84 / 130
中学校である
084 新監督である
しおりを挟むお兄ちゃんの前世は猫である。私の名前は広瀬ララ。ジュマルをプロ野球選手にするぞ~!
私の発案なのだから、小学校が終わったら中学校にタクシーで乗り付け、マネージャーに精を出していたら岳君は退部届けを出した。練習について行けなかったんだって。
てか、最初からやる気なかっただろ。いつまで経ってもグローブもスパイクも買って来なかったし……
結菜ちゃんと愛莉ちゃんはマネージャーを続けているみたいだけど、ジュマルばっかり贔屓しているのですこぶる評判が悪い。そろそろ辞めさせようかな?
そんなこんなで練習試合があったので、両親と一緒に応援に行ったら、ジュマルは大活躍。ノーヒットノーランをやった上に、ホームランを4本も打ったのだ。
この結果には両親ともに喜んでくれたけど、私は次の日、部室に怒鳴り込んだ。
「あんた達なにしてるのよ! あんな弱小校相手にヒット1本って!!」
そう。同レベル相手だったのに、塁に出たのはフォアボールを入れて6人だけ。これでは強豪校相手に渡り合える気がしないのだ。てか、それほどピッチャーが悪かったのに、当たらないってどういうこと!?
「「「「「緊張して……」」」」」
「緊張するほど上手くないでしょ! ジュマルがいるんだから、気楽にやりなさいよ!!」
「もう、そのへんにしてやってくれ……」
「監督も監督ですよ! あんなに偉そうにしておいて、ジュマルにバントのサイン出してたでしょ! バントなんていらないのよ!!」
「初めて勝ちそうだったから緊張して……」
「うが~~~!!」
私、大荒れ。初勝利に浮かれていた野球部を怒鳴り散らして、ジュマルを連れて帰るのであったとさ。
翌日は、さすがに言いすぎたと謝罪しに行ったら、野球部は目の色を変えて練習していた。なので、1人1人に頭を下げて「頑張ってください」と手作りクッキーを配ったら、さらにやる気アップ。明日はたぶん、練習できないだろうな。
監督にも謝罪しに行ったら、逆に謝られた。監督とは名だけの、物理に詳しいただの素人顧問だったんだって……それは本当に申し訳ない!
ちょっとこれは抜本的改革が必要そうだ。私は校長室に乗り込んで、今後の方針を話し合うのであった。
「えっと……広瀬ララさんって、小学生でしたよね?」
「はい……でもですね。本気でやってるんです……」
ただし、保護者でもない小学生が偉そうに言っていたので、校長先生はぜんぜん乗り気になってくれないのであったとさ。
私では野球部をどうしようもないので、ここは両親頼み。野球部保護者会ってのを作ってもらって、金銭面のサポートをしてもらうこととなった。練習試合の活躍が大きかったね!
すると校長先生もウハウハ。そりゃ、ボールやバットだってタダではない。それを全て新品にしてくれるんだから、こちらの要望も聞いてもらえるってモノ。
もちろんそれは、まともな監督の就任。校長先生が探してくれた、近所の元社会人野球部で現在コロッケ屋のおっちゃんが、時給制で監督をやってくれることになった。
両親は元プロ野球選手をフルタイムで雇おうとしていたから、私が必死に止めたよ。いくら注ぎ込むつもりなのよ……
「おお! マジで凄いな。これ、マジで全国狙えるぞ。マジでマジで」
さっそく新監督にジュマルの投球やらバッティングを見せてみたら、「マジマジ」うるさい。他に言葉を持ち合わせてないのか?
ちなみにおっちゃんだと思っていたら、まだ30代だった。ま、私から見たら子供……じゃなかった。小学生から見たら、おっちゃんで間違いないな。
「問題は、チームが弱いのと、お兄ちゃんがバカってことなんですけど?」
「うちにもそんな奴いたな~。右中間とか知らない奴とか。それでもなんとかなるのが野球ってもんだ」
「それはどうかと思うけど……チームの強化はどうするのですか?」
「それは練習あるのみだ。ジュマルを柱にして、邪魔にならないチーム作りをしていくつもりだ」
新監督は意外とスポ根タイプではなかったので、すぐにプランを提出してくれたけど、私としてはもう少し急いでほしい。
「今年の夏は捨てるのですか……」
「仕方がないだろ。上に行ったら、必ずジュマルは敬遠されまくる。0点で抑えていても誰も点を取ってくれないんじゃ、投球制限に引っ掛かってさよなら負けになっちまうんだ」
「お兄ちゃんなら1人で勝てると思ってたのに……」
「ははは。昔はエース1人でいけたんだけどな~。ご時世ってヤツだ。俺も教え方、考えていかないとな~」
「あ、そうだ」
今年を捨てることを納得した私は、ジュマルの取り扱い方を念を押す。
「チーム内で、暴力、暴言は絶対にやめてください」
「保護者がうるさいらしいな。俺ん時はそんなんばっかりだったのにな~」
「保護者と言うより、お兄ちゃんがキレますんで。小3の時に、クラスメートに暴言を吐いた教師をボコボコにした前科があるんです」
「はあ? 子供が大人をボコボコにしたって? 噓だろ??」
「事実です。去年は暴走族の朱痰犯閃をボコボコにしてブッ潰しました」
「あの朱痰犯閃を小6が!?」
「保護者より怖いのは、お兄ちゃんです。くれぐれも気を付けてください。あと、お母さんも弁護士やっててけっこう怖いです」
「き、気を付けます……」
これだけ言っておけば、監督もジュマルとチームメートに手を上げないだろう。でも、辞めないか心配だ。
ブツブツと「ちょっとした小遣い稼ぎで引き受けただけなのに……」とか言ってたし……
0
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
転生先は盲目幼女でした ~前世の記憶と魔法を頼りに生き延びます~
丹辺るん
ファンタジー
前世の記憶を持つ私、フィリス。思い出したのは五歳の誕生日の前日。
一応貴族……伯爵家の三女らしい……私は、なんと生まれつき目が見えなかった。
それでも、優しいお姉さんとメイドのおかげで、寂しくはなかった。
ところが、まともに話したこともなく、私を気に掛けることもない父親と兄からは、なぜか厄介者扱い。
ある日、不幸な事故に見せかけて、私は魔物の跋扈する場所で見捨てられてしまう。
もうダメだと思ったとき、私の前に現れたのは……
これは捨てられた盲目の私が、魔法と前世の記憶を頼りに生きる物語。
美少女に転生して料理して生きてくことになりました。
ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。
飲めないお酒を飲んでぶったおれた。
気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。
その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
異世界着ぐるみ転生
こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生
どこにでもいる、普通のOLだった。
会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。
ある日気が付くと、森の中だった。
誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ!
自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。
幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り!
冒険者?そんな怖い事はしません!
目指せ、自給自足!
*小説家になろう様でも掲載中です
【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる