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第三章 ハンター編其の一 王都を騒がすにゃ~
071 依頼を受けるにゃ~
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我輩は猫又である。名前はシラタマだ。職業はペットではない! ちゃんとハンターの仕事に就いた。
昨夜、アマテラスと女房の襲来で、現在わしは、二日酔いの真っ只中じゃ。これからわしの身に何が起こるか不安……
「誰か~! 誰かいないの~?」
「はいにゃ~」
スティナの奴、起きたか……まったく回想ぐらい静かにさせてくれ。
「シラタマちゃん?」
「ね、猫さん……」
「はいにゃ~。いま行くにゃ~」
わしは二日酔いで重たい頭を振り、二階に上がる。二階に上がるとわしの部屋と客間から顔を出した、リータとスティナの姿があった。
「シラタマちゃん。み、水……」
「頭が痛いです……」
「二人ともちょっと待つにゃ」
わしはコップに水魔法で水を注ぎ、二人に手渡そうとする。
「リータ、飲むにゃ」
「あ、ありがとうございます」
「スティナ……にゃんで全裸なんにゃ!」
「みず~」
「ほ、ほれにゃ」
おかしい……リータは着替えさせたが、スティナはそのまま服を着たまま、ベットで寝かせたはずなんじゃが……
「プハー! 生き返る~」
「いいから、服を着るにゃ!」
「え? いつも家では着てないわよ」
裸族か!!
「ここはわしの家にゃ。他人(猫)様の家で裸になるにゃ!」
「わかったわよ~」
「にゃったく……二人とも、お風呂に入ってスッキリするといいにゃ」
「お風呂あるの!?」
「すぐ準備して来るにゃ」
「シラタマちゃんも一緒に入りましょう」
「わしは後から入るにゃ~」
「いいから、いいから」
「待つにゃ! せめて服を着るにゃ~」
「めんどう……リータも行くわよ。お風呂に案内して!」
「え、あ、はい」
「にゃ!? 離すにゃ~」
わしは全裸のスティナに抱かれ、鼻の下を伸ばしながら……いや、嫌がりながらお風呂に連れて行かれる。
「お湯も水も無いわよ?」
「ちょっと待つにゃ。あと、元の姿に戻るから怖がらにゃいで」
「元の姿?」
わしは変身魔法を解き、体積が減ったところでスティナの腕から抜け出す。そして、呆気に取られているスティナを横目に、水魔法と火魔法でお湯を作り、湯船とタンクに湯を満たす。
「猫になった!」
「ずっと猫だにゃ~」
「頭の中に声が……」
「念話にゃ。温かい内に入るにゃ」
しばらくスティナは固まっていたが、わしがリータに洗ってもらっていると復活し、「かわいい」を連呼しながら、リータからわしを奪い取り、洗い出す。
スティナの洗い方は雑で泡まみれになってしまい、リータに助けを求める事となった。
そうして綺麗になって落ち着いたところで、三人で……二人と一匹で湯船に浸かる。
「驚いたけど、その姿もかわいいわね」
「触るにゃ~! シャーーー!!」
「もう! 気持ち良くしてあげようと思ったのに……」
ゴクッ……気持ち良くってなんじゃろう? いや、騙されるな、わし! さっきもひどい目にあったばかりじゃ。
「それにしても、朝からお風呂に浸かれるなんて貴族みたい」
「生き返ります~」
貴族は朝から風呂に入るのか? 王族のさっちゃんでも入ってなかったけど……金持ちはそう見られているって事かな?
「シラタマちゃんは、すごく便利ね。うちに来ない? いや、私もここに住む!」
「帰れにゃ!」
「ケチ~。大衆浴場では人が多いから、こうもゆっくり出来ないのよね~」
「ゆっくりしてていいのかにゃ? 仕事に遅刻するにゃ~」
「ズル休みするわ!」
「行けにゃ~!」
このギルマスは……王都のギルマスなんだから偉いんじゃないのか? こんな奴で大丈夫なのか心配になるな。
「うそうそ。今日は休みよ。でも、昼に顔を出すわ」
休日出勤か。意外と仕事しておるのかもしれん。感心じゃが、とても褒めてやる気分にはなれん。
「シラタマちゃんは、仕事しないの?」
「う~ん。リータ、行けそうかにゃ?」
「はい……大丈夫で、す……」
うん。ダメっぽいな。
「今日はわしも二日酔いだから休むにゃ」
「シラタマちゃんにはバリバリ働いて欲しいのに~。Cランクなんだから、難しい依頼も受けられるわよ。シラタマちゃんの強さなら、Bランクを優先的に受けて欲しいわ」
「ボチボチやるにゃ~」
まだリータが戦えないから、Bランクの依頼は当分先かな? そろそろ簡単な動物を一人で狩れるように仕込んでみるか。
「そろそろ上がるにゃ~」
わしは吸収魔法でお風呂にある水分を全て吸い取る。元々わしの魔力で出した水だから出来る芸当だ。一瞬で消したせいで、スティナが騒ぐから、体を直視してしまった。これは事故だ。ホンマホンマ。
朝ごはんはリータがダウン気味なので、わしが担当する。と、言っても次元倉庫から、いつも多めに作ってあるスープとパンを取り出すだけだ。
「「いただきにゃす」」
「……いただき……にゃす?」
「別にマネしなくていいにゃ」
「仲間外れにしないでよ~」
「それと服をちゃんと着るにゃ~」
「着てるじゃない?」
「下着だけにゃ! 全部着るにゃ!」
「もうすぐ出掛けるからいいでしょ」
「にゃったく……」
下着と言っても薄いタンクトップでは透けて見えておる。逆にエロイ。羞恥心は無いんじゃろうか? おっと、長く見過ぎたか。
リータが何故か膨れておるし、エロジジイと思われてもなんじゃから、庭に目線を持って行こう。
朝ごはんを終えると、やっとスティナは帰って行った。リータは二日酔いがひどいみたいなので寝かせて、わしは二日酔いも治まったので、家の窓を作っていく。
素材は先日、森で集めていたので、硝子魔法で薄く平らにした硝子を土魔法の枠に嵌めるだけ。だが、割れないように慎重に作業したので、少し時間が掛かってしまった。
「ん、んん……猫さん?」
わしが寝室の窓を付け替えていると、リータが目を覚ます。
「起こしたかにゃ? すまないにゃ」
「いえ。……それは硝子ですか?」
「そうにゃ」
「硝子なんて高価な物、貴族様しか買えませんよ。どうしたのですか?」
「作ったにゃ。自作だから、タダにゃ~」
「猫さんは、本当になんでも出来て不思議です」
「そんにゃ事より、二日酔いは大丈夫かにゃ?」
「え~と。大丈夫そうです」
「それにゃらお昼を食べて、ちょっと体を動かそうにゃ」
「はい!」
わしとリータはお昼を済ませると庭に出る。
「昨日のわしとインモの試合、覚えているかにゃ?」
「はい。猫さんは剣も使わず、インモさんを倒していました。凄かったです!」
「あれがリータの闘い方にゃ」
「私の?」
「そうにゃ。その為の正拳突きにゃ」
「正拳突きと、猫さんのパンチは違ったような……」
「正拳突きは基本にゃ。今度は踏み込んで打つにゃ。こんにゃ風に打ってみるにゃ」
わしはゆっくりとしたパンチをリータに見せる。
「やってみるにゃ」
「こうですか?」
リータはゆっくりとわしの見本を繰り返す。わしはアドバイスをして、形を覚えさせる。
「それじゃあ、速度を上げるにゃ~」
「はい!」
うん。剣と違い、体がスムーズに動いておる。これも毎日、真面目に訓練していたからじゃろう。速度も上々。
リータのパワーと硬さなら、弱い動物なら一発で倒せるかもしれん。ちょっと試してみるか。
わしは次元倉庫から、家作りで余った木の板を取り出す。
「リータ。これを殴ってみるにゃ」
「あの……そんなの殴ったら手が痛くなります……」
「普通ならにゃ」
「普通?」
「まぁやってみるにゃ。拳をギュッと握って思い切り殴るにゃ」
「は、はい」
わしは板が動かないように力を込めて構える。リータは深呼吸してから構え、左足を踏み込み、右の拳で板を突く。
「え?」
リータのパンチで板は真っ二つに割れた。
「手は痛くないかにゃ?」
「痛くないです……」
「つぎ、もうちょっと分厚くするにゃ」
わしはさっきより、1、5倍の厚さの板を構える。
「さあ、来るにゃ!」
「えい!」
まてしても木の板は、真っ二つにパッカーンと割れた。
「痛くないです……どうなっているのですか?」
「それがリータの体質かにゃ?」
わしにもまったくわからん。リータの拳は、なんでこんなに硬いんじゃろう? それにこのパワー……持ってるわしも、ちょっとビビったわい。
「明日からはリータにも、狩りに参加してもらうにゃ」
「はい。頑張ります!」
次の日……朝早くからハンターギルドに行き、依頼を探す。
早く来たのに、ギルドの中は人がいっぱいじゃな。わしを見ても依頼の取り合いで、それどころじゃないみたいじゃ。EランクとDランクの依頼ボードは背が低いから見えない……Cランクはすいているし、ここから選ぶか。
護衛はパスして討伐系じゃな。う~ん。わしが普通に狩りをして稼ぐ額より高いけど、日帰りが出来ない。馬車で二日から五日って位置か。車で行けば日帰り出来るかな?
近いやつで、これにしとくか。リータにはちょうどいいしな。
「リータはこれでいいかにゃ?」
「猫さんに任せます」
「よし。決定にゃ」
わしは依頼ボードから一枚の紙をちぎり、受付カウンターの列に並ぶ。そして順番が来たら、空いたカウンターに依頼用紙を提出する。
「ティーサ、おはようにゃ~。これお願いするにゃ」
「おはようございます。では、確認しますね……猫ちゃん。この依頼を受けるのですか?」
「そうにゃ。ダメかにゃ?」
「これは複数パーティで受ける依頼で、二人じゃ危ないですよ。猿が三十匹に未確認でブラックの情報がありますよ。もしブラックがいたら、Bランクの依頼です。それをCランクの依頼料じゃ、誰も受けないですよ」
わしが受けようとしている依頼は、王都から南西に馬車で二日走った村に出る、猿の駆除。数は三十匹以上、黒い猿もいるかも? って、曖昧な依頼だ。
そんな依頼をわしが何故受けるかと言うと、余裕だからだ。それと、人型に近い動物の方がリータの練習にもなる。
「誰も受けない依頼が、にゃんで張ってあるにゃ?」
「それは……困っている人がいるからです」
「じゃあ受けるにゃ」
「そんな簡単に……ギルドとしては助かりますが、本当にいいのですか?」
「いいにゃ」
「それでは受付はしますけど、危なかったら逃げてくださいよ? ブラックの情報だけでも、持ち帰れば失敗扱いになりませんからね」
「わかったにゃ~」
「では、ハンター証をお願いします」
わしとリータは受付を済まし、心配するティーサに安心させる言葉を掛けて、ハンターギルドを後にする。そして、王都の南門にいる門兵に挨拶をして、街の外に出る。
しばらく歩き、街道から外れるとリータが質問して来る。
「どうしたんですか?」
「面倒だけどお客さんにゃ」
「お客?」
わしは振り返り、ギルドからつけて来ていた、とあるパーティに声を掛ける。
「ここでいいかにゃ?」
「ハッ。わざわざ襲いやすい所に来てくれてありがとうよ」
「イ、インモさん……」
「にゃにか用かにゃ?」
「何か用だと? 猫が人間様に散々恥をかかせたんだ。殺してやるに決まってるだろ! リータ、お前もだ! まぁお前は楽しませてから殺してやるよ」
「「「「ギャハハハハ」」」」
「猫さん……」
テンプレを消化しようと、邪魔の入らない人気の無い場所に連れて来たんじゃが……下劣な奴らじゃ……
「リータ、下がっているにゃ」
「……はい」
「まだ実力差がわかってないにゃ?」
「見た目で油断しただけだ! お前達、殺って……ギャア!」
わしは【白猫刀】を抜き、インモが喋り終わるのを待たずに、峰打ちで斬り飛ばす。インモ達は一瞬で斬り飛ばされ、一箇所に集めらる。
そして刀を返し、インモ達に歩み寄る。
「グッ……」
「これでもまだ手加減しているにゃ……」
「ヒッ……」
インモは痛みに顔を歪めていたが、刀を返したわしの姿が目に入ると、小さく悲鳴をあげる。
「リータに手を出すにゃ? わしのリータ(仲間)に指一本触れさせないにゃ! 【大火球】にゃ~!!」
わしはインモ達の目の前に、10メートルもの大きさの火の玉を作り出す。
「「「「「あ、ああ……」」」」」
「選ぶにゃ! わしの目に映る場所から消えるか……いま、骨まで消えるか。どっちにするにゃ!!」
「き、消えます! 猫様の目の届かない場所に行きます! だから許してください!!」
「……まだ見えてるにゃ」
「「「「「うわ~~~!」」」」」
インモパーティは恐怖のあまり失禁し、成り振り構わず走り出す。こけても、隣に走る男とぶつかっても走ることはやめず、わしの目の前から消え去る。
インモ達が見えなくなると【大火球】は吸収魔法で消し去った。
すんごい走り方じゃったな……人間ってあんな走り方が出来るのか。恐怖を与え過ぎたかもしれん。もしかして、リータも怖がってるかも!?
わしは恐る恐る振り返り、リータの顔を見る。
「えへへ……猫さんったら~」
なんかモジモジしてる~! あ! 仲間って言うところをリータって言ったかも……まぁ怖がられるよりはマシ? マシじゃよな?
この後わしは、照れまくるリータに顔をツンツンされて、腕を組まれるのであった。
昨夜、アマテラスと女房の襲来で、現在わしは、二日酔いの真っ只中じゃ。これからわしの身に何が起こるか不安……
「誰か~! 誰かいないの~?」
「はいにゃ~」
スティナの奴、起きたか……まったく回想ぐらい静かにさせてくれ。
「シラタマちゃん?」
「ね、猫さん……」
「はいにゃ~。いま行くにゃ~」
わしは二日酔いで重たい頭を振り、二階に上がる。二階に上がるとわしの部屋と客間から顔を出した、リータとスティナの姿があった。
「シラタマちゃん。み、水……」
「頭が痛いです……」
「二人ともちょっと待つにゃ」
わしはコップに水魔法で水を注ぎ、二人に手渡そうとする。
「リータ、飲むにゃ」
「あ、ありがとうございます」
「スティナ……にゃんで全裸なんにゃ!」
「みず~」
「ほ、ほれにゃ」
おかしい……リータは着替えさせたが、スティナはそのまま服を着たまま、ベットで寝かせたはずなんじゃが……
「プハー! 生き返る~」
「いいから、服を着るにゃ!」
「え? いつも家では着てないわよ」
裸族か!!
「ここはわしの家にゃ。他人(猫)様の家で裸になるにゃ!」
「わかったわよ~」
「にゃったく……二人とも、お風呂に入ってスッキリするといいにゃ」
「お風呂あるの!?」
「すぐ準備して来るにゃ」
「シラタマちゃんも一緒に入りましょう」
「わしは後から入るにゃ~」
「いいから、いいから」
「待つにゃ! せめて服を着るにゃ~」
「めんどう……リータも行くわよ。お風呂に案内して!」
「え、あ、はい」
「にゃ!? 離すにゃ~」
わしは全裸のスティナに抱かれ、鼻の下を伸ばしながら……いや、嫌がりながらお風呂に連れて行かれる。
「お湯も水も無いわよ?」
「ちょっと待つにゃ。あと、元の姿に戻るから怖がらにゃいで」
「元の姿?」
わしは変身魔法を解き、体積が減ったところでスティナの腕から抜け出す。そして、呆気に取られているスティナを横目に、水魔法と火魔法でお湯を作り、湯船とタンクに湯を満たす。
「猫になった!」
「ずっと猫だにゃ~」
「頭の中に声が……」
「念話にゃ。温かい内に入るにゃ」
しばらくスティナは固まっていたが、わしがリータに洗ってもらっていると復活し、「かわいい」を連呼しながら、リータからわしを奪い取り、洗い出す。
スティナの洗い方は雑で泡まみれになってしまい、リータに助けを求める事となった。
そうして綺麗になって落ち着いたところで、三人で……二人と一匹で湯船に浸かる。
「驚いたけど、その姿もかわいいわね」
「触るにゃ~! シャーーー!!」
「もう! 気持ち良くしてあげようと思ったのに……」
ゴクッ……気持ち良くってなんじゃろう? いや、騙されるな、わし! さっきもひどい目にあったばかりじゃ。
「それにしても、朝からお風呂に浸かれるなんて貴族みたい」
「生き返ります~」
貴族は朝から風呂に入るのか? 王族のさっちゃんでも入ってなかったけど……金持ちはそう見られているって事かな?
「シラタマちゃんは、すごく便利ね。うちに来ない? いや、私もここに住む!」
「帰れにゃ!」
「ケチ~。大衆浴場では人が多いから、こうもゆっくり出来ないのよね~」
「ゆっくりしてていいのかにゃ? 仕事に遅刻するにゃ~」
「ズル休みするわ!」
「行けにゃ~!」
このギルマスは……王都のギルマスなんだから偉いんじゃないのか? こんな奴で大丈夫なのか心配になるな。
「うそうそ。今日は休みよ。でも、昼に顔を出すわ」
休日出勤か。意外と仕事しておるのかもしれん。感心じゃが、とても褒めてやる気分にはなれん。
「シラタマちゃんは、仕事しないの?」
「う~ん。リータ、行けそうかにゃ?」
「はい……大丈夫で、す……」
うん。ダメっぽいな。
「今日はわしも二日酔いだから休むにゃ」
「シラタマちゃんにはバリバリ働いて欲しいのに~。Cランクなんだから、難しい依頼も受けられるわよ。シラタマちゃんの強さなら、Bランクを優先的に受けて欲しいわ」
「ボチボチやるにゃ~」
まだリータが戦えないから、Bランクの依頼は当分先かな? そろそろ簡単な動物を一人で狩れるように仕込んでみるか。
「そろそろ上がるにゃ~」
わしは吸収魔法でお風呂にある水分を全て吸い取る。元々わしの魔力で出した水だから出来る芸当だ。一瞬で消したせいで、スティナが騒ぐから、体を直視してしまった。これは事故だ。ホンマホンマ。
朝ごはんはリータがダウン気味なので、わしが担当する。と、言っても次元倉庫から、いつも多めに作ってあるスープとパンを取り出すだけだ。
「「いただきにゃす」」
「……いただき……にゃす?」
「別にマネしなくていいにゃ」
「仲間外れにしないでよ~」
「それと服をちゃんと着るにゃ~」
「着てるじゃない?」
「下着だけにゃ! 全部着るにゃ!」
「もうすぐ出掛けるからいいでしょ」
「にゃったく……」
下着と言っても薄いタンクトップでは透けて見えておる。逆にエロイ。羞恥心は無いんじゃろうか? おっと、長く見過ぎたか。
リータが何故か膨れておるし、エロジジイと思われてもなんじゃから、庭に目線を持って行こう。
朝ごはんを終えると、やっとスティナは帰って行った。リータは二日酔いがひどいみたいなので寝かせて、わしは二日酔いも治まったので、家の窓を作っていく。
素材は先日、森で集めていたので、硝子魔法で薄く平らにした硝子を土魔法の枠に嵌めるだけ。だが、割れないように慎重に作業したので、少し時間が掛かってしまった。
「ん、んん……猫さん?」
わしが寝室の窓を付け替えていると、リータが目を覚ます。
「起こしたかにゃ? すまないにゃ」
「いえ。……それは硝子ですか?」
「そうにゃ」
「硝子なんて高価な物、貴族様しか買えませんよ。どうしたのですか?」
「作ったにゃ。自作だから、タダにゃ~」
「猫さんは、本当になんでも出来て不思議です」
「そんにゃ事より、二日酔いは大丈夫かにゃ?」
「え~と。大丈夫そうです」
「それにゃらお昼を食べて、ちょっと体を動かそうにゃ」
「はい!」
わしとリータはお昼を済ませると庭に出る。
「昨日のわしとインモの試合、覚えているかにゃ?」
「はい。猫さんは剣も使わず、インモさんを倒していました。凄かったです!」
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「私の?」
「そうにゃ。その為の正拳突きにゃ」
「正拳突きと、猫さんのパンチは違ったような……」
「正拳突きは基本にゃ。今度は踏み込んで打つにゃ。こんにゃ風に打ってみるにゃ」
わしはゆっくりとしたパンチをリータに見せる。
「やってみるにゃ」
「こうですか?」
リータはゆっくりとわしの見本を繰り返す。わしはアドバイスをして、形を覚えさせる。
「それじゃあ、速度を上げるにゃ~」
「はい!」
うん。剣と違い、体がスムーズに動いておる。これも毎日、真面目に訓練していたからじゃろう。速度も上々。
リータのパワーと硬さなら、弱い動物なら一発で倒せるかもしれん。ちょっと試してみるか。
わしは次元倉庫から、家作りで余った木の板を取り出す。
「リータ。これを殴ってみるにゃ」
「あの……そんなの殴ったら手が痛くなります……」
「普通ならにゃ」
「普通?」
「まぁやってみるにゃ。拳をギュッと握って思い切り殴るにゃ」
「は、はい」
わしは板が動かないように力を込めて構える。リータは深呼吸してから構え、左足を踏み込み、右の拳で板を突く。
「え?」
リータのパンチで板は真っ二つに割れた。
「手は痛くないかにゃ?」
「痛くないです……」
「つぎ、もうちょっと分厚くするにゃ」
わしはさっきより、1、5倍の厚さの板を構える。
「さあ、来るにゃ!」
「えい!」
まてしても木の板は、真っ二つにパッカーンと割れた。
「痛くないです……どうなっているのですか?」
「それがリータの体質かにゃ?」
わしにもまったくわからん。リータの拳は、なんでこんなに硬いんじゃろう? それにこのパワー……持ってるわしも、ちょっとビビったわい。
「明日からはリータにも、狩りに参加してもらうにゃ」
「はい。頑張ります!」
次の日……朝早くからハンターギルドに行き、依頼を探す。
早く来たのに、ギルドの中は人がいっぱいじゃな。わしを見ても依頼の取り合いで、それどころじゃないみたいじゃ。EランクとDランクの依頼ボードは背が低いから見えない……Cランクはすいているし、ここから選ぶか。
護衛はパスして討伐系じゃな。う~ん。わしが普通に狩りをして稼ぐ額より高いけど、日帰りが出来ない。馬車で二日から五日って位置か。車で行けば日帰り出来るかな?
近いやつで、これにしとくか。リータにはちょうどいいしな。
「リータはこれでいいかにゃ?」
「猫さんに任せます」
「よし。決定にゃ」
わしは依頼ボードから一枚の紙をちぎり、受付カウンターの列に並ぶ。そして順番が来たら、空いたカウンターに依頼用紙を提出する。
「ティーサ、おはようにゃ~。これお願いするにゃ」
「おはようございます。では、確認しますね……猫ちゃん。この依頼を受けるのですか?」
「そうにゃ。ダメかにゃ?」
「これは複数パーティで受ける依頼で、二人じゃ危ないですよ。猿が三十匹に未確認でブラックの情報がありますよ。もしブラックがいたら、Bランクの依頼です。それをCランクの依頼料じゃ、誰も受けないですよ」
わしが受けようとしている依頼は、王都から南西に馬車で二日走った村に出る、猿の駆除。数は三十匹以上、黒い猿もいるかも? って、曖昧な依頼だ。
そんな依頼をわしが何故受けるかと言うと、余裕だからだ。それと、人型に近い動物の方がリータの練習にもなる。
「誰も受けない依頼が、にゃんで張ってあるにゃ?」
「それは……困っている人がいるからです」
「じゃあ受けるにゃ」
「そんな簡単に……ギルドとしては助かりますが、本当にいいのですか?」
「いいにゃ」
「それでは受付はしますけど、危なかったら逃げてくださいよ? ブラックの情報だけでも、持ち帰れば失敗扱いになりませんからね」
「わかったにゃ~」
「では、ハンター証をお願いします」
わしとリータは受付を済まし、心配するティーサに安心させる言葉を掛けて、ハンターギルドを後にする。そして、王都の南門にいる門兵に挨拶をして、街の外に出る。
しばらく歩き、街道から外れるとリータが質問して来る。
「どうしたんですか?」
「面倒だけどお客さんにゃ」
「お客?」
わしは振り返り、ギルドからつけて来ていた、とあるパーティに声を掛ける。
「ここでいいかにゃ?」
「ハッ。わざわざ襲いやすい所に来てくれてありがとうよ」
「イ、インモさん……」
「にゃにか用かにゃ?」
「何か用だと? 猫が人間様に散々恥をかかせたんだ。殺してやるに決まってるだろ! リータ、お前もだ! まぁお前は楽しませてから殺してやるよ」
「「「「ギャハハハハ」」」」
「猫さん……」
テンプレを消化しようと、邪魔の入らない人気の無い場所に連れて来たんじゃが……下劣な奴らじゃ……
「リータ、下がっているにゃ」
「……はい」
「まだ実力差がわかってないにゃ?」
「見た目で油断しただけだ! お前達、殺って……ギャア!」
わしは【白猫刀】を抜き、インモが喋り終わるのを待たずに、峰打ちで斬り飛ばす。インモ達は一瞬で斬り飛ばされ、一箇所に集めらる。
そして刀を返し、インモ達に歩み寄る。
「グッ……」
「これでもまだ手加減しているにゃ……」
「ヒッ……」
インモは痛みに顔を歪めていたが、刀を返したわしの姿が目に入ると、小さく悲鳴をあげる。
「リータに手を出すにゃ? わしのリータ(仲間)に指一本触れさせないにゃ! 【大火球】にゃ~!!」
わしはインモ達の目の前に、10メートルもの大きさの火の玉を作り出す。
「「「「「あ、ああ……」」」」」
「選ぶにゃ! わしの目に映る場所から消えるか……いま、骨まで消えるか。どっちにするにゃ!!」
「き、消えます! 猫様の目の届かない場所に行きます! だから許してください!!」
「……まだ見えてるにゃ」
「「「「「うわ~~~!」」」」」
インモパーティは恐怖のあまり失禁し、成り振り構わず走り出す。こけても、隣に走る男とぶつかっても走ることはやめず、わしの目の前から消え去る。
インモ達が見えなくなると【大火球】は吸収魔法で消し去った。
すんごい走り方じゃったな……人間ってあんな走り方が出来るのか。恐怖を与え過ぎたかもしれん。もしかして、リータも怖がってるかも!?
わしは恐る恐る振り返り、リータの顔を見る。
「えへへ……猫さんったら~」
なんかモジモジしてる~! あ! 仲間って言うところをリータって言ったかも……まぁ怖がられるよりはマシ? マシじゃよな?
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ファンタジー
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辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
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