36 / 755
第二章 王都編 友達が出来たにゃ~
035 女王様に提案だにゃ~
しおりを挟む「あの~。女王陛下? そろそろこちらに戻って来て、わしを降ろしてください」
う~ん。女王は心の声を聞いたと言ってから、わしをずっと撫でながら遠くを見ている。そんなに恥ずかしい事だったんじゃろうか?
「あの~。陛下? 念話ですから、わししか聞こえてないですよ?」
「ホントに!?」
「本当です。だからわしを降ろして話を聞いてください」
「このままでいいじゃない?」
さっきまでの貫禄はどこにいったんじゃ! 話し方もさっちゃんとの話し方に変わっておる。
「その、大変申し難いのですが、陛下のお胸がわしの頭の上に乗っていまして、その……」
「嫌いなの?」
「それは……ゴニョゴニョ」
「嫌いじゃないなら、いいじゃない」
「いや、その、ほら。さっちゃんも不思議がってます?」
「さっちゃん? サンドリーヌのこと? 私がかわいい物好きってバレたかしら?」
「多少はバレたかもしれません」
「うっ……母の威厳が……」
「まだバレてないかもしれないから、降ろして話をしましょう」
「そ、そうね」
「あ、もう念話は切ります。わしは言葉を覚えて間もないので、難しい言葉はやめて、子供に接するように話をして頂けると有り難いです」
「そうね。あなた相手に厳かな口調は、私にも違和感があるわ。あなたも気がねなく話していいわよ」
「有り難うございます」
念話解除! はぁ……あれだけ大きな心の声は、わしのライフを削られるわい。繋いでおきたいが仕方ない。ルシウスみたいにシュッとした猫だったら、人型でもかっこ良かったのに……チクショウ。
わしはやっと女王の胸から脱出し、さっちゃんの隣に座る。
「それでシラタマの用とは、女王専用ペットになりたいと言うことね」
そんなこと一言も言ってませんけど~! 娘にバレたくないんじゃないのか?
「お母様。シラタマちゃんはわたしのペットよ。取らないで!」
さっちゃん……守ってくれるのはいいんじゃが、わしとの関係は友達じゃ! まだ諦めておらんのか。
「一匹くらい、いいじゃない。ケチ!」
「ダメー!」
子供見たいな喧嘩をし出したぞ。母の威厳はどうした? このままじゃ話が進まん。なんとか話を変えねば。
「二人とも、今日はさっちゃんの暗殺の件で来てるにゃ。その話をしようにゃ」
「サティ……『にゃ』って言ってるわよ?」
「そうなの。かわいいよね~」
「やっぱり、私のペットにするわ!」
「だからわたしのだって!」
暗殺より「にゃ」に食いついた……どういう事じゃ? 最初にも使ったはずなんじゃけど……この似た者親子は危機感を持っていないのか? はぁ……
「どっちのペットも断るにゃ」
「「え~~~!」」
「さっちゃんとは友達じゃないかにゃ? 我が儘言うにゃら友達やめるにゃ~」
「そんな~」
「それなら私とも友達になって!」
もう! 面倒臭い。話が進まん!!
「友達になるから暗殺の話をするにゃ。ペットの話より、大事にゃ話にゃ」
「それもそうね。サティ、ペットの話は一時休戦にしましょう」
「お母様……わかりました」
なんでこの親子はがっしり握手しておるんじゃ? 休戦が終わったらまたペット合戦が勃発するのか……事が片付いたら、早々に逃げ出さんといかんのう。
「かなりの数の人間が捕まったにゃ。それで、首謀者はわかったのかにゃ? 話せる範囲でいいから教えて欲しいにゃ」
「どうしてそんな事を聞きたがるかわからないけど……。たいした事はわかってないからいいわよ」
「それはまだ首謀者どころか、尻尾すら掴めてないって事かにゃ?」
「そうね。巧妙よ。わかっている事は、全て城に出入りしている人間で、大切な人を人質に取られている。指示は誰が置いたかわからない手紙ってだけね」
ソフィが犯人を捕まえた時に口籠っていたのは知り合いだったからか。それ以外は、わしが得た情報だけ……拷問で聞き出したりしないのかな?
それと王女を暗殺しようとしたんじゃから、全員死刑になるのかな? ドロテの件もあるし気になるから聞いておこう。
「拷問で聞き出したのかにゃ?」
「話さない場合はするわ。でも、全員素直に話すし、誘拐されているのは確認が取れているわ」
「捕まった実行犯はどうするにゃ? 死刑かにゃ?」
「まだ決めていないわ。全員死刑となると、他国に我が国が世継ぎで混乱していると知らせるようだから避けたいわね。ただでさえ……なんでもないわ」
女王は何を言い掛けたかわからないけど、聞かれたく無い事なんじゃろうな。実行犯の死刑は無しか……なら、こちらの情報を流してもかまわんか。
その前に……
「さっちゃんは席を外して欲しいにゃ」
「どうして?」
「さっちゃんには聞かれたく無いにゃ」
「つまりわたしの近くにいる人に、怪しい人がいるってこと?」
さっちゃんのたまの鋭さがここで来たか……仲良しのドロテがさっちゃんの暗殺に荷担していたと知ったら、きっと悲しむ。出来る事ならば聞かせたくない。
「さっちゃんは知らない方がいいにゃ」
「いいえ。わたしも聞くわ」
うっ。あのさっちゃんが真面目な目でわしを見ておる。こんなの初めてじゃ。はぁ……決心は固いようじゃな。
「わかったにゃ。ただし、心して聞くにゃ」
「うん」
「わしの手の内にも実行犯がいるにゃ」
「実行犯? 捕まえていないの?」
「こちらに情報を流してもらってるにゃ。指示は手紙を部屋に置いてるみたいだから、部屋を見張って欲しいにゃ」
「見張ればいいのね。手配するわ。それは誰なの?」
「……ドロテにゃ」
「ドロテが……わたしを……」
さっちゃんはショックを受け取るのう。少しフォローしておくか。
「ドロテは実行犯と言うより、誘導役にゃ。もしもさっちゃんを殺せと言われたら、出来ないんじゃないかにゃ? それにドロテも他の実行犯同様、弟を人質にされ、無理矢理従わされているにゃ。この事件が解決したら、自首するって言ってたにゃ」
「弟を……お母様! ドロテの量刑はわたしに任せてください」
「……わかったわ」
さっちゃんは何をするかわからないが、わしが口を挟む事ではないじゃろう。ドロテの部屋の見張りは女王に任せるとして、他に何か出来んじゃろうか? 何か罠にハメたいのう……
う~ん。これならいけるか? 問題は女王の許可を得られるかか。言うだけならタダじゃし、言ってみよう。
「さっちゃんを外出させるのはどうかにゃ?」
「どういうこと?」
「今の実行犯は内部の者で証拠が見つからないにゃ。ならば、首謀者に外注させるのはどうかにゃ?」
「つまり首謀者の金の動きを追えと?」
「さすが女王にゃ。話が早いにゃ~」
「でも、サティに今よりも危険が及ぶ。それに、サティを城から出すには、多くの騎士が必要になるから、許可出来ないわ」
「わしが守るから大丈夫にゃ」
「シラタマが守る? ソフィは危険視していたけど、全然強そうに見えないわよ」
「強いにゃ~! 心外だにゃ~!」
「たしかに動物で白色、ダブル(尻尾や角の数)は、ハンターギルドの危険指定上位だけど……見た目がねぇ」
「シラタマちゃん。危ないからやめとこうよ」
「強いにゃ~! なんにゃら白髪の女騎士と大剣使う騎士を連れて来るにゃ。ぶっ飛ばしてやるにゃ!」
「もしかして、イサベレとオンニの事かしら?」
「名前は知らにゃいけど、おっかさんの仇にゃ。手加減できるかわからにゃいけどやってやるにゃ~!」
「お母さんの仇?」
「シラタマちゃんは、兄弟を迎えに来たの……」
「あの猫の兄弟……私達があなたのお母さんを殺したのね。この国の女王として謝罪します」
女王は立ち上がると深々と頭を下げる。
女王が初めて会った、こんな訳のわからない猫のぬいぐるみに謝罪するのか……それだけペットにしたいって事かな?
「兄弟は無事だし、もういいにゃ」
「どうしてサティを守ろうとするの?」
「兄弟達の願いにゃ。兄弟達はここの暮らしに満足してるみたいにゃ」
「エリザベス……ルシウス……」
「そうにゃ! 兄弟達に掛かっている魔法を解除して欲しいにゃ。人を攻撃できたら、二匹も戦力になるにゃ」
「それは……サティ、どうする?」
「みんな帰ったりしない?」
「わしは連れ戻したいけど、今のところ兄弟達は帰るつもりが無いにゃ」
「それならいいかな?」
よし! これでいざとなったら、あの魔法を使って無理矢理連れ戻せる。エリザベスが怒らなければいいんじゃが……
「これで戦力も増強にゃ。許可してくれにゃ」
「それでもね~……少し、シラタマの力を見せてもらってもいい?」
「にゃにをするにゃ? 城を破壊すればいいにゃ?」
「だから、お家壊さないでよ!」
「そんな事はしないでね。イサベレとオンニには劣るけど、この国の強い騎士と試合をしてもらうわ」
「そのイサベレとオンニでいいにゃ」
「今は夫について他国に行ってもらっているの。二人に劣ると言っても強いわよ」
なるほど。二人がいない理由がやっとわかった。二人と戦いになったら、わしの感情がどう動くかわからん。さっきは出せと言ったが、会わないに越したことはない。
しかし、試合か……やる意味無いんじゃけど、力を見せないと許可はもらえないし、やるしかないのう。
「わかったにゃ。やるにゃ」
「それじゃあ、今日は遅いから明日の昼にしましょう。シラタマは私の部屋で寝ましょうね」
「断るにゃ!」
「どうしてよ~」
こんなべっぴんさんと一緒に寝るなんて緊張してしまう。ひょっとしたらわしのある部分が緊張してしまうかもしれん。断固拒否じゃ! それに……
「さっちゃんの護衛があるにゃ」
「夜に暗殺犯が出たなんて報告は受けてないから大丈夫よ」
「お客は何人か来てるにゃ」
「あ……朝になるとロープで拘束されてる黒装束の男のこと?」
「シラタマちゃんが、朝になると外で寝ているのはそのせい?」
「そうにゃ。だからさっちゃんから離れられないにゃ」
「え~~~!」
「シラタマちゃん……ぎゅ~」
女王のくせに子供みたいじゃな。ホントにこの国で一番偉いのか疑いたくなるわい。さっちゃんは抱きしめ過ぎじゃし、早く事件が解決して欲しいもんじゃ。
「それじゃあ、サティも一緒に寝ればいいのよ! そうしましょう。ね?」
「わたし、もうお母様と寝るような子供じゃないよ」
「私と寝るのは嫌なの? これが反抗期……ガクッ」
女王は悲しそうな演技をしとるが大根過ぎじゃろう。ガクッて……さっちゃんをチラチラ見ておるし……誰が引っ掛かるんじゃろ?
「わ、わかったよ~。今日だけだよ」
ここにおった!!
0
お気に入りに追加
1,168
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。
悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!
えながゆうき
ファンタジー
妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!
剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!
捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~
伽羅
ファンタジー
物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。
狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る
神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】
元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。
ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、
理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。
今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。
様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。
カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。
ハーレム要素多め。
※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。
よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz
他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。
たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。
物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz
今後とも応援よろしくお願い致します。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる