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小学校である
074 作戦変更である
しおりを挟むお兄ちゃんの前世は猫である。私の名前は広瀬ララ。運命はイタズラがすぎる。
ジュマルの死ぬ運命が修正されていると気付いた私は、頭をフル回転させて素早く結論を出した。
「お兄ちゃん。作戦変更。私が虎太郎の相手するわ」
「ララが? あいつ強いで。ダメや」
私の案にジュマルは野生の勘で反対しているが、ここは譲れない。
「そんなのわかってるのよ。だからこそ私がやらなきゃいけないの。お願いだから止めないで」
「でも……」
「もしもの時は、お兄ちゃんが助けてくれたらいいだけでしょ? 頼みにしてるわよ」
「お、おう……ようわからんけど、任せとけ」
「作戦も忘れないでね? 私とお兄ちゃんが逆になってるからね?」
「わかった」
コソコソと打ち合わせをしたら、私はジュマルより前に出てホウキの柄を両手に持って構え、虎太郎に向けた。
「タイマンは私が受けてやるわ!」
「あん? メスガキがなに言ってんだ??」
「あんたじゃお兄ちゃんとやるには実力不足と言ってるのよ。私が引導を渡してやるわ」
「クハハハハ。メスガキが俺に勝てるってさ」
虎太郎が笑うと朱痰犯閃全員が笑い出したが、私には関係ないこと。
「弱い犬ほどよく吠えるのよね~。あんたも改名したらどう? 犬太朗のほうがお似合いよ」
「なんだと……」
「プッ……字面オモロ。点を取ったら、大がふたつも並ぶわよ! アハハハハハ」
「なに笑ってやがるんだ!!」
「おおだいろう……アハハハハハ。こっちに改名してよ~。アハハハハハ」
「なっ……テメェら!」
字面の時点で数人が吹き出し、「おおだいろう」と言ったらスタンハンセンのほとんどに伝わったのか、私の笑いが伝染してる。
「死にたいみたいだな……」
これで虎太郎も私を敵とみなした。でも、もうちょっと待って。ツボに入った。
「やったら~! かかってこいよ!!」
怒りの表情で睨んでも私が笑っていたので、虎太郎もキレた。
「もういい! 死ね~~~!!」
かかってこいとか言っていたのに、虎太郎は辛抱なし。殴り掛かって来たので、私は棒を振り回して虎太郎の顔面を狙った。
「危なっ……」
しかし、ギリギリでフェイドバックされて避けられてしまった。
「プッ……意外と冷静ね」
「んなもん喰らうか! てか、笑うな!!」
「ゴメンゴメン。犬太朗、行くわよ!!」
「誰が犬太朗だ!!」
私もやっと冷静になると、真面目にタイマンを張るのであった。
まずはお試しで、虎太郎の顔目掛けて突き。それも、2連突きだ!
「チッ……奪ってやろうと思ったのに……」
その素早い突きに、虎太郎も面食らっている。そこに、顔面と胸目掛けての2連突き。これは後ろに跳ばれて避けられてしまった。
「フンッ! その程度か。今度は俺から行くぞ!!」
虎太郎は体を左右に揺さぶりながら距離を詰め、私が放った顔面への突きを手で払おうとした。
「スネ~~~!!」
「ぐあっ!?」
それはフェイント。私は直前で棒を引き、虎太郎の左スネを遠心力を加えて強打してやった。
「いって~……」
ケンケンして後退る虎太郎に、私は追い討ちの突き。
「スネ~~~!!」
「いっ!?」
からの、同じ場所にもういっぱつ。虎太郎は苦痛に顔を歪めた。コレはヒビ入ったかな?
「汚いガキだな……」
すぐに怒りの表情に変わった虎太郎に、私は冷たい目で反論する。
「はあ? あんた、ヤクザを狙ってるんでしょ? だったら棒ぐらいでなに言ってんのよ。相手はドスどころかチャカ使って来るのよ??」
「武器のこと言ってるんじゃねぇ! 足を狙って来てることだ!!」
「あんた武士なの? 正々堂々がしたいなら、タイムスリップでもしたらどうなの~??」
「ふざけんな~~~!!」
私が煽るだけ煽ったら、虎太郎は我を忘れて突っ込んで来たので、隙だらけの左スネをもう一発殴ってやった。バカだね~。
「もう喰らわねぇぞ!」
今度は左スネを引いて向かって来たので、私は嘲笑うように虎太郎の左側に回りながら突きで牽制。そして左スネを目掛けて……
「スネ~~~!!」
「喰らう、がっ!?」
スネとか言いながら棒でアッパーカット。アレは舌噛んだね。口から血も出てるもん。喋っているのが悪い。
「クッソ~~~!!」
虎太郎は血を飛ばしながら殴り掛かって来たが、私はフェイントを入れつつ左スネを集中攻撃。ついでにくるぶしにも何発かいいのを入れたから、虎太郎の左足は数ヶ所骨折して使い物にならなくなるのであった。
「ふぅ~……どうする? まだやる?? はぁはぁ……」
虎太郎は口から血を流し、左足を引きずっているので勝敗は決していると言っても過言ではない。
「やるに決まってるだろ! お前も疲れてるんじゃねぇか~? 捕まえたら俺の勝ちだ!!」
虎太郎が言う通り、私もけっこう動いたからしんどい。小5と高校生では、体格も体力も雲泥の差なのだから、スタミナ勝負になっては分が悪いのだ。
「あったり~。もう疲れたから、次の攻撃でドタマかち割ってあげるわ。死んでちょうだい」
「ハッ……どうせハッタリだろ? ガキが人殺しなんてできるわけがない」
「できるわよ? 私、死んだ人なんて見飽きてるもん」
「だったらやってみろよ!!」
虎太郎は噓だと決め付けて、私を挑発するように両手を広げて棒立ち。無防備だと言わんばかりだ。
「それじゃあ死になさい!!」
その挑発に乗って、私はダッシュからのジャンピング。棒を両手で振り上げて虎太郎の頭を狙う。
「バカめ!!」
その大振りに、虎太郎は真剣白羽取り。私の棒を掴んで押し倒し、馬乗りに……
「ギャッ!?」
なわけない。私は振り上げた棒を垂直に落とし、全体重を先端に乗せて虎太郎の右足の甲に叩き付けたのだ。
「バカはあんたよ!!」
「こんなもん効くか!!」
しかし、虎太郎は最後の力を振り絞って前に倒れるように掴み掛かった。この接近戦では私はしゃがみ込むしかなかったので、逃げ切れそうにない。
「ッ!? ゲホッ!?」
その直後、棒の先端が虎太郎の喉に突き刺さり、横に半回転して倒れ、咳き込みながら悶え苦しむ。
それは何故か……
私は棒を床に固定して、それがバレないように体を引いたのだ。そこに倒れ込んだ虎太郎は、勢いと自分の体重で喉に大ダメージを受けることになったのだ。
「はぁ~。しんど。これで決着でいいでしょ」
私はのたうち回る虎太郎を見ながら、棒を杖にして立ち上がるのであった……
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