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高校生である
119 とんでも企画である
しおりを挟むお兄ちゃんの前世は猫である。私の名前は広瀬ララ。動画配信、楽しいね!
ララちゃんネルの評判がいいので嵌まっていたら、3学期も終了。ちゃんと勉強はしてたよ? 成績も下がってないし、一緒に勉強してたエマも成績アップしたもん。
ジュマルはいつも通り、赤点ギリギリ。下駄を履かせてこれなんだから、あの交渉がなかったらと思うとゾッとするね。高校卒業後は就職するから、受験勉強いらずで楽チンだ。
まぁジュマルのことはほぼ片付いたから置いておいて、問題は私だ。2年から理系に進むから勉強しているけど、メッキが剥がれつつある。数学や物理、難し~い。
いちおう1年の時からリモート家庭教師に教えてもらっていたけど、文系の問題より時間が掛かって手こずっているのだ。これではジュマルに勉強を教えるのは難しいかも?
そのことを母親に相談したら、両親でやってくれるとのこと。てか、めっちゃ謝られた。仕事が忙しくて、私任せにしていたことを反省しているらしい。
ただ、私がいないとジュマルはすぐ逃げるので、私は隣で自分の勉強をして、両親が教える作戦をするみたいだ。
重荷が無くなったことは助かるが、ジュマルとララちゃんネルと勉強で頭の中がゴチャゴチャだ。昨日やった猫耳キャラが尾を引いているってのもある。あの猫の嫁になったみたいで恥ずかしい!
そういえばあの猫、またボランティアをやり始めたな。それも世界中で……前世でも散々やったのに飽きないのかしら? いや、また考え事が増えてる!
というわけで、今日は休養日。私は赤色のジャージに着替えて広い庭の芝生に大の字で寝転び、頭を空っぽにして、雲ひとつない青空を見ていた。
「ララ……何してるんや?」
そこにジュマルがやって来たので、私は首だけ上げて答える。
「寝てるだけ。芝生で寝転ぶって、なんでこんなに気持ちいいんだろ~」
「そうか? ソファーやベッドのほうが気持ちいいで」
人間と猫の意見の相違。ジュマルは野生の猫だったから、地面に寝転ぶのは飽き飽きしてるんだな。とか思っていたら、ジュマルは私の腕に頭を乗せて寝転んだ。まぁ慣れたモノだけど……
「てか、お兄ちゃん、部活行ったんじゃなかったの? またサボリ??」
「そんなとこや」
「もうじき選抜始まるのに、最近気が抜けてるんじゃない?」
「どうせ楽勝なんやからええやん。あっ、アレってUFOちゃうか?」
ジュマルが変な話の逸らし方をしたと思ったけど、UFOなんて興味あったんだ。
「どう見ても飛行機でしょ。てか、UFO好きなの?」
「おう。火星人なんてタコみたいで美味しそうやん」
「火星人を捕食するなよ。プッ……」
まさかの答えにツッコんでみたけど、ジュマルが火星人を食べる姿は笑えるな。その発想は私にはなかったわ~。地球人は侵略される側だもん。
「お兄ちゃんだったらいっぱい稼げるから、宇宙に行くのも余裕だろうね。その時は私も誘ってね? ……寝てるよ。いつまで経っても猫だね~。ふぁ~」
気持ち良さそうに寝息を立てるジュマルに誘われて、私もこのまま眠りに落ちるのであった……
その後、早く帰って来た母親の悲鳴で目覚めた。私が赤いジャージだったから、私たちが庭で殺されて血みどろになっていると勘違いしたんだってさ。
春休みはジュマルが選抜甲子園を3連覇というニュースが日本中を駆け巡り、あっという間に終わって、私が高2、ジュマルは高3となった。
OM1ウィルス確認から4年目となる今年は、政府から「屋内では自己判断でマスクを着用しなくていい」とか3学期の終わりに言われたけど、マスク姿は代わり映えしない。
5類にもまだ引き下げないし終息宣言しないから、日本人が取るわけないだろ。バカじゃないの?
そんなことを思いながら日々を過ごしていたら、エマがララちゃんネルでやる企画書を持って来た。
「へ? こんなのできるの??」
「まぁ、まだ企画段階だからボツになる可能性は高い。でも、最近のマンネリを打開するなら、これぐらいやったほうが面白いだろ?」
「ネタじたいは面白いけど……私は自信ないな~」
「ララならいけるって。それにゼロでもそれはそれで笑えるだろ」
「なんかエマ、企画がパパに似て来たよ?」
私はもう一度、企画書に目を通して考える。
「う~~~ん……」
「ララが長考なんて珍しいな。なんか引っ掛かるのか??」
「いや、この企画なら、もっと面白いことができそうだと思って……」
「これよりだと? ウチが何日もかけて練りに練って考えたんだぞ?? ムリムリ」
「う~~~ん……」
「聞けよ」
エマのツッコミを無視して考えていたら、閃いた!
「こんなのはどう??」
私が説明すると、エマは驚愕の表情になって右手を左右に高速で振ってる。
「いやいやいやいや。ムリムリムリムリ……」
「えぇ~。面白いでしょ~」
「面白いけど、めっちゃ炎上すんぞ?」
「炎上上等! 若いんだから無茶しようぜ!!」
「うっわ……こんなやる気のララ見たことねぇ……え~い! ウチもやったら~~~!!」
私が「これこそ若人の青春」とか思いながらキラキラした目をしたら、エマも覚悟を決めてくれた。
「さあ、忙しくなるわよ~!」
「おお!!」
こうして私たちは企画書を何度も書き直し、大人たちを説得し、協力者を得て、このとんでも企画を成立させるのであった……
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