540 / 755
第十九章 冒険編其の一 北極圏探検にゃ~
531 海の仲間にゃ~
しおりを挟むサッカー大会の幕が下りると、このまま女王誕生祭の閉会式となった。ここで女王は、閉会の挨拶と民衆への感謝の言葉を送る。
その締めに「世界の平和を祈る」と一文を付け加えていたので「一昨年と違うな~」と女王の顔を見ていたらウィンクされた。
あとであの意味はなんだったのかと聞いたら、わしとさっちゃんのプロレスに乗ったとのこと。相変わらずおいしいところを持って行くが、それで戦争が無くなるのなら、わしとしては万々歳だ。
ただ、プロレスとはいえ子供っぽい喧嘩を続けた事は、王と王女としては説教案件だったらしくわしも城に拉致され、さっちゃんと共に仲良く説教された。
ここだけ一昨年と同じ事をしなくていいのに……
女王誕生祭が終わると、東の国から人が去り、わしたち猫の国組も国に帰る。玉藻と家康も何故かついて来たので、このまま日ノ本へ帰るのかと思っていたら、釣りに誘われた。
当然断ったのだが、圧倒的大多数で行って来いと言われ、猫パーティを組む事となった。
イサベレまでついて来ているのは不思議に思っていたら、釣りが目的だったらしい……小説にあまり出てないから、玉藻から釣りに行くと聞いた女王が送り込んだみたいだ。
だが、女王誕生祭で遊び疲れたわしだ。休みを要求する!!
「いいですわよ」
「二日の休みを取れば十分ですわよね?」
「それから行くのですわよ?」
双子王女からあっさり休みは取れたのだが、何故か怖い。どうも休みをやるから、絶対に小説のネタを探して来いとの事らしい……
釣りは前回もしたから「面白くないのでは?」と言ってみたけど「いいから行って来い」と睨まれてしまった。よかれと思って言ったのに、言い訳しているように受け取られたみたいだ。
というわけで、二日休んだら日ノ本へ飛び、釣りにはまったく見えない釣りに行く。京から三ツ鳥居で琉球に向かい、そこに停泊していたエリザベスキャット号に乗り込んで、太平洋側から北上する。
今回もわしだけ戦闘機に乗ってエリザベスキャット号を誘導し、下では時々巨大魚と戦っている。基本、ザコは猫パーティ担当のようだが、イサベレのおかげで火力が上がって前回より楽に倒せているようだ。
もちろんわしも、前回より娯楽が優れている。リータ達の写真も飾ったし、女王にあげたレコードはわしもダビングしていたので、たった一人のコックピットでも寂しくないもん!
そうして空を行くが、白い珊瑚礁が見付からない……。何度も玉藻やリータから通信魔道具に連絡が入り、隠してないかと聞かれる。
これは日本海側のほうが、魔力の源だと予想している化石燃料が豊富にあると思うのだが、皆は信じてくれない。
そんなに信用ならんのなら、誰か戦闘機に乗ってくださ~い!!
わしが「にゃ~にゃ~」文句を言ったら、玉藻が飛んで来たのでコックピットに招き入れるが……
「リータ達だけでなく、妾の写真もあるのか……そちは寂しがり屋じゃのう」
コックピットに飾られた写真を見られてからかわれた。なので、そんな事を見に来たんじゃないだろうと文句を言って白い珊瑚礁を探させる。
しかし、本当に白い珊瑚礁が見当たらなかったので、流し釣りでもして魚を釣ろうと玉藻は提案して来たから断った。
「時々空を見に来たらいいじゃろう? それと寂しいなら、妾の分身が話し相手になってやる」
別にわしは寂しいわけではなかったのだが、暇していたので、暇していたので、玉藻の案に乗ってあげる。暇していたからのう。
「コ~ンコンコン。すぐに着陸するとは、よっぽど寂しかったんじゃのう。こやつは……」
「「「「「よしよしにゃ~」」」」」
「ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ~!」
玉藻はわしの戦闘機に飾っていた写真の事を皆にチクるもんだから、リータ達がわしに飛び付いて撫でる撫でる。そのせいでチチクリ合っていると思われて、家康から苦情が入った。
「流し釣りをするんじゃなかったのか?」
この言葉で、皆はわしを撫でるより大事な事を思い出したようだ。わしをポイッと投げ捨てて、怖い顔で武器を見つめている。
戦闘狂の集団には、長い鎖と白サメの血生臭い肉をプレゼント。コリスとオニヒメには、おやつをプレゼント。これでどちらも満足してくれたので、わしはコリスとオニヒメを撫で回す。
そうこうしていたら黒い巨大魚が寄って来たようで、リータが鎖を撃ち込み、数人がかりで一本釣り。甲板に乗った魚は20メートルクラスの黒いサメであったが、猫パーティで瞬殺していた。
この黒サメは、全てエサ。バラして血を海に撒き、大振りの肉も鎖に付けて海に投げ入れる。これでしばらく待っていたら、大漁だ。
白に黒、5メートルから50メートルオーバーの巨大魚がガンガン寄って来たので、活け締め。【青龍】で氷を張って、生き残りは皆で協力して倒す。
この日は白い珊瑚礁の主を一匹倒し、トローリングを二回だけ行い、就寝と……
「こやつ、妾が戦闘機に乗ったら嬉しそうに喋りまくっておったぞ。コ~ンコンコン」
「「シラタマ(殿~)さ~ん!」」
玉藻がいらん事を言うから、浮気していると受け取ったリータとメイバイが超怖い。玉藻の分身は魔力一割のミニ玉藻なのに、あんな雛人形相手にどうやって浮気するのかさっぱりわからん。
「だって一人は寂しいにゃ~。どっちか一緒に乗ってくれにゃ~」
しかし、反論しても口で負けるので、寂しいと泣き付いてみたらめっちゃくっちゃ撫でられた。どうやらこれは、戦闘機に乗らない代わりの明日の分らしい……
翌日も、昨日と同じように白い珊瑚礁はあまり見付からず、主を一匹とトローリングを二度して、和歌山県沖で停泊。ここで一夜を明かそうと食事の準備を始めたところで、オニヒメとイサベレが何か来たと言って来た。
二人はいつもより焦っている様子も無かったのだが、敵は敵。皆で右舷に移動して、近付く多くの白い背ビレを望遠鏡片手に眺める。
「サメかにゃ~?」
「うむ。背ビレが多いサメは何度か見たから間違いないじゃろう」
おそらく、20メートルから30メートルのサメが二匹。どちらも白じゃけど、リータ達でいけそうかな?
「じゃあ、小さいほうはリータ達で、大きいほうは玉藻とご老公って事でいいかにゃ?」
「くっ……今回は、妾の出番は無しか」
「ポンポコポン。運がいいのう」
「もうメシ時にゃんだから、一緒にやれにゃ~」
リータ達は普通に頷いてくれたが、玉藻と家康は順番があるらしく、わしのお願いは聞いてくれない。なので、ため息を吐きながら【青龍】を撃とうとしたのだが、白サメが跳ねたところでキャンセルした。
「おい! もうそこまで来てるぞ!!」
「何をしておるんじゃ!!」
すると、玉藻と家康に怒鳴られてしまった。
「ちょ、ちょっと、今回はわしに任せてくれないかにゃ?」
「シラタマさんが譲ってくれるって言ったじゃないですか~」
「私も戦いたいニャー」
「お願いにゃ~。試したい事があるだけにゃ~」
リータとメイバイもやる気満々であったが、試したい事が終わったらすぐに交代する事でなんとか納得してもらった。
さてと……上手くいってくれよ~? 【土の輪】!!
わしは一番先頭に立ち、巨大な輪を複数作って空中に浮かせ、先ほど海面から飛び跳ねた白サメ二匹の動きを予想して、進行方向に土の輪を何個も配置する。
来た!
白サメは土の輪を空中でくぐってから海に潜る。そこからは、進行方向をエリザベスキャット号から離れるように土の輪を何個も空中に配置したら、白サメは何故かその誘導に従うように次々とくぐり抜けた。
「「おお~」」
「「「「「うわ~」」」」」
その光景に、皆は感嘆の声を出し、拍手までしている。
「次はこれにゃ~!」
空中に二つの大きな土の玉を浮かせると、白サメは大ジャンプ! 鼻で玉にタッチし、ドボンと落ちて、わし達は海水を浴びる事となった。
「「「「「あはははは」」」」」
それでも楽しかったのか、皆は戦闘を忘れて笑っている。
何故、わしが白サメでイルカショーをしているかというと、白い巨大魚はサメではなくて、イルカだったからだ。向かって来る途中で飛び跳ねたので、イルカと気付いたわしは殺したくないから皆を止めたのだ。
ただ、どうやって扱っていいかわからなかったので、土の輪をくぐらせてみたら興味を持ってくれた。そこからは、自分の意思で土の輪をくぐっていたから楽しんでくれたようだ。
「よくできたにゃ~。これでも食えにゃ~」
白イルカが海面から顔を出すと、わしは白サメの肉をポイポイ投げる。予想通りエサに食い付いたので、皆にも餌付け体験をさせてみた。
「それで……そちはいったい何をしたいんじゃ?」
「かわいいから仲間に出来ないかにゃ~っと……」
「戦わんのか!?」
玉藻の質問に、温い事をわしが言ったら怒鳴られた。さらに家康まで反対のようだ。
「餌付けまでしたら、情が移るじゃろうが。さっさとヤルぞ」
「え~! 情が移ったにゃら殺さなくていいにゃ~」
「まだ大丈夫じゃ」
二人はどうしても折れてくれないので、餌付けしているリータとメイバイとイサベレにも意見を聞いてみる。
「みんにゃはどう思うにゃ?」
「そうですね……あまり好戦的じゃないみたいだし、大丈夫かと……」
「シユウみたいだから、私も仲間に入れるのは賛成ニャー!」
「ん。危険は無さそう」
多数決はわし達の勝ちだろうが、それでも玉藻と家康は納得していない。近海に、こんな巨大なイルカが居ると危険があると思っているのだろう。なので、メリットを説明する。
「こいつらを飼い慣らせば、勝手に魚を減らしてくれると思わにゃい?」
「ふむ……たしかに楽になりそうじゃな」
「しかし、どうやって飼い慣らすんじゃ? 魚には他心通は繋がらないじゃろう」
「にゃ? イルカは魚じゃないにゃ~」
「は? 海で暮らしているんじゃから、魚じゃろ??」
「違うにゃ~。哺乳類にゃ~」
「どこが哺乳類なんじゃ。泳いでいるんじゃから魚類に決まっておる」
わしがどう言っても二人は信じてくれないので、実際に念話を繋げと言われたから、わしは頑張って白イルカに念話を繋げて話し掛ける。
「ちょっといいかにゃ?」
「おお!? なんだお前? 俺達と喋れるのか??」
わしが念話を繋げると、大きいほうの白イルカが顔だけ出して答えてくれた。
「同じようにゃ生き物だからにゃ」
「は? まったく姿形が違うだろう」
白イルカも、人間に自分が哺乳類に分類されているとは知らないので、玉藻達と反応が一緒。だが、皆にはわしが白イルカと意思疏通できている事が伝わったので、念話を繋ごうと頑張っている。
「まぁその事はいいにゃ。わしの仲間にならにゃい?」
「仲間……俺達は至高の種族。知能の低い貴様らと、仲間になるわけがないだろう!!」
わしが仲間になれと言うと、白イルカは何故か中二っぽい事を言って、敵意を剥き出しにして来た。これではまた玉藻と家康の標的となってしまいそうなので、わしは隠蔽魔法を解いて威嚇する。
「にゃ~~~ご~~~! 仲間にならにゃいと、食っちまうぞ~~~!!」
ここまで穏便にしていたわしであったが、結局は脅して、白イルカを無理矢理仲間に引き込もうとするのであったとさ。
0
お気に入りに追加
1,169
あなたにおすすめの小説
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
呪われた子と、家族に捨てられたけど、実は神様に祝福されてます。
光子
ファンタジー
前世、神様の手違いにより、事故で間違って死んでしまった私は、転生した次の世界で、イージーモードで過ごせるように、特別な力を神様に授けられ、生まれ変わった。
ーーー筈が、この世界で、呪われていると差別されている紅い瞳を宿して産まれてきてしまい、まさかの、呪われた子と、家族に虐められるまさかのハードモード人生に…!
8歳で遂に森に捨てられた私ーーキリアは、そこで、同じく、呪われた紅い瞳の魔法使いと出会う。
同じ境遇の紅い瞳の魔法使い達に出会い、優しく暖かな生活を送れるようになったキリアは、紅い瞳の偏見を少しでも良くしたいと思うようになる。
実は神様の祝福である紅の瞳を持って産まれ、更には、神様から特別な力をさずけられたキリアの物語。
恋愛カテゴリーからファンタジーに変更しました。混乱させてしまい、すみません。
自由にゆるーく書いていますので、暖かい目で読んで下さると嬉しいです。
転生幼女の怠惰なため息
(◉ɷ◉ )〈ぬこ〉
ファンタジー
ひとり残業中のアラフォー、清水 紗代(しみず さよ)。異世界の神のゴタゴタに巻き込まれ、アッという間に死亡…( ºωº )チーン…
紗世を幼い頃から見守ってきた座敷わらしズがガチギレ⁉💢
座敷わらしズが異世界の神を脅し…ε=o(´ロ`||)ゴホゴホッ説得して異世界での幼女生活スタートっ!!
もう何番煎じかわからない異世界幼女転生のご都合主義なお話です。
全くの初心者となりますので、よろしくお願いします。
作者は極度のとうふメンタルとなっております…
捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~
伽羅
ファンタジー
物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる