上 下
24 / 130
幼児期である

024 お受験である

しおりを挟む

 お兄ちゃんの前世は猫である。私の名前は広瀬ララ。幼児向けアニメ、けっこう面白い。

 魔法少女プリチュアを両親と一緒に一気見することで幼稚園での会話について行けるようになったけど、大人脳のせいで会話は微妙にズレてしまう。

 9話は最高傑作じゃなかったの? 両親もめっちゃ泣いてたよ!?

 ジュマルもアニメは気になるのか一緒に見ていたけど、バトルシーンが好みみたい。なので、幼稚園の男子は何を見ているのかと情報収集して来るように父親に言われたけど、ジュマルに聞けよ。
 ジュマルは保育園では会話は少ないみたいなので、仕方なく男子に聞きに行ったら私から逃げる子続出。意味がわからないから女子に理由を尋ねてみたら、私がかわいいからじゃないかとか言われた。

 やっぱり~? 照れ屋さん。

 喜んでいても情報収集はできないので、友達の女子に頼んで一緒に行ってもらい、流行りのアニメや特撮物の情報は手に入った。
 それをジュマルに見せてみたら、飛び跳ねまくり。ヒーローなんかの大技をマネするので、また我が家が大変なことになってしまった。

 その空中で錐揉みしながらするキック、実写で出来るのお兄ちゃんだけだよ! お父さんがぶっ飛んだ~~~!?

 ヒーロー物の特撮を見せてしまったがためにまた心配なことが生まれたので、私と母親は1週間ほど保育園に付き添うことになったとさ。


 ジュマルには危険な技は「怪人が出て来るまで封印」との約束をし、子供や大人に使わないのを確認したら、私は幼稚園に戻る。
 1週間も休んだけど、勉強は余裕。難しいのはお遊戯系だけ。子供みたいに踊って声を出すのは恥ずかしいんだもん。

 それにはなかなか慣れない日々が過ぎ、今度は違う問題が出て来た。

「や~い。ブス~」

 なんか男子が私に絡み始めたのだ。最初は目も合わせられなかったクセに、優しくしていたら調子に乗り出したとも言う。あと……

「お子ちゃまね~。好きなら好きって言えばいいのに~」
「なっ!?」

 男子なら、好きな子にちょっかい出すモノ。こっちからからかってやったら顔が真っ赤になったので間違いなさそうだ。

「わたし~。優しくって大人な人が好きだな~」

 なので、小悪魔っぽいことしてみたら、ちょっかい出す子がいなくなった。子供、チョロイ……

 とか思っていたら、次は女子。

「アサヒ君に色目使わないでくれない?」
「「そうよそうよ」」

 意中の男子がいるみたいで絡まれた。でも、4歳でそこまで早熟なの? 色目ってどこで覚えた??

「えっと……じゃあ、いまからこっぴどく振る。そこをミウちゃんが優しくしたら、アサヒ君のハートはイチコロ。やってみない?」
「本当にそんなことになるの??」
「あまり押しすぎるとダメ。なるべく自然にね」
「うん!」

 面倒そうな女子に対してはアシストに徹してみたら……

「ララちゃ~ん。私も協力して~」
「「「「「私も私も~」」」」」

 恋の伝道師になっちゃった。おかげで女子からは大人気。でも男子からは、いきなり振られるから恐れられることになってしまったよ……


 恋の伝道師ブームは引っ付く男女が飽和状態になったら終わったので、我が空組も平和を取り戻し、男子とも仲良くやっている。
 そんな日々を過ごしていたら、あっという間に1学期が終わり、夏休みも終わり、どこに行ったかの話で幼稚園は盛り上がっていたけど、広瀬家では次なる問題が起こっていた。

「「「小学校か~……」」」

 そう。来年にはジュマルが小学生になるのだ。いまの環境から変わるから、何か問題を起こさないかと両親と私は心配なのだ。

「保育園では何もやってないよな?」
「うん。勉強も全然やってないけど……」
「おにちゃ。バカ……」

 ジュマルはいまだに住所も父親の名前も言えないのだから、小学校の勉強について行けないのは確実だ。ちなみに私と母親の名前は普通に覚えたのに、なんでだろ?

「それはまぁアレだけど、入ってしまえばこっちのモノだろ?」
「言い方は悪いけどね……」
「せんせい、たいへん……」

 無理に勉強を教えたら暴れる可能性もあるので、先生の苦労しか思い浮かばない私たち。

「ここは賭けに出るか?」
「「賭け??」」
「前にママが言ってたお受験だよ。大学までエスカレーター式の小学校に入ってしまえば安泰だ!」
「「う~~~ん」」

 てなことがあって、広瀬家総出で大バクチに挑戦することとなった。


 ジュマルの通っている保育園には、私が幼稚園から帰ったらすぐに迎えに行き、母親と私での詰め込み教育。私がジュマルをお座りさせて、母親が座学の先生だ。
 父親が帰って来たらそこに加わり、子供が寝たら両親の面接対策に精を出す毎日。私も勉強を教えていたけど、両親は大変すぎて気付いてなかった。

 そして受験日当日、私は父方の実家に預けられ、めっちゃ甘やかされて待っていたら、両親が迎えに来た。

「ママ、パパ、おつかれさま」

 けど、2人とも頭が地面に突きそうなぐらい項垂うなだれていたので皆まで聞かない。私は2人の肩をポンッと叩き、労いの言葉を掛けただけであったとさ。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。 飲めないお酒を飲んでぶったおれた。 気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。 その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

転生先は盲目幼女でした ~前世の記憶と魔法を頼りに生き延びます~

丹辺るん
ファンタジー
前世の記憶を持つ私、フィリス。思い出したのは五歳の誕生日の前日。 一応貴族……伯爵家の三女らしい……私は、なんと生まれつき目が見えなかった。 それでも、優しいお姉さんとメイドのおかげで、寂しくはなかった。 ところが、まともに話したこともなく、私を気に掛けることもない父親と兄からは、なぜか厄介者扱い。 ある日、不幸な事故に見せかけて、私は魔物の跋扈する場所で見捨てられてしまう。 もうダメだと思ったとき、私の前に現れたのは…… これは捨てられた盲目の私が、魔法と前世の記憶を頼りに生きる物語。

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈 
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。

秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚 13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。 歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。 そしてエリーゼは大人へと成長していく。 ※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。 小説家になろう様にも掲載しています。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

処理中です...