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第十二章 王様編其の三 猫の国の発展にゃ~
331 ゴルフの勝敗にゃ~
しおりを挟む一番ホールを終えて、トップは女王と西の王。一打プラスで、わしと南の王となった。
二番ホールはショートホールだったが、皆は肩に力が入ったせいで、多く叩く事となる。
各国の王は短い距離だとナメてかかり、さっきより欲をかいて変な力が入ってしまい、ダブルボギー、トリプルボギーとなって、わしは宥める事に精を出す。
その甲斐あって、三番ホールはパーの者も出て、最終の四番ホール。グリーン上の戦いとなった。
「さて、このグリーン上で勝敗が決しますにゃ。現在トップは、西の王と女王ですにゃ。プラス一打でわし。二打で南の王ですにゃ。南の王は、その長いパットを沈めないと、トップを取るには厳しいですにゃ~」
「うっ……わかっている。見てろよ!」
南の王は緊張しながらパットを握り、数度素振りしてから、ボールを転がす。ボールは真っ直ぐカップに向かったが、強すぎてカップに弾かれ、2メートルほど距離が離れてしまった。
「あ~!!」
「残念ですにゃ。まぁ、まだ皆の結果いかんでチャンスはありにゃすんで、マークしてくださいにゃ」
「うぅ。わかった」
南の王は、わしの渡した銅貨をボールと入れ替えると、次の女王が準備する。
「それを入れたら、西の王にプレッシャーを与えられるにゃ~」
「言わないで。そのセリフが私にプレッシャーなのよ」
「あ、ごめんにゃ~」
「ふぅ……行くわ」
皆が見つめる中、女王は深呼吸してパターを振る。ボールはカップの右に進むが、カーブし、吸い込まれるようにカップに向かう。
「ああ! もうちょっと!!」
「おしかったにゃ~。ちょっと弱気だったにゃ~」
「くぅ~~~!」
女王は悔しそうに、10センチほど残った距離のボールをカップに入れる。
「では、西の王。頑張ってくださいにゃ~」
「おう!」
西の王は緊張はしているが、いい緊張感を持ってパターを振る。ボールは右に左にクネクネと動き、カップに向かって行く。
「来い!!」
西の王はスピードの落ちるボールに、命令するかのように気合いの声を掛ける。
「「「あ!!」」」
「よ~し!」
カップ手前で止まりかけたボールは、西の王の気合いの声に押されたのか、カッコーンっと落ちる事となった。
「おめでとうですにゃ~」
「フッ。これで余の一位は決まったようなものじゃな」
「いえいえ。わしがこのバーディーパットを決めれば、同率一位ですにゃ。プレーオフ……もういちホール付き合ってもらいますにゃ~」
「ハハハ。このような楽しいゲームなら、それもありじゃな」
「次のホールで、わしに大差で負けても知らないですにゃ~」
「ぬかせ。そんな戯言は、パットを決めてから言うのだな。ハハハ」
「にゃはは。やってやりますにゃ~」
わしは西の王の挑発に応えると、慎重に芝を読み、素振りで距離を測って深呼吸する。そして、皆の見守る中、パターを振るった。
「にゃ……」
「わははは。余の勝利じゃ~!!」
残念ながら、ボールはカップからボール一個分横に逸れ、止まる事となった。
「にゃ~! もうちょっと左に打てばよかったにゃ~!!」
わしは悔しがり、ボールをカップに入れる。勝敗は決まったので、多少距離は離れていたが、南の王にはもう打たなくていいと言ったが、最後までやりたいと言うので好きにさせる。
南の王もなんとか一発で決めて、わし達は拍手でプレーを終える。そして、とある建物が見える場所でお茶休憩。何も無い場所だったので、日差しから守れるガゼボを作ってあげた。
そこで後続が来るまで、スコアブックを見ながらプレー内容をにこやかに喋っていると、後続も皆、グリーンに乗せた。なので、グリーン近くまで移動しながらワンヂェンに連絡を入れ、後続の終了を見守る。
小国の王逹は、わし逹に見られて緊張したのか、パットを外す者が続出。それでもなんとかプレーを終え、ホウジツからスコアブックを受け取る。
「あにゃ? 接戦だけど、うちと違ってボロボロだにゃ。トータルスコアでも、西の王様が優勝にゃ~」
わしの結果発表の声で、皆は拍手を送り、西の王はまんざらではない顔をしていた。
それから乗り物が揃うまでの待ち時間、西の王を中心にして、スコアブックを見ながら皆でわいわいと感想を言い合っていた。
各国の王にもお茶を振る舞い、わしも加わって談笑していると、街の方角から毛玉が転がって来た。
「モフモフ~!」
いや、ワンヂェンを背に乗せたコリスだ。コリスを発見したわしは前に出て、毛玉ダイブを受け止めてわしゃわしゃする。
するとコリスはご満悦。だが、一部の者を除いて、各国の王も護衛も、さっきまでのにこやかな顔から引き釣った顔となった。
「あ、すまないにゃ。この子はコリスと言って、わしの妹分にゃ。そちらの護衛の人。危険はないから剣を下ろしてくれにゃ」
動く白い獣を見た皆は警戒を解かないが、西の王はプライドが高いからか、護衛を振り切って前に出て来た。それに続き、南の王も前に出る。
「猫の国では、このような危険な獣を飼っているのか?」
「飼ってるって表現はやめてくださいにゃ。妹分と言いましたにゃろ?」
「あ、ああ。しかし、危険ではないのか?」
「危険にゃわけないですにゃ。あ、ワンヂェン。王様がいるんにゃから、そんにゃ高いところにいたらダメにゃ~」
「降りるタイミングを逃しちゃったにゃ~。失礼しましたにゃ~」
「黒猫……」
コリスショックが強かったせいか、あとからワンヂェンに気付いた王達は、得体の知れないモノの登場で混乱してしまう。
その直後、街の方角からドドドドと足音が聞こえて来た。
「牛の…群れ……?」
西の王は牛の群れを見て小さく呟く。そして、遠近感覚が狂う白いモノがノシノシと歩く姿を見て、目をカッと見開く。
「ああ。アレは猫の街の農業従事者ですにゃ」
「嘘じゃろ……」
「他の国でも、牛が畑を耕したりしてますにゃろ?」
「耕す事は耕すが……」
15メートルはある巨大白牛シユウの登場で、皆、固まり、言葉を失う。牛の群れがわし逹に近付くにつれて、各国の王は後退り、しだいに走り出そうとする。
「動くにゃ! 動いたら白牛に殺されるにゃ!!」
わしの声を聞いた王逹は、駆け出すのをやめ、ジリジリと護衛に囲まれて青い顔をする。
皆が動かなくなった事を確認して、わしは牛の群れの誘導をしながらシユウに念話で話し掛ける。
「お疲れさん。予定通り仕事は終わったんじゃな」
「ああ。と言っても、俺は見ているだけだったがな」
「まぁお前のお陰で、わしの巣は守られているから助かっている。明日、ボーナスを払ってやるぞ」
「ボーナス?」
「ドーナツを持って行かせるから、楽しみに待ってろ」
「おお! それは助かる。モォ~~~!」
「「「「「モォ~~~!」」」」」
シユウの嬉しそうな声に呼応し、その他の牛も嬉しそうな声を出す。すると、各国の王は焦りの顔を見せるので、シユウ達には静かにするように言って、唯一近くにある建物、牛舎に戻らせる。
そうして手を振って見送っていると、西の王が復活してわしに詰め寄って来た。
「いまのはなんだったのだ!」
「にゃんだったと言われましても……牛ですにゃ」
「あのような巨大な生き物を従わせている事を言っておるのじゃ! どうやったら、そんな事が出来るのじゃ!!」
「簡単にゃ事ですにゃ。わしがぶん殴って仲間にしたんですにゃ」
「殴っただと……」
「さあて、もう日が暮れそうにゃし、帰ってごはんにしましょうにゃ。みんにゃ~。乗り物を回してくれにゃ~」
西の王があっちの世界に行くと、近くまで来ていた電動バスや馬車を呼び寄せ、王逹を積み込む。
最後に、連結したわしのバスに東の国の者を乗せると発進。バスに揺られながら街へと帰る。その車内では、さっちゃんがコリスに包まれて幸せそうな声を出し、女王はガミガミとわしに文句を言う。
「まったく……あんな化け物を連れて来るなら、先に言っておきなさい!」
「敵を欺くには、味方からにゃ~」
「恐怖でへたりこんでしまうところだったわよ!」
「そうだったにゃ? 凛として表情を変えなかったから、怖くないと思っていたにゃ」
「それは、夫から聞いていたからよ。本心は別よ!!」
「コリスが不安にゃ顔をしているから、もう怒らないでにゃ~」
「くっ……この続きは帰ってからにするわ」
まだ続きがあるのか……。今日は女王から距離を取るほうがよさそうじゃな。
「それで、なんであんな事をしたか、真意を教えてくれる?」
「あんにゃ事にゃ?」
「ゴルフよ」
「あ~。楽しかったにゃろ?」
「ええ。久し振りに体を動かして笑ったわ」
「みんにゃも楽しそうに話をしていたから、気が緩んでいたにゃ。そこに、我が国の戦力を見せてやったんにゃ」
「どうしてそんな事を?」
「あんにゃに殺気を放たれたらムカつくにゃ」
「それだけ!?」
「わしに歯向かうと、どうにゃるか見せてやったんにゃ。武力でゴリ押しするにゃら……て、にゃ」
わしの真意を聞いて驚いていた女王は、諦めたような顔に変わった。
「はぁ……十分な成果ね。シラタマだけでも喧嘩したくないのに、あんなモノを見せられたら、友好を崩せないわ」
「にゃははは。まぁいつまでもよろしくにゃ。それにしても、各国の王はみんにゃ同じバスに乗り込んだけど、にゃにを話しているんだろうにゃ~?」
「たしかに……見物だわ。バハードゥ王に、あとから聞かないとね。ウフフフフ」
「にゃはははは」
女王とわしは悪い笑顔を浮かべ、街へと帰るのであった。
* * * * * * * * *
その同時刻……
後方のバスに乗った各国の王は、お通夜のように静まり返っていた。しばらく静寂が包んでいたが、西の王が口を開き、南の王が応える。
「猫の国とは、あのような化け物を子飼いにしておるのか……」
「白い獣を二匹……いや、王を含めて三匹とは……我々は、大変な国を相手にしているのかもしれない」
「一匹だけでも、国が滅ぶレベルじゃぞ? どうやったら、それほどの戦力が集まるのじゃ……バハードゥ王! 何か心当たりはないか!!」
バハードゥは黙って二人の会話を聞いていたが、西の王に名指しで声を掛けられ、恐縮しながら返答する。
「シラタマ王はお強いですから、単体で白い獣と渡り合えるのです」
「あの猫は、そんなに強いのか?」
「はい。東の国の誕生際で、巨大な象を出された事は知りませんか?」
「息子が見たと言っていたが……」
「我が国を襲った災害で、それを一人で倒したのがシラタマ王です。私はその時、死を覚悟しておりました」
「本当か!? 山のように大きいと聞いたぞ? それを、あんなに小さな猫が一匹でだと?」
「この情報は、私が操作して出さないようにしていたので、耳に入らなかったのでしょう」
「事実なのか……」
当事者のバハードゥからシラタマの強さを聞き、王逹はまた静まり返る。すると、南の王がボソッと声を出す。
「このまま、力業で押してもいいのだろうか……」
南の王の発言で、小国の王は不安な顔をして西の王を見る。
「たしかに、我々の国が結束したところで軍事力では通じないじゃろう……」
「では、諦めると言うのですか?」
「い~や。軍事力をチラつかせるのをやめるだけじゃ。あんな猫に、知能で負けるわけがあるまい。それにこちらには、多数決の票があるのだから、決まってしまえば逆らえんじゃろう」
「おお! まだその手が残っていましたな」
「そうじゃ。我々の結束で、キャットトレイン運行権の全てを奪い取ってやろうぞ!」
「「「「「おお!」」」」」
西の王は戦法を変える事に決め、皆を鼓舞して猫の街に戻るのであった。
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