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十二章 最終学年になっても夜遊び
270 フィリップの好み
しおりを挟む「「「「「おはようございます」」」」」
新学期2日目。フィリップが自室から出ると、そこには寮の3階で暮らす位の高い女子生徒が5人、待ち構えていた。
「ふぁ~……なんか用?」
「「「「「ご一緒に登校したい所存です」」」」」
「好きにしな~。ふぁ~……」
「「「「「はは~」」」」」
フィリップは寝起きでまだ頭が回っていなかったので適当なことを言う。そうして2階に下りるとトップ女子の取り巻きが加わり、1階になるとさらに増える。
ちなみにフィリップの取り巻きであるリネーアは、その大群を見て一目散で逃げてった。ボエルは目立たないように気配を消してる。
その大群で校舎に向かっていると、男子生徒はギョッとしてる。フィリップが異常に多い女子を引き連れているんだもん。
中には意中の女子や婚約者がいるのかフィリップを睨む男子はいたけど、その男子は女子から一斉に睨まれて逃げるしかない。
そんな中、フィリップの眠気が取れたのでボエルに質問。
「ねえ? なんか、後ろから凄い数の足音が聞こえるんだけど……」
ただ、ワケのわからない展開なので、後ろを振り向けないらしい。
「殿下が好きにしろとか言ったから、みんなついて来てんだよ」
「みんなって何人??」
「女子のほとんどだ」
「大奥!?」
大名行列を想像したフィリップは、振り向いて意見を変えた。だって、女子ばっかりなんだもん。
大奥を引き連れて教室に入ったフィリップは、ひとまず寝たフリ。授業が始まる前に大奥は解散したので、リネーアとコソコソ会議。しばらくは離れているように指示を出す。
その後は寝て、お昼になったら大奥を引き連れてランチ。派閥のトップは今日は協力してフィリップを口説いている。昨日は何も話せなかったから、時間制にしたようだ。
しかし、フィリップは食事を優先して話半分だ。
「ごちそうさま~……で、なんだっけ?」
「「「「「ですから、誰が殿下の婚約者に相応しいと思いますか?」」」」」
お腹いっぱいになったフィリップは勝負に出る。
「誰と言われてもね~……全員、タイプじゃないの。ゴメンね~」
単純にフッてみたら、トップ女子たちは同時に立ち上がった。
「「「「「この者たちの中に、タイプの子はいるのではないですか?」」」」」
「そう来たか……」
だがしかし、それは想定内。父親からフィリップが縁談話を全て反故にした話を聞いていたから、次の生け贄。派閥の者なら誰でもいいと、伯爵家の令嬢を数十人用意していたのだ。
「ちょっと待ってね~」
まさかそこまで形振り構わない手を使って来るとはさすがのフィリップも想定していなかったので、時間稼ぎ。一人ずつ全身を見ながら考える。
そうして最後まで女子の全身を見たら、答えを告げる。
「やっぱ、タイプの子はいないや。みんな、僕より背が高いんだもん」
「「「「「……へ??」」」」」
初めての好み発表で、トップ女子たちはフィリップを下から上まで見て固まる。フィリップの現在の身長は、134センチ。これを下回る女子なんて、そうそういない。
なのでフィリップは勝ち誇った顔で食後のお茶を優雅にして、女子生徒がどうするかと見ていたら、トップ女子を囲んでゴニョゴニョやり出した。
「「「「「ちょうど殿下好みの子がいましたよ」」」」」
「「「「「よ、よろちくお願いちまちゅっ!」」」」」
それから数分後、8人ほど小さな女子が前に出て来たけど、フィリップは冷静だ。
「いくつ?」
「「「「「10歳ですが……」」」」」
「将来僕より低いままいるかわからないじゃん!? あと、ペッタンコ!!」
「「「「「そうですよね……」」」」」
明らかに幼すぎるもん。だからこそ第二皇子を目の前にしてド緊張で、プルプル震えて噛み噛みだったのだ。
「誰もいなくなったな……」
「もうちょっと粘ってよ~~~」
あんなに女子生徒で溢れていた食堂にはフィリップとボエルしかいなくなったので、身長にコンプレックスがあるフィリップの嘆きは止まらないのであったとさ。
「あの……何があったのですか?」
その日の帰り道、朝にはあんなに大勢いた女子がフィリップに近付いて来なかったので、リネーアは不思議すぎて追いかけて来た。
「別に……」
フィリップは、理由を言いたくない。涙目でリネーアをチラッと見るのがやっとだ。
「ボエルさん……殿下が悲しそうですよ? 何か酷いことを言われたのですか?」
「いや……自分で蒔いた種だ。殿下より背が低い子なんて……グスッ……」
「泣くなら言わないでよ~~~」
でも、ボエルが言っちゃったので、リネーアも完全に理解して泣きそうだ。リネーアでも160センチ以上あるから……
「だ、大丈夫ですよ! 急に伸びることもありますって!!」
「励まされるほうが傷付くこともあるんだよ? グスッ……」
「も、申し訳ありません……でもでも、皆さん殿下のことを諦めてくれたのですから、結果オーライですよ! ね??」
リネーアの必死の慰めに、フィリップは袖で涙を拭った。
「それはどうかな~? たぶん、親からの指示待ちになるんじゃないかな? 次はどんな手を使って来るんだろ??」
「「あぁ~……」」
騒ぎが落ち着いたのは一時的。それはリネーアとボエルも納得だ。
「ハニートラップかな~? 何人か食ってから捨ててやるか……」
「「殿下ならやりそう……」」
あと、フィリップの女癖の悪さも。フィリップが悪い顔をしているものだから、2人は納得を通り越して心配になるのであったとさ。
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