お兄ちゃんの前世は猫である。その秘密を知っている私は……

ma-no

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幼児期である

028 幼稚園バトルである

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 お兄ちゃんの前世は猫である。私の名前は広瀬ララ。通知表があるなら言っておいてよね~。

 幼稚園の通知表の件で初めて母親と険悪な感じになってしまったけど、私が折れてあげた。だって「ララちゃんまでグレる~」って泣くんだもん。でも「まで」ってことは、ジュマルはすでにグレてるってことなの?
 それは置いておいて、通知表を私が読んでいたらおかしいので、母親に読ませて情報を得る。

 どうやら母親も幼稚園に通知表があるなんて知らなかったらしく、他のお母様方と「こんなのあるんだ~」とか盛り上がったらしい。しかし、開けてビックリ玉手箱。
 私の評価が全て5段階中の5だったので、お母様方には見せずに隠した。これを知られては絶対に揉めるとすぐに気付いたそうだ。
 幸い通知表を渡された時に非公表となっていたから、奥様方も隠して聞いて来なかったので隠し通せたけど、母親が真っ青な顔をしていたから「よっぽど酷かったのね」と思われているらしい……

(それはわかったけど、この通知表、枚数多くない? トイレや挨拶にまで点をつけるなんて、必要なことなのかな~? あと、何この英語の文章? お母さんは普通に読んでるけど、他のお母さん読めるの??)

 ひとまず母親にまとめて読んでもらったら、私は夕食ができるまで通知表を広げたまま見入っている。

(さてさて。どうやって一花いちかちゃんを言いくるめてやろうか……)

 私はどうやって攻めるべきかと作戦を考えるのであった……

「なぁ、ママ? ララが怖い顔してるんだけど……」
「通知表を今まで見せなかったから怒ってるのよ~。なんであの時、隠すと言った私を止めてくれなかったのよ~」
「えぇ~。2人で話し合って決めたことじゃないか。僕だけのせいにするなよ~」

 帰宅した父親は、私の顔を見て母親と揉めるのであったとさ。


 そして翌日、お昼休憩の食事が終わったあとに、私と平良一花ちゃんは相対していた。

「よく恐れもせずに私の前に立てたわね」

 一花ちゃんは腕を組んで悪役令嬢みたいなことを言っているけど、私は気にしない。

「んっとね。ママから聞いたらね。わたし凄かった」
「凄かったじゃないの! どうしてくれるか聞いてるの!!」
「ゴメンね。わたしじゃどうしようもないの。だから、違う方法で決着つけない?」
「け、けっちゃく?」
「どっちが一番か戦うの。勝ったほうが本当の一番」
「それいいわね! やってやるわ!!」

 一花ちゃんが乗って来たので、ルール説明。

「いま、五十音表習ってるよね? あいうえおっての」
「うん! それで戦うのね!!」
「そそ。全部書けた人の勝ち。どっちも全部正解していたら早い者勝ちね」
「わかったわ!」
「んじゃ、いつやろっか??」
「フッフ~ン♪ 私は今からでもいいけど、ララちゃんはまだ習ったばかりだから、待ってあげてもいいわよ~?」

 一花ちゃんがすでに勝ち誇った顔をしていると言うことは、もうすでに家で勉強済みなのだろう。それならば早いに越したことはない。

「わたしも今からでたいじょぶ。先生に審判頼んで来るね。そっちのクラスで待っててね~」

 ひとまず先生に斯く斯く云々と説明したら、「え? あいうえおで決闘? え? え?」と混乱していたけど、手を引いて隣のクラスへ。
 星組では、一花ちゃんが私と戦うとか言って大事おおごとにしていたから、完全にアウェーとなってしまった。子供って、ブーイングなんてできるんだね。

「ララちゃん。お友達呼んで来よっか?」
「だいじょぶ。すぐおわる」

 そのブーイングに先生は心配してくれたけど、心配するのは私じゃない。

「ララちゃんの勝ち……え? 早すぎる!?」

 五十音ぐらい、書けて当然。負けるわけがない。元お婆ちゃんをナメるな!
 ちなみに一花ちゃんは、全部書き終わったのは私より半分遅れで5個ほど間違いがあった。なので、両手を床に突けて放心状態になっている。


 呆気に取られる先生やギャラリーの子供を無視して、私は一花ちゃんの前に膝を突いた。

「わたしの勝ちだね」
「……」

 一花ちゃんが顔を上げるとポロポロと涙が落ちていた。

「悔しい? 悔しいよね。でもね。わたしにも勝てない人はいっぱい居るの。すっごく悔しかった。だからってわたしは勉強やめない。だって勉強おもしろいもん。勉強したらママが喜んでくれるもん。大人になった時に絶対に役に立つもん」

 私の言葉に、一花ちゃんはよくわからないって顔をしている。

「私に勝ちたかったら、私を目標にしちゃダメ。もっと頭のいい人……社長、宇宙飛行士、総理を目指すぐらいじゃないとね。そしたら大人になったイチカちゃんは、きっと凄い人になっているよ。楽しみにしてるね~」

 私はそれだけ言うと、手を振って立ち去るのであった。

 のちに平良一花は、20代で財務省初の女性事務次官となり、白猫党とかいう変な名前の政党と一緒に財務省改革を成し遂げたのは、まだ先のお話……

「ララちゃ~ん? また幼稚園でやらかしたって~??」
「ち、ちらない……」

 そんな派手な決闘をしたのだから、幼稚園から母親に連絡が行ったのは、その日のお話であったとさ。
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