夜遊び大好きショタ皇子は転生者。乙女ゲームでの出番はまだまだ先なのでレベル上げに精を出します

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十二章 最終学年になっても夜遊び

285 ダンジョン実習の試験

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 ワイバーンを周回したリネーアパーティは、全員ニンマリ。大金が手に入った上にドロップアイテムでの収入が期待できるし、3人だけでも倒せることが確認できたからだ。
 片やボエルは微妙な顔。ワイバーンをソロで倒そうと頑張ったけど、相性が悪いのでそれは叶わず。フィリップが護衛騎士やリネーアパーティを送り込んだので、ちょっと恨みもあるみたい。
 フィリップは途中から飽きてた。護衛騎士はワイバーンを倒せただけで満足してたよ。

 ダンジョンを出た頃には、もう真っ暗。城まで帰るのが面倒になったフィリップは、今日は寮で一泊。その旨を護衛騎士の1人を走らせて報告させる。
 金一封をボーナスにしたから、お腹ペコペコでも喜んで走ってった。もう1人はヘコンでいたので、夕食に皇族メニューを奢ったからケンカにはならない。

 そして久し振りに人の目が少ない寮に来たのだから、リネーアたちとマッサージ。フィリップがやりたいと言ったワケではなく、リネーアからお願いされたのだ。
 ただ、護衛騎士がいるので泊まりは困る。取っ換え引っ換えはほどほどで切り上げてリネーアは自室に帰って行った。


 それからはまた城でペトロネラとマッサージしながら噂話作り。仮病と夜遊びを挟みつつ時間が過ぎれば夏休みはもうじき終了だ。

「もう、フィー君抜きでは生きていけない! 私を置いて行かないで~~~」
「いや、別れ話してるんじゃないよ?」

 なのでフィリップが近々寮に戻るとペトロネラに伝えたら、めっちゃ引き留められてる。彼女のフリでは終われないみたいだ。

「学校行かないと父上に怒られるからさ。ちょくちょく戻って来るからね?」
「ホント? 週20で戻って来る??」
「だから1週間は7日しかないよ? 飲みすぎじゃない??」

 二度目のダメだこりゃ。フィリップは極力依存されないように仮病を使って距離を置いていたのに、アルコール依存症のペトロネラはフィリップ依存症にもなってしまったのであったとさ。


 ペトロネラが仕事している間に城から脱出したフィリップは、いつも通りボエルと一緒に寮の自室でグデ~ン。やはり城での生活は2人ともこたえるみたい。
 2学期が始まって早々に仮病を使いたかったフィリップであったが、ダンジョン実習の試験が近々あるらしい。パーティの数が多いから1ヶ月に分けて行うと聞いたので、もうちょっと我慢。ついでに噂話集めだ。

「ペトロネラ様のこと、こっちでも話題になってるぞ」
「だろうね。リネーア嬢にも本当かと聞かれたよ。濁しておいたけど」
「本当のこと教えてやれよ」
「なんて言うの? 酒癖の悪い崖っぷち女とマッサージしてますとでも??」
「ペトロネラ様のことを思ったら、濁すしかねぇな……」

 ペトロネラ、表の顔はカッコいいキャリアウーマン。噂の中には尊敬しているような声もあるから、ボエルもフィリップの反論には頷くしかできない。
 そんな会話をしながら校舎の食堂に入ってランチをしていたら、女子生徒が続々と入って来て満員御礼。男子生徒は追い出され、フィリップは囲まれてしまった。

「えっと……なんか用ですか?」

 この光景は以前にも見たことがあるが、女子生徒は怒っているような顔をしているのでフィリップも下手に出た。

「「「「「小さい子が好みじゃなかったのですか?」」」」」
「う、うん。そうだけど……」
「「「「「グラマーなオバサンと付き合ってるんですよね!? だったら私でもいいじゃないですか!!」」」」」

 そう。フィリップの嘘がバレたから、第二皇子の妻の座を狙う女子生徒が押し寄せていたのだ。

「あっ! お兄様!!」
「「「「「フレドリク殿下!? キャーーー!!」」」」」

 というワケで、いもしないフレドリクを指差して食堂から脱出するフィリップであったとさ。


「大丈夫だった?」

 この日は午後の授業はサボリ。教室になんとか戻ったボエルはフィリップがいなかったから「サボってやがんな!?」とすぐに気付いて、護衛騎士と一緒にダッシュで寮に戻って来たけど、フィリップがとぼけた顔をしてるから睨んでる。

「あのあと大変だったんだよ……」
「ゴメ~ンちゃい。頭グリグリやめてよ~」

 予想通り、ボエルは大量の女子生徒から質問攻めにあっていたみたいなので、フィリップはかわいく謝罪。そりゃボエルも手が出るよ。

「もう面倒くさいから、ペトロネラ様とは付き合ってると言っておいたからな」
「うん。それでいいよ。お疲れ様。これで求婚は諦めてくれるといいね~」
「どうだろうな」

 フィリップも女子生徒と関わるのは面倒くさいので、おとがめはなし。ただし、帝都学院の卒業までは残り半分を切っているから女子生徒の求婚は半分減ったぐらいなので、フィリップは1人1人フリ続けることになるのであった。


 女子生徒の求婚波状攻撃をやり過ごしている間もダンジョン実習の試験は続いており、ようやくフィリップの順番が回って来た。

「さってと……ちゃっちゃと終わらせますか。ボエル、行け~!」
「「「「「えぇ~……」」」」」

 ここはボエル頼み。自分はモンスターとは戦わずボエルしか戦わないのでは、2人の試験官も2人の護衛騎士も、ついでにボエルも落胆の声。しかし、ボエルはこのために雇われているってのもあるので、フィリップの命令には逆らえない。

 地下1階は、弱いモンスターしかいないのでボエルも楽勝。地下2階は群れになる程度なので、フィリップは「ギャーギャー」言いながらモンスターを抜けてボエルが倒しながら追い付く。
 そんなスピードなので地下3階に辿り着いたのは、過去を含めたダンジョン実習参加者のトップクラス。このまま行けば、人数も少ないのだから今年の1位になれそうだ。

「ギブアッ~プ。ここまででいいよ」
「「はい??」」

 まだまだ余裕があるのにフィリップがやめるとか言い出したので、試験官はとぼけた声。ボエルもやめる気がないので、フィリップに近付いた。

「ここからがいいところだろ。なんでやめるんだよ」

 その問いには、フィリップはボエルにしか聞こえない声で返す。

「父上になんて言われてたの? 地下3階まででしょ? だったら、それ以上行っちゃダメに決まってるじゃん」
「いや、ダメとは言われてないけど……」
「そこは言葉の意図を読み取らないと。僕に目立つなと言ってるんだよ。僕、口を酸っぱくしてお兄様の邪魔をするなと言われてるから、この点数がベストなんじゃないかな~?」
「そういうことなら……」

 フィリップに言いくるめられたボエルもギブアップ。皇帝の命令には逆らえないからだ。

「結局、1回も戦わなかったですね……」
「どう点数を付けたらいいのやら……」

 ただし、試験官は頭が痛い。ルール的には高得点なのだが、戦闘を行わない生徒はフィリップが初。それにフィリップは無様に逃げ回っていたのだから心証が悪いので、マイナス点を入れてトップクラスから中の下に調整されたのであった。
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