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第十九章 冒険編其の一 北極圏探検にゃ~

531 海の仲間にゃ~

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 サッカー大会の幕が下りると、このまま女王誕生祭の閉会式となった。ここで女王は、閉会の挨拶と民衆への感謝の言葉を送る。
 その締めに「世界の平和を祈る」と一文を付け加えていたので「一昨年と違うな~」と女王の顔を見ていたらウィンクされた。
 あとであの意味はなんだったのかと聞いたら、わしとさっちゃんのプロレスに乗ったとのこと。相変わらずおいしいところを持って行くが、それで戦争が無くなるのなら、わしとしては万々歳だ。

 ただ、プロレスとはいえ子供っぽい喧嘩を続けた事は、王と王女としては説教案件だったらしくわしも城に拉致され、さっちゃんと共に仲良く説教された。

 ここだけ一昨年と同じ事をしなくていいのに……


 女王誕生祭が終わると、東の国から人が去り、わしたち猫の国組も国に帰る。玉藻と家康も何故かついて来たので、このまま日ノ本へ帰るのかと思っていたら、釣りに誘われた。
 当然断ったのだが、圧倒的大多数で行って来いと言われ、猫パーティを組む事となった。
 イサベレまでついて来ているのは不思議に思っていたら、釣りが目的だったらしい……小説にあまり出てないから、玉藻から釣りに行くと聞いた女王が送り込んだみたいだ。

 だが、女王誕生祭で遊び疲れたわしだ。休みを要求する!!

「いいですわよ」
「二日の休みを取れば十分ですわよね?」
「それから行くのですわよ?」

 双子王女からあっさり休みは取れたのだが、何故か怖い。どうも休みをやるから、絶対に小説のネタを探して来いとの事らしい……
 釣りは前回もしたから「面白くないのでは?」と言ってみたけど「いいから行って来い」と睨まれてしまった。よかれと思って言ったのに、言い訳しているように受け取られたみたいだ。


 というわけで、二日休んだら日ノ本へ飛び、釣りにはまったく見えない釣りに行く。京から三ツ鳥居で琉球に向かい、そこに停泊していたエリザベスキャット号に乗り込んで、太平洋側から北上する。
 今回もわしだけ戦闘機に乗ってエリザベスキャット号を誘導し、下では時々巨大魚と戦っている。基本、ザコは猫パーティ担当のようだが、イサベレのおかげで火力が上がって前回より楽に倒せているようだ。
 もちろんわしも、前回より娯楽が優れている。リータ達の写真も飾ったし、女王にあげたレコードはわしもダビングしていたので、たった一人のコックピットでも寂しくないもん!

 そうして空を行くが、白い珊瑚礁が見付からない……。何度も玉藻やリータから通信魔道具に連絡が入り、隠してないかと聞かれる。
 これは日本海側のほうが、魔力の源だと予想している化石燃料が豊富にあると思うのだが、皆は信じてくれない。

 そんなに信用ならんのなら、誰か戦闘機に乗ってくださ~い!!

 わしが「にゃ~にゃ~」文句を言ったら、玉藻が飛んで来たのでコックピットに招き入れるが……

「リータ達だけでなく、わらわの写真もあるのか……そちは寂しがり屋じゃのう」

 コックピットに飾られた写真を見られてからかわれた。なので、そんな事を見に来たんじゃないだろうと文句を言って白い珊瑚礁を探させる。
 しかし、本当に白い珊瑚礁が見当たらなかったので、流し釣りトローリングでもして魚を釣ろうと玉藻は提案して来たから断った。

「時々空を見に来たらいいじゃろう? それと寂しいなら、妾の分身が話し相手になってやる」

 別にわしは寂しいわけではなかったのだが、暇していたので、暇していたので、玉藻の案に乗ってあげる。暇していたからのう。

「コ~ンコンコン。すぐに着陸するとは、よっぽど寂しかったんじゃのう。こやつは……」
「「「「「よしよしにゃ~」」」」」
「ゴロゴロゴロゴロゴロゴロ~!」

 玉藻はわしの戦闘機に飾っていた写真の事を皆にチクるもんだから、リータ達がわしに飛び付いて撫でる撫でる。そのせいでチチクリ合っていると思われて、家康から苦情が入った。

「流し釣りをするんじゃなかったのか?」

 この言葉で、皆はわしを撫でるより大事な事を思い出したようだ。わしをポイッと投げ捨てて、怖い顔で武器を見つめている。

 戦闘狂の集団には、長い鎖と白サメの血生臭い肉をプレゼント。コリスとオニヒメには、おやつをプレゼント。これでどちらも満足してくれたので、わしはコリスとオニヒメを撫で回す。
 そうこうしていたら黒い巨大魚が寄って来たようで、リータが鎖を撃ち込み、数人がかりで一本釣り。甲板に乗った魚は20メートルクラスの黒いサメであったが、猫パーティで瞬殺していた。

 この黒サメは、全てエサ。バラして血を海に撒き、大振りの肉も鎖に付けて海に投げ入れる。これでしばらく待っていたら、大漁だ。
 白に黒、5メートルから50メートルオーバーの巨大魚がガンガン寄って来たので、活け締め。【青龍】で氷を張って、生き残りは皆で協力して倒す。

 この日は白い珊瑚礁の主を一匹倒し、トローリングを二回だけ行い、就寝と……

「こやつ、妾が戦闘機に乗ったら嬉しそうに喋りまくっておったぞ。コ~ンコンコン」
「「シラタマ(殿~)さ~ん!」」

 玉藻がいらん事を言うから、浮気していると受け取ったリータとメイバイが超怖い。玉藻の分身は魔力一割のミニ玉藻なのに、あんな雛人形相手にどうやって浮気するのかさっぱりわからん。

「だって一人は寂しいにゃ~。どっちか一緒に乗ってくれにゃ~」

 しかし、反論しても口で負けるので、寂しいと泣き付いてみたらめっちゃくっちゃ撫でられた。どうやらこれは、戦闘機に乗らない代わりの明日の分らしい……


 翌日も、昨日と同じように白い珊瑚礁はあまり見付からず、主を一匹とトローリングを二度して、和歌山県沖で停泊。ここで一夜を明かそうと食事の準備を始めたところで、オニヒメとイサベレが何か来たと言って来た。
 二人はいつもより焦っている様子も無かったのだが、敵は敵。皆で右舷に移動して、近付く多くの白い背ビレを望遠鏡片手に眺める。

「サメかにゃ~?」
「うむ。背ビレが多いサメは何度か見たから間違いないじゃろう」

 おそらく、20メートルから30メートルのサメが二匹。どちらも白じゃけど、リータ達でいけそうかな?

「じゃあ、小さいほうはリータ達で、大きいほうは玉藻とご老公って事でいいかにゃ?」
「くっ……今回は、わらわの出番は無しか」
「ポンポコポン。運がいいのう」
「もうメシ時にゃんだから、一緒にやれにゃ~」

 リータ達は普通に頷いてくれたが、玉藻と家康は順番があるらしく、わしのお願いは聞いてくれない。なので、ため息を吐きながら【青龍】を撃とうとしたのだが、白サメが跳ねたところでキャンセルした。

「おい! もうそこまで来てるぞ!!」
「何をしておるんじゃ!!」

 すると、玉藻と家康に怒鳴られてしまった。

「ちょ、ちょっと、今回はわしに任せてくれないかにゃ?」
「シラタマさんが譲ってくれるって言ったじゃないですか~」
「私も戦いたいニャー」
「お願いにゃ~。試したい事があるだけにゃ~」

 リータとメイバイもやる気満々であったが、試したい事が終わったらすぐに交代する事でなんとか納得してもらった。


 さてと……上手くいってくれよ~? 【土の輪】!!

 わしは一番先頭に立ち、巨大な輪を複数作って空中に浮かせ、先ほど海面から飛び跳ねた白サメ二匹の動きを予想して、進行方向に土の輪を何個も配置する。

 来た!

 白サメは土の輪を空中でくぐってから海に潜る。そこからは、進行方向をエリザベスキャット号から離れるように土の輪を何個も空中に配置したら、白サメは何故かその誘導に従うように次々とくぐり抜けた。

「「おお~」」
「「「「「うわ~」」」」」

 その光景に、皆は感嘆の声を出し、拍手までしている。

「次はこれにゃ~!」

 空中に二つの大きな土の玉を浮かせると、白サメは大ジャンプ! 鼻で玉にタッチし、ドボンと落ちて、わし達は海水を浴びる事となった。

「「「「「あはははは」」」」」

 それでも楽しかったのか、皆は戦闘を忘れて笑っている。

 何故、わしが白サメでイルカショーをしているかというと、白い巨大魚はサメではなくて、イルカだったからだ。向かって来る途中で飛び跳ねたので、イルカと気付いたわしは殺したくないから皆を止めたのだ。
 ただ、どうやって扱っていいかわからなかったので、土の輪をくぐらせてみたら興味を持ってくれた。そこからは、自分の意思で土の輪をくぐっていたから楽しんでくれたようだ。

「よくできたにゃ~。これでも食えにゃ~」

 白イルカが海面から顔を出すと、わしは白サメの肉をポイポイ投げる。予想通りエサに食い付いたので、皆にも餌付け体験をさせてみた。

「それで……そちはいったい何をしたいんじゃ?」
「かわいいから仲間に出来ないかにゃ~っと……」
「戦わんのか!?」

 玉藻の質問に、ぬるい事をわしが言ったら怒鳴られた。さらに家康まで反対のようだ。

「餌付けまでしたら、情が移るじゃろうが。さっさとヤルぞ」
「え~! 情が移ったにゃら殺さなくていいにゃ~」
「まだ大丈夫じゃ」

 二人はどうしても折れてくれないので、餌付けしているリータとメイバイとイサベレにも意見を聞いてみる。

「みんにゃはどう思うにゃ?」
「そうですね……あまり好戦的じゃないみたいだし、大丈夫かと……」
「シユウみたいだから、私も仲間に入れるのは賛成ニャー!」
「ん。危険は無さそう」

 多数決はわし達の勝ちだろうが、それでも玉藻と家康は納得していない。近海に、こんな巨大なイルカが居ると危険があると思っているのだろう。なので、メリットを説明する。

「こいつらを飼い慣らせば、勝手に魚を減らしてくれると思わにゃい?」
「ふむ……たしかに楽になりそうじゃな」
「しかし、どうやって飼い慣らすんじゃ? 魚には他心通は繋がらないじゃろう」
「にゃ? イルカは魚じゃないにゃ~」
「は? 海で暮らしているんじゃから、魚じゃろ??」
「違うにゃ~。哺乳類にゃ~」
「どこが哺乳類なんじゃ。泳いでいるんじゃから魚類に決まっておる」

 わしがどう言っても二人は信じてくれないので、実際に念話を繋げと言われたから、わしは頑張って白イルカに念話を繋げて話し掛ける。

「ちょっといいかにゃ?」
「おお!? なんだお前? 俺達と喋れるのか??」

 わしが念話を繋げると、大きいほうの白イルカが顔だけ出して答えてくれた。

「同じようにゃ生き物だからにゃ」
「は? まったく姿形が違うだろう」

 白イルカも、人間に自分が哺乳類に分類されているとは知らないので、玉藻達と反応が一緒。だが、皆にはわしが白イルカと意思疏通できている事が伝わったので、念話を繋ごうと頑張っている。

「まぁその事はいいにゃ。わしの仲間にならにゃい?」
「仲間……俺達は至高の種族。知能の低い貴様らと、仲間になるわけがないだろう!!」

 わしが仲間になれと言うと、白イルカは何故か中二っぽい事を言って、敵意を剥き出しにして来た。これではまた玉藻と家康の標的となってしまいそうなので、わしは隠蔽魔法を解いて威嚇する。

「にゃ~~~ご~~~! 仲間にならにゃいと、食っちまうぞ~~~!!」

 ここまで穏便にしていたわしであったが、結局は脅して、白イルカを無理矢理仲間に引き込もうとするのであったとさ。
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