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第十一章 王様編其の二 外遊にゃ~

315 マスコットのお出掛けにゃ~

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 天孫降臨で猫の国に混乱が生じたが、どうにか落ち着くと、わしは女王に謁見する為に家を出る。
 今回の目的は外交なので、一人で羽を伸ばしてやろうと思っている。

 ガシッ!

 リータとメイバイには笑顔で送り出されたが、コリスとワンヂェンに尻尾を掴まれてしまった。どうやら、一人で遊びに行くと思われたみたいだ。
 転移魔法で行くつもりだったので、ワンヂェンを置いて行こうとしたら、引っ掻かれた。もう一度、王都に行ってみたいんだとか。
 なので、ワンヂェンにはきつく口止めして王都近辺に転移。

 教えても使えないよ? そんなに「にゃ~にゃ~」言うなら、もう連れて来ないよ?

 転移魔法を見たワンヂェンはうるさかったので、少し脅して王都の門兵に挨拶する。いつもの半分男に馬車に乗って行けと言われたが、なんとなく断って門を潜った。
 もちろん、マスコット三匹の登場で騒ぎが起きるが、気にせず大通りを練り歩く。

 どれが好み? 抱き心地で決めたい? お触り禁止です。
 どれが一番高値で取引されるか? 黒猫は安い? ワンヂェンが悲しむから、売らないでください。
 抱きつきたい? みんなで抱きついたら怖くない? 元々怖くないので、赤信号みたいに言わないでください。

 王都の住人の声を聞きながら歩いていたが、妖しく目を輝かせる婦女子に危険を感じ、わし達はダッシュで城に向かう。
 城ではアポイントを取っていたので、女王の待つ執務室に直行。コリスとワンヂェンはさっちゃんに預け、城の案内をしてもらうので、わしだけ女王に文句を言われる。

「まったく……馬車を用意していたのに、なんで使わないのよ」
「まぁまぁ。普通に歩いていたら、街の者も慣れるにゃろ? わしの時もそうだったにゃ~」
「そうだけどね~……」
「それより、本題に入ろうにゃ」
「……わかったわ」

 とりあえず話を変え、説教を早めに打ち切って、お茶を飲みながら話し合う。

「にゃにから話そうかにゃ?」
「何からも何も、光の件よ。わからないって言っているのに、他国からも問い合わせが多くて困っているのよ」
「この国にも被害が出たにゃ?」
「ええ。急に眩しい光に包まれたかと思ったら夜になって、馬車の事故が多数起きたと聞いているわ」

 夜? あ、山の影に入ったのか。東の国は、高い山が近いからな。しかし、西からの太陽の光さえ打ち消すなんて、さすが神様じゃのう。

「わしの国も、森から獣がわんさか出て来て大変だったにゃ~」
「それは御愁傷様。こっちでは、そこまでの被害がなかっただけマシね」
「それで光の件にゃんだけど、話す前に質問させてくれにゃ」
「ええ。なに?」
「女王は神を信じてるにゃ?」
「神? この国には宗教が無いから、そこまでは……」
「じゃあ、神様が地上に降り立ったと言ったら信じるにゃ?」
「……無理ね。そんなわけ、あるはずがないじゃない」
「そうにゃんだ……」

 双子王女と同じ反応か……。宗教が無いから、信じるのは難しいのかな? 双子王女もわしが神様に会ったと言っても、ぜんぜん信じてくれなかったしな。まぁあんな説明では、わからんのは頷ける。とりあえず、事実だけ説明しておくか。

「いちおう、いま言った事が、光の一件の真相にゃ」
「嘘でしょ?」
「まぁ信じられないにゃら、それらしい嘘でも考えようかにゃ?」
「……本当なの?」
「信じるか信じないかは、女王しだいにゃ~」
「う~ん……もう少し詳しく説明してちょうだい」

 女王のお願いにわしは説明するが、要所要所で言葉が詰まり、上手く説明が出来ない。わしの転生は言う気はないのだが、アカシックレコードや大戦の事になると、言葉が出なくなる。
 リータ達に説明した時は、難しいかと思って言わなかったが、双子王女に詳しく説明しようとしたら、同じ現象が起きた。
 おそらく、スサノオが喋っていい内容を調整していると思われる。そのせいで、しどろもどろに聞こえて信用してもらえない事態になっている。

「だから~。神様が邪魔してるんにゃ~。ゴロゴロ~」
「言い訳が下手ね。何を隠しているのよ!」
「ゴロゴロ~。信じてくれにゃ~」

 結局、女王は信じてくれず、わしが「にゃ~にゃ~」言い続ける事で、諦める事となった。でも、わしの口から危険は無い事は聞けたから、一段落はついたようだ。

「もうそれでいいわよ。これで呼び出した用件は終わったわ。あとは、時間まで撫でるわね!」
「ずっと撫でてたにゃ~。ゴロゴロ~。こっちには、まだ言いたい事があるにゃ~。ゴロゴロ~」
「言いたいこと?」
「賠償金にゃ~。全額、耳を揃えて持って来たにゃ~」

 わしの発言に、現金な女王は撫でる手が止まった。なので、どこに出したらいいかと聞くと、麦の貯蔵庫があるからと案内され、担当者と手の空いている者も集めて、数量の確認をさせている。
 わしも数量の抜けがあってはいけないのでその場に同席し、嘘がないかを確かめ、最終的な麦の量を女王と共に確認する。それが終わると執務室に戻り、話の続きをする。

「これで賠償金は、完済でいいにゃ?」
「……ええ。でも、少し多いわね」
「まぁこれからの友好の為のサービスにゃ」
「そう言う事なら、有り難くもらっておくわ。それにしても、これほどの量の麦を、時期外れにどうやって用意したの?」
「それはトップシークレットにゃ~」

 双子王女には秘密にしているように頼んだけど、本当に秘密にしてくれたんじゃな。意外と口が堅いのか? それとも、食糧難だから見逃してくれたのか?
 まぁ女王に知られていないのだから、話す必要もないな。

「植物の成長が早くなる水を使っているとは聞いてるけどね~」

 バレテーラ。

「にゃ、にゃんで知ってるにゃ?」
「西の村で何かやっていたじゃない? 私が知らないとでも思っていたの?」

 どうやら、女王はとうの昔から知っていたようだ。村長がご丁寧に減税されていた麦を納税し、領主に時期も違うのにどうやって作ったのかを問いただされる。
 しかし、わしが秘密にしてと頼んでいたので、領主と板挟みにあった村長は、猫に聞いてくれと言ったようだ。
 そこから、女王の親友の猫を思い出した領主が、女王に一報を入れたらしい。さすがに村長も、女王の使いには口を割るしかなかったようだ。
 だから双子王女も、わざわざ報告する必要はなかったのだとか。

「村長もバカだにゃ~。黙っていれば、バレにゃかったのににゃ~」
「そうね。言われなければ、誰も気付かなかったわね。でも、そんな事をすれば重罪だったから、言わざるを得なかったのでしょ」
「いんにゃ。あの村長は人が良すぎるにゃ。誰かの恩恵を受けたら、配ってしまうんだと思うにゃ。悪い奴に騙されないといいんにゃけどにゃ~」
「そう……それはそうと、その栄養材?譲ってくれない? 捕虜の支払いにしてくれたらいいわ」
「あ~。あれはもう残りが少ないにゃ。これ以降は、わしも使う気がないからにゃ」
「本当~? まだ持っているんじゃないの~?」
「ゴロゴロ~」

 女王みずからのハニートラップにあったわしは、洗いざらい喋る。実際、巨象の血は残り少ないので、喋ったところで問題ない。さらに、危険性を話すと素直に引いてくれた。

「あの二人に殺され掛けたなんて……」
「わしじゃなかったら、確実に殺されていたにゃ。にゃははは」
「はぁ……よく笑っていられるわね」
「終わった事だしにゃ。もう、うちもめったに使わないし、不作の時にとっておきたいから譲れないにゃ~」
「それなら、その時に売ってもらったほうがいいわね」
「多少は援助してあげるから、先払いで捕虜のおまけしてくれないかにゃ~?」
「無理!」

 チッ……いまの流れなら、ぜったい首を縦に振ると思ったんじゃがな。

「じゃあ、これをプレゼントするから、割引をお願いしにゃす!」

 わしは、次元倉庫から大剣を取り出す。その大剣は、柄まで白魔鉱で出来ており、オンニの大剣とほぼ同じ大きさをしている。

「凄いわね……」
「いい物にゃろ? オンニの持つ国宝にゃんて、目じゃないにゃ」
「たしかに……これ一本で、捕虜百人分に匹敵しそう……」
「にゃ~? でも、これはプレゼントにゃから、割引してくれたらいいにゃ」
「どれぐらい?」
「タダにゃ~!」
「出来るわけないでしょ!!」

 結局、タダにはしてくれなかったが、割引は考えてくれるようだ。話し合いが終わり、女王に撫でられているとお昼が来たので、コリス達と合流して城のメシをゴチになる。

 さっちゃんは艶々つやつやした顔になって、ワンヂェンは逆にゲッソリしていたけど、なんでじゃろう?


 お昼を食べ終わると城をあとにして、キャットランドに向かう。なんでも二人とも、ここが目的だったようだ。
 しかし、笑顔の悪魔達が多くいるので、変身魔法を使って時間制限をするしかない。それに大人が遊んでいるのもおかしいので、ワンヂェンにはヤーイー子供バージョンに変身させる。
 二人はそれで楽しく遊べるが、わしはマスコットのままなので、子供達に取り囲まれてしまった。
 わしが犠牲になっているので、コリス達のコースアウトは助けられない。なので、孤児院の子供数名を二人に張り付かせ、監視をさせる。

 それでも二人は楽しく遊んでいた。コリスは友達がいっぱい出来たように楽しそうだ。ワンヂェンは子供に戻ったように楽しそうだ。わしはぬいぐるみ扱いされて悲しそうだ。

 しばらく子供達の相手をしながらその光景を見ていたが、コリスに限界が来たらしく、ボフンッと元のリスに戻る。その直後、ワンヂェンも元の黒猫に変わり、子供達が固まってしまった。
 わし達は撫でられる前にそそくさと逃げ出し、広場に走る。


 そうして広場で買い食いしていたら、仕事帰りのスティナにからまれた。

「またコリスちゃんを連れ出してるの? 陛下に怒られても知らないわよ」
「もう怒られたから、へっちゃらにゃ~」
「怒られたんだ……相変わらずこりないのね。あ、そうだ。先日の光の正体って、シラタマちゃんが何かしたの?」
「にゃんでわしがした事になってるにゃ?」
「だってあんな事をしでかすのなんて、シラタマちゃんしかいないじゃない」

 いくらなんでも、わしでもあんな光は出せん。買い被り過ぎじゃ。

「わしじゃないにゃ~」
「じゃあ、何があったの? シラタマちゃんが関係してるんでしょ?」
「言っても信じにゃいから、言いたくないにゃ」
「え~! 教えてよ~」
「近いにゃ~」

 スティナはわしに胸を押し付ける。わしは手で押し返すが、胸を揉んでいるみたいに見られてもアレなので、なすがままに受け入れる。

「ギルドマスターとして、知っておきたいのよ~」
「それにゃら女王に報告したから、そっちにいってにゃ~」
「当事者から聞いた情報のほうが確実じゃない? わかったわ。ポケットマネーで買うわ。コリスちゃん。おやつ買ってあげる~」
「ホロッホロッ」
「にゃ!? それはコリスを買収しているだけにゃ~」

 コリスはおやつの言葉に反応し、嬉しそうに屋台に連れられて、串焼き十本を手に持ち、頬袋を膨らませて帰って来た。すでに口の中に入っているモノもあるので、わしは情報を売るしか出来なかった。

「神様と会った?? シラタマちゃん……それは嘘の情報ね。返金しなさい!!」
「だから信じないって言ったんにゃ~~~!」

 スティナは信じてはくれなかったが、コリスが嬉しそうな顔をしていたので、返金は許してくれた。

「今日は泊まって行くのよね~? ふぅ~」
「いえ、帰らせていただきにゃす!」

 その後、エロイお姉さんの誘いを振り切って……いや、仕事を終わらせたわし達は、猫の国に帰るのであった。
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