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第四章 ハンター編其の二 怖い思いをするにゃ~

104 アダルトスリーに捕獲されたにゃ~

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 あ~~~~~。怖かった~~~~~。
 リータとメイバイのキャットファイトから逃げる為とはいえ、高く飛び過ぎた。この身ひとつで千メートルぐらい行ったかもしれん。魔法で無事、時計台に着地出来たけど、二度としたくないわい。

 それにしても逃げてしまったが、リータとメイバイは仲良くやってるかのう? リータは家族思いのいい子じゃし、メイバイは仲間思いのいい子じゃから大丈夫じゃよな?
 ケンカしとらんじゃろうか? メイバイにナイフを買い与えてしまったけど殺し合いなどしておらんよな? リータも強くなっておるけど、メイバイの実力はまったく知らんのじゃよなぁ。
 孤児院に行けと言っておいたし、さすがに子供達の前で、殺し合いはせんじゃろう。しないはずじゃ。しないよね? 信じておるぞ~。


 さてと、逃げたはいいものの何をするか。久し振りに食い歩きでもしようかな? じゃが、お高いナイフと盾をを買ったから、生活費に大打撃なんじゃよなぁ。これではメイバイの服も買ってやれん。いつまでもメイド服ってわけにはいかん。
 武器屋では有益な情報はもらえたんじゃが……あ! 黒魔鉱!! 車のサスペンションに大量に使っておる。アレをバラせば現金が手に入る! しかし、バラすのは面倒じゃ。
 次元倉庫にある黒い獣を売るか? この方法は、一人で狩りをした物だから、リータが気を使って受け取ってくれないかもしれんな。他に金策は……望み薄じゃが、商業ギルドに行ってみるか。スプリングとぬいぐるみの特許権もあるし、ちょっとは振り込まれているかもしれん。


 わしは時計台から飛び降り、商業ギルドに向かう。飛び降りた時に、近くにいた男に一瞬驚かれたが「なんだ。猫か」と、言われただけで事なきを得た。
 そうして商業ギルドに着くと、他所の街から来た商人が騒ぎ出し、その騒ぎを聞きつけたエンマがやって来た。

「これはシラタマさん。お久し振りです」
「久し振りにゃ~」
「孤児院で話を聞いて来られたのですか?」
「にゃんの事にゃ?」
「シラタマさんの口座に入金がありまして、初回は確認のサインが必要なので、来訪して欲しいと頼んでいたのですが、まだ聞いていなかったのですね」
「そうにゃんだ。あとで孤児院に行くから、ギルドに行ったと言っておくにゃ」
「では、別室で承ります」

 エンマはわしを奥の部屋に案内し、一度部屋から出ると、書類とお茶を持ってソファーに座る。

「こちらはシラタマさんがお持ちの、特許関連の資料です。こちらにサインをお願いします。それとハンター証をよろしいですか?」
「はいにゃ~」

 わしは首からぶら下げているペンダントを渡し、資料に目を通す。

 金策でたまたま来たけど、ちょうどよかったな。しかし、けっこうな量の資料じゃ。全部に目を通さないといけないのじゃろうか? よくわからないし、エンマが指示したところにサインしておこう。
 それと、金がどれぐらい入っているか知りたいんじゃが……次のページが入金履歴かな? さすがエンマ。出来る美人秘書はわしの求めるものがわかっておるのう。
 何度も脚を組み替えておるのも、秘書ならではのサービスかのう? って、そんなわけないか。

 えっと~。スプリングは……無しか。まだ売る段階に入っておらんのかな? 工具やネジなんかは売ったみたいじゃな。少し入金がある。
 次はメガネ? そう言えば、エンマから頼まれたか。こっちもボチボチじゃな。何個か売れたみたいじゃ。ほんで、ぬいぐるみか。これが一番入金が多いとは……
まぁ、新技術よりは作り易いか。


「ぬいぐるみですか? なかなか手に入らないんですよね」

 わしがぬいぐるみの売り上げを詳しく見ていると、エンマが声を掛けてくる。

 お! フレヤ一人で作ってるから、多くは出回っておらんのか。わしも無理言って、買ったのが効いているな。しめしめ。もう少し買ってやろうか。

「でも、そろそろキャットランドで販売するみたいですから、手に入れられそうです」
「にゃ!? にゃんでそんにゃ事に……」
「詳しくはわかりませんが、先日提出された、孤児院の運営計画書に書いてありました。おそらく、子供達が作るのではないでしょうか?」

 キャットランドは、わしの知らないところでそんな事が起こっていたの? フレヤが子供達に仕込んでおるのか。よけいな事を……
 他にもありそうじゃが、聞くのが怖い。変なモノ売りませんように! しかし、エンマもぬいぐるみが欲しいとは意外と乙女だったんじゃな。
 ん? 入金履歴の最後のこれは……

「この孤児院からの銅貨一枚って、なんにゃ?」
「やはり聞いていないのですね。孤児院の方達がどうしても払いたいとおっしゃりまして、入金させていただきました」
「にゃんでそうなったにゃ?」
「聞けば、キャットランドの発案者はシラタマさんですし、施設を作ったのもメニュー開発にも取り組んでいたとか……。本来なら手続きをしていれば、もっと利益を得られるのに、どうしてしなかったのですか?」
「面倒にゃ」
「嘘ですね」
「バレたにゃ」
「バレバレです。いつもの気まぐれですよね?」
「そうにゃ。ただの気まぐれにゃ」
「素敵な気まぐれです」

 うぅ。美人秘書に見つめられて褒められると恥ずかしい!
 それにしても、銅貨一枚か……孤児院の者も感謝を込めて、この銅貨一枚なんじゃろう。大金だったら、わしは受け取らん。そんな事の為にしたわけではないからな。

「有難く使うにゃ。それと、必要なサインはこれで全部かにゃ?」
「……はい。結構です」
「それじゃあ、行くにゃ」

 わしは挨拶をすると立ち上がる。だが、まだお茶が残っていると言われ、それもそうかと座り直す。すると、エンマはわしの隣に来て撫でる。

「にゃんで撫でるにゃ?」
「少しだけ、少しだけでいいんです!」
「抱き抱えるにゃ~」
「だって、ぬいぐるみが手に入らないんですよ~」
「いにゃ~~~ん。ゴロゴロ~」

 秘書がセクハラするって、どういうこと!?

 わしはエンマのセクハラに耐え、ゴロゴロと喉を鳴らす。五分ほど撫でられ続けると、恍惚こうこつとした表情に変わったエンマから、やっと解放された。


「ありがとうございます」

 うぅ。美人秘書にセクハラさらてしまった……。人間だったら役得なんじゃが、わしは猫。なんだかもったいない気分になるわい。
 こんなこと考えているとリータにバレたら、また怒られるな。用事も済んだし、金を引き下ろして孤児院に行こう。


 わしはエンマに入金されているお金を、家賃二ヶ月分残して引き出してもらい、商業ギルドをあとにする。しかし、エンマも何故か同時にギルドを出て隣を歩くので、質問せざるを得なくなった。

「にゃんでついて来るにゃ?」
「仕事も終わりましたから、孤児院で夕食を買いに行こうと思いまして」
「にゃんで手を繋ぐにゃ?」
「それは迷子にならない為です」
「にゃらないにゃ~!」
「ちょっとだけですよ。ちょっとだけ……」

 美人秘書がセクハラ秘書になっておる! 出会った頃は、全てを睨み殺さんばかりの目付きをしておったのに……眼鏡のせいか?


 わしは手を繋ぎ、嬉しそうに歩くエンマに連れられ、孤児院に向かう。道すがらハンターギルドの前を通ると、スティナと出会った。

「シラタマちゃん、珍しい組み合わせだけど仕事?」
「いや。たまたま通っただけにゃ」
「商業ギルドのサブマスと、どこに行くの?」
「孤児院に行くにゃ」
「私もこれから夕食を買いに行くつもりだったから、一緒に行こうかな」
「いいけど……にゃんで手を繋ぐにゃ?」
「片手が空いてたから?」

 わしはスティナとエンマに両手を握られ、捕まった宇宙人のごとく、連行されていく。

「二人は知り合いなのかにゃ?」
「ええ。獣の肉や素材は、商業ギルドに販売を委託しているからね」
「そのせいもあって、スティナさんとは、いまでは飲み友達です」
「へ~。酒の席でも仕事の話になりそうにゃ」
「……そんな話、しないわ」
「……しないですね」

 二人の顔が曇ったけど、何か深刻な話でもしておるのか? 二人の共通の話題は……

「あ! 男の話にゃ~。二人とも結婚していないもんにゃ……すいにゃせん!」

 しまった! 触れてはいけないところを触れてしまった。両隣から「ゴゴゴゴ」聞こえて、わしも浮いておる。早々に謝ったけど許してくれるかな?

「「許しません!」」
「こ、怖いにゃ~! 尻尾も引っ張らないで欲しいにゃ~」
「尻尾?」
「あなたは……フレヤさん?」
「う~ん。どうやったら垂れない尻尾を作れるのかしら……」

 わし達が声を掛けているにも関わらず、フレヤはわしの尻尾をニギニギしたり伸ばしたりとやりたい放題するので、わしは大きな声で名前を呼ぶ。

「フレヤ! フレヤ!!」
「あ、はい!」
「にゃにしてるにゃ?」
「孤児院に向かっていたら、猫君を発見したから、ちょっと研究を……」

 なんとなくわしが嫌がる研究だとわかるが、この話に乗れば、二人の怒りを逸らせる!

「じゃあ、フレヤも一緒に行くにゃ~。でも、にゃんの研究しているにゃ?」
「腰に付ける猫の尻尾を作っているんだけど、どうしても垂れてかわいくないのよね~」

 やっぱりわしのHPを削りにくる研究じゃったか……。乗ってしまったからには仕方がない。

「針金を中に入れたらどうにゃ? そしたら自由自在に形を変えられるにゃ」
「それよ!」

 お、食い付いた。ついでにわしのダメージも減らしておこう。

「あと、猫にこだわらにゃくてもいいにゃ。狼だってフサフサしているし、リスもボリュームがあって、かわいいと思うにゃ~」

 さあ! 食い付くがよい!

「たしかに面白いけど、それは却下かな~?」
「にゃんでにゃ~!!」
「だって、キャットランドで売るのよ。狼やリスがいたら、おかしいじゃない?」

 いや、某ネズミの国にも、ネズミ以外にもウロウロしておるぞ。そんな常識はここでは通用しないのか。


 こうしてフレヤを一行に加え、わしは両手両尻尾を拘束されて、孤児院に向かう。

「あ、そうそう。今日もお風呂借りに行くからね?」
「お金持ちにゃんだから、公衆浴場に行けばいいにゃ~」
「女には、一人でお風呂に入りたい夜があるのよ」
「どうせ一杯やるだけにゃろ?」
「それがいいんじゃない」

 わしとスティナが何気ない会話をしていると、エンマとフレヤがお風呂に食い付いたようだ。

「シラタマさんの家には、お風呂があるのですか?」
「あるにゃ」
「私も借りてもいいですか?」
「私も入りたい!」
「別にいいけど、有料にゃよ?」
「高いのですか?」
「安い安い。毎日入っても、週に二回、公衆浴場に行くより安いわ」
「にゃんでスティナが答えるにゃ!」
「それでは今日からお願いします」
「私もよろしく~」

 決定したみたいじゃな。これはまた、リータにどやされそうじゃ。

「明日は仕事に行くから、早く帰ってくれにゃ?」
「はいはい。今日はみんなで飲み明かしましょう」
「いや……」
「たまにはいいですね」
「ファッションショーでもやる?」
「ちょっと……」
「そうと決まれば孤児院に買い出しよ!」
「「おお~!!」」
「待つにゃ~!」

 わしの声はアダルトスリーに届かず、ついに孤児院に連行された。
 孤児院に着くと嫌でも目に入る子供の姿。子供の姿だけならいいのだが、猫耳と尻尾の生えた子供達が大勢遊んでいた。

「耳にゃ! 尻尾にゃ!! にゃ、にゃんでこうなったにゃ!?」
「レーアちゃんが売ったら儲かるって発案したのよ。それで私が便乗したってわけ」
「はあ!? いつの間ににゃ!!」
「オープンして二日後?」
「き、聞いてないにゃ~」
「そうだったの? まぁ子供達が自発的に発案したんだからいいじゃない」

 それは喜ばしい事じゃけど、わしの精神的ダメージはデカい。うぅ……そんな事言われたら反対も出来んじゃろ!

 わしは頭を抱えたいが、両手と尻尾を握られているので頭には届かず、そのままアダルトスリーにフードコーナーに連行される。
 すると、そこにはわしの代わりに頭を抱えている、リータとメイバイの姿があった。

「「増えてる~~~!!!」」

 なんの事じゃ??
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