夜遊び大好きショタ皇子は転生者。乙女ゲームでの出番はまだまだ先なのでレベル上げに精を出します

ma-no

文字の大きさ
上 下
200 / 378
九章 物語が終わるまで夜遊び

200 帝都学院のパーティー

しおりを挟む

 各派閥のパーティーを3日間ハシゴした皇族一同は、今日は帝都学院のパーティー会場にやって来た。

「よく学び、お前たちの手で帝国を繁栄させるのだ」

 理由は、子供の内に洗脳……は言い過ぎた。皇帝みずから声を掛け、生徒たちのやる気アップをはかるためにパーティーに出席しているのだ。
 スピーチが終わった皇帝は専用の席に座って、生徒たち1人1人に対応。握手をしたり、将来の話を厳しい顔で聞いてあげている。この顔は「子供、かわいいな~」って顔らしいけど、生徒からは怖がられている。

 ここは勝手知ったる学び舎なので、フレドリクとフィリップは別行動。フレドリクはエステルそっちのけでルイーゼや幼馴染みとワイワイやって、たまに他の生徒とも喋っている。
 フィリップは、ボエルと一緒にハミゴ。ボエルは「みんな楽しそうにしてるだろ? 誰かと喋れ。連れて来てやろうか?」って、公園デビューしたお母さんみたいになってる。

 そのことを断っていたら、同じボッチ仲間を発見したので、フィリップとボエルは近付いて行った。

「リネーア嬢、メイドさんも。来てたんなら声掛けてくれたらいいのに」
「も、申し訳ありません。緊張して、立ってるのもやっとだったモノで……」

 リネーアだ。対人恐怖症のリハビリのために無理して出て来たけど、人の多さに怖くなって動けなくなっていたみたいだ。

「友達とかと一緒に来なかったの?」
「まだそこまで仲がいい人は……」
「あらら~。それは寂しいね~」
「殿下が言うな。どのパーティーに行っても1人だっただろ」

 フィリップがリネーアを心配してあげているのに、ボエルが横からグサリ。千人以上の貴族と絡んでいたのに、ちゃんと喋ったのは2人とバラされてケンカになってた。
 いつも寮の一室でやっていたやり取りを見たリネーアは、緊張が少しやわらいだみたいだ。フィリップはそのノリを見せようと失礼なことを言ったみたいだけど、ボエルは容赦ないからけっこう怒っているな。

「もういいでしょ~。てか、紹介したい人がいたんだった。ついて来て」
「「「紹介したい人??」」」

 ボッチのフィリップにそんな人がいるのかと、ボエル、リネーア、マーヤはずっとヒソヒソしながらフィリップに続く。
 その声が聞こえていたフィリップは少し落ち込みながら、会場の端っこにいたモブっぽい生徒の前に立った。

「ねえ? ダンジョン攻略者の1人が、なんでまたボッチなの??」
「あの……その……」

 このモブっぽい生徒は、コニー・ハネス子爵令息。どうやらフレドリクパーティと一緒に城の祝勝会に出席してから、生徒の嫉妬が再発して「調子に乗ってる」と無視されているらしい。

「プププ……かわいそ」
「うっ……笑っていても、声を掛けてくれるのはフィリップ殿下ぐらいです」
「お兄様は助けてくれないの? てか、あの輪に入ったらいいじゃん??」
「あの中は、よけい孤独感がありますので……」
「アハハハ。そりゃそうだ。アハハハハ」

 ルイーゼ1人を4人の男で乳繰り合う中に入っていける男なんて、勇者しかいない。フィリップはそれが面白くて大笑いしていたら、ボエルがつついて来たので話を戻す。

「喋り相手のいない君には、リネーア嬢を貸してあげる。お兄様の武勇伝を聞かせてあげて。初耳だから、きっと楽しんでくれるよ」
「はあ……」
「リネーア嬢も聞きたいよね?」
「は、はい! 先輩は、ダンジョンの中で何をしていたのですか??」
「荷物持ちって、どうでもいいポジションだよ」
「はいはい。自分を卑下しないの。荷物持ちも、立派な貢献だよ」

 リネーアはフレドリクパーティーの話を聞きたいのに、コニーはまた昔みたいに自信を失っていたのでフィリップがフォロー。
 コニーの口数が増え、リネーアも目をキラキラさせた頃に、フィリップは一歩下がった。

「殿下にしては、いい人紹介したな」

 するとボエルも同じように下がって、リネーアたちの会話を微笑ましく見ている。

「殿下にしては、ってなんだよ~」
「わりぃわりぃ」
「本当は同じ学年の子がいいんだけどね~」
「あ、もう春には卒業か……」
「いっそのこと、皇族の権力をフルに使って留年させてやろうか……」
「やめろ。2年は死活問題だぞ」

 フィリップがマジな顔でコニーを留年させようと考えているので、ボエルもマジな顔で止めるのであった。


「ちょっとオシッコしたくなっちゃった。リネーア嬢のこと頼んだね」
「オレも行くぞ……どこ行った!?」

 しばしご歓談のなか、フィリップはボエルに頼み事をしたら、ダバダバ~っと走って行って人混みに突っ込んだ。
 そのせいで確実に見失ったボエルは、皇帝の前で見失ったことがバレるのはマズイと、リネーアそっちのけでフィリップを捜すのであった。


 悪役令嬢サイド。

「フッ……今日であの泥棒猫の顔は見納めですわ」

 エステルは邪悪な顔で、フレドリクと楽しそうに喋っているルイーゼの横顔を睨んでいた。その顔はこれから起こることを知っているイーダやマルタ、何も知らないその他の取り巻きも恐怖する顔。

「さあ……飲みなさい。飲むのですわ……」

 ウェイターからルイーゼに手渡されたグラス。その色は、いまから起こることを連想させるような赤色だった……

「飲みましたわね。プッ……我慢ですわ」

 ここで大声で笑ってしまうと、窮地におちいる。エステルは必死に我慢してその時を待つ。

「どうして……どうして死……席を外しますわ!!」

 しかし待てど暮らせど何も起きず。エステルは怒りの表情でパーティー会場を出て、人の目のない場所で目配せして呼び出しておいたウェイターと合流した。

「どうしてルイーゼは死なないのですの! 一口で死に至るとおっしゃっていましたですわよね? お前はこのわたくしにウソをついたのですの!!」

 ウェイターの正体は暗殺者。ルイーゼの毒殺が失敗に終わったからには、エステルは怒り狂うのであった……
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

憧れの異世界転移が現実になったのでやりたいことリストを消化したいと思います~異世界でやってみたい50のこと

Debby
ファンタジー
【完結まで投稿済みです】 山下星良(せいら)はファンタジー系の小説を読むのが大好きなお姉さん。 好きが高じて真剣に考えて作ったのが『異世界でやってみたい50のこと』のリスト。 やっぱり人生はじめからやり直す転生より、転移。 転移先の条件としては『★剣と魔法の世界に転移してみたい』は絶対に外せない。 そして今の身体じゃ体力的に異世界攻略は難しいのでちょっと若返りもお願いしたい。 更にもうひとつの条件が『★出来れば日本の乙女ゲームか物語の世界に転移してみたい(モブで)』だ。 これにはちゃんとした理由がある。必要なのは乙女ゲームの世界観のみで攻略対象とかヒロインは必要ない。 もちろんゲームに巻き込まれると面倒くさいので、ちゃんと「(モブで)」と注釈を入れることも忘れていない。 ──そして本当に転移してしまった星良は、頼もしい仲間(レアアイテムとモフモフと細マッチョ?)と共に、自身の作ったやりたいことリストを消化していくことになる。 いい年の大人が本気で考え、万全を期したハズの『異世界でやりたいことリスト』。 理想通りだったり思っていたのとちょっと違ったりするけれど、折角の異世界を楽しみたいと思います。 あなたが異世界転移するなら、リストに何を書きますか? ---------- 覗いて下さり、ありがとうございます! 10時19時投稿、全話予約投稿済みです。 5話くらいから話が動き出します。 ✳(お読み下されば何のマークかはすぐに分かると思いますが)5話から出てくる話のタイトルの★は気にしないでください

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

記憶喪失の異世界転生者を拾いました

町島航太
ファンタジー
 深淵から漏れる生物にとって猛毒である瘴気によって草木は枯れ果て、生物は病に侵され、魔物が這い出る災厄の時代。  浄化の神の神殿に仕える瘴気の影響を受けない浄化の騎士のガルは女神に誘われて瘴気を止める旅へと出る。  近くにあるエルフの里を目指して森を歩いていると、土に埋もれた記憶喪失の転生者トキと出会う。  彼女は瘴気を吸収する特異体質の持ち主だった。

憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

処理中です...