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七章 珍しく昼遊び

165 ボス部屋

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「「申し訳ありませんでした!!」」

 許可を得ていたとはいえ、第二皇子のベッドであんなことやそんなことをしているところを本人に見せてしまったのだから、ボエルカップルは服を着たら同時謝罪だ。

「そんなのいいよ。ちゃんと最後まで出来た? まだだったら最後まで続けな。僕、見てるから。ね?」
「えっと……見てる??」
「殿下はこういう人なんだ……休憩時間はそろそろ終わるだろ? 主人のところに戻りな」
「あ、はい! 粗末なモノを見せて申し訳ありませんでした!!」
「そんなことないよ~。いつでも待ってるからね~~~」

 ボエルが逃がすと彼女はもう一度頭を下げて走っ行ったけど、フィリップが変なことを言うから振り返ったので、ドアにぶつかってから出て行った。
 外側のドアが閉まる音が部屋の中に響くなか、フィリップはニヤニヤしながらボエルを見てる。

「なかなかいい形のオッパイだったね」
「そこはいい子とかじゃないのか?」
「あ、それそれ。でも、驚いたな~」
「それはオレのほうが……いや、申し訳ありません……」

 主人のベッドを使っていたのだから、ボエルも強く言えないみたいだ。

「だから、いつでも使っていいと言ってるでしょ~。ま、僕がいる時は、ソファーになっちゃうけどね」
「いや、絶対見るだろ? 覗くではなくて、ガン見するだろ??」
「まぁ……手は出るね……」
「もう連れて来れねぇ!?」

 フィリップが行為を見るだけでは終わらないと宣言するので、ボエルも豪華なスウィートルームデートは諦めるしか無さそうだ。

「まぁ明日は朝早くに出掛けて夜遅くなるから、その時間に使ったらいいよ」
「は? なに言ってんだよ? 行かさないぞ??」
「ふ~ん……さっき、ナニしてたのかな~? 言いふらそっかな~??」
「うっ……」
「父上やお兄様の耳に入ったら、彼女とムリヤリ別れさせられないか心配だね~。どっちの家にも迷惑掛かっちゃうかも?」
「な、なんて汚いヤツだ……」

 脅されたボエルはヨロヨロと後退あとずさり、近くにあったソファーに倒れ込むように座った。そこにフィリップは回り込んでボエルの後ろから両手を回した。

「ま、持ちつ持たれつで行こうじゃないか。僕はボエルの目を盗んで外出する。ボエルはその間、この部屋を好きにする。どうどう?」
「殿下と出会って、弱味ばかりが増えて行く……」
「ククク。いまなら、彼女との逢瀬は絶対に覗かないと誓おうじゃないか。僕はよく噓をつくけど、約束だけは守るよ~?」
「選択肢なんて、オレにないだろ……」

 その通り。これは一方的な取り引きなので、ボエルも飲むしかない。そんな項垂れるボエルの口元をフィリップはペロリと舐めた。

「取り引き成立だね。あ、違う女の味がする……」
「忘れろ! 全部飲むから、その味は忘れてくれ~~~!!」

 こうして弱味をさらに1個足して、フィリップは無断外出権を手に入れたのであった……


 翌朝は、ボエルに朝早く起こしてもらったフィリップは戻る時間だけ告げ、ボエルが寝室から出て行ったら姿を消す。
 これは最低限の配慮。寮内全ての人間がフィリップの外出に気付けないのだから、ボエルだけに罪が及ばないようにしているのだ。ボエルはまた消えているからビックリしてるけどね。

 そうして全速力でダンジョン内を爆走したフィリップは、フレドリクパーティが野営していた地下10階の小部屋にこっそりと近付いた。

「ヤベッ!?」

 ちょうどフレドリクパーティが片付けを済ませて歩き出したところだったので、フィリップは全力離脱。階段辺りまで戻って、ゆっくりとストーキングを始める。

「フゥ~。なんとかバレずにここまで来たな」

 幾度かの戦闘を乗り越えたフレドリクパーティがボス部屋の前で喋っているところを覗き見るフィリップは、今までの苦労を労うように呟いた。

「お~。ゲーム通り、フラグになりそうなこと言ってる」

 フレドリクが音頭を取って、鼓舞したり感謝したり。主要キャラの男4人はルイーゼを口説くようなことを言ってるので、フィリップはニヤニヤしっぱなしだ。

「プププ。ここで最後じゃないのにな~」

 あと、この先のボスは、ラスボスではないと知ってるから、笑いをこらえるのに大変そうだ。

「いい加減、モブ君も仲間に入れてあげて~」

 さらに、モブ生徒がその光景をキラキラした目で見ているのに声を掛けてもらえないから、そちら側に感情移入するフィリップであったとさ。


「てか、どうしたものか……」

 フレドリクパーティがボス部屋に入って行くのを見送ると、フィリップも扉に手を掛けたけど、うんともすんとも言わない。先客がいると、開かない仕組みのようだ。

「壁はけっこうあるから、ここを破れば入れそうだけど、モブ君がいるからな~……勘しかないか。南無三!」

 フィリップは初代硬貨を弾いて手に乗せる。初代硬貨は裏を向いたので、決めていた左に移動して壁の下にファフニールソードを突き刺したら慎重に穴を広げた。

「よっ……引っ掛かった。狭すぎたか……ふん! おお~」

 自分が通れるだけの穴を開けたフィリップはモゾモゾと潜り抜けたら、フレドリクパーティが激しい戦闘を繰り広げていたのであった……
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