お兄ちゃんの前世は猫である。その秘密を知っている私は……

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小学校である

069 暴走族の正体である

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 お兄ちゃんの前世は猫である。私の名前は広瀬ララ。わかんないって言ってるでしょ~。

 暴走族が校内に乗り込んで来てジュマルを呼び出していたのだから、私たちは職員室に連行されて事情聴取を受けさせられたけど、何故呼ばれていたか私も知りたいぐらい。
 ジュマルはイスに座った瞬間に上を向いて寝てしまったから、全ての質問は私が受けるしかないけど、お前のことなんだよ。

 そうこうしていたら給食の時間になったので解放されたけど、無策で解放されたからには、私のところに多くの生徒が集まって来た。
 なので「ジュマルのところに行け」と言ったのだけど、ジュマルは給食を食べたら校庭を爆走中。暴走してるとも言う。

 なんとかかんとか生徒を追い返していたら、池田先生がまた呼びに来て、ジュマルと一緒に今度は校長室に連行された。

「えっと……そちらの方は、ヤクザさんですか?」

 そこには、どう見てもその筋のパンチパーマでサングラスを掛けたダサイ背広姿の人がいたので、私は思ったことが口から出てしまった。

「ララさん。そう見えるけど、刑事さんですよ? では、私は授業の準備があるので」
「はい? 池田先生、置いてかないで~~~」

 池田先生がいらんこと言って逃げたせいで、ヤクザ刑事は懐に手を入れたから超怖い。先生なんだから、思ったことを口にしないでよ!
 そのヤクザ刑事はというと、懐から黒い物を出したので、私は撃たれると覚悟した。

「ほれ? 嬢ちゃん。警察手帳や。本物やで~?」

 けど、警察手帳が出て来ただけ。その言い方が胡散うさんくさいんだけど~?

「これ、刑事さんですか? 顔が違いません??」

 さらに写真も別人。写真では優男なので疑惑は膨らむばかりだ。

「写真が古いだけや。1年前は、おっちゃんもイケメンやったんやで?」
「たった1年で何があった?」
「マル暴に移動させられてな~。先輩に身嗜みの注意受けてたらこうなってもうてんな~。がっはっはっ」
「なんかご愁傷様です……」

 見た目のせいで話が脱線しまくっていたら、同席している校長先生が司会をしてくれて、これまでの経緯を説明してくれるのであった。ジュマルは私の膝に頭を乗せて寝てるけど……


「う~ん……それが私たちになんの関係があるのですか?」

 どうやらあの暴走族は、最近急速に勢力を拡大しているらしいけど、そんなことを聞かされても意味がわからない。そこにヤクザ刑事が付け足す。

「勧誘があったらしいやん? 前にも『朱痰犯閃』に接触されてへんか??」
「いえ、まったく……その前に、『スタンハンセン』ってなんですか?」
「ヤツらのチーム名や」
「ウェスタンラリアットが得意なんですか?」
「嬢ちゃんも全日好きか? あの入場ポーズがカッコええねんな~……」
「「ウィーーー!」」

 ヤクザ刑事が目配せして右手でキツネを作るもんだから、私もやっちゃった。別に私はファンじゃないよ? プロレス好きの息子たちがやってたから反射的にやってしまったの。

「ララさん……その歳で、どうやって知ったのですか?」
「ネ、ネットサーフィン……」

 まったく私たちのノリに入って来ない校長先生に冷静にツッコまれて、私は顔が真っ赤になるのであったとさ。


「つまりや、このままでは嬢ちゃんじゃなくて、この状況で何故かぐっすり眠ってるジュマルがしつこく勧誘されるわけや。なんか思い当たる節はないか?」

 話は戻ったけど、私は本当に身に覚えがないのでそのまま伝えたら、ヤクザ刑事も質問を変える。やっぱり寝てるのは変だと思っていたのね。

「わかった。じゃあ、名前を上げるから、知ってるヤツがいたら言ってくれ。まずは総長な」

 ヤクザ刑事は写真をトントンと机で整えて、一番上の写真を前に出した。

「佐藤虎太郎」

 私は写真の顔にはピンと来なかったが、名前には反応する。

「ここの卒業生……」
「あん? そうなんか??」
「それ、わざととぼけてます??」
「すまん。その通りや。クセでな。校長先生はわかってないみたいやったから、ちょっと試した。すまんかったな」

 ヤクザ刑事は両手を合わせて頭を下げるので私は許し、校長先生は卒業アルバムを持って来た。覚えてないんだって。

「んで、こいつとはなんかあったんか?」
「お兄ちゃんがジャスティスローリングサンダーでブッ飛ばした。それから何かと因縁を吹っ掛けられていたの」
「ジャス……なんて?」
「ヒーロー物の跳び蹴りよ。佐藤君が6年生で、お兄ちゃんが1年生の時の出来事。まだ根に持ってたんだ……しつこっ」
「まてまて。小1が小6に勝ったやと? そんなことあるんか??」
「お兄ちゃんはその歳で、誰とは言えないけど熊みたいな人も倒したの。常識は捨てて」
「その出来事を証明できるヤツはいるか??」

 ヤクザ刑事は信用してないみたいなので、池田先生に来てもらったけど、忘れてた。

「佐藤、虎太郎君……」
「ジャスティスローリングサンダーの」
「ああ! ジャスティスローリングサンダーの!!」
「それでわかるんやな……」

 そりゃ、あの事件は衝撃的だもん。人物の名前は忘れていても、技名は忘れるわけがない。

「ということはだ。戦力確保にやって来たってのが確実やな。佐藤のヤツ、ジュマルのことをいまも強いと思ってるで」
「まぁ強いですけど、なんのために戦力が必要なの?」
「それはわからん。わかっていても言えねぇけどな」
「守秘義務ですか……それはわかりましたけど、警察の対応はどうするのですか? 私たちの警護をしてくれるのですか??」

 ジュマルが狙われているのだから、私もこの質問は外せない。

「つってもな~。まだ事件らしい事件になってねぇからな~」
「警察、役立たず……」
「パトロールの回数は増やすから、そう怒るなや」
「ママの言う通り、お役所は対応が遅い……」
「おまっ! これが限界なんやって。てか、この嬢ちゃんどうなってんねん? よくよく考えたら、大人でもこんなことになってたらあたふたするもんやぞ??」
「ララさんは昔からこうなんで……」

 私が警察非難していたらヤクザ刑事も不思議に思い、私のことに詳しいはずの池田先生もたいして助けてくれなかったとさ。
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