47 / 130
小学校である
047 母親の秘密である
しおりを挟むお兄ちゃんの前世は猫である。私の名前は広瀬ララ。先生ではない。小1だよ?
「あはは。そんなことあったんだ~」
「「「あはははは」」」
今日は日曜日。隔週で集まるようになったママ友スリーは、私たちの苦労話を聞いてめっちゃ笑ってる。だったら死ぬほど笑わせてやる!
「母の絵です」
「「「ぶはっ!? あはははは」」」
「ララちゃん! どこから持って来たの!?」
母親の「猫」という題の絵を見せたら、ママ友スリーは吹き出してぶっ倒れた。どこからも何も、母親がゴミ箱に捨てた物を回収して自分の部屋に隠していた物だ。
この騒ぎには子供たちも集まって来たので見せてあげたら、漏れなくぶっ倒れた。母親の絵は最強だ。プププ……
「こちらは兄の絵です」
「「「「「ぶはっ!? あはははは。もうやめて~~~。あはははは」」」」」
さらに畳み掛けたら、みんなお腹が痛そう。捻れちゃったんだね。気持ちはわかる。私も次の日は筋肉痛だったもん。
これ以上はさすがに死にそうなので、母親が音楽の話題に変えて大画面テレビに私とジュマルの発声練習を見せていたけど、追い討ちになっただけだと思う。
「なんで『にゃ~にゃ~』言ってるのよ~」
「「「「「あはははは」」」」」
そりゃ、こんな雰囲気のところに意味不明な発声練習は笑うに決まってる。
「まさかママ……さっきの仕返し??」
「仕返しじゃありませ~ん。かわいいから見せただけで~す」
「ぜったい仕返しだよ~~~」
母親の策略で、私まで恥を掻かされたのであったとさ。
皆の笑いが落ち着いたというか笑い疲れてダウンして、ようやく話ができるようになったら木原さんから質問が来た。
「これでジュマル君もカラオケに参加できるようになったの?」
「いちおう……でも、あんまり上手くないよ」
「へ~。ジュマル君の歌も聞きたいな~」
「どちらかというと下手だよ?」
「まぁまぁ。カラオケやろうよ~」
木原さんは私の忠告を聞かずに勝手にカラオケを準備したので、仕方なく私がジュマルの十八番を入れて歌わせてみた。
「う~ん……下手は下手だけど、笑えるほどでもないわね」
「だから止めたの~」
ジュマルは音程を微妙に外して抑揚が少ないので、アップテンポの歌でも盛り上がりに掛ける。何を歌わせても動揺みたいに聞こえるのだ。
「やっぱりカラオケといえば、ララちゃんの独壇場よね~。次、いってみよう!」
「ええぇぇ~……」
木原さんに押されて私は嫌々マイクの前に立つと、仕方なく歌い出す。
「んあぁ~あぁ~。つがるかいきょう、ふゆぅげぇしきぃぃ~~~♪」
「「「「「ララちゃ~~~ん!!」」」」」
でも、超盛り上がるから私もノリノリ。演歌を3曲も歌っちゃったよ。でも、お母さん方も演歌を聞く年じゃないと思うんだけど、わかって聞いているのかしら?
めちゃくちゃ盛り上がった私のリサイタル……いや、ママ友の集まりも16時前には終了。ママ友スリーは感謝の言葉を残して帰って行く。
それから父親が戻り、楽しい夕食をしてジュマルの宿題や明日の予習、お風呂に入って就寝するいつもの日常。
その日の深夜、トイレで目覚めてしまった私は喉の渇きもあったから1階のキッチンにまで下りたら、ダイニングに明かりがついていた。
「ママ……何してるの??」
ダイニングでは、分厚い辞書を開いてノートを取る母親の姿。私に気付いた母親は、背伸びしながら振り返った。
「ん~? ララちゃんどうしたの?」
「喉渇いたから……」
「そっかそっか。お茶でいい? ママも飲もっと」
母親は質問に答えずにキッチンに向かったので、私はキッズチェアに登って待っていたらお茶を持って戻って来た。
「これって弁護士のお勉強??」
「よくわかったね~。これ、六法全書っていうの。凄く分厚いでしょ? 昔は全部頭の中に入ってたのにな~……7年のブランクはきついね」
母親はケラケラ笑いながら六法全書を私に見せてくれた。私は「文字、ちっさ!」とか思いながらお茶を飲む。
「なんで勉強してるの?」
「そろそろ仕事しようかと思ってね。準備してたの」
やっと母親が私が知りたい答えを言ったけど、私はコップを落とし掛けた。
「家計、火の車……私、習い事辞める……」
「ララちゃん? 違うよ? てか、どこでそんな言葉覚えて来るの!?」
「職員室……」
「ララちゃんって休み時間、いったい何してるの??」
私が真っ青な顔をしていたから母親は焦ったみたいだけど、私の返しが気になって普通のテンションに戻った。
「2人とも小学校に入ってから、ママは暇になっちゃったからね。仕事しようかと思っただけなの」
「家事と仕事の両立って大変じゃないの?」
「まぁ……そうかもしれないね。でも、パパも協力してくれるって言ってたから大丈夫」
母親はウィンクしているけど、私は心配だ。私の元夫なんて、ぜんぜん協力してくれなかったし、パンツの場所すら知らなかったんだからね!
「パパ、心配……」
「あはは。そう思うよね~? でも、パパはああ見えて家事得意なのよ? ララちゃんたちが生まれる前は、2人で家事を分担してやってたんだから。もしかしたら、パパの割合のほうが多かったかも?」
なんだって!? あの容姿で仕事まで出来て家事までやるのか! どっかの猫に見せてやりたいわ!!
「あはは。信じられないか。まぁちょっとはララちゃんたちに不自由させてしまうかもね~……やっぱり家政婦さんでも雇おっかな~?」
私が驚愕の表情をしていたら、母親も勘違いして金に物を言わすつもりになっている。ちょっと愚痴ってただけなのに……
「お兄ちゃん、家政婦は嫌がると思う……」
「確かに……まぁ、まだ先の話だから、もうちょっと考えるよ。それよりララちゃんも一緒に勉強する~??」
「ムリ。重たくて持てないよ~」
「あははは。そこ? 大人になったら持てるようになるから、将来はママと一緒に仕事しようね~??」
「検討させていただきます」
「なんで政治家みたいなこと言うの!?」
弁護士の道は険しいと知っているからだ。いまは天才に見えるだろうけど、年を重ねる事に年相応になって行くのは目に見えている。
私は母親の誘いと頬ずりを押し返しながら、将来のことに思いを馳せるのであった……
0
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
美少女に転生して料理して生きてくことになりました。
ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。
飲めないお酒を飲んでぶったおれた。
気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。
その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
転生先は盲目幼女でした ~前世の記憶と魔法を頼りに生き延びます~
丹辺るん
ファンタジー
前世の記憶を持つ私、フィリス。思い出したのは五歳の誕生日の前日。
一応貴族……伯爵家の三女らしい……私は、なんと生まれつき目が見えなかった。
それでも、優しいお姉さんとメイドのおかげで、寂しくはなかった。
ところが、まともに話したこともなく、私を気に掛けることもない父親と兄からは、なぜか厄介者扱い。
ある日、不幸な事故に見せかけて、私は魔物の跋扈する場所で見捨てられてしまう。
もうダメだと思ったとき、私の前に現れたのは……
これは捨てられた盲目の私が、魔法と前世の記憶を頼りに生きる物語。
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
忍チューバー 竹島奪還!!……する気はなかったんです~
ma-no
キャラ文芸
某有名動画サイトで100億ビューを達成した忍チューバーこと田中半荘が漂流生活の末、行き着いた島は日本の島ではあるが、韓国が実効支配している「竹島」。
日本人がそんな島に漂着したからには騒動勃発。両国の軍隊、政治家を……いや、世界中のファンを巻き込んだ騒動となるのだ。
どうする忍チューバ―? 生きて日本に帰れるのか!?
注 この物語は、コメディーでフィクションでファンタジーです。登場する人物、団体、名称、歴史等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
ですので、歴史認識に関する質問、意見等には一切お答えしませんのであしからず。
❓第3回キャラ文芸大賞にエントリーしました❓
よろしければ一票を入れてください!
よろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる