夜遊び大好きショタ皇子は転生者。乙女ゲームでの出番はまだまだ先なのでレベル上げに精を出します

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十一章 昼が忙しくても夜遊び

248 初めての乗馬

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 フィリップが黒馬と喋ったがためにボエルたちは「喋れるんだよな?」と恐ろしくうるさくなっていたが、「彼女と早く会いたいんじゃなかったの?」と言っただけで辺りは静まり返る。ボエルが拳で黙らせました。
 気性の荒いと言われていた巨大な黒馬はフィリップのおかげで大人しくなったけど、それでも馬に乗ることは素人には難しいので、ボエルが適当な馬に乗って見本を見せる。

「こんな感じで乗るんだけど……できそうか?」
「う~ん……誰かが乗せてくれるとかじゃないの?」
「最初はそれでもいいけど、1人でも乗れるようにならないと、いざというとき困るぞ?」
「あぁ~……国民が革命を起こして逃げる時とかは、周りに誰もいないケースがあるのか……」
「そこまで言ってない。スケールデカすぎないか?」

 フィリップのもしもの時は、ボエルもいまいち共感できない。「何から逃げようとしてんだ」と心配するほどだ。
 フィリップも「何を言ってんだ」と反省したら、周りの人の手を借りて黒馬に跨がった。

「乗れた! たっか~~~い!!」
「喜んでるとこ悪いけど、逆。どうしてそうなった??」
「逆? 頭がない!?」
「だから逆だと言ってんだろ。一回降りろ」

 残念ながら、微妙に失敗。フィリップは背が低いからモタモタして、変な乗り方になったから逆向きになってしまったのだ。
 こうなっては仕方がないので、ボエルの冷たい助言を聞いたフィリップは降りようとしたけど、何故か黒馬がゆっくりと地面に腹をつけた。

「座っちゃった……」
「馬も殿下に呆れたんだよ。そうなったら、なかなか走ってくれないぞ。やっぱり他の馬に代えようぜ」
「う~ん……ちょっと待って」

 フィリップは鞍の上でモソモソと動いて方向転換し、這うように進んで黒馬の首にしがみついて小声で喋る。普通に喋るとツッコまれて時間が掛かるから避けたみたい。

「どうしたの? 震えてるよ? 誰が化け物なんだよ……あ、そゆこと? 大丈夫大丈夫。僕に逆らわない限り、君を殺したりしない。だから立とっか?」
「ブルンッ!!」

 どうやら黒馬は、動物の勘でフィリップの底知れぬ強さにビビっていた様子。だからフィリップが優しく言っただけで気を付けだ。

「いけるみたい。あとでブラッシングしてあげるからね~?」
「ブルンブルンッ」
「そいつ、めっちゃ首を横に振ってるけど、なんて言ってるんだ?」
「なんかおそれ多いって……」
「やっぱ喋ってるじゃん!?」

 黒馬の動きとフィリップの通訳がマッチしまくっているので、ボエルたちは確信してしまうのであったとさ。


 またフィリップが彼女を出したらボエルが暴力でうやむやにして、馬の操り方講座。手綱で操作すると聞いたので、フィリップは見よう見まねでやってみる。

「ゆっくり前の馬に合わせて歩いて。そうそう。上手い上手い」
「殿下がな……」

 でも、言葉のほうが早い。なんなら上達が早すぎるので、ボエルも温い目だ。

「アハハ。はやいはや~い。アハハハハ」
「もう走ってる……笑ってると舌噛むぞ~?」
「いたっ!?」
「ほらみたことか」

 唯一の失敗は、馬の揺れで舌を噛んだこと。上達が早すぎてボエルも何かを諦めてるな。

「どう? これ凄くない??」
「立つな! 危ないだろ!!」
「揺れないように歩いてくれてるから大丈夫だよ~」
「どうやったらできるんだよ!!」

 さらにフィリップがアクロバットな乗り方をするもんだから、ボエルも「もういいや」と乗馬講習は終了するのであったとさ。


 初めての乗馬は初日の数時間で百点どころか千点を叩き出したので、ボエルはボヤいていたけど、早く寮に帰れるので上々。手続きをしたら、翌日にはフィリップとボエルは馬に乗って帝都学院を向かう。

「もっと飛ばしちゃダメ?」
「ダメだ。町中の道は硬いから、怪我するかもしれねぇ」
「ふ~ん……勉強になるな~」
「やっと教えた気分になった……」

 昨日もたいしたことを教えていないので、ボエルの出番が来てもいまいち教えた気分になれない。そのまま帝都学院の厩舎きゅうしゃに着いたら、フィリップはエサだけは注意するよう念を押して黒馬を馬係に預けた。
 それから寮の自室に入ったら、お着替え。フィリップが楽な服装になると、ボエルがずっとソワソワしてる。

「あ、もう行っていいよ。しばらく寝てるね~」
「ヒャッホ~!」
「そんなに会いたかったんだ……」

 なので自由時間を与えたら、ボエルは礼も言わず彼女の下へすっ飛んで行くのであった……


 時刻は夕方。フィリップは宣言通り寝ていたら、激しく揺さぶられて起こされた。

「ふぁ~。ボエルか……ごはん?」
「彼女とのこと聞けよ~」
「はいはい。プレゼント喜んでくれたんでしょ。そのまま愛を確かめあったとさ」
「なんでわかんだよ~」
「首にキスマークが何個もついてるからだよ。それ、隠したほうがいいよ?」
「えぇ~。彼女の印だからもったいないぃぃ~」

 ボエルがまたバカップルになっていたので、フィリップは突き放す。

「お腹すいたニャン。あ~んして食べさせて欲しいニャ~ン」
「そ、その喋り方と仕草は……」
「あ~んニャ~ン。美味しいニャン?」
「彼女!? オレ!?」
「いい加減にしないと、言いふらすニャ~ン。ニャンニャン♪」
「やめてくれ~~~!!」

 脅しのネタならいくらでもある。フィリップは羞恥心を引きずり出して、ボエルの男らしさを取り戻すのであった。

「ところでボエルって心は男だよね? 抵抗なくニャンニャン言ってるってことは、かわいいのとか大好きなの?」
「ガフッ……」
「あ……謝るから死ぬな~~~!!」

 興味本位で聞いたことがトドメとなり、フィリップはボエルの蘇生処置をすることになったとさ。
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