お兄ちゃんの前世は猫である。その秘密を知っている私は……

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中学校である

098 有言実行である

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 お兄ちゃんの前世は猫である。私の名前は広瀬ララ。交渉しただけで悪者になるものなの?

 高校の校長先生たちを脅して中学校生活に戻っていたら、けっこう早く結論が出たらしいので校長先生を我が家に招いて話を聞いたところ、私の条件は、ほぼ飲んでくれるとのこと。
 高校生の本分である勉強は再交渉が必要となり、受験は会場に足を運ぶだけで合格の実質免除。赤点は10点マイナスまではなんとか勝ち取れた。あと、私が忍び込むのは何度も質問された。

 さらに部活に掛かる費用をOB会が出してくれると言われたけど、これはどうしていいかわからないので、母親とタッチ交代。
 大翔ひろと君は部活費用軽減に入っていなかったから母の木原さんとも連絡を取り合い、部活費用軽減は2人で折半することになった。
 母親はお金持ちだから大翔君に譲りたかったみたいたけど、木原さんはジュマルのおかげで高校受験が実質免除されるのだからと断ったみたい。だから落としどころの折半になったんだね。

 この案は高校側はどうするのかと見ていたら、校長先生は渋い顔をしていたけど、母親に笑顔で「額は一緒でしょ?」と押し切られていた。
 やっぱり私より母親のほうが一枚上手だ。グレーな戦い方も得意だし……

 これでジュマルの高校進学は決定。私は肩の荷がひとつ下りた気分になるのであった。


 それから数日が経つと、私とジュマルは体育館裏に呼び出された。

「「ジュマル君、西高行くって本当!?」」
「もう決まってるって、ホンマでっか!?」

 別にヤンキーに呼び出されたわけじゃないよ? 幼馴染ミーズの結菜ゆいなちゃん、愛莉あいりちゃん、がく君にだ。教室ではハーレム要員がいっぱい居てできない話だから、体育館裏に呼び出されただけ。
 大翔君が両手を合わせて何度も頭を下げてるってことは、ポロッと言っちゃったんだろうね。ちなみに大翔君とだけは進路を相談していたから、ムリヤリ進学させたわけではない。

「そうなの。みんなはどうするの?」
「「西高行く~~~!!」」
「わても~~~!!」
「いや、第一志望聞いてるの。あったでしょ??」

 3人ともジュマルとの進学が第一志望だったらしい。てか、どこかの強豪校に行くと思っていたから、諦めモードだったみたいだ。

「でも、なんで西高なの?」
「近くでも、もっとスポーツの強い学校あったでしょ?」
「まぁね~……でも、強豪校ってイロイロうるさそうじゃない? お兄ちゃんに合わないと思って」
「あ~。上下関係が厳しいから、ケンカになりそうでんな」
「ま、一番の理由は……」

 私が溜めると、皆は期待の目を向けた。

「校則が緩いしそこそこ学力があるみたいだから、私が行きたいな~っと思って」
「「私たちが行けそうな学校を選んでくれたんじゃなかったの!?」」
「てっきり、わてらのためだと思ってましたわ!?」
「あ、それそれ。それもあるある」

 一番の理由は家から近いってのだったから外したのに、ニ番目も怒鳴られちゃった。なので取って付けたように肯定してあげたけど、「噓クセ~~~」って目はやめて。

「いちおう言っておくけど、勉強しないと入れないよ?」
「私はなんとかなりそう」
「私も第一志望よりちょっと下のランクだから余裕かな?」

 結菜ちゃんは少し勉強すれば行けそうで、愛莉ちゃんは気を抜かなかったら間違いなさそうだから、幼馴染ミーズは高校でも全員集合しそうだね。

「んで……目を逸らして黙ってるあんたは?」
「あ、あきまへ~~~ん!!」

 でも、プラスワンの岳君は無理っぽいな。

「姉さん! 勉強、教えてくだはりませ~~~」
「年下の私に言うな!!」

 というわけで、岳君は受験勉強を必死に始めるのであったとさ。


 それからたまに私がジュマルの教室を覗きに行くと、岳君は幼馴染ミーズや同じ高校を狙っていると聞いた糸本じん君から勉強を習っている姿があった。
 そこで「ジュマルのことをどこかで喋ったか?」と聞いてみたら「誰が言い振らすか!」だとか。バレた場合、ハーレムメンバーが押し寄せて合格点が跳ね上がるから、トップシークレットにしてるんだって。

 ……てことは、私の代が一番、受験者数が多くなるのでは? しまった! 私も受験のこと相談しておけばよかった!?

 いまさら焦った私であったが、リモート家庭教師に相談したところ、私ならもっと上を狙えるとのこと。いまでも西高より上の高校に入れる学力があるらしい……マジで??
 確かに幼い頃から1年先の勉強をしていたし、中学校に入ってからトップ3を逃したことはないけど、学力が高いというわけでもない学校だから実感がなかったの。
 でも、上には上がいたから、ボロが出だしたと思っていたわ。あの子が特別だったんだね。

 かといって、西高に人が群がるのは目に見えているから私も勉強に力を入れた矢先、サッカーの高円宮杯の最終リーグ戦が始まるというので、私もマネージャーとしてついて行った。
 こっちのほうが大事だもん。マネージャーの仕事なんて一切やったことないけど……いや、マネージメントはやってるから、いいんじゃない?

 もちろんリーグ戦もジュマル1人で得点をあげて、11対6だとか野球みたいな成績で勝利し、決勝戦は8対7という手に汗握る展開で優勝したのであった。


「やりきった~~~!!」

 試合に出たのはジュマルなのに、遠征を終えて家に帰った私は嬉しくって母親に抱きついた。

「あはは。お疲れ様。ジュマ君もおめでとう。今日は奮発して、立派なタイを買って来たわよ~?」
「にゃ~!」

 リビングに入ると父親が両手を広げて待っていたけど、ジュマルとハグしなよ。私は横を抜けてソファーに倒れ込むと、母親が頭を撫でてくれる。

「ホントに全部優勝するなんて、夢にも思ってなかったわ。2人とも、よく頑張ったわね」
「そう? 私はお兄ちゃんなら余裕だと思ってたよ。あ~あ。OM1ウイルスさえなかったら、連覇してたのにな~」
「ウフフ。前代未聞なことしておいて、ララちゃんは欲張りね~。だからこその結果かな? 2人とも、本当にお疲れ様。ママの自慢の娘と息子よ~」
「ママ、苦しい~~~」

 私は自分の手柄ではないと言おうとしたけど、抱きついて来た母親に押し潰されて発言は許されず。珍しくジュマルまで飛び込んで来たので動くに動けず。
 羨ましそうな顔の父親に救出してもらい、この日は家族で祝勝会をあげたのであった……
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