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十一章 昼が忙しくても夜遊び
268 一世一代のイベント
しおりを挟むフィリップが皇帝の膝の上で撫で回された翌日。フィリップは自室で目覚めた。どうやらフィリップが寝てしまったから、ボエルが運んでベッドに寝かせたらしい。
そこで寮に戻る許可は出たとか聞いたので、フィリップは荷物をまとめてそそくさ逃走。寮の自室に入ったら、ボエルと一緒にベッドに飛び込んだ。
「「疲れた……」」
2人とも、城の生活は心身に来るらしい。
「なんでボエルまで?」
「メイドだけでも面倒なのに、当主の相手までしなくちゃいけなかったからだ。貴族、面倒くせぇ~」
「確かにね~……ま、父上からお金は好きにしていい許可はもらったから、全部受け取ってよ。ボーナス~」
「イヤだ。怖い。またオモチャにしようとしてるだろ?」
「信用してよ~~~」
ボエルが警戒しているので、とりあえず必要な時に渡すことにしてこの話は終わった。
「ところでなんだけど、陛下と何を話したんだ?」
「言えない……ってので、だいたいわかるでしょ?」
「うん。聞きたくない。でも、このままで城は大丈夫か? 殿下も命狙われたり……」
「僕のほうはわからないけど、城は大丈夫でしょ」
「オレとしては、殿下の安全のほうが気になるんだけど……」
城はフィリップの策略が働いて、第二皇子と婚姻を結ぼうとした貴族は皇帝から釘を刺されているから、メイドもそれに倣っていると確信している。ただ、ボエルの言い分もわかる。
「ここだけの話だよ? 理由は言わないけど、僕を疑ってる人はいる。だから、何かあるかも知れないから、ボエルも外に出た時は気を付けて」
「おう……わかった」
ここからはボエルも最大級の警戒をすることに決まったら、あとはダラダラ。
「そういえばボエルの彼女って、寮から出てったの? 主人は今年卒業だったよね?」
「いや……歳の離れた妹が今年入学だから、帝都学院に詳しいカロラがメイドを続行するんだ。いまはこっちで必要な物を準備してるぞ」
「へ~。だから落ち着いてたんだ~。ボエルのことだから、彼女について行くとか言うと思ってたよ~」
「もうあの頃のオレとは違うんだよ。フッ……」
やけにボエルがカッコつけているので、フィリップは勘繰る。
「もしかして……将来の話した?」
「し、したからなんだよ」
「わ~お! おめでと~~~う!! 将来は一緒に暮らすんだよね? ね??」
「まぁ……でも、結婚とかはまだ難しいかもしれねぇけど」
「愛があれば結婚なんてどうでもいいでしょ! ホント、おめでとう」
「う、うん。ありがとう」
フィリップがこんなにも喜んでくれているので、ボエルもすんなりと祝福を受け入れた。
「これはアレだな。婚約指輪が必要だな。近々買いに行こうよ」
「そっか……普通のカップルは婚約指輪を贈るんだったか」
「うんうん。こないだガッポリ稼いだんだから、いっちゃん高いヤツ買おうよ~? ウェディングドレスもどう? ド派手な結婚式にしてそれで使い切ろう!」
「おお~い。オレに全部押し付けようとすんなよ~~~」
結局はいつもの喜び半減。貴族マネーを押し付けられそうになったボエルは、婚約指輪を買いに行きたくなくなるのであったとさ。
婚約指輪を贈るなら、やはりサプライズがいいかとボエルにカロラの指のサイズを調べさせたが、失敗。フィリップは寝ている時に指に紙を巻き付けて印を付けろと言ったのに、ボエルがソワソワしていたからタヌキ寝入りされたんだって。
第二案で「ペアリングなんてどう?」と聞いて来させたけど、どうなるかは微妙。たぶんボエルは緊張していただろうから、フィリップは失敗すると思ってる。
学校が始まる前までになんとかデパートに行ったが、ここでもボエルはド緊張。フィリップが無責任に「いっちゃんいい指輪待って来て」と言って、その指輪の値段がとんでもなく高かったから緊張したっぽい。
「えぇ~。似合うって~」
「いや、前に殿下が言ってただろ? 平民にそんな高い物贈ったら引かれるって……いっちゃん安いヤツで勘弁してください!!」
それも土下座する勢い。ここまで言われてはフィリップも鬼ではない。
「これ、安いから5個買う?」
「鬼か!?」
鬼でした。というか、フィリップも高い指輪を見て金銭感覚が麻痺してるな。
とりあえず男爵家ならギリギリ満足してくれるシンプルな婚約指輪を購入。それでもかなり高いのでボエルは緊張しながら金貨を払っていた。
「あと、この金のブレスレット買って~」
「たっか……何に使うんだ?」
「ファッション。どう? 成金っぽくな~い??」
「成金ってのは、下品なファッションの人を言うのでは??」
「買って買って買って買って~~~」
「殿下のカネなんだから、オレに言うなよ」
何故かフィリップがワガママな子供になっているので、ボエルもハテナ顔。しかし、このままにしておくのも恥ずかしいので、ボエルは婚約指輪より10倍も高い金のブレスレットを買い与えるのであった。
その次の日、ボエルはフィリップの部屋を借りて、カロラに婚約指輪を贈る。カロラは「やっぱり」って顔をしてから、涙ながらに感謝していた。空気が読める人だ。
フィリップはその光景を、バルコニーから隠れて見ている。バレないように一旦ドアから出て外から戻って来たっぽい。
ただ、ボエルの一世一代のイベントだ。フィリップも空気を読んで、2人がベッドインしてマッサージを始めたら、昼間の街に消えたのであった。
ムラムラしたんだね……
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