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第二十一章 王様編其の四 ウサギ族の大移動にゃ~
597 産業革命にゃ~
しおりを挟む太陽光発電セット製作で朝帰りしてしまったわしは、リータとメイバイにめっちゃモフられて気絶。昨夜は物作りが楽しかったので睡眠不足だったが為に、そのまま二時間ぐらい起きなかった。
目が覚めたら、朝ごはんを食べながら取り調べ。わしの浮気を疑う二人に太陽光発電の話をしたら、めっちゃモフられて気絶。アメとムチが一緒なので困ったものだ。
ただ、一時的な気絶だったので、二人から餌付けされながら昨日の白い獣討伐の事を聞いておいた。
話を聞いたところ、意外と大規模な群れだったから、けっこう時間が掛かったとのこと。黒や白は猫ファミリーで相手し、アイパーティがザコを引き付けてくれたから、連れて行って正解だったようだ。
アイパーティがザコと戦っている内に、猫ファミーは黒い獣を簡単に倒し、白い獣も協力して簡単に倒したとのこと。そこから掃討戦に移行し、ヘトヘトのアイパーティと合流したらしい。
一番時間が掛かったのは、獣の運搬。コリスとオニヒメの風魔法で木を切り倒し、リータが土魔法で道の整地をする。その間、メイバイは猫軍の待機している場所に走り、道が完成したらキャットトレイン・改を呼び込む。
猫軍やアイパーティ、猫ファミリー全員で獣を積み込んでいたから時間が掛かったようだ。
それらの処置が終わると、猫軍から礼を言われたリータ達は飛行機で帰って来たとのこと。
ちなみにアイパーティは、2パーティでやる仕事内容ではなかったので疲労困憊。今日は筋肉痛で動けないらしい。
「ま、大人しくなるから結果オーライにゃ~。給金だけは払ってやれにゃ。じゃ、わしはそろそろ仕事に行くにゃ~」
今日の予定はお休みだったのだが、太陽光発電でやる事があるわしは、足早につゆ専用工房にお邪魔する。そこでソーラーパネルの上で寝ているつゆを揺すって起こし、餌付けして工業地区に移動する。
「……いつまでついて来るにゃ??」
どうもリータとメイバイは、わしとつゆが浮気しているのではないかと疑ってつけ回しているようだ。つゆの口にエサをポイポイ入れていたのも浮気じゃないかとコソコソ喋っていた。
「つ……太陽光発電が気になりまして……」
「つ……どうするか気になってニャ……」
「つゆとの仲は雇用主と従業員にゃ~!!」
もうバレバレなのに二人が言い訳するので簡潔に説明しておいた。まだコソコソ喋って信じていないようだが、忙しいので仕事に取り掛かる。
土魔法で体育館ぐらい大きな建物を建てると、つゆと相談しながら作業場を作る。さらにベルトコンベアーを配置し、各種配線も設置して、屋根にはわしとつゆが協力して作った太陽光パネルを取り付ける。
お昼休憩を挟み、完成したら双子王女を立ち合わせ、わしは手を揉み揉みしながら声を発する。
「さてさて~……電池に貯まってるかにゃ~? スイッチオンにゃ~!」
「ポチッとにゃ!」
つゆまで三人組の悪役みたいな言い方でベルトコンベアーのスイッチを押すと、ガタンゴトンと動き出した。
「「やったにゃ~!!」」
わしとつゆは、太陽光発電完成に抱き合って喜ぶが、リータとメイバイに引き離されて、どちらも個別にモフられる。
そんな事をしていると、考え込んでいた双子王女が質問して来た。
「これって、本当に太陽の光だけで動いていますの?」
「本当にゃ~」
「それを信用するとして、この大きな施設はなんですの?」
「太陽光発電セットを作る場所にゃ」
「「それを先に言いなさい!!」」
双子王女は、ソウの活版印刷機を視察した事があるから説明を省いたのだが、ベルトコンベアはわかるけど、何をするかがわからないから考え込んでいたようだ。
まぁ説明したら、わしとつゆはめっちゃモフられた。たぶん褒めているのだと思われる。
そうしてフラフラになったわしとつゆは、各作業場を説明して案内する。
「太陽光パネル、変圧器、新型電池。まぁざっくり三種類の物を作る施設だにゃ」
「はあ……しかし、どうしてこんなに広い施設が必要なのですか?」
「そうですわ。完成した物を倉庫に運べば必要ないでしょう?」
「それって、一人でひとつの物を作る計算になってにゃい?」
「「違いますの?」」
「「違うにゃ~?」」
双子王女もリータとメイバイも、首を傾げて質問して来るので、わしとつゆは人差し指を立てて往復する。
「「チッチッチッ……」」
「「「「にゃ~??」」」」
「「個別にパーツを作って、流れ作業で組み立てて行くにゃ~」」
「「「「にゃ~~~??」」」」
全員わしの口調をマネするのは理解できないが、わし達の説明では伝わらないのは理解できた。なので、実技を見せて教えてあげる。
「ここでパーツを作ったら、ベルトコンベアーに乗せるにゃ。そして流れて行ったらつゆが受け取るにゃ」
わしはリータ達を連れてつゆの元へ行くと、後ろで作業を眺める。
「ほら? パーツが合体したにゃろ? そして次の作業場に流れて行ったにゃ」
「なるほど……作業を分業しているのですわね」
「しかし、分業なんてしては、完成が遅くなるのでは?」
双子王女の質問に、わしとつゆはまた人差し指を立てて往復する。
「「チッチッチッ……」」
「職人がひとつの作業しかしないって事は、それだけ早くなるという事にゃ。だってそうにゃろ? 使う道具が少なくにゃるからすぐに慣れるにゃ。つまりは、大幅にゃ時間短縮が出来ると言う事にゃ~。にゃ?」
「はい! 時計を作るのはすっごく時間が掛かるんですよ。何個も工具を交換して、その都度工具を確認して、パーツも交換して、確認して……いろいろ探す無駄な時間があるんです」
「もしも手元にそのパーツと道具しか無ければ、その無駄な時間がいらなくなるにゃ~。これこそ、新しい物作りの形……」
「「工場制手工業にゃ~」」
わしとつゆが手を繋いで両手を広げて声を揃えたら、リータとメイバイにまた引き離されてモフられた。どうも仲良くし過ぎのようだ。
しかし、説明を理解した双子王女は、この画期的な産業革命に息を飲んでいた。
「つまりは、大量生産をする為の施設……」
「つまりは、猫の国の一人勝ち……」
「「それは困りますわ!!」」
そして何故かめっちゃ止められた。そりゃ、価格破壊に繋がる革命だ。東の国のスパイならば、これが様々な物に使われたら自国の物が売れなくなると気付いてしまったのだろう。
なので双子王女はわしとつゆを止めようと、リータとメイバイから奪い取ろうとする。しかし、あまり理解していないリータとメイバイでも、大変な技術なのはわかったのか、わし達を守ろうとして手を離さない。
双方の引っ張り合いとなり、わしとつゆの体は真っ二つに……なりそうなのはつゆだけ。わしは慌てて皆の手から抜け出し、つゆを救出して距離を取る。
「わかってるにゃ! わかってるから落ち着いてにゃ~!!」
まずは皆を落ち着かせる為にティータイム。双子王女の貧乏揺すりが凄いが、わしの説明を聞いて叙々に落ち着いて来た。
「「工場自体を輸出ですか……」」
「そうにゃ。ただでさえ今も一人勝ちにゃんだから、全てをやるわけないにゃ~。わしがキャットトレインや車のパーツ製造を他国に譲っているのは知ってるにゃろ?」
「「まぁ……」」
「しばらくは儲けさせてもらうけど、地産地消が出来るようになるのが理想にゃ。その為に必要にゃのが、電気にゃ。これがにゃいことには、にゃにも出来ないからにゃ」
「「東の国にだけ売ってくれても……」」
「戦争になるにゃ~~~!!」
納得いく説明が聞けたが、双子スパイでは自国の利益が一番重要らしいので、もう少しわしの説得は続くのであった。
「それでこれからの戦略なんにゃけど……もうひとつ工場を建てて、これを作ろうと思うにゃ」
双子王女もなんとか話を聞く体勢になってくれたので、次の話。わしは次元倉庫からふたつの物を取り出す。
「こっちの大きいのは扇風機。小さいのはドライヤーにゃ。ちょっと使ってみてくれにゃ」
わしは近くにあるコンセントに扇風機を繋いで、風を起こして首を振る。
「風……少し寒いですわね」
「こんなの誰が買いますの?」
「いまの時期はにゃ。夏になったら誰でも欲しがるにゃ~」
「「あっ!!」」
「もうひとつも使ってみるにゃ。えっと……ジョジアーヌさん。お髪を拝借するにゃ~」
「「えっ!!??」」
双子王女のどっちがジョジアーヌでどっちがジョスリーヌかいまだにわからないわしは、名前を呼んだら二人にめちゃくちゃ驚かれた。
「名前、知っていましたのね」
「初めて呼ばれましたわ」
「私はわかりまして?」
「ジョスリーヌにゃろ?」
「違いますわ。私がジョジアーヌですわ」
「変にゃ罠を仕掛けるにゃよ~。どっちでもいいからこっち来てにゃ~」
顔も服装も一緒の奴なんて、見分けが付くわけがない。またシャッフルしてわしの前に座ったからには、どっちが来たのかもわからなくなった。
「わっ! 温かい風が出ましたわ!!」
「これでお風呂上がりの髪の毛がすぐに乾くにゃ~」
「なるほど……風魔法を使えるメイドに乾かしてもらわなくても、一人で出来ますわね」
「いつもそんにゃことで魔法使いを使ってたにゃ!?」
資源の無駄遣い。これで人件費は減るのだが、結局はメイドに双子王女はドライヤーで乾かしてもらうので、たいして人件費は下がらないのであった。
「まぁこれは追々作って行くとして、太陽光発電セットの工場があれば、移住第三弾のウサギ族の仕事は賄えるにゃろ?」
「「ですわね!」」
「「またモフモフが増えるにゃ~!!」」
「いい加減、ウサギ族をそっとしておいてあげてにゃ~」
ウサギ族の移住と聞くと、今までの難しい話はどこへその……。早く連れて来いとうるさい双子王女とリータとメイバイに負けて、近々連れて来ると約束させられるわしであったとさ。
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