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第四章 ハンター編其の二 怖い思いをするにゃ~

090 御使い様ってなんだにゃ~?

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 イナゴの黒い副ボスは、わしのかっこいい攻撃で息絶えた。次はボスじゃな。おうおう。ギリギリと音を立てて怒っておるのう。そんなに怒っても怖くないわい。

 わしは黒いボスイナゴに戦いを挑むべく、歩み寄る。だが、ボス戦にはまだ少し早かったみたいだ。

 ブーン、ブーン、ブーン、ブーン……

 ブンブン、ブンブンうるさいわ! うお! 大量のイナゴが飛んで集まって来ておる! 気色悪い……てか、ギリギリ言っておったのは仲間を呼んでおったのか。探知魔法!
 あら? 外にいたイナゴが全部向かって来ておる……このボスイナゴは汚い奴じゃのう。男の喧嘩はタイマンじゃろう。空から【氷槍】で虐殺しまくった奴に言われたくないか。
 しかし、リータの所に、二匹接触しているっぽい。大丈夫じゃと思うが、急がせてもらおう。


 わしは一気に決めるべく、【氷槍】をイナゴの数だけ浮かび上がらせる。そして、もう一本の刀、【黒猫刀】を次元倉庫から取り出し二刀流になる。

 さあ、行こうか!

 わしは一直線にボスイナゴに向かって走り出す。ボスイナゴはギイギイ鳴くと、イナゴは空から、地上から、波状的にわしに襲い掛かる。
 わしは近いイナゴには、二本の刀で斬り伏せ、遠いイナゴには【氷槍】を突き刺して、次々に数を減らしていく。
 ボスイナゴは隙をうかがい、チャンスがあれば【風の刃】を飛ばし、時には味方のイナゴを目隠しにして、イナゴごと、わしに攻撃を加えようとする。
 わしはそんな攻撃も冷静に【土壁】で、イナゴを【風の刃】とサンドイッチにして数を減らす。

 これでラスト!

 わしは残った最後のイナゴを刀で斬り伏せ、ボスと一対一に持ち込んだ。

 ボスイナゴが味方を切り刻んでくれたから時短になったわい。ありがたやありがたや。っと、遊んでないで、さっさと終わらせないと、リータが危ない。


 わしは一息吸うと、ボスイナゴに向かって走り、刀を振るう。ボスイナゴは跳んでかわし、わしの後ろに付くと、太い後ろ足で蹴りを放つ。わしは前方に飛び、残っていた【氷槍】を全て、ボスイナゴに放つ。

 う~ん。けっこう硬いな。【氷槍】じゃ、かすり傷を追わすぐらいか。それにあの蹴りは強い。当たったら何処まで飛んで行くんじゃろう? まぁ当たればの話じゃけど、なっ!

 わしは再び走る。そしてすぐに止まって、近距離から地面と平行に得意の【鎌鼬】を二発放つ。ボスイナゴは羽を広げて飛び上がり、数を増やした【風の刃】をわしに飛ばす。
 だが、わしも跳んで避ける。ボスイナゴは、わしの跳び上がった進路に、向けて【風の刃】を飛ばすが、わしは風魔法を操作して空を飛び、全ての【風の刃】を掻い潜り、ボスイナゴの背中に着地する。

「チェックメイトにゃ!」

 わしは瞬(またた)く間に羽を斬り裂き、【白猫刀】と【黒猫刀】をボスイナゴの頭に深く突き刺す。
 ボスイナゴとわしは地に落ちるが、わしは激突する前に、突き刺した刀で頭を縦に斬り裂きながら飛び降り、大きな地響きと共に決着がついた。

 これもかっこよく決まったんじゃないか? ビデオでもあれば再生できるのに……アマテラスに頼めば見せてくれるかな? どうせこれも、女房と見ておるじゃろうしな。
 会いたくは無いけど……おっと、決め台詞を忘れておったな。

「ん、んん~……またつまらぬ物を切っ」
「猫!!」
「御使い様じゃ~!!」

 誰じゃ! わしの決め台詞を邪魔する奴は!!

 わしが声の方向に怒りの表情を向けると、建物の扉が開いていた。

 ん? 建物の扉から誰か顔を出しておる……村人か? それにしても御使い様とはなんじゃ? まぁわしを見て気が動転しておるのじゃろう。安心させる言葉でも掛けてやるか。

「わしは悪い猫じゃないにゃ~。イナゴの群れを駆除しに来たにゃ~」
「わかっています。わかっていますとも。有難う御座います」

 なに? 話が早過ぎない?? なんか土下座までされてるし……怖がられるよりマシじゃけど、ここまでされると気持ちが悪い。

「頭を上げるにゃ。わしは仕事で、ここに来ただけにゃ」
「いえ。もう命は無いと覚悟しておりました。御使い様に助けてもらいましたのに、お礼の品も何もありません。せめてこうやって感謝を表すしか出来ません。有り難う御座いました」
「あの……ひとついいかにゃ?」
「はっ! なんなりと」
「その御使い様ってなんにゃ?」
「御使い様とは、村が獣に襲われていれば、どこからか現れて救い、飢饉ききんで食料に困っている村があれば、食べ物を分け与える。この国の弱き村人を助けて回るお猫様。あなた様の事です」

 なに、その聖人みたいな猫? わし以外に歩く猫がいるのか? って、絶対わしの事を言っておるよな。たしかにその場で狩った動物の肉は寄付しておるが、依頼を受けて、解体を代わってもらい、対価を動物の肉で払っただけじゃ。
 討伐も食料もきちんと報酬を受け取っておる。他の村の者が誇張して歩いておるのか?
 しかし、このジジイのわしを見る目がキラキラしていて痛い。目が食料を寄越せと言っておるかのようじゃ。ちょっとぐらいなら、次元倉庫の物があるけど、そんな施しはしたくない。ほとんどが高級肉じゃから出したくないってのもあるな。

 あ、イナゴって食えたよな? 黒いほうは買い取ってもらえるから、食えるんじゃろうけど、小さいほうは? 佃煮にして食べる地方があるし、このイナゴも食べれるんじゃろうか?
  1メートルのイナゴの佃煮か……考えただけで食欲が無くなる。とりあえず、いまはわしが聖人では無いとハッキリさせておこう。

「さっきも言ったけど、わしはハンターで、緊急依頼を受けて、ここに来たにゃ。だからイナゴも全て、わしの取り分にゃ」
「そ、そんな……」

 お! 御使い様バラメーターが下がった。しかし、ジジイの絶望の顔、凄まじいのう。人ってこんな顔が出来るのか……ちょっと可愛そうじゃが、聖人パラメーターを上げるわけにはいかん。黒イナゴは譲れん!

「でも、こんにゃに多くはいらないから、わしは黒いイナゴと討伐部位だけ貰って行くにゃ」

 わしの言葉にジジイは破顔し、涙ながらに頭を地面に擦りつける。

「はは~~~。有り難き幸せ。これでこの村は救われます!!」

 聖人パラメーター限界突破じゃ!!
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