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第十八章 日ノ本編其の四 釣り大会にゃ~
508 白いサンゴ礁巡りにゃ~
しおりを挟む巨大魚の大群に押し寄せられたわし達であったが、難無く倒し、掃討戦に移行する。リータ達の事は玉藻に任せ、わしは氷を増やしつつ、家康の戦闘区域に入った。
リータ達は20メートルの白いシャコじゃったけど、ご老公は30メートルのブリってところかな? 六倍も大きさが違うのに、殴り倒しているっぽいな。
わしが見守る中、家康は鈍器となった五本の尻尾を何度も白ブリの顔にぶつけている最中であった。その攻撃で目は潰れ、氷に倒れる事になった白ブリ。そこに家康は飛び乗り、エラをこじ開けて【咆哮】を放つ。
おそらく、海中にまで貫通しただろうが、家康は角度を変えてもう一発放っていた。
「もういいかにゃ?」
家康も玉藻と同じく、決着がついても白ブリの反撃を警戒して見続けていたので、声を掛ける。いきなり【青龍】を放って玉藻を怒らせた事を覚えているとは、わしは出来る猫だ。
「シラタマ王か……見ての通り虫の息じゃが、まだ何かして来る可能性はある」
「死ぬのを待つのも時間の無駄にゃろ? わしが凍らせてしまっていいかにゃ?」
「ふむ……もう楽しめそうにないか。任せる」
「それじゃあその辺の魚にでも、トドメを刺しておいてくれにゃ~」
家康が掃討戦を繰り広げる中、わしは【青龍】を落とし、白ブリを完全に凍らせてしまう。それから辺りの海を凍らせて氷を分厚くすると、リータ達の元へ家康と戻り、やんややんやと応援する。
「がんばれにゃ~」
「そこじゃ!」
「何をやっておるんじゃ」
わし達に見られるリータ達は、少しやりにくそうにしている。そもそもリータ達の相手は、20メートルと小さいほうではあるが、シャコなので防御力が高い。尾が三本、鎌のような捕脚が四本と多いので、リータ達より各上の相手。
さらには地上でも戦える体をしているので、魚を相手にするより、かなりやりにくい相手となっているのだ。
リータは、凄まじい速さのシャコパンチを侍の勘を使ってなんとか盾で防いでいるが、鎖での拘束は難しく、そのせいで皆の攻撃が乗り切れない。
メイバイとコリスは、両サイドから前に出ようとするが、シャコパンチが飛んで来るのでなかなか懐に入れず、【鎌鼬】を放って様子見。
オニヒメも【千羽鶴】で攻撃を加えるが、硬い外郭に阻まれる。それならば、隙間に入れようと狙っているのだが、素早く動く白シャコに狙いを外される。
ややリータ達が押しているように見えるが、時間を掛けるほどリータ達のスタミナが削られて行く。
「危うくはないが、時間を掛け過ぎじゃろう」
「ここは手助けする場面じゃな」
「う~ん……だにゃ。そろそろお腹がすいて来たし、二人で倒しちゃってくれにゃ」
「「じゃ~んけん、ぽん!」」
「二人でって言ってるにゃろ~」
玉藻と家康はどうしても一人で戦いたいらしく、数回のあいこの末、玉藻が突っ込んで行った。
「ここまでじゃ。妾が代わるぞ」
「はぁはぁ……申し訳ありません」
巨大キツネ玉藻がリータの前に出ると、疲れからかリータは素直に引き下がる。リータは皆に声を掛け、全員を下がらせると、わしの元へ掛け寄って来た。
「シラタマさ~ん。ダメでした~」
「ちょっと火力が足りなかったにゃ~」
「小さいからいけると思ってたニャー」
「まぁ普通の魚だったら倒せたんだろうけど、カマキリみたいな奴にゃからにゃ~」
「モフモフ~。おなかがすいて力がでないよ~」
「ほい。これでもつまんでおいてにゃ。オニヒメもお食べにゃ~」
「うん!」
リータとメイバイは肩を落としていたので慰めいたら、コリスはアンパンを欲しがる少年のよう事を言い出したので、高級串焼きを支給する。するとオニヒメも指をくわえて見ていたので、数本渡して頭を撫でる。
そうしていたら、玉藻の戦闘はとっくに始まっており、わし達はモグモグ食べながら観戦する。
玉藻はシャコパンチの速さに戸惑っていたが、すぐに慣れて尻尾で掴む。そこからどうするのかと見ていたら、関節を逆方向に向けての投げ。氷に叩き付け、その投げで鎌を一本へし折った。
それでも白シャコは、残りの鎌でシャコパンチを連続で放つので、玉藻は掻い潜り、懐に入っては鎌を掴んでサブミッション投げ。それを繰り返し、四本の鎌をへし折った。
これで攻撃力は、ほぼ奪った。あとはどう料理するかだ。
白シャコも【水鉄砲】を使えるようだが、玉藻には届かず。それよりも強い【咆哮】で押し込み、それどころか白シャコの顔までもを呑み込んだ。
白シャコは防御力が高いからなんとか耐えたが、それでもダメージは大きく、頭がぐらぐらとなる。白シャコが見失っている内に玉藻は後ろに回り込んで、爪で頭を切断して決着となるのであった。
「さてと、船に戻ってごはんにしょうにゃ~」
大勝利に浮かれるわけでなく、わし達はエリザベスキャット号の甲板にてランチ。リータとメイバイの反省会に助言しながらモグモグ食べる。
そうしてデザートを終えて食後のコーヒーを飲みながら、今後の話を、玉藻と家康とする。
「かなりの数の大物が釣れたのう。どうやって呼び寄せたのじゃ?」
「たぶん血に寄って来たと思うにゃ」
「これを数度繰り返せば、北海(日本海)は漁業が出来そうじゃな」
「そうにゃろうけど、全然進んでないにゃ~。これでいいにゃ?」
「たしかにこれほど多く居ると、京まで何日かかるか……妾もそれほど長く時間を取れんな」
「神職の者にも、長くて一週間と言ったしのう……大群を相手するのは厳しいか」
わしの質問から、玉藻と家康は期間を擦り合わせ始めたので、わしも何か案が無いかと考える。
要は、デカイ魚の数を減らせばいいんじゃろ? この方法なら確実に減らせるじゃろうけど、わしの魔力の消費も激しい。たぶん玉藻達も疲れが溜まるじゃろうし、リータ達の疲弊も心配じゃ。
何かいい案は……そう言えば、主の居なくなった縄張りってどうなるんじゃったっけ? たしか森でわしが倒した時に、しばらく経って見に行ったら縄張り争いが起こっていたか。
それにこんな魔力が豊富な縄張りならば、熾烈な縄張り争いが起こって、巨大魚の数が減るかもしれんな。それを何度か繰り返せば、日本海の安寧に繋がるかも?
「こういうのはどうかにゃ?」
わしが先ほど考えた案を説明すると、玉藻と家康は難しい顔をしながら話し合う。
「つまり、縄張り争いを人の手で起こすのか……」
「たしかに戦国の世でも、同じ土地で戦が起これば、誰もが疲弊しておったな」
「そこを妾達が摘み取れば……」
「魚は徐々に弱体化していく……」
「「うむ!」」
玉藻と家康は同時に頷き、わしを見る。
「さすがシラタマじゃ!」
「これで漁業が楽になるぞ!」
「褒めるのはいいんにゃけど、わしの参加は今回だけにしてくれにゃ~?」
「「………」」
「『うん』と言ってくれにゃ~」
それ以降、二人はわしと目を合わせてくれなくなったが、方針は決まっていたので休憩は終わり。手分けして氷を砕き、活け締めにした魚は次元倉庫に入れたら出発する。
エリザベスキャット号は南に舵を取り、わしとメイバイは戦闘機に乗って白いサンゴ礁までのナビ。
途中、大きな魚が寄ってくれば、黒ならばリータ達が相手をし、白ならば玉藻か家康が相手をする。
危険が迫れば、オニヒメがリータ達に報告をしてくれるので、早くに発見できるから、エリザベスキャット号では持て囃されているようだ。
そうして白いサンゴ礁にエリザベスキャット号が近付くと、戦闘機を着陸させてから侵入。わしがガンガン【青龍】を撃ち込んで、100メートル近くある白い巨大魚と海を凍らせる。
もちろんこんな攻撃では死なないので、玉藻と家康にバトンタッチ。二人がかりならなんとか渡り合えるのだが、決め手に掛けるようなので、わしもアシスト。
白い巨大魚の【水鉄砲】はわしが出だしに【大風玉】をぶつけて潰し、【御雷】を撃ち込んで感電させる。
わしのおかげで、わしのおかげで攻撃に集中できるようになった二人は両サイドに分かれ、エラを狙って集中砲火。
玉藻は【五芒星の術】なる、風、火、水、氷、雷の五属性を同時に発射。その一撃で大爆発を引き起こし、エラがあった場所は吹き飛んだ。
これで虫の息となったので、家康もエラをこじ開けて【咆哮】連打。玉藻のように一撃とは言えないが、四発の【咆哮】でエラを焼き切った。
それから場所を移動するのだが、これ以降、誰も戦闘機に乗ってくれなくなった……。戦闘機に乗っていると、戦えないから嫌なんだって。
なのでひとり寂しく戦闘機でナビし、二ヶ所の白いサンゴ礁に鎮座していた白い巨大魚を倒したわし達は、最後の白いサンゴ礁でディナーとお風呂。明日の航路を確認し、巨大キツネと巨大タヌキの毛皮に包まれてモフモフ眠るのであった。
翌朝も、朝から巨大魚ハント。ひとり寂しくわしが空から白いサンゴ礁を見付け、乗り込んだら協力してタコ殴り。リータ達は参加できないが、航行中に現れる白い魚を玉藻達が譲ってくれているから、不満はないようだ。
まぁ玉藻達も連戦の疲れがあり、無駄に消耗しないで済んで、感謝の言葉を送っていたから不満はないようだ。
ただ、わしはひとり寂しく戦闘機に乗っていたので、そのやり取りを見ていない。少し寂しいが、きっちり空からの報告を入れながら、通信魔道具でぺちゃくちゃお喋り。
ブチッ!
切られてしまったので、独り言をブツブツ。そこで、レコードを持っていたのを思い出したので気分転換に歌を入れて聞いてみる遊びをしていたが、元の歌詞に必ず「にゃ」が入るから、聞いてみたら微妙だ。
そんな遊びをしていたら、通信魔道具が繋がったままの時があったらしく、皆はわしの鼻歌が染み込んでいたようだ。
「「「「上を向ういて、あ~るこうにゃ。にゃみだが~こぼれ~にゃいよおおおに♪」」」」
今までで一番大きな白いサンゴ礁を見付けたわしは、歌う皆に出迎えられた。
「いい歌じゃな!」
「うむ。哀愁が漂うが、前向きになれる」
玉藻と家康は絶賛。
「英語版はないのですか?」
「いい歌詞なのに、なんで日本語なんニャー?」
リータとメイバイは、玉藻達に通訳してもらったようで、英語にして歌えと言って来る始末。
「「「「でも、『にゃ』がよけい……」」」」
「だって猫だにゃ~~~!!」
やはり皆も「にゃ」が気になって、歌詞が微妙に入って来なかったようだ。
それからエンドレスで歌っていた理由を聞かれたので、その件は夜にでもと言いながらエリザベスキャット号は直進し、白いサンゴ礁に侵入した。
すると、いつも通り海が盛り上がり、主である白い巨大魚が出て来る。
「このとぼけた顔は……フグか?」
「うむ。フグじゃな」
100メートルオーバーで丸い体と丸い唇を見た玉藻と家康は、フグと断定して話し合う。
「そんじゃ、ちゃっちゃとやりにゃすか。【青龍乱舞】にゃ~」
喋っていても時間の無駄なので、わしは四匹の氷の龍を召喚して海に落とし、足場を作ったついでに白フグを凍らせようとする。
しかし、その攻撃で白フグは怒ったのか、顔を赤くして分厚い氷を楽々と砕いた。
「フ、フグじゃないにゃ! ハリセンボンにゃ~~~!!」
そう。丸い魚の正体はフグ目ではあるが、体表に多数のトゲを持つハリセンボン。
白ハリセンボンはみるみる膨らんで、トゲを立たせていが栗のようになり、わしの作った氷は全て砕かれてしまうのであった。
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