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十三章 卒業前も後も夜遊び
301 ダンスパートナー
しおりを挟む「てか、ひょっとしてだけど、みんなエステル嬢のことが好きで、こんなことしたんじゃない?」
呪いの手紙を送った女子生徒5人が怯えまくっていたのでフィリップは必死で宥め、その後は事情聴取に移行した。
そのフィリップの予想は大当たり。この5人の女子はエステルが在学中は派閥に入っており、尊敬していたから、公衆の面前で婚約破棄したフレドリクの弟であるフィリップに恨みをぶつけたらしい。
「やっぱりね~……まぁ僕も立場があるから謝罪はできないけど、皇家の動きを見たらわかるでしょ? 辺境伯のことは蔑ろにしてないよ。それだけは信じて」
フィリップは謝罪に似た言葉を告げると、5人組は目で語り合い、その中で一番位の高いテレーシア・エルヴィーラ子爵家令嬢が一歩前に出た。
「皇家がそこまで考えているとは考えに及びませんでした。一番関係ない殿下にまで嫌がらせしてしまい、本当に申し訳ありませんでした」
「謝罪なんかいらないよ。お兄様が悪いんだからね」
「しかし、皇族に悪意をぶつけたなんて、皇帝陛下や皇太子殿下に知られては……」
「僕が告げ口すると思ってるんだ~……」
「い、いえ! 申し訳ありませ~ん!!」
どう言ってもテレーシアたちは申し訳なさそうにするので、フィリップは譲歩案を出す。
「じゃあ、僕が個人的に罰を与えるよ。全員、卒業パーティーのタンスパートナーになって。それで罪は帳消しにしてあげる」
「そ、それは……」
「あ~……心に決めた人がいるのか。でも、そもそもダンスパートナーになりたいって手紙出したのそっちでしょ?」
「殿下のことですから、私たちなんて目も付けられないと思いまして……」
フィリップの行動や噂から、ダンスパートナーに選ばれるのは高貴な巨乳か背の低い子供だと思っていたから、お誘いの手紙に加えて嫌がらせの手紙も紛れ込ませたらしい。
「てか、罰なんだから受けてもらうよ。それともこれ以上、僕に恥を掻かすつもりなの??」
「い、いえ……」
「そんな顔しないの。自由時間はあげるし、彼氏と踊るぐらい許してあげるから。彼氏には、僕のワガママに付き合わされると言っておきな」
「はい……謹んでお受けします」
テレーシアたちは暗い顔をしているがフィリップは立ち上がり、ボエルたちを連れて立ち去るのであった。
「てか、本当にアレでよかったのか? 甘すぎないか??」
自室に戻ったフィリップがベッドに飛び込むと、ボエルから質問が来た。
「だから、裁くためにやってないって言ってるでしょ。それにダンスパートナーは決まったんだから、それでいいじゃない?」
「決まったって……5人もって、それもいいのか?」
「聖女ちゃんは4人と踊っていたからいいんじゃない?」
ボエル的には、元平民と皇子では立場が違うと説得していたが、フィリップは聞きゃしない。そんな中、リネーアはあることに気付いた。
「これ、殿下は最初からダンスパートナーを決めるためにやっていたんじゃないですか? あのままだとずっと女子生徒に付き纏われることになりますし」
「そ、そうなのか?」
「ううん。あわよくば体の関係を築こうとしてただけだよ? できることなら、あの子たちじゃない子がよかったんだけどね~……人生、上手く行かないもんだね」
「ほら! 殿下はこういうヤツなんだよ!!」
「殿下はそういう人ですけど~~~」
その発言は、フィリップが台無しにするのでボエルは激しく同意。リネーアも同意してしまっているので説得力がないから、ボエルを納得させるまでには至らないのであった。
ダンスパートナーが決まったのだから、フィリップも練習しなくてはならないので、翌日には5人組を呼んでダンスの先生に指導してもらう。
「うまっ……殿下って、ダンス上手かったんだな……」
「信じられません……こんな才能あったのですね……」
ボエルは従者なので当然フィリップについて来て、何かやらかすんじゃないかと見に来ていたリネーアとずっとヒソヒソ喋ってる。
フィリップがこんなにダンスが上手い理由は、これだけは真面目に習っていたからだ。
将来ダンスパーティーに出席するのは目に見えていたから、恥を掻きたくないと言うより女性に下手と思われたくないから、教育係のエイラから習っていたのだ。
それでも足りないだろうとダグマーやキャロリーナ、夜の街で働く踊り子なんかからも教わっていたので、今では誰とでも合わせられるぐらい上手いのだ。
ただし、フィリップの身長は低い。5人組とも20センチ以上差があるので、いくらフィリップがリードしていても女性役にしか見えないから、ボエルとリネーアはクスクス笑い出した。
「そこ! 邪魔するなら出て行って!」
なので、ここでフィリップは激怒。5人組は血の気が引いてるけど、ボエルたちの笑い声が大きくなっただけ。それに命令を無視して出て行こうともしないので、何がなんだかわからなくなっている。
「殿下、オレとも踊ってくれないか?」
「私もいいですか?」
「リネーア嬢はいいけど……ボエルって女役できるの?」
「できないから、殿下が女役やってくれ」
「ええぇぇ~~~」
出て行かないどころかダンスを申し込み、フィリップと踊り出したから、さらにわけのわからない展開に。
しかしフィリップたちは楽しそうに踊っているので、5人組もしだいに緊張が解けるのであった……
「殿下、女の子にしか見えませんでしたね」
「「「「ですよね~?」」」」
「「「「「アハハハハ」」」」」
帰り道では、我慢していた笑いが弾ける5人組であったとさ。
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