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第十一章 王様編其の二 外遊にゃ~

294 東の国で観光にゃ~

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 友好条約が締結された翌朝、女王とさっちゃんのモフモフロックから抜け出そうとモソモソ頑張っていたら、二人とも目を覚まして、わしゃわしゃされた。
 その後、朝食をゴチになり、さっちゃんの準備を待つのは面倒だったので、キャットランドで待ち合わせをして我が家に帰る。

 我が家ではもちろん、リータとメイバイに朝帰りを怒られ、アイ達にもコソコソと言われて散々な目にあう。
 だが、コリスとワンヂェンに面白い所に遊びに行こうと提案したら、味方になってくれた。マスコット連合でモフモフ攻撃をすれば、皆、幸せそうな顔になる。

 そうこう遊んでいたら、騎士が操る馬車が到着したので、マスコットとリータ、メイバイ、エミリが馬車に乗り込み、キャットランドに向かう。
 ちなみにアイパーティも来たがったが、馬車は満杯なので、歩いて合流する事となった。


 馬車の中ではコリスとワンヂェンが目を輝かせ、車窓から街並みを眺めている。どうやら初日は、人の多さに驚いてあまり見ていなかったようだ。昨日も雨が降り出しだので、出掛けるのは断念したとのこと。
 コリスは興味本位で見ているだけだが、ワンヂェンは「にゃ~にゃ~」質問して来るからうるさい。

「にゃあにゃあ?」
「今度はなんにゃ?」
「この馬車にもすれ違った馬車にも、シラタマが付いていたけど、どうしてにゃ?」
「知らないにゃ~」

 わしは猫関係は全てとぼけるが、リータとメイバイが答えている。

「あれはキャットシリーズって馬車で、揺れが少ないんですよ」
「あ! たしかに揺れないにゃ~。でも、キャットシリーズって……にゃははは」
「笑うにゃ~!」
「じゃあ、シラタマを抱いている子供がいるんにゃけど、アレはどうしてにゃ?」
「あれはシラタマ殿のぬいぐるみニャー」
「シラタマが増殖してるにゃ~! にゃははは」
「だから笑うにゃ~!!」
「猫の国より、猫の国だにゃ~。にゃはははは」
「リータ~、メイバ~イ。ワンヂェンがイジメるにゃ~」

 ワンヂェンは、わしの触れて欲しくないところを、傷をえぐるように質問しては笑う。リータとメイバイに泣き付いてみたが、泣いている理由がわからないようだ。
 こんなにいっぱいわしが居ることが、誇らしいんだとか……。いい加減、恥ずかしいって事をわかって欲しい。

 わしの味方はコリスだけなので、埋もれて姿を隠していたら、孤児院に隣接するキャットランドに到着した。
 馬車から皆で降りると、コリスとワンヂェンが目を輝かせてうるさい。

「モフモフ~~~!」
「シラタマがいっぱい居るにゃ~!」
「あれなに~?」
「にゃはは。シラタマだらけにゃ~」
「ワンヂェンはここで待機にゃ! コリス。行くにゃ~」
「うん!」
「あ! 待ってにゃ~」

 わしがコリスの手を引いて走り出すと、ワンヂェンは追い掛けて来る。リータ達は空気を読んで、院長のババアに挨拶に行ってくれたようだ。

 一番の目玉の大型滑り台まで着くと、問題が発生。コリスがデカ過ぎて、階段に挟まった。なので、変身魔法でさっちゃん2に変身させ、コリス専用ワンピースを着せて上まで登る。
 そして、コリスと一緒に滑るとワンヂェンも続き、長い滑り台を一周した頃に、さっちゃんと愉快な仲間達と、その他が到着した。


 さっちゃん達も滑り台を楽しむが、勢いをつけて滑るのはやめて欲しい。コリスまでマネして、コースアウトしてしまった。
 そのせいで、わしは下からの監視員になる。どうせ止めてもコースアウトするのなら、下から風魔法で受け止めたほうが効率がいい。

 至る所から飛び出る皆を受け止めていると、コリスに限界が来る。ちょうど大型滑り台の中腹で変身が解けたものだから服は破れ、滑り台に挟まり、次々とコリスにモフッとぶつかって止まった。
 なので、わしは監視員からレスキュー隊員になって、一人ずつ下に落として風魔法で受け止める。最後のコリスは、土魔法で滑り台を広げてから、下に落として救出した。

 皆の救出が終わるとお昼も近付いていたので、休憩を言い渡す。リータ達がエミリに頼んでいてくれたようなので、フードコーナーに行くと、ハンバーガーが用意されていた。

 皆の食事が始まるれば、わしはようやく一息つける。

「リータ、メイバイ。ありがとにゃ~」
「いえ。こうなると思っていたので大丈夫です」
「エミリも休日なのに、料理してくれてありがとゃ~」
「久し振りに猫さんに食べてもらえて、わたしも嬉しいです!」

 皆に感謝の言葉を掛けると、気になる人物にも声を掛ける。

「双子王女まで来たんにゃ……」
「「何か問題でも?」」
「いんにゃ。子供達の遊び場だから、物足りないかと思っただけにゃ」
「そんな事ないわ。楽しんでいますわよ」
「あちらの方達も楽しんでいたじゃない?」

 アイ達か……。アイ達は双子王女より歳上なのに、一番声が大きかったかもな。まぁ娯楽の少ないこの世界では、目新しい物は面白いか。

「猫の国でも、このような施設はあるのかしら?」
「遊具はあるけど、ここまで立派な物は無いにゃ」
「そうなの? てっきりシラタマちゃんの国だから、面白い物がいっぱいあると思っていましたわ」
「わしの国になったのは最近にゃ~。民を飢えさせないだけで、いっぱいいっぱいにゃ」
「そうでしたわね」
「せめてわしの街を運営してくれる人が居たら、手が空くんにゃけどにゃ~」
「街と言う事は……領主?」
「女王には少し説明したけど、わしの国では……」

 わしは双子王女に猫の国のシステムを説明する。双子王女は何やら熱心に聞き、その目が鋭くなったので、わしは背中に冷たい物を感じる。

「ま、まぁこんにゃ感じにゃ。じゃあ、わしはババアに挨拶して来るにゃ~」
「「待ちなさい!」」

 わしは逃げ出そうとするが、双子王女のシンクロ攻撃で、尻尾を掴まれてグンッとなる。

「にゃ、にゃんですか?」
「代表だったかしら? わたくしがなってあげてもいいですわよ?」
「いえいえ。わたくしがなってあげましょう」
「にゃんでなりたいんですかにゃ~?」
「将来、婚約者と結婚した時の為に、街作りの勉強をしておきたいのですわ」
「少し手は入っているけど、街が徐々に発展して行く様を見るのは、いい勉強になりそうですわ」

 本当に勉強の為か? 胡散臭うさんくさい……うっ。心を読まれて鋭い目になった。慎重に考えよう。
 ここに来たのも、女王から送り込まれて、猫の国を乗っ取ろうとしているのでは? さっき説明した時も、嫌に納得が早かったし……少し探りを入れてみるか。

「女王から、にゃにか言われているにゃ?」
「「なんの事かしら?」」

 ダメじゃ。まったく表情が変わらん。何が目的かわからない他国の者を、街の代表にするわけにもいかないし……

「そんなにかまえないでくれない? たぶんジョスリーヌと同じ思いですわ」
「やはり、ジョジアーヌも同じだったのね」
「「だからお願い!」」

 いや、二人でテレパシーで話されても、こっちはわからん。

「はぁ……同じ思いって、なんにゃ?」
「あ、わたくし達だけで納得していたわね。サンドリーヌの事ですわ」
「さっちゃんにゃ?」

 わしの質問に、双子王女はコリスに餌付けしているさっちゃんを、温かい目で眺める。

「またわたくし達を立てて、サティを追いやろうとする者が現れないとも言い切れないでしょ?」
「サティを守る為に、国の外に出たほうが確実だと思うの」

 さっちゃんを思っての立候補だったのか。たしかに即位には、まだまだ時間があるから、同じ事を考えるやからは居るかもしれないか……

「う~ん……わかったにゃ」
「「本当!?」」
「でも、一人だけってわけにはいかないにゃろ? 街の代表をツートップにしてみようかにゃ。それにゃら二人とも職に就けるにゃ」
「「ありがと~う」」
「にゃ!? 挟むにゃ~! まだ女王と話さないといけないから決定じゃないにゃ~。ゴロゴロ~」

 双子王女のふくよかな物に挟まれたわしは、ゴロゴロと喉が鳴ってしまい、リータとメイバイに怒られる事が決定した。いや、猫の街代表の仮採用が決定した。
 その後、コリスの餌付けしていたさっちゃん達にもギャーギャー言われ、魔力の回復したコリスと共に逃げ回る。だが、滑り台からコースアウト続出。また監視員となって、コリスの魔力に限界が来るとキャットランドをあとにするのであった。


 双子王女は帰って行ったが、さっちゃん達はなかなか帰らないので、一緒に街の散歩。馬車で移動するので騒ぎは起きないが、ワンヂェンが「にゃ~にゃ~」うるさい。
 なので、目的地に着くと、ワンヂェンを一人で放り込んでみた。

「にゃにするにゃ~!」
「「「「「黒猫!?」」」」」
「「「「「シラタマ??」」」」」
「にゃ!?」

 一斉に集まるハンターの視線にワンヂェンは驚き、ハンター達も驚いて不思議そうな顔をする。わし達はその姿をドアの隙間から覗き、懐かしい光景に笑い合う。
 そうしていたら、ワンヂェンがドアを叩いて泣き付いて来たので、わしはハンターギルドに入る。

「みんにゃ。久し振りにゃ~」
「「「「「白猫!?」」」」」
「「「「「黒猫!?」」」」」

 パニックじゃ。わしとワンヂェンを交互に見て、首を振っておる。いい加減にしないと首がもげるぞ?

「猫ちゃん!」

 わしがハンター達の心配をしていたら、ギルド職員のティーサが駆け寄って来た。

「ただいまにゃ~……にゃ!?」

 そして抱き抱えられてしまった。

「ど、どうしたにゃ?」
「急に居なくなったから、寂しかったんですよ~。ギルマスに聞いても、何も教えてくれないし~」
「ああ。悪かったにゃ。戦争に参加していたから、スティナも言えなかったんにゃろ」
「戦争!?」
「とりあえず、降ろしてくれにゃ。苦しいにゃ~」
「あ! すみませんでした」

 ティーサはそんなに心配しておったのか? 普段はたいして干渉して来なかったのに……まぁリータ達が入って来る前でよかった。コリスのお守りさせておいて正解じゃったわい。

「あ、そうにゃ。ティーサは、立て札は読んだかにゃ?」
「読みましたが……そちらの黒猫ちゃんが、猫の国の国賓ですか?」
「そうにゃ。ワンヂェンにゃ。それと、リスも連れて来たから入れるからにゃ?」
「へ?」
「みんにゃ~! キョリスの娘、コリスを入れるから、騒がないでくれにゃ~~~!!」

 わしは大声で注意を促してから外に出て、コリスを呼び込む。ギルドの扉から、のしのしとさっちゃんを乗せたコリスが登場すると、ハンター達は固まり、口をあわあわしている。

「それじゃあ、奥に行こうにゃ」

 わし達一行は、静まり返るギルド内を堂々と歩くのであっ……

「「「「「いやいやいやいや」」」」」

 復活したハンター達の質問に、時間を取られるわし達であったとさ。
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