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十二章 最終学年になっても夜遊び
283 それぞれの相談
しおりを挟む皇帝に呼び出されてからもペトロネラとは毎日マッサージしていたけど、フィリップはこう見えて忙しい。仮病を使って、しばらくペトロネラと距離を置いた。
「す、凄かったね……」
「だってぇ、2週間ぶりよぉ~。もう1回ぃぃ~」
夜遊びしないといけないもん。ショタコンのキャロリーナと久し振りに会ったからには、5回戦にもう1回と言わず2回戦足して、フィリップもぐったりだ。
「ふぅ~。それにしてもぉ、この2週間何してたのぉ? どこにも顔出してなかったでしょぉ??」
「ちょっと変な女に捕まっちゃってね~……」
「そっちなんだぁ……てっきり暗殺未遂があったからぁ、護衛を撒けないと思っていたわぁ」
「そういえばそんなことあったね~」
「忘れてたんだ……もっと警戒しなさいよぉ」
キャロリーナは大人の女。フィリップに他に女がいても嫉妬はしないけど、緊張感の無さは心配してる。
「ま、1週間はこっちで遊ぶつもりだから心配しないで。そんなことより、何か変わったことあった?」
「まったく警戒するつもりないのねぇ。はぁ~……特には……いえ、ちょっと殿下にお願いがあるんだけどぉ?」
「なになに~? お金ならいくらでも出すよ~??」
キャロリーナのお願いはお金はまったく関係なく、最近帝都内での衛兵の見廻りが減っているから、治安が心配になっているらしい。
「ふ~ん。それって直訴状とかは出せないの?」
「直訴状ではないけど手紙は出してるわよぉ。でも、ぜんぜん返事がないのぉ。皇帝陛下まで届いてないのかしらぁ?」
「父上宛なんだ……」
「何かあったら報告するように言われてるのよぉ。城で何かあったのぉ?」
どうやらキャロリーナは、皇帝の密偵もやっているらしい。といっても帝都内の変化を伝えるだけで、定期的に手紙のやり取りをする危険がない密偵だそうだ。
ちなみにフィリップのことは秘密。子供を食べたなんて言えないから、大口のお金を落とす客がいる程度で控えている。第二皇子と知ってからは、絶対に言えなくなったんだってさ。
「何かと聞かれても……言えないとしか言えないな~……」
城ではフレドリクのせいで問題が多々あるけど、この情報はフィリップでも表に出せない。ただ、キャロリーナはそれで気持ちを汲んでくれた。
「そうよねぇ。それだけ聞けただけでぇ、助かるわぁ。時間を空けてぇ、また手紙を出すことにするわぁ」
「まぁ僕のほうでもお兄様にそれとなく伝えておくよ。そっちのほうが早いかもしれないし」
「それも有り難いわぁ。皇太子殿下に直で伝えてくれるなんてぇ……ん?」
「ん??」
キャロリーナ、いらないことに気付いちゃった。フィリップは自分で言っていて、まだ気付けない。
「殿下は第二皇子だったわよねぇ……」
「そうだけど……」
「殿下が衛兵を動かせばもっと早いのでは?」
そう。フィリップには絶大な権力があることをだ。
「僕、城で動かせるヒト、2、3人しかいないの……」
「ゴ、ゴメンなさぁい。あたしは殿下の手足となって動くわよぉ。元気出してぇ。ね? 体も差し出すからぁ~」
でも、フィリップには出来損ないの称号もある。そっちを忘れていたからフィリップは泣きそうになっていたので、キャロリーナはまた長いマッサージで機嫌を取るのであったとさ。
その翌日、フィリップは忘れない内にボエルにアポイントを取ってもらって、次の日には短時間だけフレドリクと面会。世間話の流れで「学生が何人もスリにあったような噂を聞いた」とか適当に吹き込んでいた。
それからも夜の街に繰り出していたある日、ボエルがリネーアの手紙を渡して来た。
「何か困り事か?」
「まぁ……中ボスに挑戦したいから助言がほしいみたい」
「おお~。いまは地下5階に挑戦してるのか。頑張ってるな~」
「頑張ってるのは認めるけど、学生がそこまでする必要あるの? 中ボスを倒すまで行く人いるの??」
「それは~……いねぇな。普通は中ボス手前までで試験は終了だ」
「やっぱりお兄様が特別だったのね」
フィリップは中ボスと何度も戦っているから学生には無理だと思ったら、ボエルも納得だ。
「でもやる気を削ぐのも悪いか……一度話を聞いてみよう。3日後までには体調をなんとか戻すから、呼び出しておいて」
「おう。わかった!」
そろそろ昼型に戻そうと思っていたので、フィリップは予定通りに夜遊びを楽しみ、最後の夜はキャロリーナと今生の別れみたいなマッサージ。その時、フレドリクが動いてくれたと報告を入れる。
昼型に戻った初日は、久し振りにペトロネラと噂話作り。ペトロネラはめちゃくちゃ体の心配していたけど、夜にはキャロリーナぐらい荒れていた。マッサージにハマったらしい……
その翌日に、やっとリネーアパーティと面会だ。変な噂が立たないように、訓練場にてコニーが訓練をしている姿を見ながら喋っている。
「それで中ボスの話なんだけど、試験では倒す必要はないみたいだよ。それは知ってる?」
「はい。授業で先生が言ってましたので……」
どうやらこの情報を知らなかったのは、フィリップだけ。先生の話なんて聞きゃしないもん。
「じゃあ、どうしてそんなに無理してるの?」
「それは友達のためです。2人の家はそこまで裕福ではないので、卒業パーティーのために少しでも稼いでおきたいと言われまして……」
ダンジョンで手に入れたお金やアイテムは学生に所有権がある。アイテムは購買部で買い取ってくれるので、貧乏貴族がダンジョン実習で金銭を稼ぐことはよくあることらしい。
「あぁ~。ドレスとかお金掛かるもんね~。自分で出すとは立派だ」
「本当は諦めていたらしいです。でも、殿下から助言をいただいて、奥に進めるようになったから欲が出てしまったみたいです」
「それに付き合わされるリネーア嬢は、いい迷惑だね~」
フィリップの冗談に、リネーアは珍しくムッとした。
「そういうワケではありません。こんな私とお友達になってくれたので、少しはお返しをしたいだけです」
「あ……失言だった。ゴメンね。本当はそんなこと思ってないから許して」
「こ、こちらこそキツイ言い方をしてすみませんでした……」
「完全に僕が悪いから謝らないで。あの2人は心を許せる親友なんだね~」
「はい」
フィリップだって、あんなことがあったリネーアに親友ができたことは喜ばしい限り。ここからは茶化すことなく、親友の話を聞いて少しウルッとするフィリップであった……
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