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第二十三章 アメリカ大陸編其のニ アメリカ横断旅行、延長戦にゃ~
653 技術のカツアゲにゃ~
しおりを挟むヘリコプターを見た女王は欲しそうにしていたが、一時保留。「よこせ~。よこせ~」と、さっちゃんみたいにうっとうしい女王をバスに積み込んで次に移動した。
「ここでもコーン油を使っているにゃ?」
「らしいです。でも、油を抽出したあとの廃棄コーンが主として燃やされているみたいです」
ここは火力発電所。お城や貴族街、街灯や車等のバッテリーに使われている電気を作り出す施設だ。
「幾分もったいにゃい気もするんだけどにゃ~」
「はあ……アメリヤの生活に関わる事ですから、コーン油は緩和していただきたいのですが……」
どうやらジョージがわしをここに連れて来た理由は、コーン油工場の再開が目的だったようだ。
そりゃ、多種多様な物に使われているエネルギーがストップしてしまうと、その生活に慣れてしまっている者から不満が出るのは目に見えている。
「まぁ仕方ないにゃ。その代わり、減産を要求するにゃ」
「はっ! 軍部の遠征を無くすので、ある程度は減らせるはずです!!」
「ある程度じゃにゃくて、四分の一まで減らせにゃ」
「え……いきなりそんなには……」
「段階的にでいいにゃ。さらに、うちで作ってるいい物を売ってやるから、今の暮らしを維持できると思うにゃ」
「いい物ですか??」
ジョージには実演したほうが早いと思い、外に連れ出したら、わしが個人的につゆに作らせた小さなソーラーパネルと羽根付きモーターを取り出す。
そして、ソーラーパネルを太陽に向けながら羽根付きモーターはジョージの顔に近付ける。するとジョージの綺麗な金髪は揺らめいた。
「これは……魔法で動いているのですか?」
「いんにゃ。太陽の光から作られた電気が、モーターを回しているんにゃ」
「太陽って……アレ??」
「そうにゃ。いい物にゃろ~?」
ジョージは太陽を見て首を傾げているので、目が潰れるぞと脅してから太陽光発電講座。ざっくりとした説明だが、現物があるのだから言いたい事は伝わっただろう。
「随時、輸出して行くから、コーン油の製造は様子を見て減らすんにゃよ~?」
「はっ! お任せください!!」
「あと、発電所の設計図を出せにゃ」
「ええぇぇ~」
超いい返事をくれたジョージは、わしがカツアゲすると、結局は嫌そうな顔に変わるのであった。
今日の工場見学はこれにて終了。城に帰ったらジョージにブーブー……「にゃ~にゃ~」文句を言いながら食事。わしが文句を言っている理由は、女王に兵器を易々と見せると言ったことだ。
「だって、あの人なんだか怖いんですもん……」
しかしジョージはコソコソとこう言う始末。詳しく聞くと、「イサベレのおかげで、イサベレのおかげで議員が排除できた」と女王に何度も脅されたそうだ。
ほぼわしのおかげなのだが、イサベレの名前を全面に出してニコニコ笑っていたから怖かったらしい。絶世の美女でも、目の奥が笑っていないオーラの強い美女は怖いんだって……
まぁ終わった事をグチグチと言うわしではない。
「やっと終わった……」
ジョージには長く感じたようだが、ほんのちょったじゃぞ? 十分からその三倍ぐらい……
「明日は他の技術を見るからにゃ! 全部設計図を用意しておけにゃ!!」
「ええぇぇ~~~」
女王に文句が言えないんだから仕方がない。ジョージに当たり散らして、スッキリして眠るわしであったとさ。
翌日は、わしのリクエスト通りの工場見学。ただし、夜の間に設計図は揃えてくれていたので、昼までには面白そうな技術の見学は終えた。
「いい物見付けたにゃ~。にゃしゃしゃ」
昼食時には、わしは上機嫌。電球を見ながらモグモグしていたら、女王に奪い取られてしまった。
「こんなのがね~……日ノ本で売ってる電球と何が違うの?」
「まったく違うにゃ~。にゃしゃしゃ」
「変な笑い方してないで説明しなさい」
女王に説明してやる必要はないのだが、気分のいいわしはこれくらいは説明してやる。
「日ノ本の電球は白熱球で、こっちのはLED電球なんにゃ」
「もったいぶらず先を言いなさい」
「いまのは電球の種類の話にゃ。そのふたつは同じように光を放つんにゃけど、消費電力がまったく違うんにゃ」
「まったくと言うと??」
「五分の一とかにゃ」
「そんなに!? と言うことは……太陽光発電でより多くの街灯を設置することが出来る……」
「さすが女王、ご明察にゃ~」
LEDライトはわしの知識では作れないから、天才の平賀源斉に作らせていた物だ。こんな所にあったのだから上機嫌になって、女王にポロッと漏らしても仕方がない。
ただし、これはわざと情報を小出しにして女王の機嫌を取っているだけ。わしの狙いは他にある。
まさかLEDだけじゃなく、集積回路まで作っておったとは……どんだけの天才が転生しておったんじゃ。軍事だけじゃなく、もっと人々の助けになるような物を作れよ。
まぁそのおかげで、源斉のパソコン作りが加速しそうじゃわい。いっそ、源斉の奴を猫の国に引き抜くか? 欲しいんじゃけど、天皇家が許してくれるかどうか……
女王の興味はLEDライトに集中しているので、質問に全て答えて食事を終えるとわしはコーヒーを飲みながら、ブツブツと「この猫、どうなってやがる」とか言っているジョージを見る。
「この書類を見る限り、あとの工場見学はいいにゃ。明日には許可なく製造していい物は発表するからにゃ」
「はあ……よかったです」
「ただ、ひとつ気になる物があるんにゃけど、この極秘事項ってなってる施設はにゃに?」
「何も聞かされていないのでわかりません」
「王様にゃんだからチェックしておけよ~」
「いや~。父と兄が立て続けに亡くなって、わけもわからず国王になったもんで。このニヵ月、国王の勉強で手一杯だったんですよ~」
ジョージの言い訳はわしはわからんでもないと思ったが、女王からしたら許せない言い訳だったようで、ジョージはめっちゃ叱られていた。なので、かわいそうと思いつつ、わしは二人から距離を取るのであった。
だって、わしに飛び火しそうなんじゃもん!
昼食と説教が終われば、案内のバスを追いかけて極秘施設に向かう。ジョージが何故かわし達のバスに乗り込んで来たと思ったら、「しょっちゅう怒られているらしいですね?」って、ニヤニヤしながら言われた。
どうやら女王の説教の例え話に、わしが幾度も出て来たようだ。ちゃんとしないと、あんな情けない王になると……
たしかにいつも怒られてるけど、わしを例に出さなくてもよくない? 例外すぎるんだから参考にならんじゃろ?
ちょっと反論してみたら、リータ達にめっちゃ愚痴られて反省のスリスリ。その姿をジョージがニヤニヤして見ていたので、「これがお前の未来の姿だ~!」と脅しておいた。
そんなこんなで「にゃ~にゃ~」騒いでいたら、海側の外壁、一番北の端にバスは到着。そこには扉があるのだが、厳重に施錠してあるように見える。
「こんにゃ所でにゃにが出来るんにゃろ?」
「さあ? ……そう言えば、険悪だった父と兄が仲良くしていたから、気になってここまでつけたことが一度だけあります。たいした設備も無さそうですし、どうせ女でも囲ってると思って気にすることはなくなりましたけどね」
「そりゃ入りたくなくなるにゃ~」
お楽しみ部屋だと聞いて、リータ達に見せたくないから引き返したいところだが、この先に憐れな被害者が居るかもしれない。なのでわしだけで入ると言ったのだが、リータ達はわしの事を心配してくれているようなので一緒に入った。
「地下かにゃ?」
「ですね……」
何個も付けられた鍵を開けた先は、地下へ向かう階段のみ。そこから長い階段を下りると長い廊下に変わり、おそらく北に向かっていると思われる。
「これ、避難用の通路じゃにゃい?」
「かもしれませんね。でも、それなら西側に付けたほうが自然だと思うのですが……何度かデカいフナムシの大群に壁を壊されたと聞きますし」
「気持ち悪いにゃ~」
フナムシの話から防衛の話に変わり、フナムシ以外なら助けていいかもと喋りながら歩いていたら扉が見えて来た。
「やっと終着点かにゃ?」
「どうでしょう……」
ジョージがガチャガチャと扉に合う鍵を探していたら、イサベレとオニヒメがわしの尻尾を握って来た。
「にゃに??」
「なんか変な感じ」
「私も……。なんだろう?」
なんじゃ二人して……危険察知に何か引っ掛かったのか? でも、いつもなら危険がある場合は危険って言うのに、止めるでもなく首を傾げておるな。扉の先に何があるんじゃろう?
「危険にゃ物でもあるにゃ?」
「よくわからない」
「なんかふわふわしてる感じだよね?」
「ん。危険なような危険じゃないような……」
「う~ん……念の為、中を確認してから女王達を入れようかにゃ? わしから入るから、みんにゃで女王達を守ってくれにゃ~」
方針が決まるとジョージに鍵だけ開けさせて、わしが扉を少し開けて中を覗き見る。
「倉庫っぽいにゃ。距離を空けて続いてくれにゃ」
部屋の中は棚が配置されているだけで危険な物は見当たらないので、わしはキョロキョロしながらゆっくり歩き、皆が続く。
そうしていくつもの棚と棚との隙間を覗きながら先に進むと壁にぶつかり、左手には窓のような物があって光が漏れていた。
誰かが電気を使っているのは確実なのでそちらに向かい、窓ガラス越しにチラッと中を覗き見ると、マスクを付けた白衣姿の男が動いていた。
お楽しみ部屋じゃなくて、研究施設かな?
リータ達にハンドサインを送って皆を窓に近付けると、わしは今度は長く中を見て確認する。
なんの研究じゃろ? う~ん……どっかで見た事のある計器が並んでいるんじゃけど……
わしが中を覗き見ていると、ジョージも気になって窓から覗き見た。
「あ、ただの研究所ですか。てっきり女性でも居るかと思っていましたよ」
「そうにゃんだけどにゃ~……にゃんか引っ掛かるにゃ」
「でしたら、俺から聞いてみます。王だと言えば、何もされないでしょ。あそこに扉がありますから行って来ますね」
「う~ん……」
ジョージは危険がないと察して、わしの許可を待たずに鉄製のドアに近付く。そしてジョージがドアノブに手を掛けたところで、わしは叫ぶ。
「ま、待ったにゃ! 開けるにゃ!!」
「へ??」
しかし時すでに遅し。ジョージは扉を開けてしまった。
「すぐに閉めろにゃ! 総員待避にゃ~!!」
「え……中を確認しないのですか??」
「いいから言う通りにしろにゃ! みんにゃは女王達を抱いて出口に走れにゃ~~~!!」
「「「「「にゃっ!!」」」」」
わしがトンでもなく焦っているので、イサベレやリータ達はすぐに動き出し、イサベレが女王、リータ達が侍女とメイドウサギを抱えて出口に走る。
ジョージは呆気に取られていて動こうとしないので、わしが扉を乱暴に閉め、ジョージを肩に担いで逃げ出したのであった。
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