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第六章 ハンター編其の四 遊ぶにゃ~

164 デート其の三にゃ~

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 デート ローザの場合……


「……また来たのですか?」

 開口一番、迷惑そうに言われた。

 リータとメイバイが狩りに行き、わしはやる事も無いので、フェリシーちゃんのお家騒動がどうなったか気になっていたのもあり、ローザの街にやって来た。
 今回は普通に門から入り、騒ぎの起こる街を歩き、ローザの屋敷に訪問した。

「ダメだったにゃ?」
「いえ。そういうわけでは……。ねこさんと会えるのは嬉しいのですが、こんなに会えるとは思っていなかったので……」

 まぁローザの街は、馬車で五日かかるから、そう思っても仕方ないか。でも、また来たって言われるのはショックじゃな。

「そういう意味じゃないです!」

 ローザまでわしの心を読むのか……

「にゃんでわしの考えている事がわかるにゃ?」
「それは……」
「教えてくれにゃ~」
「女の勘です!(尻尾が文字を書いてるんだけどね~)」
「女の勘にゃ~? 本当かにゃ~?」
「ほ、本当です!」
「にゃあにゃあ~?」
「ねこさん、うるさいです!」
「にゃ……」

 怒られてしまった。逆ギレっぽいんじゃが、また怒られそうじゃし、心を読まれる謎解きは出来ないか。


「猫ちゃんが、また来たって本当?」
「ねこさ~ん」

 わしとローザが世間話をしていると、ローザの母ロランスがフェリシーちゃんを連れて部屋に入って来た。

「お母様。またなんて言ったら、ねこさんに失礼ですよ」
「あ、そうね。いらっしゃい」

 もう遅いです。ローザも言ったよね? フェリシーちゃんは……嬉しそうに抱きついておるな。頭を撫でてやろう。

「今日はどうしたの?」
「暇だった……じゃなく、フェリシーちゃんがどうなったか見に来たにゃ」
「いま、暇って言ったよね?」
「言いましたね」
「暇でこの距離を移動するなんて……」
「信じられません」
「そこはツッコまないでくれにゃ~」

 わしの「暇」発言から、ロランスとローザは呆れたような顔でツッコんで来たので、わしは強引に話を変えようとする。

「それで、どうなったにゃ?」
「前も言った通り、商人から裏を取って、フェリシーの義母に行き着いたわ。素直に認めて、いまはお祖父様が事態の収拾にあたっているわ」
「そうにゃんだ。お疲れ様にゃ~」
「まるで他人事ね。猫だから猫事かしら?」
「どっちでもいいにゃ。わしのせいで迷惑かけてすまないにゃ」
「いいえ。あの街がゴタゴタしてると女王陛下に迷惑が掛かるから、報告したら逆に褒められてラッキーだったわ」

 女王に褒められた? フェリシーちゃんの街はここから北に行った場所だから、戦争の最前線になりそうだからか。そうなると、ロランスさんも戦争が起きそうなのは聞かされているのかな?

「女王が困るって、ロランスさんもあのこと知ってるにゃ?」
「もしかして、猫ちゃんも知ってるの!?」
「いちおう女王から聞いてるにゃ」

 ロランスの驚く顔を見て、ローザが興味を持つ。

「お母様。あの事ってなんですか?」
「ごめんね。国に関わる事だから、ローザにはまだ話せないわ」
「そうですか……」
「時期が来たら必ず話すから我慢してね」
「わかりました」

 あちゃ。失言じゃ。興味本意でいらぬ事を言ってしまったな。ローザも考え込んでいるし、明るい話題でもしようかな。

「さっきも言ったけど、暇だからこの街を案内してくれにゃいかにゃ? 露店で食べ歩きがしたいにゃ~」
「プッ。やっぱり暇だったのですね」
「アハハ。自分で言うんだ」
「案内は出来るのですが……食べ歩きが……」
「いいわよ。市勢を調査するのも領主の仕事の一貫よ。危ない事があれば猫ちゃんが守ってくれるし、行って来なさい」
「はい! ありがとうございます。フェリシーも行こう!」
「いく~~~」


 ロランスさんの許可を得て、広場の露店を三人で冷やかす。わしの姿で人々は驚くが、ローザとフェリシーちゃんと手を繋いでいるせいか、嫌悪感のある視線ではなかった。
 ローザが露店で買った物を食べる事に戸惑っていたので何故かと聞いたら、領主の娘とあって、食べ歩きなんて行儀の悪い事をした事が無かったらしい。しかし慣れてくると、わしと同じようにパクパク食べていた。

 街の名物らしき物を片っ端から買い食いし、食べ過ぎて「もう動けない」と、二人はギブアップ宣言。わしは二人をテーブル席に連れて行き、飲み物とおやつを持って席に着く。
 わしはまだ腹に余裕があったのでむしゃむしゃ食べていたら、一口ちょうだいと催促されてしまった。そのせいで、動けなくなった時間が増えたのは、わしのせいでは無いから睨まないで!

 広場のど真ん中で休憩していると、やって来るあいつら……

 子供達に取り囲まれた。猫、猫うるさいので、滑り台とブランコ、シーソーを数台作ってやった。
 今度はローザとフェリシーちゃんがうるさくなったので、子供達にまざり、一緒に遊ぶ。ローザの追求はそれでも激しく、王都ではもっと凄い物があると口を滑らせてしまい、誕生祭の時に連れて行く事となった。

 おそらく遊具のせいで広場に人が多く集まり、わし達はまたテーブル席に追いやられる。人が多く集まったのは、わしのせいでは無いはずだ。
 たぶん遊具のおかげで、ローザと一緒に盗賊にとらわれていた四人のお姉さんと再会した。どうやら、四人仲良く共同生活を送っているらしい。
 仕事もローザが掛け合ってくれたらしく、幸せに暮らしているそうだ。ローザと共に感謝され、抱きつかれてしまった。

 そうこうしていると、広場が騒ぎになっていると聞き付けたロランスがやって来て、わしだけ怒られた。わしのせいじゃないのに……。たぶん……
 怒られたので遊具を片付けようとしたら、街の子供から大ブーイング。それを見かねたロランスは、このままでいいと言ってくれた。遊具は少しは危険があるから、誰か見張りを立てるように進言し、ロランスの馬車に乗って屋敷に戻った。


「もう! 私はこれでも忙しいんだから騒ぎを起こさないで!」

 屋敷に戻るなり、ロランスに怒鳴られてしまった。

「よかれと思ってやっただけにゃ~」
「たしかに子供達は楽しそうだったわね」
「にゃ~?」
「それとこれとは別よ!」
「すいにゃせん!」
「わかれば良し! そうそう。猫ちゃんにお願いがあるんだけど……」

 この状況でお願い? 怒られたばっかりで怖いんじゃけど……

「そんなに構えないで。猫ちゃんはハンターでしょ? 往復の護衛依頼を頼めないかしら?」
「護衛にゃ?」

 ここから馬車で五日。往復十日か……。時間が掛かるから面倒じゃし、断りたいけど、ローザのキラキラした目が痛い。

「う~ん。受けるにゃら、条件があるにゃ」
「条件?」
「まず、わしの移動手段は誰にも言わないと約束してくれにゃ」
「どう移動するかわからないけど、約束するわ」
「それと、乗り物に人数制限があるから多くは連れて行けないにゃ。それでもいいにゃら受けるにゃ」
「それでかまわないわ」

 ロランスさんは即答じゃな。そんなにわしに送って欲しいのか? まぁこれなら受けても問題無いな。

「先に人数だけ聞いていいかにゃ?」
「そうね。私とローザ、それに仕える騎士と従者で四人。フェリシーも入れて合計七人ね」
「意外と少ないんだにゃ~」
「誕生祭では、街に騎士や兵士が見回りするから安全なのよ。それに王都の屋敷を維持するのに数人いるから、私達の身の回りぐらい問題無いわ」
「そうにゃんだ。それにゃら、移動手段は二時間コースと十時間コースがあるけど、どれにするにゃ?」

 わしの質問にロランスは驚き、ローザは納得した顔となった。

「そんなに速いの!?」
「ねこさんが暇だからと来れる理由がわかりました」

 今日は転移して来たから、数分じゃったけど……おっと、心を読まれないように無心!

「じゃあ、速い二時間コースでお願い。猫ちゃんに頼んで正解ね。仕事が立て込んでいてギリギリだったの。これで余裕が出来るわ」
「いちおう言っておくげど、街外れまで馬車で移動する時間や受付時間もあるからオーバーする場合があるにゃ。その場合のクレームはお断りにゃ」
「それぐらいなら気にしないわ」
「移動手段のほうが気になりますものね」
「あと、お代は、ハンターギルドの平均的な価格でお願いするにゃ」
「そんなに速いのにお値段据え置き!? 助かるけど……いいの?」

 ロランスさんの言い回しは、テレビ通販みたいじゃな。この世界では、速いと高いのかな?

「友達価格にゃ」
「そこは許嫁価格になりませんか?」
「いつ許嫁になったにゃ~!!」
「あ……アハハハ~」


 この後、ローザに笑ってごまかされながら、ロランスとの打ち合わせを続け、終わると逃げるように王都に帰る。だって、フェリシーちゃんを加え、三人てずっと撫で回すんじゃもん。

 この日は、複数の匂いが付いていたので、メイバイは浮気認定が難しかったらしく、二人に怒られなかった。またまた、疑っていたけど……


  *   *   *   *   *   *   *   *   *


 デート? フレヤの場合……


「これ着てみて!」
「いや、さっきのと変わらないにゃ……」
「どこがよ! このフリルがかわいいのよ」
「さっきも付いてたにゃ?」
「形が違うのよ! 早く脱いで!」
「……面倒臭いにゃ」
「もう! 私が脱がす!!」
「いにゃ~~~ん」

 フレヤは最近、毎日手作りの衣装を持参でやって来る。最初はメイバイが着せ替え人形の犠牲者だったのだが、リータとわしも標的になってしまった。
 わしと違い、リータとメイバイは毎日のように狩りに出ているので、早く寝かせる為に、わしが犠牲になる事が多い。

「やっぱり少し大きいわね」
「にゃんでスカートにゃ~」

 わしは着せられたドレスのスカートを押さえ、恥ずかしさを紛らわそうとする。

「そりゃあ、メイバイちゃんのだもの」
「まったく……フレヤも毎日来てるけど、仕事は忙しくないにゃ?」
「インスピレーションが湧きまくって忙しいよ」
「忙しいにゃら、家で休めばいいにゃ」
「ここに来ると、いい素材があるからやめられないわ!」
「そ、そうにゃんだ」
「次の衣装はどれがいいかな~?」
「もういいんじゃにゃいかにゃ~?」
「決まった! さあ、脱ぎなさい!!」
「いにゃ~~~ん」


 と、フレヤは毎日、わしを着せ替え人形にしにやって来る。

「むにゃむにゃ。その服は似合わないって~」
「ボンテージ……いい。むにゃむにゃ」
「なんであたしがフリフリなんだ。むにゃむにゃ」

 もちろんアダルトフォーの、スティナ、エンマ、ガウリカも犠牲者だ。
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