お兄ちゃんの前世は猫である。その秘密を知っている私は……

ma-no

文字の大きさ
上 下
13 / 130
幼児期である

013 第10回家族会議である

しおりを挟む

 お兄ちゃんの前世は猫である。私の名前は広瀬ララ。私も猫と喋ってみたい。

 ジュマルが猫と喋れることを知った私は、チャンスがあれば何を言っているのかと質問してみたら、だいたいエサを寄越せと言われてた。中には「ワシャワシャさせてやろう」とか、上から目線の猫がいたので嫌いになりそうだ。
 と、これは実験。ジュマルが本当に喋れるか確認していたのだ。それがわかったところでどうしようもないが、ジュマルが猫と結婚するとか言い出したらたまったもんじゃない。猫をお姉さんなんて呼べないよ!

 いやいや、ただでさえジュマルは近所の人から変な風に見られているんだから、これ以上の要素は排除したい。ジュマルには猫と喋れることは誰にも言うなと身振り手振りで頑張って伝え、猫からも遠ざける私であった。


 秋……

「第10回、広瀬家、家族会議を始めます」
「パチパチパチパチ~」

 いつも通り、父親が宣言して母親が拍手をして家族会議が始まる。出席者もいつも通り、両親と私だけ。ジュマルはソファーで、ひっくり返った無防備な姿で寝てる。
 ちなみに3回目から7回も飛んでいる理由は、たまにやっていたから。議題もなんのことはない。お出掛けにジュマルを連れて行って大丈夫かどうかを話し合うだけだ。

「ついに、この日が来た……」

 だが、今日は空気が重い。母親もさっきまでふざけていたのに、顔が強張っている。私は空気を読んでどこかに行きたいけど、ベビーチェアに乗せられているから1人で下りられない。逃げないように拘束されているとも言う。

「幼稚園のパンフレット貰って来たけど、どうしようか??」
「どうしたらいいんだろう??」

 2人が緊張していた理由は、ジュマルの進学。悩みに悩んでああだこうだ言ってる。

「最近って、かなり落ち着いて来たよな?」
「ええ。外でも中でも走り回ることは少なくなったけど……」
大翔ひろと君に襲い掛かったもんな~……」
「他の子にもやりかねないよね~……」

 父親と母親は話し合いながら私をチラチラ見て来るってことは、何かしらの意見を出してほしいのだろうけど、これは両親が考えることだから何も言わない。
 それにもう答えが出ているはずだ。

「先送り……」
「だね……」

 あんな事件を起こしたのだから、もう1年様子を見るのが妥当だろう。私も賛成だからウンウン頷いてしまったので、「全会一致」とか言われてジュマルの進学は先送りになるのであった。


「続きまして……」

 ジュマルの件で家族会議は終わると思っていたが、まだ議題が続くらしい。

「ララは幼稚園と保育園、どっちにする?」

 そう。来年には私も満3歳。そのことを忘れていて少しビックリしたが、生まれ変わってもう3年目になるのかと感慨深く頷いている。

「ララちゃんはこれだけ賢いんだから、幼稚園がいいんじゃない?」
「そうだな。あとはどこの幼稚園に預けるかだな」
「かわいい制服のところにしようよ~。ここなんてかわいくな~い?」
「待て待て。そんな遠いところ通えるのか?」

 久し振りの明るい話題なのか、2人とも話が弾んでいる。なんなら、私にパンフレットを見せて決めさせようとしていた。
 ひとまず言われた通りパンフレットを熟読していたら、2人は微笑ましく私を見ている。文字を読んでいるとは思われていないみたい。

「これでママの負担も少しは減るな」
「ええ。2人も育てるって大変よね~」
「「……え??」」

 だが、雲行きが変わった。

「ララちゃんが生まれてからのほうが楽かも……」
「確かに……手間が掛からないし、ジュマルを押さえてくれる」

 そう。この家で猛獣使いは私しかいないからだ。

「ララちゃんがいないなんて信じられない!?」
「で、でも、幼稚園はどうするんだ??」
「かわいい制服も着せたい~~~」

 なので、母親が錯乱。ジュマルと2人きりは嫌だけど、私の制服姿は見たい模様。いやいや、幼稚園に通わせたいんだよね? そう言って!

「僕が主夫するから、幼稚園行かせよう!」

 そして父親まで錯乱。仕事する側をタッチ交代してジュマルを見るようなことを言ってるけど、この家ってローンは大丈夫??

「ダ、ダメよ。こんな高いローン、私じゃ払えないわ」
「でも、それじゃあママばかりに負担が……子育てが大変だからって、育休も取り消して仕事だって辞めることになったじゃないか」
「だからなおさらなの。これだけブランクがあったら、もう第一線の企業法務に戻ることもできない。それじゃあ、手取りなんて雀の涙よ」
「会社を売れば、なんとかなるって」
「それこそ本末転倒よ」

 大丈夫といえば大丈夫だけど、なんだか見てられない。私の時なんて、私が1人で育てる一択よ! ジュマルはたぶん、元夫にぶん殴ってもらうと思うけど……


 夫婦愛というか、現代の共働き世帯はいいなというか、このハイスペック夫婦は羨ましいなとか様々な思いを持って見ていたら、ついに結論が出た。

「ララちゃん……」
「ララ……」
「「ゴメ~~~ン!!」」

 まぁ、そうなるよね……

 こうしてジュマルのせいで、私の幼稚園デビューも先送りにされるのであったとさ。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

稀代の悪女として処刑されたはずの私は、なぜか幼女になって公爵様に溺愛されています

水谷繭
ファンタジー
グレースは皆に悪女と罵られながら処刑された。しかし、確かに死んだはずが目を覚ますと森の中だった。その上、なぜか元の姿とは似ても似つかない幼女の姿になっている。 森を彷徨っていたグレースは、公爵様に見つかりお屋敷に引き取られることに。初めは戸惑っていたグレースだが、都合がいいので、かわい子ぶって公爵家の力を利用することに決める。 公爵様にシャーリーと名付けられ、溺愛されながら過ごすグレース。そんなある日、前世で自分を陥れたシスターと出くわす。公爵様に好意を持っているそのシスターは、シャーリーを世話するという口実で公爵に近づこうとする。シスターの目的を察したグレースは、彼女に復讐することを思いつき……。 ◇画像はGirly Drop様からお借りしました ◆エール送ってくれた方ありがとうございます!

処理中です...