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第二章 王都編 友達が出来たにゃ~

035 女王様に提案だにゃ~

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「あの~。女王陛下? そろそろこちらに戻って来て、わしを降ろしてください」

 う~ん。女王は心の声を聞いたと言ってから、わしをずっと撫でながら遠くを見ている。そんなに恥ずかしい事だったんじゃろうか?

「あの~。陛下? 念話ですから、わししか聞こえてないですよ?」
「ホントに!?」
「本当です。だからわしを降ろして話を聞いてください」
「このままでいいじゃない?」

 さっきまでの貫禄はどこにいったんじゃ! 話し方もさっちゃんとの話し方に変わっておる。

「その、大変申し難いのですが、陛下のお胸がわしの頭の上に乗っていまして、その……」
「嫌いなの?」
「それは……ゴニョゴニョ」
「嫌いじゃないなら、いいじゃない」
「いや、その、ほら。さっちゃんも不思議がってます?」
「さっちゃん? サンドリーヌのこと? 私がかわいい物好きってバレたかしら?」
「多少はバレたかもしれません」
「うっ……母の威厳が……」
「まだバレてないかもしれないから、降ろして話をしましょう」
「そ、そうね」
「あ、もう念話は切ります。わしは言葉を覚えて間もないので、難しい言葉はやめて、子供に接するように話をして頂けると有り難いです」
「そうね。あなた相手に厳かな口調は、私にも違和感があるわ。あなたも気がねなく話していいわよ」
「有り難うございます」

 念話解除! はぁ……あれだけ大きな心の声は、わしのライフを削られるわい。繋いでおきたいが仕方ない。ルシウスみたいにシュッとした猫だったら、人型でもかっこ良かったのに……チクショウ。


 わしはやっと女王の胸から脱出し、さっちゃんの隣に座る。

「それでシラタマの用とは、女王専用ペットになりたいと言うことね」

 そんなこと一言も言ってませんけど~! 娘にバレたくないんじゃないのか?

「お母様。シラタマちゃんはわたしのペットよ。取らないで!」

 さっちゃん……守ってくれるのはいいんじゃが、わしとの関係は友達じゃ! まだ諦めておらんのか。

「一匹くらい、いいじゃない。ケチ!」
「ダメー!」

 子供見たいな喧嘩をし出したぞ。母の威厳はどうした? このままじゃ話が進まん。なんとか話を変えねば。

「二人とも、今日はさっちゃんの暗殺の件で来てるにゃ。その話をしようにゃ」
「サティ……『にゃ』って言ってるわよ?」
「そうなの。かわいいよね~」
「やっぱり、私のペットにするわ!」
「だからわたしのだって!」

 暗殺より「にゃ」に食いついた……どういう事じゃ? 最初にも使ったはずなんじゃけど……この似た者親子は危機感を持っていないのか? はぁ……

「どっちのペットも断るにゃ」
「「え~~~!」」
「さっちゃんとは友達じゃないかにゃ? 我が儘言うにゃら友達やめるにゃ~」
「そんな~」
「それなら私とも友達になって!」

 もう! 面倒臭い。話が進まん!!

「友達になるから暗殺の話をするにゃ。ペットの話より、大事にゃ話にゃ」
「それもそうね。サティ、ペットの話は一時休戦にしましょう」
「お母様……わかりました」

 なんでこの親子はがっしり握手しておるんじゃ? 休戦が終わったらまたペット合戦が勃発するのか……事が片付いたら、早々に逃げ出さんといかんのう。

「かなりの数の人間が捕まったにゃ。それで、首謀者はわかったのかにゃ? 話せる範囲でいいから教えて欲しいにゃ」
「どうしてそんな事を聞きたがるかわからないけど……。たいした事はわかってないからいいわよ」
「それはまだ首謀者どころか、尻尾すら掴めてないって事かにゃ?」
「そうね。巧妙よ。わかっている事は、全て城に出入りしている人間で、大切な人を人質に取られている。指示は誰が置いたかわからない手紙ってだけね」

 ソフィが犯人を捕まえた時に口籠くちごもっていたのは知り合いだったからか。それ以外は、わしが得た情報だけ……拷問で聞き出したりしないのかな?
 それと王女を暗殺しようとしたんじゃから、全員死刑になるのかな? ドロテの件もあるし気になるから聞いておこう。

「拷問で聞き出したのかにゃ?」
「話さない場合はするわ。でも、全員素直に話すし、誘拐されているのは確認が取れているわ」
「捕まった実行犯はどうするにゃ? 死刑かにゃ?」
「まだ決めていないわ。全員死刑となると、他国に我が国が世継ぎで混乱していると知らせるようだから避けたいわね。ただでさえ……なんでもないわ」

 女王は何を言い掛けたかわからないけど、聞かれたく無い事なんじゃろうな。実行犯の死刑は無しか……なら、こちらの情報を流してもかまわんか。
 その前に……

「さっちゃんは席を外して欲しいにゃ」
「どうして?」
「さっちゃんには聞かれたく無いにゃ」
「つまりわたしの近くにいる人に、怪しい人がいるってこと?」

 さっちゃんのたまの鋭さがここで来たか……仲良しのドロテがさっちゃんの暗殺に荷担していたと知ったら、きっと悲しむ。出来る事ならば聞かせたくない。

「さっちゃんは知らない方がいいにゃ」
「いいえ。わたしも聞くわ」

 うっ。あのさっちゃんが真面目な目でわしを見ておる。こんなの初めてじゃ。はぁ……決心は固いようじゃな。

「わかったにゃ。ただし、心して聞くにゃ」
「うん」
「わしの手の内にも実行犯がいるにゃ」
「実行犯? 捕まえていないの?」
「こちらに情報を流してもらってるにゃ。指示は手紙を部屋に置いてるみたいだから、部屋を見張って欲しいにゃ」
「見張ればいいのね。手配するわ。それは誰なの?」
「……ドロテにゃ」
「ドロテが……わたしを……」

 さっちゃんはショックを受け取るのう。少しフォローしておくか。

「ドロテは実行犯と言うより、誘導役にゃ。もしもさっちゃんを殺せと言われたら、出来ないんじゃないかにゃ? それにドロテも他の実行犯同様、弟を人質にされ、無理矢理従わされているにゃ。この事件が解決したら、自首するって言ってたにゃ」
「弟を……お母様! ドロテの量刑はわたしに任せてください」
「……わかったわ」

 さっちゃんは何をするかわからないが、わしが口を挟む事ではないじゃろう。ドロテの部屋の見張りは女王に任せるとして、他に何か出来んじゃろうか? 何か罠にハメたいのう……
 う~ん。これならいけるか? 問題は女王の許可を得られるかか。言うだけならタダじゃし、言ってみよう。

「さっちゃんを外出させるのはどうかにゃ?」
「どういうこと?」
「今の実行犯は内部の者で証拠が見つからないにゃ。ならば、首謀者に外注させるのはどうかにゃ?」
「つまり首謀者の金の動きを追えと?」
「さすが女王にゃ。話が早いにゃ~」
「でも、サティに今よりも危険が及ぶ。それに、サティを城から出すには、多くの騎士が必要になるから、許可出来ないわ」
「わしが守るから大丈夫にゃ」
「シラタマが守る? ソフィは危険視していたけど、全然強そうに見えないわよ」
「強いにゃ~! 心外だにゃ~!」
「たしかに動物で白色、ダブル(尻尾や角の数)は、ハンターギルドの危険指定上位だけど……見た目がねぇ」
「シラタマちゃん。危ないからやめとこうよ」
「強いにゃ~! なんにゃら白髪の女騎士と大剣使う騎士を連れて来るにゃ。ぶっ飛ばしてやるにゃ!」
「もしかして、イサベレとオンニの事かしら?」
「名前は知らにゃいけど、おっかさんの仇にゃ。手加減できるかわからにゃいけどやってやるにゃ~!」
「お母さんの仇?」
「シラタマちゃんは、兄弟を迎えに来たの……」
「あの猫の兄弟……私達があなたのお母さんを殺したのね。この国の女王として謝罪します」

 女王は立ち上がると深々と頭を下げる。

 女王が初めて会った、こんな訳のわからない猫のぬいぐるみに謝罪するのか……それだけペットにしたいって事かな?

「兄弟は無事だし、もういいにゃ」
「どうしてサティを守ろうとするの?」
「兄弟達の願いにゃ。兄弟達はここの暮らしに満足してるみたいにゃ」
「エリザベス……ルシウス……」
「そうにゃ! 兄弟達に掛かっている魔法を解除して欲しいにゃ。人を攻撃できたら、二匹も戦力になるにゃ」
「それは……サティ、どうする?」
「みんな帰ったりしない?」
「わしは連れ戻したいけど、今のところ兄弟達は帰るつもりが無いにゃ」
「それならいいかな?」

 よし! これでいざとなったら、あの魔法を使って無理矢理連れ戻せる。エリザベスが怒らなければいいんじゃが……

「これで戦力も増強にゃ。許可してくれにゃ」
「それでもね~……少し、シラタマの力を見せてもらってもいい?」
「にゃにをするにゃ? 城を破壊すればいいにゃ?」
「だから、お家壊さないでよ!」
「そんな事はしないでね。イサベレとオンニには劣るけど、この国の強い騎士と試合をしてもらうわ」
「そのイサベレとオンニでいいにゃ」
「今は夫について他国に行ってもらっているの。二人に劣ると言っても強いわよ」

 なるほど。二人がいない理由がやっとわかった。二人と戦いになったら、わしの感情がどう動くかわからん。さっきは出せと言ったが、会わないに越したことはない。
 しかし、試合か……やる意味無いんじゃけど、力を見せないと許可はもらえないし、やるしかないのう。

「わかったにゃ。やるにゃ」
「それじゃあ、今日は遅いから明日の昼にしましょう。シラタマは私の部屋で寝ましょうね」
「断るにゃ!」
「どうしてよ~」

 こんなべっぴんさんと一緒に寝るなんて緊張してしまう。ひょっとしたらわしのある部分が緊張してしまうかもしれん。断固拒否じゃ! それに……

「さっちゃんの護衛があるにゃ」
「夜に暗殺犯が出たなんて報告は受けてないから大丈夫よ」
「お客は何人か来てるにゃ」
「あ……朝になるとロープで拘束されてる黒装束の男のこと?」
「シラタマちゃんが、朝になると外で寝ているのはそのせい?」
「そうにゃ。だからさっちゃんから離れられないにゃ」
「え~~~!」
「シラタマちゃん……ぎゅ~」

 女王のくせに子供みたいじゃな。ホントにこの国で一番偉いのか疑いたくなるわい。さっちゃんは抱きしめ過ぎじゃし、早く事件が解決して欲しいもんじゃ。

「それじゃあ、サティも一緒に寝ればいいのよ! そうしましょう。ね?」
「わたし、もうお母様と寝るような子供じゃないよ」
「私と寝るのは嫌なの? これが反抗期……ガクッ」

 女王は悲しそうな演技をしとるが大根過ぎじゃろう。ガクッて……さっちゃんをチラチラ見ておるし……誰が引っ掛かるんじゃろ?

「わ、わかったよ~。今日だけだよ」

 ここにおった!!
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