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小学校である
065 ダンス教室である
しおりを挟むお兄ちゃんの前世は猫である。私の名前は広瀬ララ。小3女子の遊びって何するモノなんだろう……
友達に遊びに誘われたけど、ジュマルが主役をかっさらって行ったからには私もどうしていいかわからない。とりあえず話を合わせて、日が暮れて来たら解散となった。
それからというもの、遊びのオファーが多数舞い込み、私たちは毎日忙しい。学校から帰ってランドセルを置いたら、ジュマルと一緒に河川敷や公園に行っているからだ。
そこでは、女子がジュマルに「キャーキャー」言っているだけ。なんか上級生とかも混ざって増えてない? 私はジュマル会いたさに使われているだけじゃない!?
こんなことになるなら、ピアノの家庭教師、やめるんじゃなかった。断る理由ができるもん。
ちなみにピアノはそこそこ弾けるようになったけど、コンクールレベルには届かず。自分より遙かに上手い子供を見て挫折しちゃった。なので、先生が就職するタイミングでやめたのだ。
先生は私から離れたくなかったらしく、うちに就職するとか言ってたけど……週2の家庭教師で暮らして行けるわけないでしょ。
なんとか子供たちからのオファーをやんわりと断るいい口実はないかと考えていたら、母親が助言してくれる。
「行きたくないなら適当に断ればいいじゃない? なに悩んでるの??」
「だって、理由もなく断ると次から誘われないとか、付き合いの悪いヤツとか陰口たたかれそうなんだもん」
「なにママ友の集まりみたいな心配してるのよ」
「じゃあ、ママならどうするの? バッサリ断るの?」
「それができたら苦労しないわよ~」
「一緒じゃ~ん」
女の付き合いは、子供も大人も悩みは変わらないらしい。しかし母親は働き出してから断る理由ができたみたいなので、私もそれしかないか。
「習い事してもいい?」
「いいわよ。今度はボイストレーニングなんてどう? あとダンスも習って、ゆくゆくはアイドルになるの~。ママ、CDいっぱい買ってナンバーワンにしてあげるからね!」
「ママの中で、私がすでにアイドルになってる……弁護士はいいんだ」
「あ……やっぱりママ、アイドルなんて不安定な仕事は許しません。東大法学部の家庭教師を見付けて遊ぶ時間もあげません」
「極端!?」
夢見がちな母親を現実に引き戻したら、スパルタママに早変わり。どうしても私を弁護士に引き入れたいらしいけど、小3からはきつい!
「私、ダンスやりたいな~。お兄ちゃんにもやらせてみない?」
「ジュマ君? ……2人で踊ったらかわいいかも!?」
というわけで、ジュマルも道連れにしてダンス教室に通う私であった。
ダンス教室初日は、平日なのに母親だけでなく父親も見に来てる。有給取ったのですか。まだ習ってもいませんよ。
「じゃあ、ステップから行くよ~」
両親がカメラを回して「キャーキャー」言うなか、女性ダンサー、ユウ先生の号令で初心者の子供たちと一緒に踊ってみる。これぐらいは私も楽勝。ジュマルもなんとかついて来ている。
「次は手も使うよ~」
ここからついて来られない子供もいたが、私は余裕でクリア。この体はリズム感がいいみたいだね。
ジュマルを見たらついて来てないどころか、逆立ちしてた……
「そんなことしろなんて言われてないでしょ!」
周りから拍手が起こっているけど、私はジュマルを叱責し、ユウ先生には謝罪してから次に移行する。
「さっきの動きに回転を足すよ~」
これも私は無難にクリア。他の子供はこけている子もいるけど、ジュマルを止めねば。
「回り過ぎ! 半回転でいいの~~~!!」
ジュマルは調子に乗ってコマみたいに回っているのでなかなか止まらない。抱きついて止めてやろうと思ったけど、回転が速すぎて弾き飛ばされそうなので、体を低くしてスライディングのような足払いをしてやった。
「なんで止めるねん」
「よくあの速度で受け身取れたね」
ジュマルはコロコロ転がって行くかと思ったけど、床に手をついて逆さでピタッと止まったからには私もビックリ。ユウ先生なんて凄い顔してるな。
周りの大人は拍手喝采。ジュマルに送られているのかと思ったけど、私の足払いも見事だったらしい。
この日は、広瀬兄妹の漫才みたいなダンスに周りの人たちは満足して帰るのであった。
それから2週間が経つと、私とジュマルは何故かおっちゃんダンサーのショウ先生の上級者クラスに割り振られたけど、私はついて行くのがやっと。難しいけどダンスって楽しいね。
ジュマルは……教えられたことを一切やらない。常にオリジナルダンスだ。
「すごっ……教えてもいないのに、ブレイクダンスしてる……」
「先生はお兄ちゃんに甘すぎです。リズムもクソもないですよ」
「そうだけど、この才能の塊を見ちゃうとな~。ララもブレイクダンスやっちゃう?」
「ムリです!!」
ジュマルと一緒にされると困る。私は要領がいいだけなので、ジュマルとは別メニューをお願いするのであった。
「ララ、ジュマルを止めてくれないか?」
「お兄ちゃん、待て~~~!!」
でも、飛び跳ねまくるジュマルを止められるのは私しかいないので、上級者クラスに留められるのであったとさ。
ダンス教室に通い始めてひと月。予定通り遊びのオファーは激減したのだが、違う問題が起きている。
「また生徒が増えた……うっひゃっひゃっひゃっひゃっ」
ショウ先生の笑いが気持ち悪いのは置いておいて、ダンス教室の生徒が激増しているのだ。
「「「「「キャーーー!」」」」」
「「「「「ジュマルく~ん」」」」」
「「「「「ララちゃ~ん」」」」」
理由は、広瀬兄妹のダンスを見たいがため。子供でも美男美女の2人が通っているだけでなく、私の無難なダンスにジュマルが私の周りを飛び跳ねまくるから、近所で話題になっているらしい。
うちの学校の子も大勢通い始めたけど、誰がリークしたんだか……私はダンスを習い始めたと言っただけだよ? それだな。
こうなっては致し方ない。
「先生、うちで個人レッスンとかできないですか?」
「できないこともないけど……はあ!? ララたちがここに来なくなったら、どうなるんだ!?」
「元に戻るだけです。では、私たちはこのへんで……」
「ちょっと待ってくれ~~~」
客寄せパンダなんてやってられるか!
私は心を鬼にして、ダンス教室から去るのであったとさ。
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