夜遊び大好きショタ皇子は転生者。乙女ゲームでの出番はまだまだ先なのでレベル上げに精を出します

ma-no

文字の大きさ
上 下
256 / 374
十一章 昼が忙しくても夜遊び

256 新メイド服のその後

しおりを挟む

 リネーアたちは太ると知ってもいまはカレーの誘惑に逆らえないので、そのままチビチビ食事。食べ終わるのをフィリップが待っていたら、料理長が感想を聞きに来たので「もう一歩」と助言をしていた。
 さらに、肉の変更や魚介類等も試すように指示を出す。リネーアたちはまた誘惑に駆られていたので、日にち指定。寮の食堂の3階と2階は毎週土曜日の夜に出し、校舎と寮の1階は週3の頻度に。

 太りやすいとも掲示するように指示したけど、週に計7回は食べるチャンスがあるから、誘惑に負けた生徒は確実に太るはずだ。
 料理長もその心配は危惧していたのですぐに受け入れたが、リネーアたちは残念そうにスプーンを咥えてフィリップたちの話を聞いていたのであった。


 それから2日後、ボエルは完全に体調が戻ったので、ソフィア・アクセーン男爵令嬢と婚約者をまじえての修羅場。いや、お茶会。
 フィリップの予想通り、カロラは金貨を全てソフィアに手渡していたそうだ。そのお金は、2人で折半。ソフィアが全てカロラに渡そうとしたから、カロラも受け取れないから折半となったらしい。

 フィリップとソフィアのスキャンダルは、婚約者の耳にも入っていたけど、ソフィアの親友が見ていたのでこちらも問題なし。
 ただ、フィリップは信じられないからか、婚約者限定で一度だけフレドリクに進言する権利をあげていた。浮気のお詫びの品と勘違いさせようとしたみたいだけど、婚約者は裏表のない人物だったので有り難く頂戴していた。

 それでさらに心配。いい人カップルだから、魑魅魍魎が蔓延はびこる貴族社会を生き残れるか心配なので、フィリップは自分の名前で時間稼ぎする策を与えて立ち去るのであった。


 お茶会から数日後、フィリップは仮病に突入して学校にも行かずダラダラしていたら、ボエルが皇帝の手紙を持って入って来た。

「ふ~ん。なるほどね~……読む?」
「いや……また機密事項だろ?」

 フィリップがこんなことを言ってるのだから、ボエルは嵌められることを警戒してる。二度目だもん。

「ただの報告書だよ。ちょっと前に新しいメイド服の支給があったみたい。そのこと教えてくれてるだけ」
「あぁ~……そういえば、オレも取りに来るように言われてた。みんな着てるってことか」
「そそ。3割ぐらいズボンで仕事してるってさ」
「てことは、オレの仲間が……」
「どうだろう……洗濯係が多いみたいだから、適材適所って感じはするね~」

 ボエルとしては性同一性障害の仲間がいるのかと嬉しそうな顔になったが、報告書を読む限り少なそう。元より少ないのだからとフィリップは励まし、洗濯係以外でズボンを好んで穿いている人を探そうと提案していた。

「ボエルが着てるとこも見たいし、週末に城に顔出してみよっか?」
「おう。それならリネーアも誘ってやろうぜ。コニーに会いたいだろうし」
「……コニーって??」
「いい加減覚えてやれよ~」

 やっぱりコニーはフィリップの記憶になし。ボエルもコニーと呼ぶことをやめて、フィリップの前では「モブ君」と呼び出したのであった。


 週末までにフィリップは昼型に戻したら、豪華な馬車に揺られて登城。リネーアたちはフィリップの書いた通行許可証を待ってコニーの下へ送り出す。
 城に入ると、待ち構えていた執事がフィリップを拉致。手紙で帰る旨を知らせていたから、皇帝の撫で回しの刑。どうやら城でもカレーが振る舞われ、フィリップが発案者と聞いたから褒めてるらしい。

 皇帝は、味もそうだが早く食べられるから気に入った様子。しかしフィリップは心配。食べ過ぎは太るし健康を害するから、週に1回から2回にするよう進言する。
 フィリップが体の心配までしてくれたから、撫で回しの刑は激しさ増大。失言だったと後悔していた。

 やっと解放されたフィリップはフラフラで、新しいメイド服を受け取ったボエルと一緒に城の中を歩いていた。

「うん。みんな似合ってるね~」
「ああ。見違えた。気持ち、かわいさ2割増しかも?」
「前のは見慣れてしまってたからだよ」
「それもあるけど、表情が柔らかくなった気がするぞ」
「あ、みんな女子だもんね。新しい服は嬉しいんだね~」

 メイドは皆、笑顔の者が多い。それにフィリップに感謝する者もたまにいるので、フィリップも少し嬉しそうだ。カッコつけて手を上げるだけで素通りしてるけど。
 そのままメイド詰め所に顔を出したら、ここではアガータから多大な感謝。いまのところメイドたちは、口喧嘩のひとつもしないで仲良くやっているそうだ。

 そこでボエルはフィリップの背中をツンツン。フィリップは意図を読み取って、ズボンを好んで穿いているメイドの職場を聞き出すのであった。


「仲間が増えてよかったね」
「ああ……」

 アガータから聞いたメイドは間違いなく性同一性障害だったので、帰り道ではボエルも感慨深い顔。今までの彼女は女性が好きな女性という感じだったので、男性の心を持つ女性と出会えて嬉しかったのだ。
 そのメイドは、ボエルに感謝をしていた。ズボンのこともそうだが、執事服を着て歩いているからパイオニアとして尊敬していたのだ。

 そんなことを言われても、ボエルの心を救ったのはフィリップ。ズボンのこともフィリップがやったことなので、ボエルはフィリップをヨイショしまくっていた。
 だけどフィリップは「なんのこと?」と、とぼけ続け「からかうためにやった」と白状したので、メイドにはいまいち伝わらず。どちらにしても馬鹿皇子の噂を信じているから伝わらなかっただろう。

 あと、「ボエルには彼女がいる」と秘密を暴露したことも悪い。「こんな人に仕えていて大丈夫か?」とめちゃくちゃ心配されたボエルであった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

1001部隊 ~幻の最強部隊、異世界にて~

鮪鱚鰈
ファンタジー
昭和22年 ロサンゼルス沖合 戦艦大和の艦上にて日本とアメリカの講和がなる 事実上勝利した日本はハワイ自治権・グアム・ミッドウエー統治権・ラバウル直轄権利を得て事実上太平洋の覇者となる その戦争を日本の勝利に導いた男と男が率いる小隊は1001部隊 中国戦線で無類の活躍を見せ、1001小隊の参戦が噂されるだけで敵が逃げ出すほどであった。 終戦時1001小隊に参加して最後まで生き残った兵は11人 小隊長である男『瀬能勝則』含めると12人の男達である 劣戦の戦場でその男達が現れると瞬く間に戦局が逆転し気が付けば日本軍が勝っていた。 しかし日本陸軍上層部はその男達を快くは思っていなかった。 上官の命令には従わず自由気ままに戦場を行き来する男達。 ゆえに彼らは最前線に配備された しかし、彼等は死なず、最前線においても無類の戦火を上げていった。 しかし、彼らがもたらした日本の勝利は彼らが望んだ日本を作り上げたわけではなかった。 瀬能が死を迎えるとき とある世界の神が彼と彼の部下を新天地へと導くのであった

猫王様の千年股旅

ma-no
ファンタジー
 神様のミスで森に住む白猫に転生させられた老人。  紆余曲折の末、猫の国の王となったけど、そこからが長い。  魔法チートで戦ったり技術チートしたり世界中を旅したりしても、まだまだ時間は有り余っている。  千年の寿命を与えられた猫は、幾千の出会いと別れを繰り返すのであった…… ☆注☆ この話は「アイムキャット!!? 異世界キャット漫遊記」の続編です。 できるだけ前情報なしで書いていますので、新しい読者様に出会えると幸いです。 初っ端からネタバレが含まれていますので、気になる人は元の話から読んでもらえたら有り難いですけど、超長いので覚悟が必要かも…… 「アルファポリス」「小説家になろう」「カクヨミ」で同時掲載中です。 R指定は念の為です。  毎週日曜、夕方ぐらいに更新しております。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

転生して捨てられたけど日々是好日だね。【二章・完】

ぼん@ぼおやっじ
ファンタジー
おなじみ異世界に転生した主人公の物語。 転生はデフォです。 でもなぜか神様に見込まれて魔法とか魔力とか失ってしまったリウ君の物語。 リウ君は幼児ですが魔力がないので馬鹿にされます。でも周りの大人たちにもいい人はいて、愛されて成長していきます。 しかしリウ君の暮らす村の近くには『タタリ』という恐ろしいものを封じた祠があたのです。 この話は第一部ということでそこまでは完結しています。 第一部ではリウ君は自力で成長し、戦う力を得ます。 そして… リウ君のかっこいい活躍を見てください。

乙女ゲームの断罪イベントが終わった世界で転生したモブは何を思う

ひなクラゲ
ファンタジー
 ここは乙女ゲームの世界  悪役令嬢の断罪イベントも終わり、無事にエンディングを迎えたのだろう…  主人公と王子の幸せそうな笑顔で…  でも転生者であるモブは思う  きっとこのまま幸福なまま終わる筈がないと…

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

ブラックギルドマスターへ、社畜以下の道具として扱ってくれてあざーす!お陰で転職した俺は初日にSランクハンターに成り上がりました!

仁徳
ファンタジー
あらすじ リュシアン・プライムはブラックハンターギルドの一員だった。 彼はギルドマスターやギルド仲間から、常人ではこなせない量の依頼を押し付けられていたが、夜遅くまで働くことで全ての依頼を一日で終わらせていた。 ある日、リュシアンは仲間の罠に嵌められ、依頼を終わらせることができなかった。その一度の失敗をきっかけに、ギルドマスターから無能ハンターの烙印を押され、クビになる。 途方に暮れていると、モンスターに襲われている女性を彼は見つけてしまう。 ハンターとして襲われている人を見過ごせないリュシアンは、モンスターから女性を守った。 彼は助けた女性が、隣町にあるハンターギルドのギルドマスターであることを知る。 リュシアンの才能に目をつけたギルドマスターは、彼をスカウトした。 一方ブラックギルドでは、リュシアンがいないことで依頼達成の効率が悪くなり、依頼は溜まっていく一方だった。ついにブラックギルドは町の住民たちからのクレームなどが殺到して町民たちから見放されることになる。 そんな彼らに反してリュシアンは新しい職場、新しい仲間と出会い、ブッラックギルドの経験を活かして最速でギルドランキング一位を獲得し、ギルドマスターや町の住民たちから一目置かれるようになった。 これはブラックな環境で働いていた主人公が一人の女性を助けたことがきっかけで人生が一変し、ホワイトなギルド環境で最強、無双、ときどきスローライフをしていく物語!

処理中です...