僕の私の夢は超イージーモード。だった・・・

ma-no

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二章 二人の世界

17 リアルな感触

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「ち、違うの! 消えて!!」

 お楽しみ中に蒼正が現れたから、血塗れの純菜は恥ずかしくなってクラスメイトの死体や馬乗りになっていた絵梨香、それと生々しい血飛沫は夢を操作して消し去った。

「邪魔してゴメン!」

 すると、蒼正は慌てて頭を下げた。

「う、うん。もういいよ。でも、追って来た理由だけ教えてくれる?」
「山田さんが辛そうに見えたから……」
「心配してくれたんだ。フフ」

 自分を心配してくれる人間なんて、この世に母親しか居ないと思っていた純菜は笑みが漏れる。

「たぶん、僕と境遇は一緒だと思うし……さ、さっきの子、イジメの首謀者?」

 ここで蒼正は一気に踏み込んだので、純菜は緊張した顔に変わる。

「田中君もやっぱりイジメられていたのね……」
「うん。中一からずっと……」
「私は小五ぐらいから……」

 お互いカミングアウトしても、話は弾まない。二人は席に着いて、イジメ被害をポツリポツリと、長い時間を掛けて語るのであった……


「そっか。教科書やられちゃったか。親にバレ易くなるんだから、証拠が残るようなやり方は止めて欲しいよね」

 純菜が今日怒っていたのは、教科書が読め無いように落書きされたから。蒼正も経験はあるから文句を言っているけど、なんだか卑屈な文句だ。

「本当に……隠したいのか見付かりたいのか、どっちか分から無いよね。馬鹿ばっか」

 しかし純菜も母親だけには知られたく無いので同意見みたいだ。

「こんな事聞くのアレだけど……田中君をイジメてる人って、どんな人?」

 純菜としては、自分は見せたから同じくらいの見返りが欲しいと踏み込んだ。

「僕は……こいつ。そういえば今日、背中蹴られて制服に足跡付けられたんだった」

 蒼正も悪いと思っていたから、イジメの首謀者である背の高い好青年、五十嵐海斗を夢の中に出現させた。

「うわっ。やりそう。将来、親のコネでいい会社入って、仕事を後輩とかに押し付けそうな顔」
「あ、割と金持ちらしいよ。それなのにカツアゲされた」
「プッ……ホントは皆に噓吐いて見栄張ってるんじゃな~い?」
「プッ。こいつ見てたら腹立って来ちゃった」
「やっちゃえ~!」

 笑顔の純菜の期待に応えて、蒼正は海斗の顔を殴り付ける。その海斗は、数歩よろけてから倒れた。

「ど、どうなってんだ……やっと体が動いた……」
「ハッ……イジメられっ子に殴られて倒れるなんてダッサ……相手してやるから掛かって来いよ」
「んだと……お前、クラオだろ。俺にこんな事しておいて分かってんのか!?」
「雑魚が何言ってんだ? ま、金持ちアピールでマウントを取る卑怯者に、喧嘩する勇気も無いか」
「ふっざけんなよ……俺にボコボコにされた事を思い出させてやる!」

 蒼正に煽られた海斗は立ち上がると、怒りに任せて右の大振りパンチ。しかしここは夢の中。蒼正には止まって見えるから、引き付けてから避けて、海斗の腹に拳を減り込ませた。

「ガハッ……」
「おっそ……手加減してやってんだから、そんなパンチ一発で吐くなよ~?」
「吐くか! 死ね~~~!!」

 海斗は明らかに苦しそうだが、強がってパンチキックのラッシュ。蒼正は十発程避けていたが、純菜が見ているから早目に処理しようと海斗の右拳を右手で受け止めた。

「もういいや」
「離せ! ぐぎゃ!?」

 海斗は逆の手で殴ろうとしたが、蒼正が右拳を握り潰したからには途中で止まる。

「止めろ! 離せ~~~!!」
「ここからがいい所でしょ。フンッ!」
「ぎゃああぁぁ~~~!!」

 痛がる海斗の足を蒼正はローキックで払うと、簡単に両足の骨が折れて変な方向に曲がって崩れ落ちる。そこに蒼正は馬乗りになった。

「いてぇ! もう止めろ~~~!!」
「僕に命令するって……立場分かってんの?」
「止めてください! 謝るから~~~!!」
「僕も謝ったよな? それでどうした? 笑いながら殴ったよな? だから、僕も笑いながら殴るに決まってるじゃん! アハハハハ」
「ぎゃああぁぁ~……」

 有言実行。蒼正はグシャッグシャッと海斗の顔を、笑いながら殴り続けるのであった……


「あ……」

 海斗の元の顔が分から無いくらいグチャグチャにした所で、純菜が見ている事を思い出した蒼正がゆっくりと振り向いたら、かなり近くで笑顔で見ていた。

「ゴメン。久し振りにやったら、めちゃくちゃリアルになってたからテンション上がっちゃった」

 ちょっとバツが悪く感じた蒼正は、海斗を消し去って頭を掻きながら立ち上がる。

「だよね? 私も久し振りにやったら、会話も刺し心地も断然良くなってた。やっぱり、田中君と色々話し合ったのが原因なのかな?」
「かもね。いつもだったら、あんなにリアルな会話にならないもん」

 かなり猟奇的な姿を見せても、お互い気にならない様子で話が弾む。それも一段落付くと、二人は急に黙った。

「「あの……」」

 数十秒の沈黙の後、同時に声を出したので譲り合う事に。しかし中々決まら無いので、いつものジャンケンをしてまた蒼正が崩れ落ちた。

「なんで勝てないんだよ~」
「だって、ここは私の夢の中でもあるんだもん。フフフ」
「はい? ……ズルしてたの??」
「これからはもうズルしないから、今回のも許してね」
「やり直しを要求します!」

 正直な蒼正。その発想は無かったので、今回だけはズルのやり方を教えて貰う事で勝ちを譲るのであった。
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