上 下
20 / 130
幼児期である

020 決闘である

しおりを挟む

 お兄ちゃんの前世は猫である。私の名前は広瀬ララ。パーティーで挨拶回りする奥様ではない。

 近所の公園デビューを果たした私とジュマルは、遊んでいる子供の元へ行ってご挨拶。ジュマルに子供たちのことを仲間だと紹介してあげると、嬉しそうな顔だ。

 子供たちは、女子と男子で反応が違う。女子はジュマルと握手をしたら「キャピキャピ」言っていたから、やはりジュマルはイケメンなんだろう。
 男子の場合は、ジュマルのただならぬオーラに屈服するタイプと、私に見惚れるタイプ。あと、極一部だが屈服しないタイプがいた。
 おそらくだが、この公園のボスグループ。さらにいうと、奥様方のボスグループの子供だから、今まで幅を利かせていたからマウントを取りに来てるのかも?

「お前、いくつ?」
「わたち、みっつ。おにちゃ、よっつ」
「そいつ、なんがつ生まれ?」
「おにちゃ、さんがつ」
「俺が11月生まれだから……ガキかよ。ハッ」

 よく見たら、この太った少年はさっき挨拶したここのボスっぽい奥様、米川さんの子供、理人りひと君。ジュマルより先に生まれたし、バックにボス奥様がいるから強気なのだ。でも、よく早生まれとか理解できたな……

「おにちゃ。ダメだからね? こういうヤツはムシ。いい?」
「うん。叩いたらダメ」
「よくできた。あっちいこう」

 理人君の顔はムカつくが、ジュマルが我慢できてよかった。これ以上ここにいたら理人君が何かしかねないから、私は女子のいるところに誘導する。

「ムシすんなよ! 俺のパパ、エライんだぞ!!」

 しかし、理人君は逃がしてくれない。回り込まれてしまった。

「おにちゃ。おんぶ」
「うん」
「走れ言ったらあっちに走れ。いい?」
「うん」
「きけよ!」

 理人君を相手にしなかったら地団駄を踏んでいるが、それを無視してジュマルの背中に乗った私は悪い顔をする。

「パパやママがいなかったらケンカもできないんでちゅか~?」
「なっ……」
「だからお子ちゃまと関わり合いたくないのよね~……ダッサ」
「なんだと~~~!」
「おにちゃ走れ~!!」
「にゃ~~~!!」

 理人君をあおるだけ煽ったら、ジュマルを走らせて逃走。思った通り、私を背負っていてもジュマルのほうが理人君より断然速い。なので、理人君が追いつけそうな速度まで落とし、追いつかれそうになったら速度を上げさせる。

「へいへいへい。どうしたどうした。もうダメか? 歳上なんだろ~??」
「はぁはぁ……うるさ~~~い!!」

 ついでに煽りも忘れない。そんなことを繰り返していたら、早くも理人君は限界。フラフラになっていたので、ジュマルにはゆっくりと両親たちの元へ移動させるのであった。


「ストーップ。おにちゃ、あんがと。たのしかった」
「う、うん……」

 両親たちの前では、私はただ遊んでいたアピール。さすがにあれだけ煽っていたのだから、ジュマルも何かおかしいと気付いたのかも?

「理人ちゃん!? どうしたのそんなになって!?」

 そこに理人君がやって来てぶっ倒れたのだから、ボス奥様も大声出して駆け寄った。

「あ、あいつらにやられた……ガクッ」
「理人ちゃ~~~ん!!」

 すると理人君は、私たちを指差してから気絶……タヌキ寝入りしやがった。笑ってるの見えてるよ?

「広瀬さん……これはどういうことですの?」

 理人君が倒れたからには、米川さんは怒り心頭。両親に詰め寄った。

「どうとおっしゃられても……仲良く駆けっこしてましたよね?」
「皆さんも仲睦まじく見てましたよね?」

 どうやら私たちの追いかけっこは、親御さんたちからは好評だったみたい。だって子供が子供を背負っているのに、理人君が追いつけなかったのだから理人君も本気で走ってないと思っていたのだろう。

「こんなことになるなんて思ってないじゃないですの!!」
「「ええぇぇ~……」」

 でも、米川さんは理不尽だ。両親もたじたじで私に助けを求める目を向けてるよ。

「ララちゃん、何があったのかな~?」
「ここをかけて、けっとうしてたの。おいかけっこで。おにちゃのかち~」
「「「「「決闘!?」」」」」

 まさかの発言に、親御さんたちはビックリ。幼女から決闘なんて言葉が出て来るとは思っていなかったのだろう。吹き出して笑っている人もいるし……

「そ、そんな決闘、無効ですわ! 子供がやっていいことじゃないですわよ!!」

 ただし、負けた米川さんは異議を唱えてうるさい。

「ララ、なんでやっちゃいけないかわかんな~い」
「「「「「うっ!?」」」」」

 なので、人差し指で頬をグリグリするかわいこぶりっこで反撃してみたら、ほとんどの人は片膝を突いた。両親までも……

「いい? 子供なんだから、そんな危険なことはしてはダメなのよ」
「おいかけっこ、きけん?」
「け、決闘が危険なのよ」
「ホントはけっとうなんてしてない」
「じゃあ何をしてたの?」
「リヒトくんになぐられそうになったから、にげてただけ」
「え……」

 米川さんだけは私のかわいさに屈服してくれなかったので、とりあえず噓を……事実になりそうだったことを言ってみたら固まった。

「ごさっしのとおり、おにちゃきけん。なかまをきずつけたらおこる。それさえなければおこらない。リヒトくんには、ぼうりょくやめるようにいって」
「り、理人はそんなことしないわよ……」
「いわないなら、わたちはちらない。いちどぐらい、ひどいめにあったらなおるとおもう。それでいいの?」
「しないわよ! したことないわよ! なんなのこの子は!?」

 私の説得に、米川さんは怒りの表情で周りを見たら、目を逸らす奥様方が多かった。

「皆さん! なんとか言ってくださらない!?」

 それでも喚き散らすと、チラホラと米川さんを擁護する声が聞こえたけど、それは少数派だ。

「もういいですわ! 理人、帰りますわよ!!」

 そのせいで、米川さんは顔を真っ赤にして取り巻きとその子供と共に、帰って行くのであった……
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

転生先は盲目幼女でした ~前世の記憶と魔法を頼りに生き延びます~

丹辺るん
ファンタジー
前世の記憶を持つ私、フィリス。思い出したのは五歳の誕生日の前日。 一応貴族……伯爵家の三女らしい……私は、なんと生まれつき目が見えなかった。 それでも、優しいお姉さんとメイドのおかげで、寂しくはなかった。 ところが、まともに話したこともなく、私を気に掛けることもない父親と兄からは、なぜか厄介者扱い。 ある日、不幸な事故に見せかけて、私は魔物の跋扈する場所で見捨てられてしまう。 もうダメだと思ったとき、私の前に現れたのは…… これは捨てられた盲目の私が、魔法と前世の記憶を頼りに生きる物語。

美少女に転生して料理して生きてくことになりました。

ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。 飲めないお酒を飲んでぶったおれた。 気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。 その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

異世界着ぐるみ転生

こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生 どこにでもいる、普通のOLだった。 会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。 ある日気が付くと、森の中だった。 誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ! 自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。 幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り! 冒険者?そんな怖い事はしません! 目指せ、自給自足! *小説家になろう様でも掲載中です

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

処理中です...