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第四章 ハンター編其の二 怖い思いをするにゃ~

088 イナゴ駆除、開始にゃ~

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「キャーーー!!」
「高い~~~!!」
「速い! 速いです!」
「止めてくださ~~~い!」
「落ちる~~~!」

 以上、初めて飛行機に乗った、リータの感想でした……って、後部座席でうるさい! 覚悟しろって言ったのに! わしだって小型機なんて乗った事が無いから怖いんじゃ!!


 わしはリータの村に向かう移動手段として、飛行機を作り出した。
 リータの村は西に、馬車で五日は掛かる。車で向かったとしても最短で五時間。整備されていない道を走る事になるから、それ以上かかってしまう。それならば、何もない空を移動しようという発想だ。
 急ごしらえの飛行機なので、羽と車輪、前と後ろに分かれた座席しかない小型機だ。原動力は風魔法。わざわざ滑走路を走らず飛び立てて便利だが、車輪を作った意味が無くなってしまった。
 失敗はもうふたつある。風避けのガラスを付けなかった事と、座席をオープン使用にしてしまった事だ。風を直接受けて、目を開けていられないし、上空の空気は寒い。
 しかし、飛行機は速いから一時間か、二時間もすれば、リータの村に辿り着けるはずだ。


 飛行機が王都を離れ、十五分ほど経った頃、わしは異変に気が付く。

 リータの声がしなくなった……だ、大丈夫じゃろうか?

「リータ~! 大丈夫かにゃ~!?」

 風の音がうるさい中、わしは後部座席にいるリータに、大声で話し掛ける。

「さ、さ、さ、寒いです……」

 凍えて震えている……。人に見られない様に、上空千メートル以上まで打ち上げたから、気温はかなり低い。風の影響もあって、ナチュラルに毛皮を羽織っているわしですら寒いんじゃ。人間のリータには耐えられんか。

「ちょっと待つにゃ~~!」

 わしは飛行に気を取られながらも、急いで土魔法を使い、前後の座席を繋げる。そして、ベルトコンベアの様に座席を動かし、リータがわしを抱き抱えられるように近付ける。

「猫さん……温かいです」
「これも着るにゃ」

 さらに次元倉庫から、毛皮を何枚も取り出して、リータとわしを包む。

「もう少し我慢するにゃ。すぐに着くにゃ」
「はい。この幸せが続くなら待てます」

 冗談を言えるぐらいに回復したか。冗談かどうかはわからないけど……しかし、風が強くて目を開けていられない。このままじゃ、リータの村を通り越してしまいそうじゃ。
 この場でガラスの風避けを作るのは難しいし、何かいい方法は……そうじゃ! エンマに眼鏡を作った時に、わし用に何本か作っていたサングラスがあったな。
 変装用に作ったけど出番が無かった。なにせ、サングラスなんて逆に目立つし、わしも目立つ。意味の無い物じゃった。このサングラスを土魔法でちょっといじって……ゴーグルの完成じゃ。

「リータもこれをかけるにゃ」
「は、はい……目が開けれます!」
「もしわかるにゃら、村が見えたら教えるにゃ」
「わかりました!」

 これで空の旅も少しは改善したか。リータの村の件が終わったら、絶対に屋根とガラスを付けよう。


 飛行機は何もない空をひた進み、一時間を過ぎた頃、リータに反応があった。

「あ! あの森!」
「見覚えがあるかにゃ?」
「はい。もう少し進むと村が見えるはずです」
「わかったにゃ~」

 もうすぐか……そろそろ高度を下げていこう。次の問題はイナゴの倒し方じゃな。イナゴの大量発生じゃから、小さいイナゴがいっぱいおるんじゃろうな。うっ、想像しただけで気持ち悪い……子供の頃は、なんで触れたんじゃろうか?
 まぁ気持ち悪いが、ここは我慢して駆除の仕方じゃ。火魔法で燃やしてしまうか? 村の状況もわからんし、燃えて被害も出るかもしれんな。なら凍らせるか? これなら村の被害も出ないじゃろう。


 わしがイナゴの駆除方法を考えていると、リータが叫ぶ。

「見えました! あそこが私の生まれた村です!」

 わしはリータの指差す方向を見る。

 どこじゃ? ……あれかな? まだ遠いのう。イナゴが大量にいるなら、地面や空が色付いていてもおかしく無いんじゃが、いまいちわからん。ひょっとして、もう通り過ぎた後か?

 わしは飛行機を進め、村をよく観察する。

 村が見えたが、あれがイナゴ? デカくない? ハッキリとはわからんが、目視出来る……1メートルはありそうじゃ……デカ過ぎるわ!! うぅ……苦手なのにあそこに降りるのか。

「村が……お母さん! お父さん!!」
「わしがすぐに駆除するから落ち着くにゃ」

 そうは言ったものの、ひどい状態じゃ。建物もほとんどイナゴに壊されて、残っている頑丈そうな建物もイナゴに取り囲まれておる。人の姿は見つからないが、どこにいったんじゃ? とりあえず……探知魔法!


 わしは広範囲に音と魔力を飛ばし、跳ね返って来た音と魔力を脳内で形にする。

 気色悪いッ! イナゴがウヨウヨいる……村の外も合わせると百匹はおるぞ。人は避難したか、建物の中か……。村の外れの家に一人いるけど、このままではイナゴに取り囲まれてしまう。急ぎはこっちじゃな。

「リータ、村の外れにある家は見えるにゃ? あそこに人がいるみたいにゃから、そこから駆除していくにゃ」
「私の家……みんなが取り残されているのですか?」
「それはわからないにゃ。でも、必ず助けられるから、気をしっかり持つにゃ」
「……はい」
「返事が小さいにゃ!」
「は、はい!」
「よし……ちょっと無茶をするから、わしの体を支えておくにゃ」
「わかりました」


 わしは飛行機を操作し、村を旋回する様に降下させる。そして立ち上がり、攻撃魔法を使う。

「必殺【氷槍】にゃ~!!」

 無数の氷の槍が村に降り注ぎ、イナゴとの戦闘が始まる。わしの作り出した氷の槍は、村の中にいるイナゴに次々と突き刺さっていく。

 これで一周……飛行機の上からじゃ、命中精度が悪い。半分も外してしまった。氷だからそのうち溶けるから、村へのダメージも少ないはずじゃ。【鎌鼬】を使っていたら、わしが村を壊滅させておったな。さすがわし。出来る猫じゃ。
 と、自画自賛している場合じゃない。逃げ遅れている人がいたんじゃ。もう何周か上から攻撃をしたいんじゃが……イナゴはデカいけど強くは無さそうじゃし、いけるか?

「リータ、あの家に残っている人は頼めるかにゃ?」
「は、はい!」
「わしが行くまで持たせてくれたらいいにゃ。けっして自分から攻勢に出るにゃ」
「はい!」
「それと魔力は無くにゃらないようにあまり使うにゃ」
「はい!」
「あとは、これを持って行くにゃ。指に嵌めて使うにゃ」
「わかりました……」
「あとは……」
「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。猫さんの闘いの教えは守ります。早く降ろしてください!」
「わかったにゃ。じゃあ、家の付近になったら落とすにゃ」
「……へ?」

 飛行機が村外れの家に近付くと、わしはリータを飛行機から投げ落とす。

「ええぇぇ~~~~~!!!!」
「がんばるにゃ~」
「猫さ~~~~ん~~~~………」

 わしはリータを投げ落とすと、リータの真下から【突風】を当てて減速し、優しく地上に降ろす。

 さて、逃げ遅れた人はリータが守ってくれるから、わしはイナゴを空から減らすとするかのう。


 わしは飛行機に土魔法で自分を固定すると、飛行機の旋回に合わせて、次々とイナゴ目掛けて【氷槍】を撃ち込んでいく。二周、三周と高度を下げて行く内に、村の中にいるイナゴは、ほとんど動かなくなっていった。

 村の中に七匹、外に二十匹……こんなものかのう。そろそろわしも地上に降りるか。着陸したいけどいい場所が無いな。飛び降りるか? リータより高度は低いが、いざ飛び降りるとなると怖いな。リータには悪い事をしたかもしれん。
 覚悟を決めるか……深呼吸して……もうひと呼吸……うぅぅ、怖い。ええい! 南無三!!


 わしは飛び上がると次元倉庫を開き、飛行機を収納して落下する。

「にゃ~~~! 【突風】【突風】【突風】にゃ~~~!!!」

 わしは悲鳴をあげながら、何度も【突風】を使い、地上に降り立った。

 はぁはぁ。怖かった~。チビっては……いない。セーフじゃ。おっと、いまは敵陣真っ只中じゃった。あれだけ騒いで降りたのに、イナゴの奴等、わしを無視して建物に体当たりしておるな。
 しかし、空から見た時は黒くてデカイのが三匹おったんじゃが、二匹しかおらん。ちょっと探知魔法で……デカイのと小さいイナゴが、リータの方に向かっておる。これは急がないといけないな。


 わしは建物に走って近付き、全てのイナゴに向けて【鎌鼬】を放つ。黒いイナゴは瞬時に避けるが、普通のイナゴは真っ二つに息絶える。

 クソ! 黒くてデカいイナゴに避けられた。思ったより危機感知が高いな。じゃが、ターゲットはわしに移ったみたいじゃ。

 標的を変えた二匹の黒いイナゴは、ゆっくりとわしに歩み寄る。

 うぅ。近くで見るとやっぱり気色悪い! じゃなくて、デカイ。しかも角付きか……黒くて角三本は久し振りじゃな。前黒ボス狼と同じくらいの大きさ、6メートルはある。こいつがこの群れのボスで間違いないじゃろう。
 もう一匹は角一本に4メートルってところか……リータのほうに向かったのは、おそらく2メートルぐらいじゃし、こっちが副ボスってところかのう。まぁわしの敵では無いな。気色悪いし、さっさと終わらせよう。


 わしは【白猫刀】を抜き、だらりと構える。そして【鎌鼬】を放って走る。黒イナゴ二匹は跳び上がり、【鎌鼬】をかわすが、わしはその動きに合わせ、角一本の副ボスに襲い掛かる。

 喰らえ!

 わしも跳び上がり、副ボスに刀を振るう。しかし、副ボスは羽を広げ、上空に逃げた。

 しまった! 飛べるんじゃったか。

 副ボスは上空に逃げると、羽をはばたかせ、無数の【風の刃】をわしに放つ。

 なんの! よっはっとっ!

 わしは着地すると【風の刃】を、かわして行く。

 そんな遅い魔法、当たるか!

 と、思った瞬間、横から大きな【風の刃】が飛んで来た。わしは慌てて【土壁】を作り、事なきを得る。

 ビックリした~。協力して攻撃して来るのか。虫のくせに頭を使いやがって! まさか念話で話し掛けて来ないよな? 話し掛けられると、一気にやる気がえるからやめて欲しい。
 しかし、うっとうしいのう。空から小さい無数の【風の刃】。地上から横薙ぎのデカイ【風の刃】。空からの攻撃に集中すると横から狙われる。なかなか休ませてくれん。

 ならば、打って出る!

「【竜巻】にゃ~!」

 わしは飛んでるイナゴの副ボスに向けて【竜巻】を起こす。【竜巻】は副ボスの放つ【風の刃】を巻き込み、副ボスもろとも上空に吹き飛ばす。わしはそれを見て【竜巻】を解除し、副ボスに向けて走る。
 そしてキリモミしながら落ちる副ボスに向けて跳び、すれ違い様に刀を振るう。

 副ボスは、わしの攻撃によって首を半ばまで斬られ、地面に叩き付けられるのであった。


 かっこよく決まった……これじゃよ、これ! 侍映画みたいに決まったじゃろう!!
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