夜遊び大好きショタ皇子は転生者。乙女ゲームでの出番はまだまだ先なのでレベル上げに精を出します

ma-no

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十三章 卒業前も後も夜遊び

304 夜の帝王を探る者

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 フィリップから無茶振りされた生徒会は毎日忙しそうにしているけど、フィリップは暇。ダンスの練習も飽きていたので、仮病を使って夜遊びシフトに変更していた。
 この日もいつもの夜遊び用の服を着てキャロリーナと遊ぼうと奴隷館に顔を出したら、店内をうろつく女性奴隷の雰囲気がおかしい。どこか上の空で、フィリップが目の前にいるのに気付かず通り過ぎて行く。

 フィリップは自分の身長が低いから見えなかったのかと、少し涙ぐみながら最上階のオーナー室にノックして入った。

「いらっしゃあ~いぃ」

 キャロリーナはいつも通り笑顔で手を広げていたので、フィリップはそこに飛び込んで抱きかかえられてベッドへ。

「なんか今日、みんな変じゃない?」

 でも、マッサージの前に、忘れない内に聞くこと聞いておきたい。普段なら同じことをしてもキャロリーナはフィリップを貪り食うけど、今日はそれどころではないことがあったので食事は止まった。

「あぁ~……それねぇ~……」
「なんかあったの? 僕で解決できるなら、いくらでも手を貸すよ?」
「そういう問題じゃなくてぇ。今日、皇太子殿下が参られたのよぉ~」

 どうやら奴隷館は、フレドリクショック。男でも惚れてしまい兼ねないキラキラ笑顔を見た女性奴隷は、漏れなくぶっ倒れたらしい。

「そのせいでみんなぁ、皇太子殿下に心を奪われちゃってぇ、今日は仕事にならなかったのよぉ~。綺麗な顔だとは知っていたけどぉ、近くで会っちゃダメねぇ。あの顔わぁ、女には毒よぉ」
「そのわりにはキャロちゃんは変わらないんだね」
「だってぇ。あたしは殿下一筋だもぉん。かわいいわぁ~」
「うん。重症だね……」

 フレドリクスマイル、重度のショタコンには通じず。犯罪者を前にしては、フィリップも喜ぶに喜べないみたいだ。

「てか、なんでお兄様がこんなところに……もしかして、僕のことがバレたとか?」
「いいえぇ。殿下のことじゃないわよぉ。イロイロ聞かれたからわかりにくかったけどぉ、たぶんアレわぁ、夜の帝王を捜している感じだったわぁ」
「それも僕なんだけど……言ってないよね?」
「もちろんよぉ」

 フレドリクの質問は夜の街の景気から始まり、性奴隷の買い手や値段、治安なんかを事細かく聞いていたらしいが、夜の帝王の質問が何回かあったのでキャロリーナは無難に返したらしい。
 天才フレドリクに掛かれば表情から嘘を読み取れるが、キャロリーナは元貴族の上に皇帝が認める程のやり手。夜の帝王は背の低い中年男性と言う嘘を信じ込ませたそうだ。

「ありがと~う。下手したら、もう夜遊びできないところだったよ~」
「それはあたしも困るからぁ、守るに決まってるわぁ」
「しっかし、なんで急に夜の帝王なんか調べ出したんだろ?」
「あたしの予想だけどぉ……義賊についても聞いていたのよねぇ……」
「つまり、お兄様の考えでは、夜の帝王イコール義賊ってこと?」
「おそらくねぇ。義賊はもう死んでるんだからぁ、殿下が義賊のわけないのにねぇ」
「まだ捜してたんだ……」

 フィリップの中ではもう終わった話だったので、フレドリクがまだ嗅ぎ回っていたのかと少し険しい顔になった。

「どうしたのぉ? まさか本当ってワケじゃないわよねぇ?」
「なワケないじゃん。お兄様のせいで夜遊びし辛くなりそうだから、どうしようかと思って」
「あぁ~……あの感じだとぉ、夜の帝王に会って話をしたそうだったからぁ、気を付けたほうがいいわねぇ」
「でしょ? あ~あ。なんでキャロちゃんのところに来るんだよ~」
「それは陛下から聞いたからだってぇ。まぁ今度ぉ、陛下に先触れを出すようにお願いしておくわぁ。うちも仕事にならないしぃ」

 キャロリーナは、こう見えて皇帝の隠密。皇帝はフレドリクに相談された時に、夜の街なら適任者がいるとキャロリーナを引き合わせたのだ。

「しばらく大人しくしておいたほうがいいか……」
「そうねぇ。いま情報を集めさせてるけどぉ、他も回っていたみたいだからぁ、控えたほうがよさそうねぇ」
「チェッ。せっかく夜型にしたのに、お兄様のせいでえちゃった」
「大丈夫よぉ。あたしに任せてぇ~」

 フレドリクのせいでやる気をなくしたフィリップであったが、キャロリーナのおかげで朝方まで頑張っちゃうのであったとさ。


 次の日の夜、フィリップはフードを深く被って夜の街に出た。そして行き付けの酒場やクラブを短時間だけ顔を出したら、奴隷館に足を運んだ。

「昨日ぉ、大人しくするって言ってなかったぁ~?」
「まぁまぁ。なんか気になっちゃって」

 オーナールームではキャロリーナが不思議そうに出迎えていたが、フィリップは押し込むように中に入った。

「僕なりにちょっと調べて来たんだけどね~。ここにお兄様が来たの、僕のせいというより夜の街のみんなのせいかも?」
「どういうことぉ~?」
「みんな僕に気を付かってんのか、人物像がバラバラだったの。夜の帝王はハゲとかデブとかジジイだとか、言いたい放題だったんだよ~」
「プッ。みんなに慕われてる証拠じゃなぁ~い」
「笑ってるじゃ~ん」

 夜の街の住人、夜の帝王を守るために嘘ばかり。人物像が違い過ぎるから、どれが本当なのかキャロリーナに聞きに来たってのが真相みたいだ。

「まぁその情報でこちらも合点がいったわぁ」
「そっちも何か情報手に入れたの?」
「ええ。ここ数日ぅ、衛兵が横柄な態度になってたらしいのぉ。そんなバラバラの報告したらぁ、上から怒られるわよねぇ」
「それって……僕のせい? お兄様のせいだよね??」
「うんっと……4対6ぐらいかしらぁ?」

 夜の街まで騒がしくなったのは、フィリップとしてはフレドリクのせいと言いたいみたいだが、キャロリーナの裁定はややフレドリク寄りなだけ。

「僕は楽しく夜遊びしてるだけだよ~~~」
「普通、皇族はこんな所に来ないわよ?」

 なのでフィリップは言い逃れしようとしたけど、キャロリーナの裁定は逆に傾いただけであったとさ。

 100%、フィリップのせいなんだけどね。
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