていただきます。

 元々わしが帰ってから双子王女はお金の話をしようとしていたらしいが、フライングで怒ってしまったので、予算をめっちゃ取られてしまった……

 もしかしてじゃけど、わしが怒るの待ってませんでした? 一昨日お金の話をしたのに言って来なかったし……その笑い方は正解ですよね~??

 双子王女は「そんなことないですわよ。オホホホホ~」と、悪役令嬢ばりに高笑いしているので、わしは確実に嵌められたと思う。でも、そのおかげでベティにも給金が支払われる事になったから、まぁいっか。


 これでケラハー達の処置は完全に終了。職員食堂で役場職員に冒険談をしながら食事を終えたら、またケラハー達の元へ顔を出して、ケラハーだけを拉致。目隠しして転移。平賀家にお邪魔した。

「源斉~。やってるにゃ~?」
「師匠……」

 いつもなら源斉は、尻尾も無いのに尻尾を振っているようにわしに寄って来るのだが、今日は元気がない。どうしたものかと話を聞いたら、どうやらわしが発注したエレベーターの自動化が上手くいっていないようだ。

「源斉がスランプとは珍しいにゃ~。とりあえず設計図を見せろにゃ」
「こちらです……」

 えっと……あれ? なんで自動エレベーターの設計図にLEDがまざっておるんじゃ……はい? 液晶パネルや計算機まで一緒くたにされておる!?

「全部同時平行で考えてるから進まないんにゃ~~~!!」

 またしてもわしの大失敗。源斉が面白すぎて未来の知識を入れ過ぎたが為に、脳の処理能力をオーバーしていたのだ。
 源斉を叱り付けたわしであったが、自分にも非があると認めて設計図を仕分けするのであったとさ。


「まぁあれにゃ。LEDライトは作っている所を見付けたから、もう考えなくていいにゃ」
「なんですって!? 見せてください!!」
「最後まで聞けにゃ~!」

 とりあえずLED電球アメを見せながら、液晶パネルはLEDがあるから一歩前進していると説明して「ハァハァ」言っている源斉に預け、設計図も見せてあげる。
 そして自動エレベーターの設計図は、ケラハーに見せて話し合う。

「どうかにゃ? わし的にはあと一歩に見えるんにゃけど」
「そうじゃな。もう少し計算したら動くようになりそうじゃ。じゃが、計算し直したほうがスムーズに動きそうじゃぞ?」
「にゃ! さすが科学のプロにゃ~。じゃあ、エレベーターはこっちで受け持つから、源斉は液晶パネルと計算機を考えてくれにゃ。ちょっと出掛けて来るから、じいさんも助言してあげてにゃ~」

 これで源斉の負担は減ったので、今まで通りの速度で物作りをしてくれるだろう。さらにケラハーの知識の中に集積回路があるから、計算機ぐらいちょちょいのちょいで作れるかもしれない。
 二人が議論するには言葉が通じないので、ちょっとは魔法の知識のある源斉に念話の魔道具を預けて、わしは御所に走るのであった。


 御所ではちびっこ天皇と謁見して、アメリヤ王国で神道と仏教の布教活動をやってみないかと持ち掛けてみたら、すんなり人を派遣してくれる事になった。
 ちびっこ天皇が宗教の普及が出来ると気を良くしているところに、さらっと源斉をくれと言ったらキレ気味に断られた。

 チッ……やっぱり源斉はくれんか。ちびっこの奴、ケチ臭いのう。

 なのでわしは、源斉を脱藩させようか悩みながら平賀家に戻ったら、源斉とケラハーがめっちゃ喧嘩してた。
 どうやら理論派と技術派は、相容れなかったようだ……

「源斉! お座りにゃ!!」
「ワン!」

 筋肉ダルマの源斉がケラハーの胸ぐらを掴んでいたから止めるしかない。だって、いまにも殴りそうな剣幕だったんじゃもん。
 二人は設計図の交換だけでやり取りしたほうが円滑になりそうなので、困ったらわしに設計図を送るように源斉に言っておいた。
 だが、源斉はまだ興奮して「ぐるるぅぅ」とか言っているので落ち着かせる必要がある。

「そうにゃ。お土産があったんにゃ。昔作っていたエンジンって、まだ残ってるにゃ?」
「あれならたしか……」

 お土産と聞いて凄い技術だと思った源斉は、素直に動いてエンジンを持って来てくれたので、わしは黄金色こがねいろの液体をタンクに流し込んであげた。

「さてさて~……これで動くかもにゃ~?」
「本当ですか!? う、動かしてみても……」
「やってみろにゃ」
「はい!」

 源斉は嬉しそうにエンジンを撫でると、チェーンを何度も引いてエンジンを動かそうとする。そうして七度目で、エンジンは爆音を出して動き出した。

「や、やった……俺の夢が……」
「にゃはは。水素は扱いが難しいからにゃ~」

 わしが使った液体は、コーン油。エンジンに使うには持って来いの液体なので、貰っておいたのだ。

「さっきの液体があれば、これで車が作れる! 師匠……分けてください!!」
「はい、ドーーーンにゃ!!」
「ええぇぇ……」

 コーン油だけがお土産じゃない。ジープもジョージからカツアゲしておいたので、源斉は一気に萎えた。

「にゃはは。これが源斉が作りたかった完成形にゃ~。にゃははは」

 そりゃ、自分の作りたかった物がすでにあったのならば、やる気も失せるだろう。

「ちょっと分解していいですか??」
「もういいにゃろ~」

 それでも源斉は中身が気になるらしいので、好きなようにさせるわしであったとさ。
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