97 / 755
第四章 ハンター編其の二 怖い思いをするにゃ~
095 秘密を共有するにゃ~
しおりを挟む「猫さんは転生って信じますか?」
リータの突然の発言に、わしはリータの顔を見つめたまま固まる。リータは見つめるわしと目が合うと、照れているような仕草をするが、わしは気付けない。
転生? そんな言葉を、何故、知っている。リータはわしが転生者だと疑っておるのか? 猫らしくは無いけど……
「そんなに見つめないでください」
おっと固まっておった。何か言い訳しなければ。
「わしは……」
「死んだ人が記憶を持ったまま、違う命に宿るなんて信じられませんよね」
これは……世間話か? あ~、ビックリした! リータさんは人が悪い。
「家族も村の人も誰も信じてくれなかったけど、猫さんなら信じてくれると思ったんですけどね」
え? 雲行きが変わった……もしかして、リータの話?
「実は……私は転生して、この地にいるんです」
リータが転生者? ひょっとして同郷? 転生者ならエミリの母、恵美里さんの例もある。もしかして……
「私の元の世界は何も無い、岩だけの世界。私も岩だったんです」
岩? 岩って……岩?? 命あるの? あ、たしかアマテラスが、生物が違う進化をした世界があるって言ってたか。
「そこで私は、何十年も何百年も星を眺めて過ごしていたのです」
何百年? わしより年上……
「何も変わらない景色……そんな景色に飽きて、私は一念発起して転がりました。何年も何十年も……そこで、ついに綺麗な景色の場所に辿り着きました」
もう何の話かわからん! てか、岩??
「こんな綺麗な景色で死ねたらいいなと思ったら、隕石が落ちて来て、本当に死んじゃいました」
岩が隕石とぶつかって死んだじゃと? ついていけん……
「するとまた新しく、それはもう、死んだ場所よりも遥かに綺麗な場所に着いたのです。そこで神様と会いました」
あ~。やっとわかる話になって来た。
「どうやら、私と隕石がぶつかったおかげで、停滞していた世界が動く事になったそうで、感謝されちゃいました。私は何もしていないんですけどね。それで他の綺麗な世界に行きたいと神様にお願いして、いま、私はここに居ます」
リータは世界を救ったって事かな? で、徳を積んで転生させてもらったと……でも、元が岩?? あ、だから歩くの下手じゃったんか。体が硬いのもそのせいか……力が強いのは? もう岩だからじゃ!!
しかし、アマテラスの奴は、チート能力を贈る事は出来ないと言っていたのに、リータの能力はチート能力ではないのか? 元々の能力なら持って来れたって事か? 今度、問い詰めてやらんといかんのう。
「こんな話をしても、信じられませんよね」
どう答えたものか……わしは猫の中身がジジイだから、気持ち悪がられると思って、秘密にしておいたほうがいいと考えてきた。だから、誰にも話す気は無かった。いや、話してもわかってもらえない、信じてもらえないと思っていたんじゃ。
リータは自分の秘密を勇気をもって話たんじゃ。それに世界は違えど、同じ転生者と出会ったの嬉しい。秘密を共有出来るしな。わしも話すべきじゃろう。
「信じるにゃ」
「猫さん……」
「ちなみに、神様の名前はなんだったにゃ?」
「えっと~。たしか……ツツカミ?だったと思います」
「ツツカミ……」
古事記にそんな神の名前はあったかな? ツクヨミならあったけど……
「ツクヨミじゃにゃいかにゃ?」
「そう! それです!! でも、なんで猫さんがそれを……」
「わしも、リータとは違う世界からやって来た、転生者にゃ」
「え……猫さんが?」
「そうにゃ。わしは元の世界では、人間だったにゃ」
「ええぇぇ~~~!」
リータもわし同様、驚いているみたいなので、落ち着くのを待って続きを喋り出す。
「わしの担当の神様のミスで、この世界に来たにゃ。人間を希望していたのに、猫に生まれ変わったんにゃ……」
「猫さんが人間だった……」
「気持ち悪いかにゃ?」
「いえ、そんな事はないです! 猫さんの秘密を知れて嬉しいです。転生の事は、誰にも話していないのですよね?」
「そうにゃ……」
「《二人だけ》の秘密ですね」
いい笑顔じゃけど、なんだか言い方が怖い……脅される?
「誰にも話さにゃいでくれにゃ?」
「わかってます。フフフ……《二人だけ》の秘密ですもの」
その後、リータはわしの元の世界の事をいろいろと質問し、わしの答に嬉しそうな反応をする。
それから長く話していると、夕日は完全に沈んでしまった。
「星が綺麗にゃ」
「綺麗ですけど、私は見飽きてしまいました」
「たしかに、何百年も見ていたら飽きるにゃ~」
「フフフ。そうですね。でも、猫さんと見る星は、また違ったように見えます。あ、猫さんは、猫さんと呼ばれるのは嫌ですか? シラタマさんとお呼びしたほうがいいですか?」
「どっちでもいいにゃ。ちなみに、わしの元の世界では『シラタマ』って、にゃんの事か、わかるかにゃ?」
「いえ、全然わからないです」
「お菓子にゃ。白くて丸いお菓子の名前にゃ」
「お菓子? プッアハハハハハ。すいません!」
「気にするにゃ。わしも同じ立場にゃら笑っているにゃ。元の世界の女房にも、笑われたにゃ。だから、好きなように呼ぶにゃ」
「う~ん。考えておきます。……猫さんは元の世界で結婚していたんですよね。こちらの世界では結婚をしないのですか?」
「猫だから難しいにゃ」
猫と番になるのは、人間の思考が邪魔をする。かと言って、人間と結婚するのも生まれて来る子供がどうなるかわからないから、こちらも人間の思考が邪魔をする。そうなると、一人ヤモメがちょうどいい。
「私なら猫さんを受け止められます! だって、元は岩ですよ!!」
「にゃははは」
「なっ……なんで笑うんですか!」
「ごめんにゃ。考えていた事の第四案があったのに、驚いただけにゃ」
第四案……岩と結婚するか。わしより年上だし、アリかもしれんな。元、岩の嫁さんなら、生まれて来る子供がどんな姿でも、受け入れてくれるじゃろう。
「もう! 猫さんのバカ……」
「時間が掛かると思うけど、考えておくにゃ」
「本当ですか?」
「右手を出すにゃ」
わしは次元倉庫から、余っていた白い鉱石を取り出し、鉄魔法で加工する。
うろ覚えのデザインで指輪を作り、完成すると、リータの薬指に嵌める。
「これが指輪にゃ」
「これが……婚約指輪ですか!?」
「さあにゃ。その時が来るまでわからないにゃ」
「……猫さんは意地悪です。でも、嬉しいです!!」
リータは抱きつき、目を瞑ると、わしの口に唇を当てる。わしもリータを抱き締め、そのまま王都の近くに転移するのであった。
ちなみに、リータが目を開けた時には景色が変っていたので、すっごく混乱していた。だからそれ以上の事は、何も無かった。ホンマホンマ。
0
お気に入りに追加
1,169
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
料理を作って異世界改革
高坂ナツキ
ファンタジー
「ふむ名前は狭間真人か。喜べ、お前は神に選ばれた」
目が覚めると謎の白い空間で人型の発行体にそう語りかけられた。
「まあ、お前にやってもらいたいのは簡単だ。異世界で料理の技術をばらまいてほしいのさ」
記憶のない俺に神を名乗る謎の発行体はそう続ける。
いやいや、記憶もないのにどうやって料理の技術を広めるのか?
まあ、でもやることもないし、困ってる人がいるならやってみてもいいか。
そう決めたものの、ゼロから料理の技術を広めるのは大変で……。
善人でも悪人でもないという理由で神様に転生させられてしまった主人公。
神様からいろいろとチートをもらったものの、転生した世界は料理という概念自体が存在しない世界。
しかも、神様からもらったチートは調味料はいくらでも手に入るが食材が無限に手に入るわけではなく……。
現地で出会った少年少女と協力して様々な料理を作っていくが、果たして神様に依頼されたようにこの世界に料理の知識を広げることは可能なのか。
王宮を追放された俺のテレパシーが世界を変える?いや、そんなことより酒でも飲んでダラダラしたいんですけど。
タヌオー
ファンタジー
俺はテレパシーの専門家、通信魔術師。王宮で地味な裏方として冷遇されてきた俺は、ある日突然クビになった。俺にできるのは通信魔術だけ。攻撃魔術も格闘も何もできない。途方に暮れていた俺が出会ったのは、頭のネジがぶっ飛んだ魔導具職人の女。その時は知らなかったんだ。まさか俺の通信魔術が世界を変えるレベルのチート能力だったなんて。でも俺は超絶ブラックな労働環境ですっかり運動不足だし、生来の出不精かつ臆病者なので、冒険とか戦闘とか戦争とか、絶対に嫌なんだ。俺は何度もそう言ってるのに、新しく集まった仲間たちはいつも俺を危険なほうへ危険なほうへと連れて行こうとする。頼む。誰か助けてくれ。帰って酒飲んでのんびり寝たいんだ俺は。嫌だ嫌だって言ってんのに仲間たちにズルズル引っ張り回されて世界を変えていくこの俺の腰の引けた勇姿、とくとご覧あれ!
転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
外れスキル「トレース」が、修行をしたら壊れ性能になった~あれもこれもコピーで成り上がる~
うみ
ファンタジー
港で荷物の上げ下ろしをしてささやかに暮らしていたウィレムは、大商会のぼんくら息子に絡まれていた少女を救ったことで仕事を干され、街から出るしか道が無くなる。
魔の森で一人サバイバル生活をしながら、レベルとスキル熟練度を上げたウィレムだったが、外れスキル「トレース」がとんでもないスキルに変貌したのだった。
どんな動作でも記憶し、実行できるように進化したトレーススキルは、他のスキルの必殺技でさえ記憶し実行することができてしまうのだ。
三年の月日が経ち、修行を終えたウィレムのレベルは熟練冒険者を凌ぐほどになっていた。
街に戻り冒険者として名声を稼ぎながら、彼は仕事を首にされてから決意していたことを実行に移す。
それは、自分を追い出した奴らを見返し、街一番まで成り上がる――ということだった。
※なろうにも投稿してます。
※間違えた話を投稿してしまいました!
現在修正中です。
呪われた子と、家族に捨てられたけど、実は神様に祝福されてます。
光子
ファンタジー
前世、神様の手違いにより、事故で間違って死んでしまった私は、転生した次の世界で、イージーモードで過ごせるように、特別な力を神様に授けられ、生まれ変わった。
ーーー筈が、この世界で、呪われていると差別されている紅い瞳を宿して産まれてきてしまい、まさかの、呪われた子と、家族に虐められるまさかのハードモード人生に…!
8歳で遂に森に捨てられた私ーーキリアは、そこで、同じく、呪われた紅い瞳の魔法使いと出会う。
同じ境遇の紅い瞳の魔法使い達に出会い、優しく暖かな生活を送れるようになったキリアは、紅い瞳の偏見を少しでも良くしたいと思うようになる。
実は神様の祝福である紅の瞳を持って産まれ、更には、神様から特別な力をさずけられたキリアの物語。
恋愛カテゴリーからファンタジーに変更しました。混乱させてしまい、すみません。
自由にゆるーく書いていますので、暖かい目で読んで下さると嬉しいです。
晴れて国外追放にされたので魅了を解除してあげてから出て行きました [完]
ラララキヲ
ファンタジー
卒業式にて婚約者の王子に婚約破棄され義妹を殺そうとしたとして国外追放にされた公爵令嬢のリネットは一人残された国境にて微笑む。
「さようなら、私が産まれた国。
私を自由にしてくれたお礼に『魅了』が今後この国には効かないようにしてあげるね」
リネットが居なくなった国でリネットを追い出した者たちは国王の前に頭を垂れる──
◇婚約破棄の“後”の話です。
◇転生チート。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げてます。
◇人によっては最後「胸糞」らしいです。ごめんね;^^
◇なので感想欄閉じます(笑)
外れスキル「トレース」が、修行をしたら壊れ性能になった~あれもこれもコピーし俺を閉じ込め高見の見物をしている奴を殴り飛ばす~
うみ
ファンタジー
港で荷物の上げ下ろしをしたり冒険者稼業をして暮らしていたウィレムは、女冒険者の前でいい顔をできなかった仲間の男に嫉妬され突き飛ばされる。
落とし穴に落ちたかと思ったら、彼は見たことのない小屋に転移していた。
そこはとんでもない場所で、強力なモンスターがひしめく魔窟の真っただ中だったのだ。
幸い修行をする時間があったウィレムはそこで出会った火の玉と共に厳しい修行をする。
その結果たった一つの動作をコピーするだけだった外れスキル「トレース」が、とんでもないスキルに変貌したのだった。
どんな動作でも記憶し、実行できるように進化したトレーススキルは、他のスキルの必殺技でさえ記憶し実行することができてしまう。
彼はあれもこれもコピーし、迫りくるモンスターを全て打ち倒していく。
自分をここに送った首謀者を殴り飛ばすと心の中に秘めながら。
脱出して街に戻り、待っている妹と郊外に一軒家を買う。
ささやかな夢を目標にウィレムは進む。
※以前書いた作品のスキル設定を使った作品となります。内容は全くの別物となっております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる