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第六章 ハンター編其の四 遊ぶにゃ~
160 対決にゃ~?
しおりを挟むわしはリータと追いかけっこをしていたら、巨乳双子王女に挟まれ、巨乳で無い人達から、集中砲火を浴びてしまった。
昨日に続き、なんでわしは正座をさせられておるんじゃ? わしはひとつも悪い事をしとらんのに……
「へ~。そうなんだ」
「にゃ!?」
ヤバイ……またさっちゃんに心を読まれておる。わしよ。無心になるんじゃ~!
わしが悟りを開いて無心になっていると、さっちゃんは難しい顔に変わった。
「む……反省してるの?」
「はいにゃ!」
「む……読めない……」
「にゃにがにゃ?」
「にゃ、にゃんでもないわよ!」
「にゃんでもない? にゃにが読めないにゃ~?」
「にゃ、なんでもないって言ってるでしょ!」
「にゃあにゃあ?」
「にゃあにゃあ、うるさ~~~い!」
ひ、ひどい……わしの口癖を否定されてしまった。いや、いつも問いつめたら怒られていたな。これは後ろめたい事があるのか? でも、怒られたくない。
「わかった?」
「はい、にゃ」
「また……」
「『にゃ』は口癖にゃ~。これを否定されたら話せないにゃ~」
わしがさっちゃんに怒られていると、双子王女が近付いて来やがった。
「もうシラタマちゃんを許してあげなさい」
「そうよ。かわいそうですわ」
「それはお姉様が……」
双子王女が助け船を出してくれているが、わしが怒られたのは、あんた達のせいじゃろ? いつもいつも、なんでわしを挟むんじゃ? わしは嬉しくも……ないぞ! ホンマホンマ。
「こうやって挟んで何が悪いの?」
「喜んでいるわよ?」
「にゃ!? やめるにゃ~! 挟むにゃ~!!」
「嫌がっているじゃないですか!」
「「そんな事ないわよね~?」」
またシンクロ攻撃。勘弁してくれ。巨乳VS貧乳に、わしを巻き込むな! しかしこの場合、どちらに付くべきか……。人数的には貧乳が多いけど、王族は巨乳が多い。ここは、毎日一緒にいるリータとメイバイに付くのが正解じゃろう?
うっ……王族オーラが、いきなり強くなって痛い。心を読まれたか? さっちゃんも出して中和してくれ!
……待っていても、解決しないか。
わしは変身魔法を解いて体積を減らし、双子王女の胸から逃げ出す。距離を取ったところで人型に変身して再び海に向かって駆ける。逃げ出せたと安心し、振り向いたら全員で追いかけて来たからだ。
そのまま海を走り、もう追いかけて来れまいと振り向いたら、今度は泳いで追いかけて来ていた。わしの作ったサーフボードや浮き輪も大活躍だ。
砂浜と違い、追いかける速度は落ちたので、余裕が出来たわしは水魔法を使って海の上に腰掛ける。近付いて来る者がいれば、水魔法で操作した波を使い、砂浜まで送り届ける。
皆、波に乗れたのが嬉しいのか、楽しそうに笑い、何度もわしの元へ向かって来る。
それを何度か繰り返すと、皆の動きが変わった事に気付く。
女王が指揮を取ってる? 何をする気じゃ?
* * * * * * * * *
「これより猫捕縛作戦を開始する!」
「「「「「はっ!!」」」」」
女王の前に一列に並んだ、王族、ソフィ達、リータ達、猫達。一様に敬礼し、女王の次の言葉を待つ。
「リータ。柔らかくていいから、土魔法で作った玉を投げ続けなさい」
「は、はい!」
「アイノも風魔法で牽制よ」
「はっ!」
「サティ。お願いね」
「はい!」
「イサベレとメイバイを残し、全軍突撃~!」
「「「「「おお~~!」」」」」
女王の指示を聞いた皆は、各々持ち場につき、シラタマ目掛けて動き出したのであった。
* * * * * * * * *
なんじゃろう? 統率の取れた動きじゃ。
「にゃ!?」
わしが遠くにいる皆を見ていたら、突如、土の玉や風の玉が飛んで来て、水しぶきが上がった。
リータが何か投げて来ておるのか? アイノも魔法を使っておるな。何がしたいかわからんが、そんな攻撃には当たらんぞ。
よっはっ! ふはははははは。まだまだ甘いな。
「にゃ~!!」
わしが飛んで来る物をひょいひょい避けていると、突然、波を切り裂く風が起こる。
イサベレか? いや、エリザベス!? 危険な魔法を使いやがって。みんなに当たったらどうするんじゃ。しかし、猫まで参加させるとは、さっちゃんの差し金か?
遠距離攻撃が続く中、ソフィたち歩兵がわしに迫る。
「もう少しです!」
「にゃにがしたいかわからないけど、お帰り願うにゃ~」
「波が来ます! 固まって!!」
「もう遅いにゃ~」
「「「きゃ~~~」」」
遠距離攻撃に気を取られたせいでソフィ達に近付かれたが、皆、一斉に波に流され、砂浜に押し戻される。
本当に何がしたいんじゃ? まだ遠距離攻撃は続いておるし、「ニャーーー!」って、ステレオで聞こえるし……え?
わしは「ニャーーー!」と聞こえる左右を見ると、右からメイバイが、左からルシウスが海の上を走っていた。
マジか……わしの場合は、水魔法で浮いておるのに、二人は沈まないように走っておる。メイバイに渡した肉体強化の宝石は役にたっているみたいじゃけど、使い方がおかしいぞ?
散々攻撃以外に魔法を使っているわしに言われたく無いじゃろうけど……とりあえず、退場してもらおう。
「シラタマ殿~~~」
「ニャーーー!」
「ここまでご苦労様にゃ。お帰りはあちらになるにゃ~」
「「ニャ! ニャーーー!!」」
わしは水魔法を操作し、二人の前に落とし穴を作った。突如、足の踏み場が無くなった二人は海に沈み、そこを波でさらって砂浜まで送り届ける。
息ピッタリで流されて行きおった。なんだかルシウスとメイバイが兄弟に見えて来たな。あら? また、ソフィ達が向かって来ておる。
これはアレか? ネットゲームであったレイドクエストか? 皆で協力して一人の敵を倒しに来ておる。目標はわし? いつも思うけど、こういう時だけ一致団結してくるな。わしが何をしたんじゃ?
そろそろソフィ達も迫って来たし、押し流すか。あ……そう言えば、イサベレを見ていない。どこじゃ?
「もらった!」
「にゃ~~~! ブクブクブク」
「「「「「やった~~~!」」」」」
わしがイサベレの存在を思い出した時には、もう遅かった。女王の指示で、風魔法で跳ねながら空高く飛んでいたイサベレが、急降下してわしに抱きつき、皆も勝利の雄叫びをあげたのであった。
海に沈んだわしは、溺れまいと足をバタバタして海面から顔を出すが、イサベレがくっついて邪魔をする。
「ぶは~~~。イサベレ! 泳ぐにゃ~。わしにしがみつくにゃ~」
「泳げない」
「嘘つくにゃ! 百年生きているんにゃから、それぐらい出来るにゃ!!」
「本当」
「にゃ……わかったにゃ」
どうやらイサベレは本当にカナヅチらしく、わしを掴む手が強いので信用する事となった。なのでわしは水魔法を操作し、向かって来る皆も一緒に、波に乗せて砂浜に戻る。
「ほい。着いたにゃ」
「ん」
「もう離れても溺れないにゃ」
「大丈夫」
「いや、離れてくれにゃ。みんにゃに怒られるにゃ~~~」
抱き締めて離れないイサベレを押し返していると、女王が皆より前に出て来る。
「また怒られる心配してるわね」
「にゃ? 怒らないにゃ?」
「シラタマに勝ったから、いまは気分がいいの!」
「勝つにゃ? にゃんのこと??」
「海の上に逃げて、ずっと近付けなかったじゃない? 余裕でそんな事されたから、なんとしても捕まえたくなったのよ」
全員、頷いておるけど、皆の総意じゃったのか。なんだか気付かない内に、負かされるのは気分がいいモノじゃないな。
「そうだったんにゃ。じゃあ、次は本気を出すにゃ~」
「次は無いわ。そろそろ帰る準備をしましょう」
「え~~~! 納得できないにゃ~」
「私達が納得したからいいのよ」
なに、そのガキ大将的発想? みんなも頷いているって事はみんなも同意見?
わしが皆の顔を見回してモヤモヤした気分になっていると、さっちゃんも会話に入って来た。
「シラタマちゃん。ベトベトだから、お風呂出して~」
「あら。そんな物まであるの?」
「いや、まだわしは納得できていないんにゃけど」
「早く~~~!」
「急がないと日が暮れるわよ」
「いや……」
「「早くして!」」
結局、怒られて、渋々お風呂を取り出すわし。人数が多いので、三回に分けて入ってもらう。お湯の補給もしなくてはいけないので、わしも全員と一緒に入る事となってしまった。
シャワーも一人しか使えないと時間が掛かるので、わしがお湯を操作して、湯船に作ったお湯をシャワーのように降り注ぐ。
さすがに目視しながらじゃないと出来ないので、皆の裸も、渋々、渋々拝ませてもらった。渋々……
「シラタマさん……」
「シラタマ殿……」
「にゃ!?」
皆のシャワーが終わると、リータとメイバイに睨まれながら、出した物を次元倉庫に仕舞い込んでいく。それが終わると、皆を飛行機に乗るように説得する。
海が名残惜しいのか、なかなか乗り込んでもらえず、皆を説得して回っている隙に、さっちゃんが逃げ出しやがった。わしはさっちゃんを追い、波打ち際まで追い詰める。
「さあ。帰るにゃ~」
「わかってるよ~。あとちょっとだけ~」
「全然わかってないにゃ~」
わしが文句を言っても聞く耳持たず。さっちゃんは、遥か遠くを眺めている。
「ねえ。シラタマちゃん……」
「にゃ?」
「この先に何があるのかな?」
さっちゃんも気になるか。好奇心旺盛じゃもんな。元の世界の知識で言うなら陸地があって、そこに住む人や動物が居るんじゃろうが、ここは異世界。わしには何があるかわからないし、元の世界の知識を言うわけにもいかん。
「それは行ってみにゃいと、わからないにゃ」
「そうだよね。でも、ここからどこかに繋がっているのよね?」
「そうかもにゃ」
「東の山を越えれば人がいる事も知った。南の森を越えれば海がある事も知った。世界はわたしが思うより、もっと広いんだね!」
さっちゃんは、その答えに行き着いたか。見たいとか言い出しそうじゃな。
「だからシラタマちゃん……。わたしの代わりに見て来て! それで、旅の話を聞かせて!」
あれ? 行きたいと言われるかと思ったのに、行って来いか……
「どうしたの?」
「さっちゃんにゃら、連れて行けって言うと思ったにゃ」
「行きたいけど、私は足手まといになるし、城から長く離れられない。だからお願い!」
「長い旅になるにゃ。さっちゃんは寂しくならないかにゃ?」
「うっ……我慢する」
さっちゃんはあからさまに悲しそうな顔をするので、わしはさっちゃんの手に優しく触れる。
「王都は住みやすいから、離れるのはわしも寂しいにゃ。まだやりたい事もあるし、もう少し満喫してから行って来るにゃ」
「やった! 絶対だよ!」
「うんにゃ。約束するにゃ」
「これで転移魔法で、楽して行ける!」
「にゃ……」
それが狙いか! 旅は嫌だけど、目的地には行きたいとは……さっちゃんらしいな。
「にゃははは」
「なによ~?」
「さあ。帰るにゃ~。にゃははは」
「なんなのよ~」
「にゃははは」
「あ! 待って~。アハハハ」
わしが笑うとさっちゃんは頬を膨らませたが、笑い続けるわしに釣られて笑いだす。そして今度はさっちゃんが笑いながら、わしを追いかけるのであった。
二人で飛行機に戻ると、皆、乗り込んでやがった。そのせいで遅いと、またさっちゃんと一緒に怒られた。
わしの説得で乗り込んでくれなかったのに、どういう事だと言ったら、よけい怒られたのは言うまでもない。
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