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幼児期である

034 勉強である

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 お兄ちゃんの前世は猫である。私の名前は広瀬ララ。あざとくって何が悪い。

 空手教室に生息する熊のおかげで、ジュマルが手加減を覚えたのだから重畳ちょうじょう。その手加減のおかげで父親も倒れずに済んだ。けど、めっちゃ痛そうにしていたから、もう少し手加減してあげて!
 これで子供に絡まれてもジャスティスローリングサンダーは出さないと思うけど、暴力じたいがよろしくない。これまでと同じく、極力逃げるようにと教え込む私であった。


 ジャスティスローリングサンダーのせいでここ数日ジュマルに掛かりっ切りだったけど、いつもの日常に戻れば私は忙しい。幼稚園から帰ったら、ピアノや英会話の習い事。
 確かに私がやりたいと言ったけど、グランドピアノなんて買わなくてもいいのに……どちらも家庭教師って、私のためにいくら使ったの!?

 ここまでお金を掛けられては、私も辞めるに辞められない。我慢して習い事を続ける。でも、けっこう面白いかも?
 ただし、家庭教師が家に来るとジュマルが暴れ出すのでリビングが大変。そのことをジュマルに聞いてみたら「俺の縄張りに勝手に入って来た」とか言ってた。父親が建てた家だろ。
 ひとまず家庭教師が使う場所だけは私の縄張りにして、ジュマルから了承を得たので静かにしてくれるようになった。私は父親の家だと知ってるよ?

 そうして平和に暮らしていたのだが、ジュマルが小学校で立て続けて問題を起こした。

 まず1個目は……

「ジュマ君が隠れて寝てるのバレちゃった」

 私の完璧な作戦が何故か崩されたのだ。理由は、クラスメートが授業中にあまりにもうるさかったから、ジュマルが「うるさい! 眠れないだろ!!」と怒ったから。
 その日は母親が呼び出されて、軽い感じで私に教えてくれた。この事件をきっかけにクラスが静かになったから、担任の池田先生も強く言って来なかったんだって。

 2個目は、ジュマルが悪いわけではない。

「佐藤さんとこの息子さんが、ジュマルとマラソンして救急車で運ばれたんだって……」

 前回ジャスティスローリングサンダーされた佐藤虎太郎こたろう君がジュマルに絡んだけど、ジュマルは私との約束を守って逃げただけ。
 でも、救急車が来たってことは、私がやったようにあおりまくって追いつけそうで追いつけない速度で逃げていたのだろう。母親が「似たようなことなかったっけ?」とか私を見たけど、「記憶にありません」と言っておいた。

 しかし3個目は困ったちゃん。

「オ、オール0点……」

 ジュマルは宿題が出ても報告しないし、テストがあっても書きもしないで母親にも提出していなかったから、ついに池田先生が母親を呼び出したのだ。
 さすがに全て0点では、母親も放心状態で帰って来た。なので、私の出番。ジュマルに何をやっているのだと聞いたら、ハテナ顔。私が教えていなかったから、わからなかっただけみたいだ。
 とりあえず池田先生が親に渡せと言った物は全て母親に渡すように約束し、いま持っているプリントを提出させたらガッチガチ。ランドセルに詰め込み過ぎて、中で化石化していた。

「これは……テストかしら? ララちゃんでも書けるのに、名前も書かれてない……」

 母親が頑張ってプリントを広げたら、0点の嵐。平仮名の問題なのに何も書かれていなかった。

「ママ! わたしがおしえる!!」
「ララちゃんが? まぁこれぐらいなら教えられると思うけど……ママと一緒にやろっか?」
「あい!」

 平仮名すら書けないなんて、ヤバすぎる。なので母親と一緒に、ジュマルに教え込む私であった。

「また逃げた!?」
「おにちゃ! 待て~~~!!」

 ただし、ジュマルは勉強を嫌ってすぐに逃げるので、なかなか学力が上がらないのであったとさ。


 ジュマルを教育することで、また私の時間が削られて韓流ドラマが見れない……じゃなくて、私まで小1の勉強をするハメになったので、1学期の後半には教科書を全部読んでしまった。

「ララちゃん凄いね~。漢字もやってみよっか?」

 なので、母親はジュマルそっちのけで私に勉強を教えようとしている。

「おにちゃは?」
「平仮名が書けるようになったし、いいんじゃない?」
「カタカナ~」
「あっ! じゃあ、ララちゃんは漢字ね」

 なんだかどっちが年上かわからない。私は幼稚園児で、ジュマルは小学生だよ?

「これがララちゃんの漢字の名前ね。広瀬……空詩……ね?」
「……こう?」
「偉いね~。書けたね~」

 母親の書いた漢字をマネて書いてみたけど、「ララ」って読めない! え? 「ソラシ」じゃないの?? 意味も習ってないから聞けないし!! ここは慎重に……

「なんかへん……」
「え? 何が変なの? いい名前よ~」
「わたしの名前、ララ。同じ音がふたつなのに、漢字だとちがうよ?」
「ララちゃん……そこに気付くとは、なんて天才なの!」

 誰でも気付きそうだけど、母親に怪しまれなかったからよかった。

「この空って字は、屋根の上のお空のことね」
「……あい」
「詩って字はちょっと難しいんだけど、お歌に近い言葉ね」
「あい……」
「空でうたうと書いて、ララってなるの」
「……なんでそうなる??」
「だからね。ララちゃんの名前はね……」
「だからなんでそうなる??」

 母親は名前の由来からきちんと説明してくれたけど、これだけはどうしてもわからないので何度も質問する私であったとさ。
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