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幼児期である
020 決闘である
しおりを挟むお兄ちゃんの前世は猫である。私の名前は広瀬ララ。パーティーで挨拶回りする奥様ではない。
近所の公園デビューを果たした私とジュマルは、遊んでいる子供の元へ行ってご挨拶。ジュマルに子供たちのことを仲間だと紹介してあげると、嬉しそうな顔だ。
子供たちは、女子と男子で反応が違う。女子はジュマルと握手をしたら「キャピキャピ」言っていたから、やはりジュマルはイケメンなんだろう。
男子の場合は、ジュマルのただならぬオーラに屈服するタイプと、私に見惚れるタイプ。あと、極一部だが屈服しないタイプがいた。
おそらくだが、この公園のボスグループ。さらにいうと、奥様方のボスグループの子供だから、今まで幅を利かせていたからマウントを取りに来てるのかも?
「お前、いくつ?」
「わたち、みっつ。おにちゃ、よっつ」
「そいつ、なんがつ生まれ?」
「おにちゃ、さんがつ」
「俺が11月生まれだから……ガキかよ。ハッ」
よく見たら、この太った少年はさっき挨拶したここのボスっぽい奥様、米川さんの子供、理人君。ジュマルより先に生まれたし、バックにボス奥様がいるから強気なのだ。でも、よく早生まれとか理解できたな……
「おにちゃ。ダメだからね? こういうヤツはムシ。いい?」
「うん。叩いたらダメ」
「よくできた。あっちいこう」
理人君の顔はムカつくが、ジュマルが我慢できてよかった。これ以上ここにいたら理人君が何かしかねないから、私は女子のいるところに誘導する。
「ムシすんなよ! 俺のパパ、エライんだぞ!!」
しかし、理人君は逃がしてくれない。回り込まれてしまった。
「おにちゃ。おんぶ」
「うん」
「走れ言ったらあっちに走れ。いい?」
「うん」
「きけよ!」
理人君を相手にしなかったら地団駄を踏んでいるが、それを無視してジュマルの背中に乗った私は悪い顔をする。
「パパやママがいなかったらケンカもできないんでちゅか~?」
「なっ……」
「だからお子ちゃまと関わり合いたくないのよね~……ダッサ」
「なんだと~~~!」
「おにちゃ走れ~!!」
「にゃ~~~!!」
理人君を煽るだけ煽ったら、ジュマルを走らせて逃走。思った通り、私を背負っていてもジュマルのほうが理人君より断然速い。なので、理人君が追いつけそうな速度まで落とし、追いつかれそうになったら速度を上げさせる。
「へいへいへい。どうしたどうした。もうダメか? 歳上なんだろ~??」
「はぁはぁ……うるさ~~~い!!」
ついでに煽りも忘れない。そんなことを繰り返していたら、早くも理人君は限界。フラフラになっていたので、ジュマルにはゆっくりと両親たちの元へ移動させるのであった。
「ストーップ。おにちゃ、あんがと。たのしかった」
「う、うん……」
両親たちの前では、私はただ遊んでいたアピール。さすがにあれだけ煽っていたのだから、ジュマルも何かおかしいと気付いたのかも?
「理人ちゃん!? どうしたのそんなになって!?」
そこに理人君がやって来てぶっ倒れたのだから、ボス奥様も大声出して駆け寄った。
「あ、あいつらにやられた……ガクッ」
「理人ちゃ~~~ん!!」
すると理人君は、私たちを指差してから気絶……タヌキ寝入りしやがった。笑ってるの見えてるよ?
「広瀬さん……これはどういうことですの?」
理人君が倒れたからには、米川さんは怒り心頭。両親に詰め寄った。
「どうとおっしゃられても……仲良く駆けっこしてましたよね?」
「皆さんも仲睦まじく見てましたよね?」
どうやら私たちの追いかけっこは、親御さんたちからは好評だったみたい。だって子供が子供を背負っているのに、理人君が追いつけなかったのだから理人君も本気で走ってないと思っていたのだろう。
「こんなことになるなんて思ってないじゃないですの!!」
「「ええぇぇ~……」」
でも、米川さんは理不尽だ。両親もたじたじで私に助けを求める目を向けてるよ。
「ララちゃん、何があったのかな~?」
「ここをかけて、けっとうしてたの。おいかけっこで。おにちゃのかち~」
「「「「「決闘!?」」」」」
まさかの発言に、親御さんたちはビックリ。幼女から決闘なんて言葉が出て来るとは思っていなかったのだろう。吹き出して笑っている人もいるし……
「そ、そんな決闘、無効ですわ! 子供がやっていいことじゃないですわよ!!」
ただし、負けた米川さんは異議を唱えてうるさい。
「ララ、なんでやっちゃいけないかわかんな~い」
「「「「「うっ!?」」」」」
なので、人差し指で頬をグリグリするかわいこぶりっこで反撃してみたら、ほとんどの人は片膝を突いた。両親までも……
「いい? 子供なんだから、そんな危険なことはしてはダメなのよ」
「おいかけっこ、きけん?」
「け、決闘が危険なのよ」
「ホントはけっとうなんてしてない」
「じゃあ何をしてたの?」
「リヒトくんになぐられそうになったから、にげてただけ」
「え……」
米川さんだけは私のかわいさに屈服してくれなかったので、とりあえず噓を……事実になりそうだったことを言ってみたら固まった。
「ごさっしのとおり、おにちゃきけん。なかまをきずつけたらおこる。それさえなければおこらない。リヒトくんには、ぼうりょくやめるようにいって」
「り、理人はそんなことしないわよ……」
「いわないなら、わたちはちらない。いちどぐらい、ひどいめにあったらなおるとおもう。それでいいの?」
「しないわよ! したことないわよ! なんなのこの子は!?」
私の説得に、米川さんは怒りの表情で周りを見たら、目を逸らす奥様方が多かった。
「皆さん! なんとか言ってくださらない!?」
それでも喚き散らすと、チラホラと米川さんを擁護する声が聞こえたけど、それは少数派だ。
「もういいですわ! 理人、帰りますわよ!!」
そのせいで、米川さんは顔を真っ赤にして取り巻きとその子供と共に、帰って行くのであった……
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