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第十一章 王様編其の二 外遊にゃ~
307 猫の国に出発にゃ~
しおりを挟む騒がしい祝勝会がお開きになると、バーカリアンにからまれたが軽くあしらい、トーケルにはちゃんと別れの挨拶をする。ノエミとはお別れをしていなかったので、わし達マスコットは最後のモフッと別れの挨拶をした。
そうしてコリス達はさっちゃんに預け、わしは女王の元へ連行される。双子王女の件で話があると聞いたが、膝に乗せて撫で続けるのはやめて欲しい。
それと英雄もやめて欲しい。とりあえず、文句の続きをやんわりとしてみる。
「あの~……称号も勲章も、返却したいんにゃけど……」
「どちらもたいして力のない物だから、貰っておきなさい」
「力がないにゃらなおさらにゃ~」
「じゃあ、大々的に国中に宣伝してあげるわ。それで称号の力を発揮するわよ」
「それは脅しにゃ~」
「だから称号にしたのよ。爵位も嫌がるでしょ? 食べ物じゃ残らないし……」
そもそも王様だから、爵位は貰えないんじゃないのか? いや、貴族なら、他国の爵位を持ってたりするって何かで読んだ事があるな。
王様が爵位を持てば、お忍びで来た時に、それで他国を歩きやすくなるのかな? いや、わしは猫じゃった。猫の国と王都以外、歩きやすくない。
「それにゃら、賠償金を安くしてくれたらよかったんにゃ」
「無理に決まっているでしょ。アレがギリギリなんだから」
まぁ戦争の被害者で出費をしているんだから、女王としても、貴族やなんやとうるさいのじゃろう。
称号も勲章も返せないのなら致し方ない。明日の予定を聞くとしよう。
「双子王女の準備は整ったにゃ?」
「明日には間に合うはずよ」
「そうにゃんだ。連れて行く人数を確認しておきたいんにゃけど」
「人数は……」
女王が言うには、双子王女と、その世話係りに侍女が各一名。護衛の女騎士も各一名。それと、料理人を合わせて五人とのこと。しかし、料理人の選定で悩んでいるらしい。
「それにゃらエミリを雇ったから、使ってくれたらいいにゃ」
「あの子を……エミリなら、二人も満足してくれそうね」
「まぁいまは、食材が乏しいから我慢してもらう事になるだろうけどにゃ」
「あの二人も、それぐらい承知しているわよ。エミリの移住の手続きは、私のほうで手配しておくわ」
「にゃ……移住って、手続きがいるにゃ?」
「どうしたの?」
「実は……」
わしはリータ家族を移住させたい旨を伝えると、こちらも女王が手配してくれる事となった。
わし達はどうしたらいいかを聞いたら、国籍を二重発行していいと言われた。きっとわしを、猫の国だけのモノにしたくないのであろう。
心配事がなくなれば、女王から逃げ出そうとするが止められて、王のオッサンが部屋に入って来ても、まだ撫で回された。
「まだ話があるって言ってるでしょ!」
「撫でまくっていたにゃ~」
「夫が来るのを待っていただけよ!」
「オッサンが、にゃにか関係あるにゃ?」
「貨幣の話よ。作りたいって言っていたでしょ?」
「あ~。忘れていたにゃ」
「まったく……」
どうやら貨幣を作るには、それなりの手続きがいるようだ。
東の国で使われている貨幣は、西の国と南の国、それと東の国で協同管理をしているとのこと。
小国では使われていない所もあるらしく、そういった小国が作りたいとなった場合、三カ国の内、ひとつの国の立ち会いが必要になるらしい。
そのお目付け役として、オッサンと、二人の職人を連れて行かなくてはいけないようだ。
「にゃるほどにゃ~。オッサンは、堂々とスパイしに来るんにゃ」
「調査だ!!」
「品質の酷い物しか作れないのならば、許可は出せないから気を付けなさい」
「テストでもあるんにゃ。金型だけしっかりしているのがあれば、あとは金の使用量だけにゃろ?」
「そうだが、それが一番難しい。酷い国なら、削って小さくしたりするからな。その査察も毎年あるからな」
耳を揃えてってヤツか。江戸時代でも、小判のギザギザを削って売ったりしていたもんな。異世界でも考える事は一緒なんじゃな。
「帰ったら、その辺の法整備もするにゃ~。となると、三人追加かにゃ?」
「いや、イサベレも連れて行くから四人だ」
「わかったにゃ」
話し合いも終わり、ようやく女王の膝から解放されたわしは、双子王女の準備が出来ている荷物だけは受け取る。服だけでなく、高そうな家具一式と馬車もあったから、かなりの大荷物だ。
それらを仕舞ったら、料理長にエミリの件の挨拶に行く。かなり悲しそうな顔をしていたところを見ると、自分の子供のように思っていたみたいだ。なので、必ず立派な料理人にすると言って、その場をあとにする。
城での用事が終わると、さっちゃんの部屋にコリス達を迎えに行く。
リータ達もさっちゃんに慣れていたみたいで、緊張せずに優雅にお茶をしていた。その傍らでは、だらしない顔でコリスを撫でまくるさっちゃんがいたけど……
さっちゃんには、国が落ち着いたら必ず連れて行く事と、出来るだけ遊びに来る事を約束して、今日はお暇する。
家に帰り、アダルトフォーにエミリを連れて行く事を伝えると、かなりガッカリしていた。どうやらわしが居ない間、ちょくちょく呼んでいたみたいだ。
しかし、エミリを連れて行く事は決定事項。孤児院には、エミリの弟子のような者がいっぱい居るんだから、その子で我慢してもらうしかない。
スティナには、また家の管理をお願いし、庭の水撒きに、井戸だけでは孤児院の子供が苦労していたと聞いたので、池を作って水の魔道具も少し足しておく。
そして、しばらく会えなくなるので、最後の撫で回しをアイパーティと共に受ける。昨日、一日中寝ていたからいいものを、いつまでも撫で続けられたから困ったものだ。
翌朝は朝が早かったので、リータ達に叩き起こしてもらえるように頼んでいたけど、本当に叩き起こさなくてもいいと思う。
素っ裸でフレヤと抱き合って何をしていたか? 寝ている時に、脱がされたんじゃ! だから、もう少し優しく起こしてくださ~い!!
二人にスリスリしながら朝の挨拶と準備、ロランスへの連絡を済ませると、わしは王都から出てリータの村に転移。
リータの家族は準備が済んでいたので、持ち物は次元倉庫に入れて、家族は飛行機に積み込む。離陸すると、もちろんうるさい。
「ギャーギャー」うるさい家族を宥めながら王都近辺に着陸すると、ここで待っているように強く言う。王のオッサンと双子王女が乗り込む旨を伝えたら、さすがに静かになった。
それから走って家に帰るとエミリも合流していたので、アダルトフォーとアイ達に別れを告げてバスを走らせる。しかし、先導の騎士が居なかったので、道を塞がれてしまった。
どうしたモノかと考えていたら、待ち合わせの東門に向かっていたオッサン達が登場。ガミガミ怒られたが、オッサン達のおかげで無事王都を脱出する事が出来た。
東門からは全員バスに乗せて発進。バスには猫の国組しか乗っていなかったので、十人増えたぐらいならなんとかなる。オッサン達が我慢すればいいだけだ。
飛行機で待たせていたリータ家族は、王族登場で固まっていたので、ダメージが少ない後部座席に指定してあげた。
コリスが真後ろにいるけど、大丈夫かな? リータ兄弟がモフッとしているから大丈夫か。
例の如く、前列は王族で独占しやがったけど、離陸するとオッサンが「ギャーギャー」うるさい。だが、双子王女の「情けない……」のシンクロ攻撃で、黙る事になっていた。
その後、空の移動はローザの街に着いたら終了。時間短縮で、街の目の前で降りてやった。そこで全員降ろしていると、ローザとロランスの乗った馬車がやって来た。
二人は慌てて馬車から降りると、オッサンと双子王女に挨拶をしてから、わしに声を掛ける。
「もう! 王殿下が来るのなら、もっと早く連絡してよね!!」
「本当です。食事の手配が間に合いませんでした」
「すまないにゃ。昨日の夜はいろいろあって、すっかり忘れていたんにゃ。だから、昼食はわしのほうで適当に出すから気にするにゃ。それより、猫耳族を……にゃ?」
わしがロランス達と話していると、女の子に抱きつかれた。
「ねこさ~ん」
「フェリシーちゃん、久し振りだにゃ~。それにリスさん?も久し振りにゃ~」
「モフモフ~」
「ええ。久し振り」
「長く話していたいんにゃけど、ちょっと忙しいにゃ。コリスとワンヂェンを貸してあげるから、遊んでもらってにゃ~」
と、二人に言ってみたら、ローザもコリスと遊びたいようなので、ワンヂェンに頼む。そして、キッチンとテーブルを取り出して、料理をエミリとリータ達に頼み、王族はテーブルに待機させる。
それからロランスさんと街の門に向かい、ズーウェイと合流。捕虜だった猫耳族は、全員、門のそばに待機していたので連れ出し、焼き魚パーティーにご案内。
予想通り猫になってしまったので、「ニャーニャー」うるさくなってしまった。人手が足りないので猫のままのズーウェイに、自分達で料理しろと言って、リータとメイバイを送り込む。見本があれば、なんとかなるだろう。
王族達には、白タコの触手の串焼きを食べさせてやれば、手抜きでも問題ない。超高級食材なんだから、うまいの一言しか聞こえなかった。
ようやく手の空いたわしは、串焼きを片手にコリスを餌付けしているフェリシーちゃん達の元へ行く。そこで聞いた話では、どうやらフェリシーちゃんは、ローザから連絡を受けて、わしに会いに来てくれたようだ。
「フェリシーちゃん。あげてばっかりいにゃいで、ちゃんと食べようにゃ」
「うぅぅ」
「コリスは自分で食べられるから大丈夫にゃ」
「わかった~。パクッ! おいし~い」
「にゃはは。それはよかったにゃ」
フェリシーちゃんの処理が終わると、わしはリスさんの格好をツッコム。
「今日は毛皮がないんだにゃ」
「まぁ騎士になって、畏まった場所に行く事が多くなったから、脱ぐしかなかったのよ」
「そっちのほうが、断然いいにゃ~」
「そ、そうかな?」
「にゃ~? フェリシーちゃん?」
「う~ん……どっちもすき~」
「フェリシー様……」
リスさんは感動しているっぽいけど、なんでじゃ? ここは着ぐるみを脱いで、紫色のロングヘアーをなびかせているほうを褒めるべきだと思うんじゃが……
まぁリスの着ぐるみ好きのフェリシーちゃんらしい答えじゃな。いまもリスさんの、二本の尻尾をニギニギしておるしな。これは攻撃手段じゃから、外す事は出来んのか。
あ、そうじゃ。サービスで、それも見せてやるかのう。それに、フレヤの作った服の性能もみたいしな。
わしはコリスに、変身魔法を使ってくれるように頼む。わしのお願いを聞いたコリスは、ふたつ返事でリス耳と二本の尻尾が付いたさっちゃん2の姿に変わった。
「わあ! リスさんみた~い」
フェリシーがコリスの尻尾をニギニギする中、リスは驚きながらもわしに質問する。
「本当……コリス様も、私と同じ戦い方をするの?」
「だいたいそうかにゃ? でも、桁違いに強いにゃ」
「そうよね。キョリス様の娘だもんね」
これで、無理に着ぐるみを着なくとも、敬愛するキョリスをマネている事になるじゃろう。
しかし、フレヤの服は聞いていた通り、サイズが変わっても着れるんじゃな。リス型の時は前掛けのように見えたが、さっちゃん2になるとワンピースになるのか。
でも、ゴムではないから、首元の紐を調整しないといけないんじゃな。いまはワンヂェンが整えてくれたけど、コリス一人でも出来るようにしておかないとな。
こうして、予期せぬ懐かしい人達との話が終わると、わしは王族とロランスの集まる場所へと戻るのであった。
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