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十二章 最終学年になっても夜遊び

294 15歳の誕生日

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 フィリップとペトロネラの痴話喧嘩は、アドリブのドッキリで乗り切った2人。これ以上のサプライズは皇帝たちに心証が悪すぎるので、2人で協力してテーブルセッティング。
 皇帝を真ん中に、右隣をフレドリクとルイーゼが埋め、左隣にフィリップとペトロネラ。主役はフィリップだが、これが皇族では一番普通の配置だ。

「皆の者、フィリップのために集まってくれて感謝する。もうやっただろうが、もう一度付き合ってくれ。フィリップの誕生日に、乾杯」
「「「「「……フィリップ殿下、お誕生日おめでとうございます。乾杯!」」」」」

 遅れて来た皇帝が音頭を取っての乾杯。皇帝は仕切り直しのつもりだったけど、まだ一回も乾杯なんてしていなかったので、出席者は一拍遅れての乾杯だ。

「ありがと~う。こんなに集まってくれて、感無量だよ。父上も忙しいなか、来てくれてありがとう。お兄様、お姉様、ありがとね~」

 その間が怖くなったフィリップは、すかさずカットイン。ちなみにこんな喋り方でも、強制力のせいで尊大に聞こえるらしい。
 皇帝のおかげでパーティーは普通の空気になったので、フィリップはニコニコ。ペトロネラはワインを手酌でグビグビ。皇帝に「そんなに強いのだな」とツッコまれて、さすがに酔うに酔えないみたいだ。

 フィリップはこれで皇帝とペトロネラの仲は進展しないと思ってシメシメ。でも、ペトロネラの酒量が増えそうなので話題を変える。

「この時期は忙しいのに、僕なんかのために時間を割いて大丈夫?」
「僕なんかなんて言うな。俺こそ一度も祝えなくて、すまなかったな」
「いいよいいよ。忙しいのわかってるもん」

 お互い気を遣ってはいるが、どちらも嬉しいのか照れ気味だ。

「せめて15歳の誕生日ぐらいはと思っていたから、時間を調整してくれたペトロネラには感謝している」
「いえ。私は当然のことをしたまでです。陛下はお茶会では、両殿下のお話ばかりしていたのですもの。お役に立てたなら幸いですよ」
「少し親馬鹿が過ぎたか」
「へ~。どんな話してたの~? お兄様も聞きたいよね??」
「ああ。是非聞かせていただきたい」

 なんだかんだあったが、ペトロネラのおかげで親子の仲を再確認することに。ただし、皇帝はフレドリクのことをベタ褒めして、フィリップのことはチョイ褒めしかしないので、フィリップは聞くんじゃなかったと後悔だ。

「ウフフ。そんなこと言って、一番かわいいのはフィリップ殿下ですよね?」
「フッ。デキの悪い者は……ってのだ」
「お兄様と比べられたら、誰でもそうなっちゃうよ~」
「それはすまなかったな。しかし、父上から愛されていることは本当だ。私も何度か聞いているぞ」
「お兄様までやめてよ~」

 ペトロネラの質問に皇帝が照れ隠ししたので、フレドリクがタッチ交代。自分は褒められまくったし、今日はフィリップの誕生日だから立てた模様。
 フィリップはそんなこと言われても困るだけ。皇帝も珍しく困った顔をしているところを見ると、照れているのだろう。

 そんなフィリップをヨイショする会は、30分が経つとペトロネラが目配せし、皇帝は頷いて立ち上がった。

「そろそろ時間だ。フィリップ……誕生日おめでとう。体の弱いお前がここまで生きてくれたこと、妃も天国で喜んでいることだろう。立派になったな。今日から一人前のおと…なだ。これからも精進するように」
「うん……大人のところ、ちょっと詰まったよね?」

 皇帝、いいことを言ったのにフィリップの心に響かず。だってフィリップの見た目が幼すぎるから、大人に見えないもん。フィリップもそのことに気付いて問いただしたが……

「では、俺は行く。プッ……」
「笑った! いま笑ったよね??」
「「「あははははは」」」
「みんなも!?」

 皇帝はちょっと吹き出して去って行き、フレドリクたちからも笑われたので、フィリップは主役なのに機嫌が悪くなるのであったとさ。


 フィリップの誕生日パーティーは、皇帝が去ってその30分後にフレドリクが退室。忙しいのだろうけど、「帰るなルイーゼも連れて帰れ! カイとヨーセフとモンスもさっさと帰れ!」と、フィリップの心の声。
 残り1時間は、ペトロネラの知り合いと談笑というか顔繋ぎ。いちおうお祝いの言葉をくれるが、必ず「誰それの派閥の誰それです」と挨拶するから、派閥の勧誘にしか見えないらしい。

 途中からは、フィリップはペトロネラの後ろに隠れて無視。ルイーゼは……皆の話を頑張って聞いてる。いちおう皇后になる自覚はあるみたいだけど、目上の人でもタメ口で喋るから「もう皇后気分か」と逆効果になっている。
 そんな面白くない誕生日パーティーは、2時間を過ぎるとお開き。フィリップはルイーゼだけには握手をし、その他にはぶっきら棒に感謝の言葉を一言残して立ち去るのであった。

「で……なんで当然のように僕の部屋で飲んでるの?」

 でも、ペトロネラがついて来て飲み出したので、フィリップも頭が痛そうだ。

「だって~。私の策略、木っ端微塵になったんだも~ん。飲むしかないわ~」
「ずっと飲んでたでしょ~。てか、今日はマッサージするけど、明日からしばらく来ないでよ!」
「えぇ~。明日から忙しいけど~」
「忙しいなら来ないで!!」
「えぇ~~~」

 フィリップとの婚約が不可能になったのだから、ペトロネラは飲むしかない。ただ、ペトロネラはウワバミだからこのまま飲ませても長くなるだけなので、フィリップはマッサージして早くに就寝させるのであった……


 フィリップが翌日から来るなと言ったのには理由がある。

「今日は僕の誕生日だ! 飲め飲め~~~!!」
「「「「「かんぱ~~~い!!」」」」」

 夜の帝王のお仕事があるから。酒場ではタダ酒を振る舞い、飲めや歌えやの大騒ぎだ。

「今日は誕生日だから、10人でよろしく~」
「お待ちしておりました!!」

 あと、誕生日だからマッサージの自重は無し。この時期は貴族が多く集まるから、予約までして自分の誕生日を酒池肉林で祝うフィリップであったとさ。
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