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十一章 昼が忙しくても夜遊び
256 新メイド服のその後
しおりを挟むリネーアたちは太ると知ってもいまはカレーの誘惑に逆らえないので、そのままチビチビ食事。食べ終わるのをフィリップが待っていたら、料理長が感想を聞きに来たので「もう一歩」と助言をしていた。
さらに、肉の変更や魚介類等も試すように指示を出す。リネーアたちはまた誘惑に駆られていたので、日にち指定。寮の食堂の3階と2階は毎週土曜日の夜に出し、校舎と寮の1階は週3の頻度に。
太りやすいとも掲示するように指示したけど、週に計7回は食べるチャンスがあるから、誘惑に負けた生徒は確実に太るはずだ。
料理長もその心配は危惧していたのですぐに受け入れたが、リネーアたちは残念そうにスプーンを咥えてフィリップたちの話を聞いていたのであった。
それから2日後、ボエルは完全に体調が戻ったので、ソフィア・アクセーン男爵令嬢と婚約者をまじえての修羅場。いや、お茶会。
フィリップの予想通り、カロラは金貨を全てソフィアに手渡していたそうだ。そのお金は、2人で折半。ソフィアが全てカロラに渡そうとしたから、カロラも受け取れないから折半となったらしい。
フィリップとソフィアのスキャンダルは、婚約者の耳にも入っていたけど、ソフィアの親友が見ていたのでこちらも問題なし。
ただ、フィリップは信じられないからか、婚約者限定で一度だけフレドリクに進言する権利をあげていた。浮気のお詫びの品と勘違いさせようとしたみたいだけど、婚約者は裏表のない人物だったので有り難く頂戴していた。
それでさらに心配。いい人カップルだから、魑魅魍魎が蔓延る貴族社会を生き残れるか心配なので、フィリップは自分の名前で時間稼ぎする策を与えて立ち去るのであった。
お茶会から数日後、フィリップは仮病に突入して学校にも行かずダラダラしていたら、ボエルが皇帝の手紙を持って入って来た。
「ふ~ん。なるほどね~……読む?」
「いや……また機密事項だろ?」
フィリップがこんなことを言ってるのだから、ボエルは嵌められることを警戒してる。二度目だもん。
「ただの報告書だよ。ちょっと前に新しいメイド服の支給があったみたい。そのこと教えてくれてるだけ」
「あぁ~……そういえば、オレも取りに来るように言われてた。みんな着てるってことか」
「そそ。3割ぐらいズボンで仕事してるってさ」
「てことは、オレの仲間が……」
「どうだろう……洗濯係が多いみたいだから、適材適所って感じはするね~」
ボエルとしては性同一性障害の仲間がいるのかと嬉しそうな顔になったが、報告書を読む限り少なそう。元より少ないのだからとフィリップは励まし、洗濯係以外でズボンを好んで穿いている人を探そうと提案していた。
「ボエルが着てるとこも見たいし、週末に城に顔出してみよっか?」
「おう。それならリネーアも誘ってやろうぜ。コニーに会いたいだろうし」
「……コニーって??」
「いい加減覚えてやれよ~」
やっぱりコニーはフィリップの記憶になし。ボエルもコニーと呼ぶことをやめて、フィリップの前では「モブ君」と呼び出したのであった。
週末までにフィリップは昼型に戻したら、豪華な馬車に揺られて登城。リネーアたちはフィリップの書いた通行許可証を待ってコニーの下へ送り出す。
城に入ると、待ち構えていた執事がフィリップを拉致。手紙で帰る旨を知らせていたから、皇帝の撫で回しの刑。どうやら城でもカレーが振る舞われ、フィリップが発案者と聞いたから褒めてるらしい。
皇帝は、味もそうだが早く食べられるから気に入った様子。しかしフィリップは心配。食べ過ぎは太るし健康を害するから、週に1回から2回にするよう進言する。
フィリップが体の心配までしてくれたから、撫で回しの刑は激しさ増大。失言だったと後悔していた。
やっと解放されたフィリップはフラフラで、新しいメイド服を受け取ったボエルと一緒に城の中を歩いていた。
「うん。みんな似合ってるね~」
「ああ。見違えた。気持ち、かわいさ2割増しかも?」
「前のは見慣れてしまってたからだよ」
「それもあるけど、表情が柔らかくなった気がするぞ」
「あ、みんな女子だもんね。新しい服は嬉しいんだね~」
メイドは皆、笑顔の者が多い。それにフィリップに感謝する者もたまにいるので、フィリップも少し嬉しそうだ。カッコつけて手を上げるだけで素通りしてるけど。
そのままメイド詰め所に顔を出したら、ここではアガータから多大な感謝。いまのところメイドたちは、口喧嘩のひとつもしないで仲良くやっているそうだ。
そこでボエルはフィリップの背中をツンツン。フィリップは意図を読み取って、ズボンを好んで穿いているメイドの職場を聞き出すのであった。
「仲間が増えてよかったね」
「ああ……」
アガータから聞いたメイドは間違いなく性同一性障害だったので、帰り道ではボエルも感慨深い顔。今までの彼女は女性が好きな女性という感じだったので、男性の心を持つ女性と出会えて嬉しかったのだ。
そのメイドは、ボエルに感謝をしていた。ズボンのこともそうだが、執事服を着て歩いているからパイオニアとして尊敬していたのだ。
そんなことを言われても、ボエルの心を救ったのはフィリップ。ズボンのこともフィリップがやったことなので、ボエルはフィリップをヨイショしまくっていた。
だけどフィリップは「なんのこと?」と、とぼけ続け「からかうためにやった」と白状したので、メイドにはいまいち伝わらず。どちらにしても馬鹿皇子の噂を信じているから伝わらなかっただろう。
あと、「ボエルには彼女がいる」と秘密を暴露したことも悪い。「こんな人に仕えていて大丈夫か?」とめちゃくちゃ心配されたボエルであった。
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