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二章 二人の世界
14 ストーリーの融合
しおりを挟む夢の主導権はジャンケンの結果、蒼正が負けたので膝から崩れ落ち、純菜はホッとしながらも勝ち誇った顔で「早くして」と命令してる。
しかし、どうやっていいか蒼正は分から無いので、文句を言いながらいつも夢を途中変更するやり方を試してみた。
「あっ! ひとつになったわよ!!」
すると純菜が興奮。目の前がぐにゃっと歪んで、両隣にあったお城が徐々に合体する所を見ていたらしい。その声を聞いて、蒼正はゆっくりと目を開けた。
「本当だ……やれば出来るんだな」
周りを確認した蒼正は、キョロキョロしている純菜に問い掛ける。
「そっちのパーティでクリアしてみる?」
「あ、そういうのも出来るんだ……」
「ま、めちゃくちゃイージーモードだから、面白味に欠けるかも知れ無いけどね」
「いいよいいよ。夢の中が思い通りにいかなかったら、ストレス発散にならないもん」
純菜の明晰夢もイージーモードなので、特に気にならず。ただ、痛みの心配はあるから、その点だけは自分のイメージだけはハードモード仕様に設定して、蒼正の夢にチャレンジするのであった。
「なかなか迫力のある夢だったね」
蒼正が描いた夢をクリアーした純菜は、高評価。ドラゴンやグリフォンといったモンスターがリアルに作られていたから、思ったよりハラハラ感もあったらしい。
「でも、もうちょっと恋愛要素は欲しかったかな~?」
「それは……異世界ハーレム物だから、排除しました」
「そんなのいいのに~。そっちのかわいい子とでしょ? そういうのも経験したかったな~」
「恥ずかしいんだよ。後、僕は男とそういうのはいらないからね?」
「フフ……わかってるよ」
「本当にわかっているのかな~?」
次は純菜の夢。蒼正としては、男とのハーレム展開は避けたいのだが、純菜がニヤニヤしているから心配だ。
その後、メルヘンチックな城から出発した蒼正パーティは、紆余曲折を経て魔王を倒した。
「う~ん……シナリオは良かったけど、戦闘が物足り無かったな~」
純菜の夢は、シナリオ重視で敵が人型しか居なかったから、バトル物が好きな蒼正では楽しめなかった様子。
「後、魔王がイケメン過ぎない?」
「い、いいじゃない。そっちこそ、魔王が怖過ぎるよ」
「ラスボスなんだから、迫力ある方がいいでしょ。てか、イケメン殺すのって、女子だったら罪悪感とか湧か無いの?」
「分かって無いな~。イケメンが華々しく散るのが醍醐味なのよ」
ひとまずお互いの夢の批評会。思った事を言ってはいるが、貶すような発言はどちらも極力避けている。
途中からは、改善点といい所は取り入れるような話に。なんだったら、物語を合体出来無いかの話になっていた。
「おお~。魔王第二形態、中々いい感じじゃん」
「イケメンが化け物に変身するのは有りね」
ストーリーは純菜が大部分を担当し、モンスターはほとんど蒼正の担当。これで今までの物語より、内容も迫力も増したと喜ぶ二人。
このまま記憶を定着しようと静かに座っていたら、蒼正から順に夢の中から出て行くのであった……
翌日の夜、純菜は夢の中に入ったが、待っていると思っていた蒼正がまだ来ていなかったので、一人で待ち惚け。およそ30分程待っても来無かったので、昨日考えた物語を進める。
ストーリーも少し訂正されているから面白く、自分では想像力が低かったモンスターもクオリティが段違い。楽しくイケメンパーティを引き連れて攻略していたら、最後の試練に到着。
イケメン達と死亡フラグが立ちそうなやり取りをした後、純菜は魔王の間に踏み込んだ。
「先にやったな~?」
「あはは。待ち切れなくて」
そこには蒼正も待ち構えて特等席まで作っていたから、純菜は怒った顔。それなのに蒼正は笑いながらどうぞどうぞと魔王戦を勧め、純菜パーティの戦闘を楽しく眺める。
そうして純菜パーティが魔王を倒して大団円になると、特等席で拍手を送っている蒼正の下までやって来た。
「もう~。30分も待ってたんだよ~」
「ゴメンゴメン。早く寝過ぎて。僕も30分は待ったんだから許して」
特に待ち合わせはしていないけど、先にやってしまった方が罪が重いのは当然なので素直に謝る蒼正。
このやり取りがなんだかカップルのやり取りみたいだと感じた純菜は、少し言い過ぎたと思いながら対面の椅子に座った。
「いつも何時に寝てるの?」
「だいたい十一時ぐらいにベッドに入って色々考えるから、零時までにって感じかな? 今日はたまたますぐに寝付けたみたい」
「似たような感じね……でも、正確な時間に眠れる訳が無いから、待ち合わせは難しそうね」
「だね。あ、書き置きぐらいは出来たかも?」
「そうね。今度から掲示板みたいな物も想像しておこうか。あ、そんな漫画、昔あったの知ってる?」
せっかく面白い物語を生み出したのに、二人は感想よりも世間話が楽しい様子。お互い三年ぐらいは友達と呼べる人も話し合い手も居なったから、会話が楽しくて弾みに弾むのであった……
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