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第二十三章 アメリカ大陸編其のニ アメリカ横断旅行、延長戦にゃ~
646 ジョージ13世の謝罪にゃ~
しおりを挟むオオカミ族を通訳として任命したわしは、十個ほど持っていた念話魔道具を配布。ビジジルは現時点からジョージ13世専属の通訳として頑張ってもらう。
残りの九人は、言葉のわからない原住民の通訳として活躍してもらうので、部族の仕分けを任せていたリータ達の元へ連れて行く。
「リータ。どんにゃ感じにゃ?」
「えっと……ちょうど仕分けが終わったところです。でも、そのモフモフは……」
「魔法使いはどうにゃ?」
「ちょっと使える人は居たけど、魔道具の説明が上手く伝わらないニャー。でも、そのモフモフは……」
まだ報告を聞いてる最中じゃから説明を後回しにしたいのに……致し方ない。
「通訳してくれるオオカミ族にゃ~。だから……」
「「モフッていい(ニャー!?)ですか!?」」
「話を聞いてにゃ~」
リータとメイバイは立って歩くオオカミを見て目がハート。なので落ち着かせる為にはモフらせない事には収まらないだろう。
「エサドワさん。ちょっとみんにゃに毛を撫でさせてあげて欲しいんにゃけど、いいかにゃ?」
「はあ。いいですけど……」
三人いる中の人狼の一人が前に出てくれたから、この人狼がエサドワで間違いないのだろう。
「ゴメンにゃ。犠牲になってくれにゃ~」
「犠牲ですか?」
「「「「モフモフ~!!」」」」
「あ~~~れ~~~」
わしが許可する前に、リータ、メイバイ、オニヒメ、イサベレがエサドワをモフッてしまったが、全員女性だから大丈夫だろう。
いや、四人の撫で方が凄まじいので、残りのオオカミ族にレイプでもされてるのではないかと心配させてしまった。
「撫でてるだけにゃ! みんにゃモフモフ好きなだけにゃから、撫でたいだけなんにゃ~! だから、近付かないほうが身の為にゃ……」
とりあえず言い訳してみたら、オオカミ族はリータ達から離れてくれた。確かに撫でられているだけだし、巻き込まれたくないのだろう。わしも……
リータ達から少し距離を取ったら、頼りになるかわからないコリスに質問してみる。
「あそこの人達って、部族事に分かれて座っているのかにゃ?」
「そうだよ。いちばんまえの人がえらい人なの」
「にゃ!? コリスは頼りになるにゃ~。お菓子あげるにゃ」
「ホロッホロッ」
ちょっと酷い事を考えてしまったので、コリスには謝罪の代わりに餌付け。たぶん、こっちのほうがコリスの好みだと思っての配慮だ。
「それじゃあオオカミ族のみにゃさ~ん。あちらの列になった先頭の人に、通訳すると教えてあげてくれにゃ~」
五百人ほど集まる原住民から作られる八列ある列の先頭にオオカミ族が近付くと、オオカミ男とオオカミ女が戻って来た。たぶん怖がられたのだろう。だってオオカミじゃもん。
ぬいぐるみ仲間が増えて嬉しいわしは、尻尾を垂らす人狼を慰めていたら、ケモミミオオカミ族の挨拶は終わったようなので通訳を頼む。
「みにゃさんは、自由の身となりましたにゃ」
わしの言葉はケモミミから先頭の原住民に通訳されると、その言葉はさらに原住民から通訳されて全員に伝わった。
うん。喜んでおるな。たぶん、わけもわからずここに集められておったんじゃろう。ようやく安心できたんじゃろうな。
泣きながら抱き合う原住民に、静かにするように通訳してもらったら、次の言葉を発する。
「これからごはんが配られるからにゃ。腹いっぱい食ってくれにゃ」
あまり長く喋ると通訳しづらくなるので言葉を切りながら説明して行くと、串焼きを持ったジョージとビジジルがやって来た。
「いまはどういった状況ですか?」
「自由になったことと、ごはんが配られることを説明したところにゃ」
「では……先に食べさせましょうか。謝罪は落ち着いた頃がいいでしょう」
「だにゃ。あとは任せたにゃ~」
「はっ!」
ここまで来れば、ジョージに任せても問題ないだろう。わしは二人の人狼を連れてリータ達の元へと戻るのであった。
ジョージが説明してアメリヤ国民やオオカミ族から食べ物が配られ始める中、わしはリータ達の元へと戻るとエサドワの目がハート。どうやらリータとメイバイの凄いテクニックに落ちたようだ……
「わし達もごはんにしようにゃ~」
「も、もう少し……」
「ちょっとは嫌がってくれにゃ~」
まさかエサドワから待ったが掛かるとは思っていなかったので、餌付けして引き離してやった。ただ、他の人狼もやって欲しがっていたので、餌付けしてテーブルに着かせる。
リータ達も撫でたそうにしていたので、わしをモフらせて違うテーブルに着かせた。
「喜んでいたのに~」
「他の人も撫でたかったニャー」
「どれかわからにゃいけど男も居るんにゃ~。やめてにゃ~」
「嫉妬ですね!」
「嫉妬ニャー!」
「まず、ごはんを食べようにゃ。ゴロゴロゴロゴロ~!!」
ちょっと嫉妬心を見せたが為に、リータとメイバイにめったゃモフられるわし。そのせいで、先に出した料理はコリスの腹と頬袋に消えてしまった……
「ほらにゃ? 早く食べようにゃ~」
皆もお腹がへっていたらしく、さすがに全てコリスに食べられてしまったら撫でる手が止まった。
まぁこんなこともあろうかと、少な目に出していたわしの勝利。だからコリスは、頬袋の中を処理してから手を伸ばそっか?
わしの勝利を台無しにしようとするコリスと戦いながら食べ終え、食後のコーヒー。リータやメイバイとぺちゃくちゃ喋りながらすする。
「それにしても、あんな人が居るとはビックリです」
「猫耳族みたいな人も居るニャー」
「そう言えば、ちゃんと紹介してなかったにゃ。あの人達は、オオカミ族にゃ。教会の地下で酷いことをいっぱいされていたと思うから、あまり刺激するようにゃことはしてやるにゃ」
「なんで先にそれを言わないんですか!」
「言ってくれたらあんなに撫でなかったニャー!」
「言う前に撫でようとしたからにゃろ~」
「「あ……」」
いまさら怒鳴られてもわしのせいじゃない。モフモフ好きのリータ達が悪いんじゃ。でも、食事を終えたオオカミの人は、ブラッシングを頼まないで欲しいな~? わしが疑われるんじゃ!
疑いの目を向けるリータ達には、教会の暮らし振りをオオカミ族に語らせて黙らせる。あまりの酷い仕打ちに、リータ達は涙を流しながら丁寧にブラッシングをしていた。ブラッシングはやめないんじゃ……
そうこうしていたら原住民が騒ぎ出したのでそちらを見ると、ジョージからの謝罪が始まっていた。なので、わしはイサベレを誘ってジョージの隣に立つ。
「怒りをぶつける気持ちはわかるにゃ。でも、落ち着いて話を聞いてやって欲しいにゃ。これは、東の国イサベレ様の言葉にゃ~」
「もうダーリンがやったって言ったほうが早くない?」
「いまの通訳するにゃ! イサベレも、イサベレの名の元にやったんにゃから、こっちのほうが納得させるの早いんにゃ~!!」
イサベレがいらんことを言うので、即座に通訳は遮断。絶対に白猫教の拡大は阻止するのだ~!
わしがイサベレを怒鳴り付けた事で原住民は何事かと驚いていたようだが、イサベレが前に出て来てくれたおかげでジョージの言葉はなんとか聞いてもらえた。
謝罪を受け入れるにはまだまだ時間が掛かるだろうが、一歩目としては上々だろう。ジョージの心は伝わったのだから……
それからジョージは原住民に服を渡していたが、シャワーは順番なので一日では終わらないから、日を分けてくれるようにお願いしていたので、わしが魔法でお風呂を作ってあげた。
「シラタマさんって、本当にどうなってるのですか?」
「右が女湯で左が男湯にゃ。中に入ったらお湯があるから、湯船には入らず掛け湯で汚れを落とすんにゃよ~?」
「イサベレ様。シラタマさんの魔法って普通なんですか??」
「ダーリンは異常。こんなことで魔法を使う人は居ない」
ジョージの質問を無視してやったらイサベレに聞きやがった。それも常識がないとまで言う始末。でも、猫が立って歩いている時点で常識を疑うとか言わないで欲しい。オオカミだって歩いておるんじゃぞ?
ジョージはイサベレに質問する事が多いらしく言葉が止まらないので、リータ達の所に行こうかと考えていたら、白人の男女が走って来た。
「「シラタマ様!!」」
「にゃ? たしか……地下牢に居た人かにゃ??」
「「はい!!」」
「よくわしのことがわかったにゃ~」
「色は違いますけど、まだ変身してくれていたのですぐにわかりました!!」
二人とは茶色の野良猫として会ったはずなのにと不思議に思ったら、わざとこの姿をしていると思っているようなので、訂正しない。
この二人は、奴隷収容所の地下牢で拷問を受けていたと言われたので、ハッキリ思い出した。いまは奴隷解放運動の長、イライアスの手伝いをしているようだ。
何をしに寄って来たかと聞くと、イサベレとの顔繋ぎをしてもらいたいとのこと。感謝の言葉を送りたいそうだ。
「ふ~ん。イサベレはそっちの美人がそうにゃ。ところで、わしが縛った奴隷官がどこに行ったかわからないかにゃ?」
「それでしたら、私共と一緒に手伝いをさせています」
「イサベレに挨拶してからでいいから、わしの元に連れて来てくれにゃ~」
「「はい!!」」
二人はジョージを押し退けてイサベレにめっちゃ感謝しているけど、王様の事が見えてないのか? あ、顔出しが少ないから、民衆にあまり知られてないのですか……本当ですか??
イサベレを取られたジョージがわしの質問に反論して来るので宥めていたら、イサベレがわしの秘密にしていた嘘を暴露しやがった。
「「シラタマ様が猫の国の王様!?」」
「違うにゃ~。そんにゃファンシーな名前の国があるわけないにゃろ~」
「「その姿が本来の姿ならありえる……」」
「イサベレ! にゃんて説明したにゃ~!!」
わしの嘘は信じてくれない二人は、いつの間にか白猫教に改宗していてうっとうしい。どうもイサベレが、わしが白猫教の神様をしてると紹介してしまったから納得が早くなってしまったようだ……
うっとうしい二人には、早く奴隷官を連れて来いと命令したらダッシュで連れて来てくれたので、権限をジョージに譲渡。そこからまた二人の命令に従うように指示を出させて、奴隷官が用済みになったら、後日、罰を与える事となった。
それからわしとジョージ、ついでにイサベレはテーブル席でお茶休憩。イサベレには紅茶を、ジョージにはわしと同じくブラックコーヒーを出してみた。
「にがっ……まさか毒……」
「わしも同じの飲んでるにゃろ~」
「それはそうですけど、人が飲む飲物なのですか?」
「わし達の土地の、南に集まる国では暑さ対策で飲まれているんにゃ。その他の国では、その苦味が癖になって貴族に流行ってるんにゃよ」
「へ~。猫の飲み物じゃないんですね」
「猫はコーヒー飲まないにゃ~」
わしが飲んでいる奇妙な飲み物だからジョージはボケていると思われるが、話が弾む。ついでに出したチョコも食べ物かと疑っていたが、一口食べたら美味しさに驚いていた。
「ほへ~。コーヒーとは眠気対策にもいいんですか」
「これから睡眠時間の減るジョージ君には必要かもにゃ~」
「うっ……そうでした。時間がいくらあっても足りない……」
ジョージは現実を思い出し、暗い顔でわしを見る。
「それにしても、シラタマさんって、奴隷解放が嫌に慣れてません? 指示は的確ですし……」
「うちでも似たようにゃことがあったからにゃ」
「そうなのですか??」
「およそ三年前にゃ。メイバイみたいにゃ姿の猫耳族ってのがだにゃ。帝国って国に奴隷にされていたんにゃ。だから帝国を攻め落として猫耳族を解放したから慣れているんにゃ」
「なるほど……一度経験しているなら、そこに当て嵌めればいいんですね」
「そのままじゃダメにゃ。わしだって試行錯誤してるにゃ。今現在、成功しているかもわからないにゃ。結果がわかるのは、何十年も先になるだろうにゃ~」
「たしかに……」
ジョージはわしの言いたい事を噛み締めているので、本を数冊出してプレゼントする。
「これ、参考までにあげるにゃ」
「なんですかこれ? ……猫王様??」
「わしの冒険した場所が書かれた小説にゃ。その建国記ってのが、猫の国の成り立ちが書かれていると思うから読んでおくといいにゃ」
「冒険ですか……」
小説の巻数を数えたジョージは何かに気付いてしまった。
「三年前に王になって……あれ? こんなに冒険していたら、仕事してる暇あります??」
「わし、怠惰な王にゃから仕事はないんにゃ~」
「さっき試行錯誤してるって言ってたでしょ!!」
ここで初めてジョージは、本当にわしが王様なのか疑い始めたのであった……
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