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高校生である
111 広瀬家の変化である
しおりを挟むお兄ちゃんの前世は猫である。私の名前は広瀬ララ。キレたギャルはなかなかカッコイイね。
「わりぃ。熱くなった」
ジュマルを怒鳴り付けたエマはドサッと腰を落として私に謝罪した。
「なんのこと?」
「ジュマルを怒鳴ったことだよ。見てただろ」
「うん。見てた。けど、謝ることでもないし」
「人様の家のことに土足で踏み込んだぞ? 怒ってないのかよ??」
「私のために怒ってくれたんだもん。怒れるわけないじゃない。てか、エマって、私のこと好きすぎな~い?」
「バッ……そんなんじゃねぇし。抱きつくな!」
エマの照れた顔がかわいかったので私は抱き締めてみたら、満更ではなさそうだ。でも、そっちに目覚めないか心配だ。
そんなことを考えていたら両親が仲良く腕を組んで帰って来て、持っていたカバンやマイバックを同時にドサッと落とした。
「ララちゃん……」
「ま、まさか……」
「違うよ? 違うからね??」
「ララに襲われて……」
「エマも嘘言わないでよ~~~」
両親までそんな関係を疑って見ていたので否定したのに、エマがいらんこと言うので、ますます疑われる私であったとさ。
エマは帰る直前までおちょくって帰って行ったので、私は料理をする両親を説得していたけど、ジュマルがなかなか部屋から出て来ない。夕食ができたと呼びに行っても出て来ないので、しばらく様子を見る。
私たちが夕食を終えても顔を見せないので両親も心配になって見に行ったけど、父親だけ「威嚇された」とか言って戻って来た。ジュマルの縄張りだもんね。
母親が戻るとどうだったかと質問したら、「ごはんはいらない」と言っているらしい。これはちょっと心配なので、お風呂上がりにオニギリ等を持って部屋に入ったら、ジュマルは布団を被って隠れた。
「お兄ちゃん、大丈夫?」
「……」
「お腹すいてるでしょ? メザシだよ」
ジュマルは返事すらしないので、布団をちょっと捲ってメザシをブラブラ。
「……ッ!?」
「出て来て食べなよ~」
なんとか奪い取られずにメザシを引いたら、やっと顔を見せてくれた。とことん猫だな。
「エマの言ったこと気にしてるの?」
「別に……」
「じゃあ大丈夫だね。ごはん食べたらお風呂入るんだよ? じゃないと、私の布団に入れてあげないからね」
ジュマルは明らかに気にしている顔をしていたので、私はそれ以上踏み込まない。どうせ寝て起きたら忘れるだろうからね。
私も特に気にせず、勉強してから眠りに就くのであった……
それから2日……
「ララ、大丈夫か??」
私は教室の机で突っ伏していたら、エマが心配そうに声を掛けた。
「だ、だいじょばない……」
「いや、ジュマルがスリ寄って来なくなっただけだろ?」
「だって~~~」
飼い猫が……いや、ジュマルがぜんぜん懐いてくれなくなったから、私はこんなに落ち込んでいるのだ。
「だってじゃなくて、それが普通なんだって」
「だってだって。部活も見に来るなとか言うんだよ? それに手からエサを与えても食べなくなったの~」
「だからそれが普通……後半は、ジュマルのことバカにしてるのか??」
確かに後半はおかしなことを言っている自覚はあるけど、飼い猫感覚でいたんだもん!
「ララもジュマルに依存してたってことか……重傷だな」
「そんなことないもん。これはアレよ。成人した子供が全員出て行って、広くなった家を見て『ああ~。これから夫と2人で生きて行くのか……』って感傷に浸る主婦の気分みたいな?」
「エピソードが重いし感情がこもりすぎ。何十年先の話してんだよ」
「一番合ってると思ったの~」
しばらく私は元気なくしていたら、家では母親にも心配された。
「ララちゃん。ジュマ君となんかあった?」
「な、何もないよ??」
「だって、いつもだったらこの時間は、ドラマ見ながらジュマ君を膝枕してナデナデしてたじゃない?」
「私、そんなことしてたの!?」
「無意識だったんだ……」
言語化されて私もおかしくなっていたとはわかったけど、だから最近、手持ち無沙汰だったのか。
「それにジュマ君も変なのよ。私たちのベッドに潜り込んで来たのよ? どうしたのか聞いても教えてくれないし」
「ちょっとあってね……」
心配する母親に、エマとのやり取りを教えて、それから私も距離を取られていると暗い顔で説明してみた。
「そっか……ジュマ君もついに、ララちゃん離れしようと思ってるんじゃない?」
「そうかもしれないけど、私抜きじゃ、絶対にやらかすよ~」
「ウフフ。ララちゃんのほうがジュマ君離れできなそうね」
「ママだって私が距離取ったら、心配になるでしょ?」
「そんなことになったら、ママ生きて行けない! 就職も結婚も許しません」
「いや、私を監禁するつもり??」
母親に笑われたので反撃してみたら、思ったより愛が重かった。そのふたつを禁止されると、確実に幸せになれないよ……
ジュマルが私と距離を取っても日々は過ぎ、そろそろ冬季大会の予選が近付いて来たので、結菜ちゃんたちにスマホで連絡を取ったら教えてくれない。
それどころか、「会議とかはこっちでやるからララちゃんはゆっくりしてね」とハブられた。教室に行っても追い返された私は、今日も机に突っ伏してる。
「今度はどしたん?」
「エマ~。部活のみんなが会議に参加させてくれないの~。私、イジメられてるのかも?」
「それは~……ララを頼らずに自分たちでやろうとしてるんじゃないか?」
「絶対イジメだよ……こうなったら校長先生にチクって、その権力を使って無理矢理にでも……」
「コラコラ。権力で無理矢理やるな」
ダークサイドに墜ちそうになった私を、エマが優しく止めてくれるのであったとさ。
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