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高校生である
126 みんないいヤツである
しおりを挟むお兄ちゃんの前世は猫である。私の名前は広瀬ララ。ジュマルのヤツ~~~!!
ジュマルの前では怒らなかったけど、自室に入ってから私は大荒れ。声には出さなかったが、ベッドでバタバタしながら眠りに落ちた。
翌日は、悪い夢を見たと目覚めたけど、スマホを見たらやっぱり夢じゃない。昨日からスマホを一切見てなかったから、恐ろしい数の通知が来ていたので、現実だと嫌と言うほど実感させられた。
「あ、ララちゃん。早いのね」
「二度寝しようと思ったけど、これ見て目が冴えた……」
「あ~。学校にも説明しなきゃだね。わかったわ。できるだけ早く時間を作るわ」
私のスマホには、野球部、サッカー部、バスケ部のみんなが心配する声だらけ。怒っているのかと思ったけど、ジュマルと私を心配する声だけなので、のん気な母親と違って私は黙ってられない。
「サッカー部とバスケ部は大会が控えてるから、急がないとダメだよ。お昼に私が説明しに行って来るね」
「ララちゃんがやらなくても……いま家を出ると危険かもしれないんだよ??」
「タクシーで行くから大丈夫。それに、みんな優しいし」
「う~ん……ママ、もう出なくちゃいけないから、その話は待って。昼までに電話するからね」
「りょ」
とりあえず母親を送り出したら「わかった」と言いながら各所に通達。引き返しができないようにしておいて、母親から電話が来たらゴリ押ししてやる。
そんなことを思っていたけど、母親からあっさり許可が出た。父親がハイヤーを予約してくれたと聞いたので待っていたら、インターホンのカメラにゴツイ外国人が映っていたから悲鳴が出たじゃない!!
ジュマルが驚いて助けに来てくれたけど、倒そうとしないで! 父親が雇った護衛なの~~~!!
ジュマルの誤解を解いて、作っておいたランチを食べることと留守番を頼んだら、私は買い物に行くと言って外に出る。制服姿を怪しまれなくてよかった~。そんな頭はないか。
ゴツイ外国人がキョロキョロして私を庇いながら黒塗りの車に乗せたけど、ここは日本。スナイパーなんているわけないだろ。てか、どちらかと言うと、あんたが誘拐犯にしか見えないぞ。
車に乗り込んだら、このデカイ車が狭く感じる。デカイの2人も雇わなくても大丈夫だよ~。
父親に怒りの電話をして、意外とカワイイ物好きのSPとキャッキャッとやっていたら、学校に何事もなく到着。帰りまで待機するとテコでも帰らないSPを駐車場に待たせて、まずは校長室に向かった。
校長先生には謝罪して家の方針を説明したけど、暗い顔。「ジュマルほどのスーパースターを大学なんて許せん!」とか、上から圧力が掛かっているんだとか。
私としてもまだ諦めていないから「なんとか説得してみる」と言ったら、拝み倒された。圧力掛けてる上って誰だ?? オフレコで……文科大臣!?
思ったより大物だったので、秘匿にすると約束をして次へ。グラウンドに待たせてるバスケ部たちに会いに行こうとしたら、その前に多くの生徒に囲まれてしまった。どこからか情報が漏れたな……
「ちょ、ちょっと待って。話ならあとで聞くから! いまは行かせて~!!」
こんなことならSPを連れて来ればよかったと後悔していたら、ララちゃんネルのテーマ曲が聞こえて来た。
「エマ!? どこ!?」
エマが助けに来てくれたのだ。
「「「「「ララたん親衛隊、参上!」」」」」
いや、知らない男子たちが踊りながら現れた。その斬新な踊りに生徒たちが呆気に取られていたら、私は腕を引っ張られて集団の外に出た。
「エマ! 助かったけど、何あれ!?」
「あははは。こんなことになるかもと思って雇っておいたんだ。でも、ここからはララの力で乗り切れ」
「はい??」
「踊るんだよ! ワンツースリーフォー!!」
私が「中途半端やな~!」とツッコもうとしたらエマが突然叫んだ。すると生徒たちはステップを踏み始め、親衛隊が煽りながら私の元へスキップでやって来た。
「もうっ! 夏休みに風化させようと思ってたのに~! ワンツースリーフォー!!」
こうなっては私もやるしかない。私は踊りながら大量の生徒を引き連れて、グラウンドに向かうのであった……
「ちなみにだけど、カメラ回してるのなんで??」
「なんか、久し振りにあのダンスやってってコメントがあったから……てへぺろ」
「走って逃げたらよかっただけでしょ~~~!!」
「その顔、いただきました!!」
エマはこの機会に「暴徒化する生徒を操れるのか?」企画と、私へのドッキリを仕掛けていたのであったとさ。
私たちが踊りながらグラウンドに到着すると、野球部たちにも踊りが伝染。私は身振り手振りをして整列させる。なんだこいつら……
こんなに操られる生徒たちはちょっと気持ち悪いが、混乱なく生徒は並んでくれたから、私は拡声器を持って朝礼台に登った。エマも準備いいな……
『この度は、お兄ちゃんがご迷惑を掛けて申し訳ありませんでした! 並びに、サッカー部とバスケ部は全国大会が控えているのに、お兄ちゃんが出場辞退したことをここにお詫びします。重ね重ね、申し訳ありませんでした!!』
私が頭を下げると非難の声が飛んで来たけど、それは当事者ではない生徒からだけ。しかも被害者であるサッカー部たちが怒鳴り付けて黙らせていた。
私はその光景を何が起こっているかわからずに見ていたら、キャプテンたちが私の前までやって来た。
「俺たちは別に怒っているわけじゃないんだ」
「ジュマルは、このまま本当に辞めてしまうのか?」
「俺たちが下手だから嫌になったとか……」
「ひょっとしたら、俺たちに責任があるのかも……」
みんな、めちゃくちゃいいヤツ。これが野球部、サッカー部、バスケ部の総意らしい。私は涙を堪えてその質問に答える。
『お兄ちゃんは私にも何も話をしてくれなかったの。でも、みんなのせいってのは絶対に違うから。それだけは自信を持って言える。だって、裏切ったのはお兄ちゃんなのに、裏切られた側のみんながこれだけ心配してくれるんだよ? こんなにいい仲間、他にいないもん! 部活は辞めても、お兄ちゃんは、みんなのボスだからね!!』
「「「「「わああああああ!!」」」」」
かなり予想と主観で言ったけど、みんな喜んでくれているからそれでよし。私は「ボスで合ってたんだ……」と、ちょっと思ってるけどね。
『それにね……これはどこに耳があるかわからないから、部活のみんなだけで共有して。キャプテン集合!』
朝礼台から降りた私は小声で喋る。
「ママたちは諦めてるけど、私は諦めてないよ? 絶対にスポーツの道に戻してみせる。ちょっと寄り道するかもしれないけど、大学は4年間あるんだからね。それまでになんとか説得してみせるから、私を信じて。みんなの夢は、必ずお兄ちゃんに背負わせてやる!」
「「「うおおぉぉ!」」」
「「「「「うおおおおぉぉぉぉ!!」」」」」
こうして私の発した言葉は伝言ゲームで次々と伝わり、津波のような返事となって学校中に響き渡るのであった……
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