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八章 夜遊びの自主規制

174 成績操作

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 体育イベントは消化止まりであったが、それからもフィリップはイジメを見学したり阻止したり失敗したりを繰り返していたら、そろそろ2学期の中間試験。
 ボエルから勉強時間を増やしたいとか言われていたけど、フィリップは毎日やっているからと楽観的。授業中はいつも通り爆睡だ。

 今日も終業時刻まで寝続けたフィリップは、ボエルに起こしてもらい手を引かれて寮に戻ろうとしていたら、1階の廊下で男子3人、女子1人のバランスの悪い生徒に道を塞がれた。
 この頃にはフィリップも完全に目が覚めていたので、いつも通り無言でシッシッと手を振って邪険に追い払おうとしたが、今日の相手は逃げて行かなかった。

「邪魔なんだけど~?」

 フィリップが不機嫌そうに口を開くと、リーダー格らしきリーゼントの男子生徒が頭を下げた。

「申し訳ありません。本日は、フィリップ殿下にお願いの儀がありまして呼び止めたしだいです」
「だから、僕は派閥だとか配下だとかいらないって言ってるでしょ」
「それは重々承知しております。今回はまったくの別件です。5分! いえ、2分だけお時間をいただけないでしょうか?」

 第二皇子に取り入る目的以外に喋り掛けられたことがないフィリップは、ちょっとは興味が出た。

「わかった。さっさと用件言って」
「有り難き幸せ! 私は……」

 この男子生徒は、クラスメートでアードルフ侯爵家のニコライ。残念なことにフィリップに覚えてもらえていない悲しい人。どうやら成績がかんばしくないから、急に成績アップしたフィリップになんとかしてほしいらしい。

「誰にいくら払えば成績が上がるってか~……」

 それも、不正をしていると決め付けて……チラッと後ろを見たら、ボエルも「お前、やったんか!?」って目をしていたので、フィリップはハンドサインで「黙ってろ」と出した。

「はい。あんな点数から上がるなんて、ありえません。教師を買収したのですよね?」
「僕が努力したとは思わないの?」
「授業中はずっと寝て、期末試験の前なんて学校にも来てなかったじゃないですか? いつどこに努力の欠片がありますか?」
「プッ。確かに! アハハハハハ」

 ニコライはずっと失礼なことを言っているが、フィリップは痛いところを突かれたと大笑い。ニコライたちも女子を除いて「バカ皇子、ちょれ~」ってほくそ笑んでる。

「それで……お口添えをお願いできませんでしょうか? もちろん謝礼はさせていただきます」
「う~ん……ま、いっか。謝礼しだいで考えてあげるよ」
「ありがとうございます! おいっ!」

 ニコライは礼を言った次の瞬間、真後ろに立っていた女子生徒の髪の毛を掴んで横に立たせた。

「こいつは毎日、私共で輪姦まわして調教済みですので、如何様いかようにお使いになられても大丈夫です。このように、殴っても声ひとつ出しませんよ」
「ッ……」

 女子生徒は本当にニコライに裏拳で殴られても声を出さなかったが、当たり所が悪くて鼻血が垂れた。

「テメェ!」

 その瞬間、ボエルが烈火の如く怒り、ニコライに噛み付く。

「なに揉んでんだ!?」

 いや、フィリップがノールックでボエルの左胸を右手で鷲掴みにして4回モニュモニュしたもんだから、怒りの対象がフィリップに向いた。
 そこにフィリップはボエルにだけ冷たい目を向け、軽く押して後ろに下げたら、ヘラヘラした顔でニコライに向き直った。

「ま、答えは味見をしてからだ。明日にでも言い渡すから、また声を掛けてよ。んじゃ、貰ってくね~」
「はっ!」
「「はは~」」

 フィリップは女子生徒の腕を軽く握ると、さっさと立ち去るのであった。


「で、殿下……その子、どうするつもりなんだ?」

 寮の自室に戻るまでフィリップはボエルの質問を無視していたが、女子生徒を寝室に連れ込んだところでようやく口を開く。

「僕のバスローブとパジャマ持って来て」
「なっ……正気か!?」
「うるさい。黙れ。これ以上、僕を怒らせないで」

 実をいうところ、女子生徒が殴られた時点でフィリップの怒りはマックス。しかし馬鹿皇子設定があるからフィリップはなんとか抑え、帰り道も口を開くと怒りが爆発しそうだったから黙っていたのだ。

「うっ……申し訳ありませんでした」

 フィリップは声こそ大きくはなかったが、ボエルは気圧されて寝室を出て行くしかなかった。


 ボエルが出て行くと、フィリップは女子生徒の両腕を優しく持って移動させ、ベッドに座らせて目線を合わせた。

「僕みたいな権力を持った男に何を言われても信じられないと思うけど、僕は君の味方だよ。絶対に暴力を振るわないと約束する。ここにいれば、アイツらも近付けないから安心して。ね?」
「……」

 フィリップが優しく言っても女子生徒は何も喋らず暗い顔のままだ。そこにボエルがニヤニヤした顔で戻って来た。フィリップの真意を聞いていたから嬉しくなったみたいだ。

「この人は執事みたいに見えるけど、お姉さんだからね? あ、見えない? ボエル、オッパイ見せてあげて」
「殿下!?」
「大声出さないの。この子が怖がるでしょ」
「さっき笑った仕返しだろ……」
「ニヒヒ~」

 その通り。女子生徒はそんなこと言ってなかったのに、ニヤニヤしていた仕返しでフィリップはこんなことをやらせているのだ。
 ボエルもそのことに気付いていたが、仕方なく胸元を開いて見せていたけど、フィリップに「ナマ乳全部見せなくてよかったのに」と言われて恥ずかしそうにしまっていた。

「んじゃ、女性の証明はできたね。僕は外にいるから。ボエル、この子の体、隅々まで調べて」
「え……」
「くれぐれも……わかっているね?」
「はい……」

 本当の目的は、女子生徒を気遣って。ボエルは「また騙された!」って顔でフィリップを見たけど、フィリップは「女好きなのはわかってるけどエロイことするな」と皆まで言わずに釘を刺してから、寝室を出て行くのであった。
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