34 / 130
幼児期である
034 勉強である
しおりを挟むお兄ちゃんの前世は猫である。私の名前は広瀬ララ。あざとくって何が悪い。
空手教室に生息する熊のおかげで、ジュマルが手加減を覚えたのだから重畳。その手加減のおかげで父親も倒れずに済んだ。けど、めっちゃ痛そうにしていたから、もう少し手加減してあげて!
これで子供に絡まれてもジャスティスローリングサンダーは出さないと思うけど、暴力じたいがよろしくない。これまでと同じく、極力逃げるようにと教え込む私であった。
ジャスティスローリングサンダーのせいでここ数日ジュマルに掛かりっ切りだったけど、いつもの日常に戻れば私は忙しい。幼稚園から帰ったら、ピアノや英会話の習い事。
確かに私がやりたいと言ったけど、グランドピアノなんて買わなくてもいいのに……どちらも家庭教師って、私のためにいくら使ったの!?
ここまでお金を掛けられては、私も辞めるに辞められない。我慢して習い事を続ける。でも、けっこう面白いかも?
ただし、家庭教師が家に来るとジュマルが暴れ出すのでリビングが大変。そのことをジュマルに聞いてみたら「俺の縄張りに勝手に入って来た」とか言ってた。父親が建てた家だろ。
ひとまず家庭教師が使う場所だけは私の縄張りにして、ジュマルから了承を得たので静かにしてくれるようになった。私は父親の家だと知ってるよ?
そうして平和に暮らしていたのだが、ジュマルが小学校で立て続けて問題を起こした。
まず1個目は……
「ジュマ君が隠れて寝てるのバレちゃった」
私の完璧な作戦が何故か崩されたのだ。理由は、クラスメートが授業中にあまりにもうるさかったから、ジュマルが「うるさい! 眠れないだろ!!」と怒ったから。
その日は母親が呼び出されて、軽い感じで私に教えてくれた。この事件をきっかけにクラスが静かになったから、担任の池田先生も強く言って来なかったんだって。
2個目は、ジュマルが悪いわけではない。
「佐藤さんとこの息子さんが、ジュマルとマラソンして救急車で運ばれたんだって……」
前回ジャスティスローリングサンダーされた佐藤虎太郎君がジュマルに絡んだけど、ジュマルは私との約束を守って逃げただけ。
でも、救急車が来たってことは、私がやったように煽りまくって追いつけそうで追いつけない速度で逃げていたのだろう。母親が「似たようなことなかったっけ?」とか私を見たけど、「記憶にありません」と言っておいた。
しかし3個目は困ったちゃん。
「オ、オール0点……」
ジュマルは宿題が出ても報告しないし、テストがあっても書きもしないで母親にも提出していなかったから、ついに池田先生が母親を呼び出したのだ。
さすがに全て0点では、母親も放心状態で帰って来た。なので、私の出番。ジュマルに何をやっているのだと聞いたら、ハテナ顔。私が教えていなかったから、わからなかっただけみたいだ。
とりあえず池田先生が親に渡せと言った物は全て母親に渡すように約束し、いま持っているプリントを提出させたらガッチガチ。ランドセルに詰め込み過ぎて、中で化石化していた。
「これは……テストかしら? ララちゃんでも書けるのに、名前も書かれてない……」
母親が頑張ってプリントを広げたら、0点の嵐。平仮名の問題なのに何も書かれていなかった。
「ママ! わたしがおしえる!!」
「ララちゃんが? まぁこれぐらいなら教えられると思うけど……ママと一緒にやろっか?」
「あい!」
平仮名すら書けないなんて、ヤバすぎる。なので母親と一緒に、ジュマルに教え込む私であった。
「また逃げた!?」
「おにちゃ! 待て~~~!!」
ただし、ジュマルは勉強を嫌ってすぐに逃げるので、なかなか学力が上がらないのであったとさ。
ジュマルを教育することで、また私の時間が削られて韓流ドラマが見れない……じゃなくて、私まで小1の勉強をするハメになったので、1学期の後半には教科書を全部読んでしまった。
「ララちゃん凄いね~。漢字もやってみよっか?」
なので、母親はジュマルそっちのけで私に勉強を教えようとしている。
「おにちゃは?」
「平仮名が書けるようになったし、いいんじゃない?」
「カタカナ~」
「あっ! じゃあ、ララちゃんは漢字ね」
なんだかどっちが年上かわからない。私は幼稚園児で、ジュマルは小学生だよ?
「これがララちゃんの漢字の名前ね。広瀬……空詩……ね?」
「……こう?」
「偉いね~。書けたね~」
母親の書いた漢字をマネて書いてみたけど、「ララ」って読めない! え? 「ソラシ」じゃないの?? 意味も習ってないから聞けないし!! ここは慎重に……
「なんかへん……」
「え? 何が変なの? いい名前よ~」
「わたしの名前、ララ。同じ音がふたつなのに、漢字だとちがうよ?」
「ララちゃん……そこに気付くとは、なんて天才なの!」
誰でも気付きそうだけど、母親に怪しまれなかったからよかった。
「この空って字は、屋根の上のお空のことね」
「……あい」
「詩って字はちょっと難しいんだけど、お歌に近い言葉ね」
「あい……」
「空で詩うと書いて、ララってなるの」
「……なんでそうなる??」
「だからね。ララちゃんの名前はね……」
「だからなんでそうなる??」
母親は名前の由来からきちんと説明してくれたけど、これだけはどうしてもわからないので何度も質問する私であったとさ。
0
お気に入りに追加
29
あなたにおすすめの小説
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
美少女に転生して料理して生きてくことになりました。
ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。
飲めないお酒を飲んでぶったおれた。
気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。
その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
転生先は盲目幼女でした ~前世の記憶と魔法を頼りに生き延びます~
丹辺るん
ファンタジー
前世の記憶を持つ私、フィリス。思い出したのは五歳の誕生日の前日。
一応貴族……伯爵家の三女らしい……私は、なんと生まれつき目が見えなかった。
それでも、優しいお姉さんとメイドのおかげで、寂しくはなかった。
ところが、まともに話したこともなく、私を気に掛けることもない父親と兄からは、なぜか厄介者扱い。
ある日、不幸な事故に見せかけて、私は魔物の跋扈する場所で見捨てられてしまう。
もうダメだと思ったとき、私の前に現れたのは……
これは捨てられた盲目の私が、魔法と前世の記憶を頼りに生きる物語。
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる