174 / 336
八章 夜遊びの自主規制
174 成績操作
しおりを挟む体育イベントは消化止まりであったが、それからもフィリップはイジメを見学したり阻止したり失敗したりを繰り返していたら、そろそろ2学期の中間試験。
ボエルから勉強時間を増やしたいとか言われていたけど、フィリップは毎日やっているからと楽観的。授業中はいつも通り爆睡だ。
今日も終業時刻まで寝続けたフィリップは、ボエルに起こしてもらい手を引かれて寮に戻ろうとしていたら、1階の廊下で男子3人、女子1人のバランスの悪い生徒に道を塞がれた。
この頃にはフィリップも完全に目が覚めていたので、いつも通り無言でシッシッと手を振って邪険に追い払おうとしたが、今日の相手は逃げて行かなかった。
「邪魔なんだけど~?」
フィリップが不機嫌そうに口を開くと、リーダー格らしきリーゼントの男子生徒が頭を下げた。
「申し訳ありません。本日は、フィリップ殿下にお願いの儀がありまして呼び止めたしだいです」
「だから、僕は派閥だとか配下だとかいらないって言ってるでしょ」
「それは重々承知しております。今回はまったくの別件です。5分! いえ、2分だけお時間をいただけないでしょうか?」
第二皇子に取り入る目的以外に喋り掛けられたことがないフィリップは、ちょっとは興味が出た。
「わかった。さっさと用件言って」
「有り難き幸せ! 私は……」
この男子生徒は、クラスメートでアードルフ侯爵家のニコライ。残念なことにフィリップに覚えてもらえていない悲しい人。どうやら成績が芳しくないから、急に成績アップしたフィリップになんとかしてほしいらしい。
「誰にいくら払えば成績が上がるってか~……」
それも、不正をしていると決め付けて……チラッと後ろを見たら、ボエルも「お前、やったんか!?」って目をしていたので、フィリップはハンドサインで「黙ってろ」と出した。
「はい。あんな点数から上がるなんて、ありえません。教師を買収したのですよね?」
「僕が努力したとは思わないの?」
「授業中はずっと寝て、期末試験の前なんて学校にも来てなかったじゃないですか? いつどこに努力の欠片がありますか?」
「プッ。確かに! アハハハハハ」
ニコライはずっと失礼なことを言っているが、フィリップは痛いところを突かれたと大笑い。ニコライたちも女子を除いて「バカ皇子、ちょれ~」ってほくそ笑んでる。
「それで……お口添えをお願いできませんでしょうか? もちろん謝礼はさせていただきます」
「う~ん……ま、いっか。謝礼しだいで考えてあげるよ」
「ありがとうございます! おいっ!」
ニコライは礼を言った次の瞬間、真後ろに立っていた女子生徒の髪の毛を掴んで横に立たせた。
「こいつは毎日、私共で輪姦して調教済みですので、如何様にお使いになられても大丈夫です。このように、殴っても声ひとつ出しませんよ」
「ッ……」
女子生徒は本当にニコライに裏拳で殴られても声を出さなかったが、当たり所が悪くて鼻血が垂れた。
「テメェ!」
その瞬間、ボエルが烈火の如く怒り、ニコライに噛み付く。
「なに揉んでんだ!?」
いや、フィリップがノールックでボエルの左胸を右手で鷲掴みにして4回モニュモニュしたもんだから、怒りの対象がフィリップに向いた。
そこにフィリップはボエルにだけ冷たい目を向け、軽く押して後ろに下げたら、ヘラヘラした顔でニコライに向き直った。
「ま、答えは味見をしてからだ。明日にでも言い渡すから、また声を掛けてよ。んじゃ、貰ってくね~」
「はっ!」
「「はは~」」
フィリップは女子生徒の腕を軽く握ると、さっさと立ち去るのであった。
「で、殿下……その子、どうするつもりなんだ?」
寮の自室に戻るまでフィリップはボエルの質問を無視していたが、女子生徒を寝室に連れ込んだところでようやく口を開く。
「僕のバスローブとパジャマ持って来て」
「なっ……正気か!?」
「うるさい。黙れ。これ以上、僕を怒らせないで」
実をいうところ、女子生徒が殴られた時点でフィリップの怒りはマックス。しかし馬鹿皇子設定があるからフィリップはなんとか抑え、帰り道も口を開くと怒りが爆発しそうだったから黙っていたのだ。
「うっ……申し訳ありませんでした」
フィリップは声こそ大きくはなかったが、ボエルは気圧されて寝室を出て行くしかなかった。
ボエルが出て行くと、フィリップは女子生徒の両腕を優しく持って移動させ、ベッドに座らせて目線を合わせた。
「僕みたいな権力を持った男に何を言われても信じられないと思うけど、僕は君の味方だよ。絶対に暴力を振るわないと約束する。ここにいれば、アイツらも近付けないから安心して。ね?」
「……」
フィリップが優しく言っても女子生徒は何も喋らず暗い顔のままだ。そこにボエルがニヤニヤした顔で戻って来た。フィリップの真意を聞いていたから嬉しくなったみたいだ。
「この人は執事みたいに見えるけど、お姉さんだからね? あ、見えない? ボエル、オッパイ見せてあげて」
「殿下!?」
「大声出さないの。この子が怖がるでしょ」
「さっき笑った仕返しだろ……」
「ニヒヒ~」
その通り。女子生徒はそんなこと言ってなかったのに、ニヤニヤしていた仕返しでフィリップはこんなことをやらせているのだ。
ボエルもそのことに気付いていたが、仕方なく胸元を開いて見せていたけど、フィリップに「ナマ乳全部見せなくてよかったのに」と言われて恥ずかしそうにしまっていた。
「んじゃ、女性の証明はできたね。僕は外にいるから。ボエル、この子の体、隅々まで調べて」
「え……」
「くれぐれも……わかっているね?」
「はい……」
本当の目的は、女子生徒を気遣って。ボエルは「また騙された!」って顔でフィリップを見たけど、フィリップは「女好きなのはわかってるけどエロイことするな」と皆まで言わずに釘を刺してから、寝室を出て行くのであった。
11
お気に入りに追加
167
あなたにおすすめの小説
スキルポイントが無限で全振りしても余るため、他に使ってみます
銀狐
ファンタジー
病気で17歳という若さで亡くなってしまった橘 勇輝。
死んだ際に3つの能力を手に入れ、別の世界に行けることになった。
そこで手に入れた能力でスキルポイントを無限にできる。
そのため、いろいろなスキルをカンストさせてみようと思いました。
※10万文字が超えそうなので、長編にしました。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
破滅する悪役五人兄弟の末っ子に転生した俺、無能と見下されるがゲームの知識で最強となり、悪役一家と幸せエンディングを目指します。
大田明
ファンタジー
『サークラルファンタズム』というゲームの、ダンカン・エルグレイヴというキャラクターに転生した主人公。
ダンカンは悪役で性格が悪く、さらに無能という人気が無いキャラクター。
主人公はそんなダンカンに転生するも、家族愛に溢れる兄弟たちのことが大好きであった。
マグヌス、アングス、ニール、イナ。破滅する運命にある兄弟たち。
しかし主人公はゲームの知識があるため、そんな彼らを救うことができると確信していた。
主人公は兄弟たちにゲーム中に辿り着けなかった最高の幸せを与えるため、奮闘することを決意する。
これは無能と呼ばれた悪役が最強となり、兄弟を幸せに導く物語だ。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……
karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。
他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!
七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる