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高校生である
100 高校生である
しおりを挟むお兄ちゃんの前世は猫である。私の名前は広瀬ララ。次は高校だ!
「「ララちゃん……また??」」
「あ、結菜ちゃんと愛莉ちゃんだ」
高校でもジュマルの初登校日は、中学生の私が高校指定のブレザーをきっちり着て忍び込んでクラスを覗いていたら、笹岡結菜ちゃんと深井愛莉ちゃんに呆れられてしまった。
「2人とも同じクラス??」
「うん。そうだけど……ララちゃん過保護すぎない?」
「愛莉ちゃんはわかってないの。結菜ちゃんはお兄ちゃんが危険ってのわかるよね?」
「まぁ……でも、初日は何もないよ?」
「今まではでしょ? 高校なら不良がやって来るかもしれないじゃない。ところで岳君はどこに行ったの?? 受かったとは聞いてたんだけど」
いつもならうるさいのが話に入って来る頃合いなのにまだあのエセ関西弁が聞こえないので、話を逸らすついでに使ってみた。
「ジュマル君とクラスが違うかったから、放心状態になってたところまでは知ってるんだけど……」
「自分のクラスにいるんじゃないかな?」
「置いて来たんだね……」
ちょっとかわいそうとも思ったけど、やっとジュマルから離れたかとざまぁみろとも思ったけど、いないならまぁいいや。私は木原大翔君と一緒に挨拶回りしているジュマルを横目に見つつ、愛莉ちゃんたちと喋るのであった。
「もうチャイム鳴ったぞ~。君は……うちのクラスだったかな?」
「あっ! 急がなきゃ!!」
喋りすぎて予鈴を聞き逃し、担任の先生に怪しまれる私であったとさ。
帰り際に職員室に寄ったら、校長先生と今後のスケジュールだけ摺り合わせて今日のとこは家に帰る。
ちなみにだけど、入学式のあとに両親を交えて「ジュマル、問題児。暴力、暴言には圧倒的暴力で返す」と実際に起きた事件と共に説明したら「なんで今ごろ言うの!?」と怒鳴られた。
そりゃ、入学前にネガティブな情報を入れるわけがない。母親も「ララちゃんわかってる~」って褒めてくれたもん。爆弾を抱えた校長先生には悪いとは思うけどね。
高校の新入生は1週間ほど部活はないみたいなので、私は始まる日まで中学校生活をのんびり過ごしていたら、放課後に野球部の監督に捕まった。
「なにか用ですか?」
「冷たっ!? それにジュマルが引退したらパッタリって、冷たすぎないか?」
普通の対応をしたつもりだったけど、監督は私のことを血も涙もない人間だと感じてるな。
「お互い役割は終えましたので……」
「俺は終えてないっちゅうの!」
「あ、そうだった。続投するんですよね? おめでとうございます……って、言っていいのかしら?」
「まぁ今年から全国なんて、夢のまた夢だもんな~。でも、校長先生も記録は気にせず続けてくれと言ってくれたし、気負わずやるつもりだ」
ジュマルのために連れて来たような人だから、続投は重荷になるかと思ったけど、晴れ晴れした顔をしているから大丈夫そうだ。
「それに優勝のおかげで何人か有望な選手も入ったからな。普通に楽しめそうだ」
「いいですね。普通って……相手チームはかわいそうでしたもん」
「マジでな。俺もスクイズのサイン出すの躊躇ったほどだ。試合終わりに何度謝りに行ったことか……」
「言っておきますけど、野球部はまだマシですからね?」
「見た見た。あんなのサッカーやバスケじゃねぇ」
なんだかんだ監督とは話が合うので話し込んでしまったが、部員が呼びに来たので私はお暇する。
「あ、そうだ。マネージャーなんだから、たまには顔を出すんだぞ。みんなも喜ぶからな」
別れ際に監督がそんなことを言うので私は笑顔で会釈だけして、その足で職員室に寄り、退部届を3通出してタクシーで帰ったのであったとさ。
それから各部活から退部届は受理できないとか言われて逃げ回っていたら週末になったので、ジュマルと一緒に高校へと足を運ぶ。
今日は懇談会。校長先生に頼んで、野球部、バスケ部、サッカー部の全員を集めてもらったのだ。挨拶回りは一回で終わらせたいんだもん。
3競技の全員ともなるとけっこうな人数になるので、感染症対策でグラウンドで。もう3年目なのに、まだ何も進んでないから致し方ない。政府、おっそいねん。
この懇談会は、父親がお金を出してくれたから、ペットボトルと小分けしたお菓子ぐらいは用意してる。無理を言って迷惑をかけるのはこちらなのだから、ちょっとでも心証を良くする作戦だ。
長テーブルに部活ごとにムシャムシャゴクゴクしているところに、広瀬兄妹が登場。ガタイのいい男たちは一斉に睨む……
「「「「「うおおおおお~~~!!」」」」」
いや、かなり歓迎モード。でも、うっせぇわ。飛沫とぶだろ。
とりあえず校長先生にマイクを通して「静粛に」ってのをやってもらって、ジュマルの代わりに私が壇上に立った。
「「「「「ラ~ラちゃ~~~ん!!」」」」」
何故か野太い声で名前を呼ばれたけど、なんで全員知ってるの? テレビで数回名乗った程度……それか。てことは、この歓声は私に向けられてたの!?
『広瀬ジュマルの妹、広瀬ララです。ジュマルの実力は異次元だとわかっていても、1年生がエースをするなんて、先輩方の中には気に食わないと思う方もいられると思います』
「「「「「い~え!」」」」」
『へ??』
私が用意した原稿を読んでいたら、急に返事が来たのであたふたしてしまう。
『えっと……ジュマルを歓迎してくれるかな~?』
「「「「「いいとも~~~!」」」」」
『ノリいいな!?』
「「「「「あははははは」」」」」
こうしてお昼の長寿番組みたいなノリの高校生のおかげで私の用意した原稿は握り潰すことになり、早くもジュマルは受け入れられたのであった……
でも、高校生がなんでとっくに終わったあの番組知ってるんだ??
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