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幼児期である
011 仲直りである
しおりを挟むお兄ちゃんの前世は猫である。私の名前は広瀬ララ。おでこが痛い。
私の頭に積み木が当たったことでジュマルが大翔君に襲い掛かるトラブルがあったが、なんとか場が落ち着くと木原さんが私に近付いて来た。
「ララちゃん。血を拭くね……大翔がゴメンなさい……」
「ジュマル……ララちゃんのためだったのね……怒ってゴメンね」
木原さんがハンカチで私の頭を押さえ、母親はジュマルを強く抱き締めて謝っていた。そんな中、一部始終ではないが少し見ていた笹岡さんって人が、誰かが積み木を投げていたと証言したので、位置関係的に大翔君が犯人となった。
だが、私が「分別のない子供のやったことだから」と言葉足らずでも説明していたから誰からの叱責もなし。木原さんに優しく「積み木は投げちゃダメ」と言われただけであった。
「ララちゃんに怪我をさせたのは大翔なんだから、私が病院に連れて行くね」
ママ友来訪イベントは、残念ながらここで終了。大翔君はママ友スリーが送り届けることになり、私は木原さんに抱き上げられた。
「そんな……私が連れて行くので、気を遣わないでください」
「広瀬さんは、ジュマル君と一緒にいてあげて。あんなに怒られたことがないでしょ? いまは一緒にいることで安心するはずだから。ね?」
「はい……」
木原さんに優しく言われたからには母親もお言葉に甘えることとなり、私の保険証のありかを伝えて、ジュマルを抱き締め続けるのであった。
それから私は電動自転車に乗って近所の診療所に連れて行かれ、男性医師におでこを診られていた。
「あ~……これは痛かったね~」
その診察に、私も気が気でない。
「きず、のこりまちゅか?」
だって、こんなにかわいく生まれたんだもん!
「大丈夫大丈夫。もう血も止まってるからね。でも、2歳なのに傷が残る心配しなかった??」
「ち、ちらない……」
「いや、したって! え? 何この子??」
「あ、あはは……韓流ドラマが好きみたいですよ。だからかな~??」
ちょっと言いすぎて私は疑われたのでとぼけたら、木原さんがフォローしてくれたから事無きを得た。韓流ドラマ、万能だな。
傷じたいは本当にたいしたことはないらしく、運悪く積み木の角が当たって血管に小さな穴が開いたから血が垂れた模様。バンドエイドを張るだけで解放となった。
「大翔がゴメンね。痛くない?」
その帰り、私を自転車に乗せようとしゃがんだ木原さんがまた謝って来た。
「ちょっと。でも、だいじょぶ」
「そう……もしも傷が残ったら言ってね? 大翔に責任取らせるから」
「う~ん……いらにゃい。イケメンがいい」
「ブッ! イケメンがいいか~。あはははは」
私の言い方が面白かったのか、木原さんは大笑い。自分の子供なのに、イケメンに育つ自信がないのかも? 私もそう思うけど、笑いすぎだとも思う。
「あはは……ララちゃんみたいなお嫁さんなら大歓迎なのにな~。フラれちゃったか。仕方ない……他に何かしてほしいことある? 好きなお菓子買ってあげよっか??」
木原さんは私に餌付けして謝罪の意を示したいみたいだけど、私は大人。そんな安い物では釣られない。
「ママとなかよくしてほちい。ママ、トモダチできてうれちい」
友達こそ宝。近くに頼る人がいることが、母親に取って何よりの助けになる。これほど高い買い物なんてないのだ。
「うっ……なんていい子なの~~~! 私の嫁に来て~~~!!」
「いや、ムリだから……」
泣きじゃくる木原さんの運転で帰宅する私は、またまた気が気でない。
(前見えてる? 飛ばし過ぎじゃない?? 安全運転して~~~!!)
グスグス言っているのに自転車は高速で走っているからだ。そんなジェットコースターみたいな自転車も、うちの前に着いたら「キキー」っと停止。命辛々私は家の中に入った。
そこで木原さんは謝罪と私の診療結果を説明して、母親も謝罪と感謝をしていた。別れ際には木原さんから「また集まりましょう」と言われて母親は涙。いつまでも手を振り見送るのであった。
「そんなことがあったんだ……」
母親が暗い顔をしていたので、そのことにすぐ気付いた父親は帰宅早々に事情を聞いていた。私の元夫なんてパーマ姿すらスルーしたのに、できた夫だ。思い出したら腹立って来た。
「ララもありがとうな。体を張って大翔君を守るなんて……頭、痛くないか?」
「だいじょぶ。ねむいだけ」
「そうかそうか。ごはん食べてすぐ寝よっか。今日はパパがお風呂入れてやるぞ~?」
「ママがいい……」
「もうダメなの!?」
そりゃ、私は前世の記憶を持ってるもん。こんなイケメンの全裸、恥ずかしすぎる。それにジュマルを入れなければいけないから、体力は温存しておいたほうが身のためだ。
「ララちゃ~ん。アヒルのオモチャだよ~?」
「やっ!」
「そんな~~~」
父親には悪いけど、そろそろお風呂は勘弁してほしい私であったとさ。
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