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十一章 昼が忙しくても夜遊び
261 メイド服の売り込み
しおりを挟むとある派閥のパーティーでは元カノみたいな元メイドのエイラとダグマーが、ボエルにまで体の関係かと言及して来たので、フィリップは話題をムリヤリ変えようと頑張ってる。
「てか、2人とも、去年はこの派閥にいたっけ? 別の派閥だったよね??」
「はい。夫が上から指示を受けまして、他の派閥のパーティーに出席して情報収集しております」
「私も同じです。どの派閥も同じように人を送り込んでいるそうです」
「てことは~……お兄様絡みか~」
「「大きな声では言えませんが……」」
ここでもフレドリクショック。元平民との婚約を聞いてどう対応したらいいかわからないから、各派閥の対応の仕方を聞き出そうとしているのだ。
「なんかわかった?」
「様子見って声が多いですね」
「私の耳には……」
「あ、僕だけで聞くよ」
ダグマーは音魔法で聞いた内容が言いづらそうだったので、フィリップは耳打ちしてもらって、濁した感じでエイラにも教えてあげる。
「誰とは言えないけど、悪口を聞いちゃったみたいだよ。それでなんだけど……ちょっと耳貸して」
今度は2人に顔を近付けさせ、フィリップは小声で喋る。
「城のメイドでも同じことがあってね。聖女ちゃんの悪口を言った人はお兄様にクビにされたり、陰口言ってた人も怒られたの。だから、この件には触れないほうが絶対にいいよ。
間違っても、聖女ちゃんの悪口は言っちゃダメ。乗っかってもダメ。お家が潰されるかもしれない。これ、貴族で共有してくれていいから。あ、お兄様の耳に入らないようにしてね」
フィリップが一気に喋り終えると、エイラとダグマーは少し離れて顔を見合わせた。そして次にフィリップの顔を見て呟く。
「「殿下が賢いこと言ってる……」」
どうやらフィリップから出ない言葉が出たから信じられなかったみたい。
「もう! 僕は賢いんだからね!!」
なのでフィリップは怒ったけど、そのキレ方ではどうしても賢く見えないエイラとダグマーであったとさ。
「あ、そうだ。ボエル、前に出て」
エイラとダグマーはまだヒソヒソとフィリップの悪口を言って離れて行かないので、ボエル頼み。
「この服、よくなくな~い? 父上が作った新しいメイド服だよ~??」
2人は元メイドなので、新しいメイド服と聞いて食い付いた。
「これがメイド服ですか? デザインは素晴らしいと思いますが、ズボンなんて穿いてますよ?」
「スカートも支給されているから選べるんだよ。用途に合わせて選んだりね。冬場は半々ぐらいの割合とか聞いたかな?」
「それはいいですね。スカートだと動きにくかったのです。私がメイドをしていた時に欲しかったぐらいです」
「でしょ~?」
エイラは考えが古いのかやや抵抗があるみたいだが、暗部出身のダグマーは機能的だとベタ褒め。その2人の話を聞いていたら、フィリップは閃いた。
「あ、そうだ。ボエルってダンスで男役できたよね?」
「な、なんで知ってんだ……」
「彼女から聞いた。んで、ここで踊ってくれない?」
「こ、こんな場なんて無理だ!」
「ちゃんと綺麗どころ用意するから~」
フィリップに無茶振りされたからボエルは驚き過ぎて、男役ができることを知ってる理由が頭に入って来なかった。その隙にフィリップは皇帝のところに走って、耳打ち。
その案は皇帝も面白いと思ったのかすぐに許可が下りたので、皇帝命令だと言ってフレドリク付きのメイドとボエルを組ませてダンスホールの中央に移動した。
「さあさあ! 寄ってらっしゃい見てらっしゃい! こちらに立つ2人の侍女が着ている服は、新しいメイド服だよ~。それじゃあ、ミュージックスタート~!!」
普段まったく前に出ないフィリップが大声で捲し立てると「あのバカ、何してんだ?」と貴族たちは大注目。そこに楽団の演奏が始まると、ボエルたちは礼をしてからダンスを始める。
「今回のメイド服は、機能を追及しているから激しく動いても問題ナッシング! 特にズボンは、全力疾走もできるし冬場もあったか。もちろんデザインにも拘っているから、どんな場所に出ても恥は掻かないよ~」
この言葉で貴族たちは、ダンスをする2人を値踏みするように見て話し合っている。
「これを作ったのは、皇帝陛下! さすがだよね~? 拍手拍手~」
フィリップに煽られた貴族たちは、万雷の拍手。本当に素晴らしいと思っての拍手なので、皆、笑顔だ。皇帝はその拍手に右手を上げて応えた。
「これは売り物じゃないけど、マネするぐらいはいいって。メイドのやる気が上がるなら安い買い物だ! マネしちゃえマネしちゃえ。そしてこき使っちゃえ」
「「「「「プッ……わはははは」」」」」
ジョークに笑いが起こるなか、フィリップはダンスホールの中央に移動して、ボエルや指揮者に目で合図を出したら両手を上げて拳を握る。その行為で演奏は止まり、踊っていたボエルたちはフィリップの真後ろで止まった。
「以上! 新メイド服のお披露目でした。いま一度、皇帝陛下に拍手を~」
これにて、フィリップの口上は終了。万雷の拍手のなか、フィリップはボエルたちを連れてコソコソと退場するのであった。
「クッ……ククク」
エイラとダグマーからも笑われたフィリップは、移動の馬車の中でも皇帝に笑われている。
「何がそんなにおかしいの?」
「あの口上だ。皆からなんと言われていたか知ってるか?」
「まったく……」
「商人だ。アレならなんでも買ってしまいそうだと言われていたんだ。フィリップにはそんな才能があったのだな。クククク」
「それ、皇族に対して不敬なのでは……」
貴族たちも失言したと思ったらしいが、そのとき皇帝が大笑いしたから被せまくったっぽい。そのせいで皇帝も思い出し笑いしてるよ。
「それにしても、よくやったな」
「なんのこと?」
「フレドリクの婚約話を、制服の話にすり替えたのだろ? あのあとは空気がガラリと変わった」
「あ、そんな効果あったんだ。単純にメイド服の宣伝をしただけなんだけどな~」
「フッ……密室でも本心は喋らんか」
「買い被りすぎだよ」
フィリップの狙いは正に言われた通りだが、馬鹿皇子を演じ続けるので、皇帝は優しい顔でフィリップの頭を撫で続けるのであった……
「次のパーティーでもやるか?」
「もう僕はいいよ~。誰かに代わってもらってよ~~~」
ただし、皇帝がアンコールするから、フィリップは嬉しい顔のひとつもしないのであったとさ。
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