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幼児期である

025 卒園式である

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 お兄ちゃんの前世は猫である。私の名前は広瀬ララ。そりゃ無理だよね~。

 ジュマルの小学校受験は、入試当時は両親が抜け殻のようになっていたから結果発表を待って、何があったのかと聞いてみた。
 両親の面接だけで言ったら120点(自己採点ではなく教官の採点)。でもジュマルは教えたことが全然できなかったし、面接中なのに急に走り回って「にゃ~にゃ~」言っていたから、その時点で結果は見えてしまったんだって。

 どうして私について来てくれなかったとか責任転嫁されたけど、妹が面接の席に同席していたらおかしいからだ。家族会議でやめとこうってなったよね?


 ジュマルのお受験は終わったこと。ここからは気持ちを切り替えて、まずは私の終業式だ。
 両親はめっちゃ写真や動画を撮って嬉しそうにしてくれたけど、帰り際に園長先生から「ちょっと」と呼び出されたから、喜びは吹っ飛んだ。何もやらかしてないよ~。

 両親の目が何か言っているけど、私も園長室に連行されて園長先生の話を聞かされることに。

「ララさんは成績トップで面倒見がいいのはとてもいいことなのですが……友達からなんと呼ばれているか知ってますか?」
「ララかララちゃんと呼ばれていると聞いてますが……」
「ママです……」
「「ママ~~~??」」
「……」

 はい。その通りです。噓ついてました。だって、同い年の子にママって呼ばれてるなんて言えないでしょ?

「ど、どうしてそんなことに……」
「お友達が泣いていたら世話を焼き、ケンカしていたら仲裁し、絵本を読んで聞かせたり、膝枕で寝かせたり……」
「「あぁ~……」」

 はい。完全にママしてました。子供があまりにもかわいくて出過ぎたマネをしました。反省してるので、そんな目で見ないでください。

「ララちゃ~ん? 噓はダメだよ~??」
「そうだな。噓はダメだ」
「あい。うそついてゴメンなさい」
「いや、問題はそこじゃなくてですね」
「「「わかってますから~~~」」」

 というわけで、この1年でやらかしたのは、ジュマルより私のほうが多い結果となるのであったとさ。


 家に帰ってからは、珍しく両親は私に説教。

「ケンカの仲裁とかは置いておいて、ララちゃんはなんで絵本を読めるのかな~? ママに教えてほしいな~??」

 いや、事情聴取。カツ丼は出て来ない。あの猫なら出してくれるのに……

「ママがよんでくれたの、おぼえてただけ。おぼえてないところは、てきとうにいった」
「ララちゃんって、ほとんど韓流ドラマ見て寝てなかったっけ?」
「さいきんは……むかしはよんでくれた」
「凄い記憶力ね……」

 母親はまだ納得してないようだけど、こんな場合はいつも父親が助けてくれる。

「さすがにそれはありえるのか??」

 アレ? 天才とか言ってくれると思っていたのに……

 なんだか両親は私のことに疑いを持ち出したので、どう言っていいものか悩んでいたら、ジュマルがやって来た。

「ララのこといじめてるの?」
「ううん。いじめてないよ。ちょっと話してただけよ」
「ララ、悪いことしない。やめてあげて」
「そ、そうね。ジュマ君の言う通りだね」
「ララ。行こう」
「うん……」

 そして何故か助け出してくれた。どゆこと?

 ジュマルに手を引かれてソファーに連れて行かれたら、とりあえずさっきのことを聞いてみる。

「なんで助けてくれたの?」
「ララは一番の仲間。助けるのは当然」
「あ、ありがと」

 私、納得。ジュマルは仲間想いだから、私が困った顔をしていたから助けてくれたのだ。しかし、順位があるとは初耳だ。

「二番はいるの?」
「ママ。ごはんくれるから」

 エサ基準って、猫か! 猫だった!!

「三番は?」
「う~ん……仲間のみんな」
「パパは何番??」
「あいつ、仲間じゃない。敵」
「なんで!?」

 父親がかわいそうすぎて、思わずツッコンじゃった。広瀬家ヒエラルキーの最下位だと思っていたのに、仲間ですらなかったんだもん!

「俺よりママと仲良しだから」
「仲間に入れてあげてよ~。パパがいるから美味しい物が食べられるんだよ~」
「う~ん……」
「テレビだって見れるのパパのおかげなんだよ~」
「う~~~ん……」
「いや、入れろよ」
「ララがそこまで言うなら……」

 私が怒った顔を見せることで、なんとか父親もジュマルの仲間の末席に加われたのであった。でも、一番下って、かわいそうに……


 父親が仲間になったことで、ついにジュマルも父親の名前を覚えた。というより、知っていたけど仲間じゃないから呼ばなかっただけなんだって。
 それで父親は涙していたけど、呼び捨てで呼ばれるようになったから微妙な顔になっていた。私にやめさせるように相談が来たし……

 そうこうしていたら、ついにジュマルの卒園式がやって来た。

「やっとここまで来た……」
「長かったわね……」

 父親も母親も感無量。周りの親御さんたちとは違う種類の涙を流してる。

「小学校でも上手くやって行けるだろうか……」
「どうなるんだろう……」

 さらに、未来の心配で胸が張り裂けそうだ。

「なるようになる。出たとこ勝負よ!」

 なので私が励ましてあげたら……

「う、うん。そうだな……」
「そうだけど、いつもどこからそんな言葉覚えて来るの?」
「と、ともだちがいってた……」

 また疑われて、苦しい言い訳する私であったとさ。
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